『キンイロモミジが差し切って今ゴォール! 驚異的な末脚! これがデビュー戦だなんて誰が信じられるでしょうか!』
不完全燃焼な私を尻目に、モミジは初レースを圧勝で終えた。
それも、日本ダービーと同じ東京芝2400mの舞台で、だ。
未勝利戦とG1では競争相手が異なるとはいえ、やはり彼女はとてつもない才能に恵まれている、と思わざるを得ない。
「お疲れモミジ。余裕だったか?」
「うんまあ、でもその割には熱くなれたなぁ。おかげで結構目立っちゃった…」
「そりゃ良かった」
「良くないよ…これでダービー負けましたみたいなオチはやめてねミハル! ミハルと戦うために本気出してるんだから!」
「ええ、当たり前でしょ」
口ではそう言ってみたものの、自信は日に日に弱くなっているのが実情だ。
「あんま追い詰めるようなこと言うなよ、モミジ」
「ああごめん、そんなつもりじゃなくて。でもミハルを追い詰めてるのはどっちかっていうと…」
「私なら大丈夫だから。ラップタイム自体はちゃんと上がって来てるし」
「そうだな……じゃあ来週は京都新聞杯を見に行かないか?」
京都新聞杯。
2着までのウマ娘に日本ダービーの出走権が与えられるステップ競走のひとつ。
「ライバル視察ってことですか」
「ああ、気になるウマ娘が出走しててな」
「それこそ逆にプレッシャーがかかりそうなものだけど」
「いや、行きます、行かせてください」
とにかく今はなんでも試してみるしかない。そんな焦りのまま私はそう返事をした。
『1番人気はカホウタイケン! ダービー出走を目指して走ります』
『ここ1ヶ月でかなり勢いがついてきたウマ娘。どんな走りを見せてくれるのか期待が高まります』
「あれがトレーナーの言ってた気になるウマ娘ですか?」
「ああ、3月に未勝利戦を抜け出してから破竹の勢いで上がって来ているウマ娘だ。なにより彼女の姉が……」
「私がどうかしましたかぁ…?」
場所取りをしながら話を聞いていると、釛誠の隣から眠たげな声で、ウマ娘が割り込んできた。
「あなたは……マチカネフクキタルさん!?」
「はい〜、そうです、マチカネフクキタルです。あなたは噂のミハルストライクさん?」
「は、はい」
「皐月賞おめでとうございます〜。うちのカホウが勝ったら、ダービーで当たることになると思うので、よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします……?」
「まさか隣にいるとはな。カホウタイケンの姉ってのは彼女のことだ」
「そうなんですか!? それでこんな人気に……」
「カホウは私と比べられるの…苦手みたいなんですけど……ねぇ」
そう言いながら船を漕ぎ始めるフクキタルさん。
妹のレース前だと言うのに凄く眠そうだ。
「大丈夫ですか…?」
「いつもこんな感じなんだ。大丈夫、レースが始まったら起きるから」
「そうなんだ…」
『さあ出走の準備が整いました』
外ラチにもたれて寝落ちたフクキタルさんを尻目に、ウマ娘はゲートに入る。
カホウタイケンは1枠1番。彼女の脚質的に、馬群に囲まれると厳しそうだが……
「──さあ、シラオキ様のお導きを!」
『今スタート!』
私の予想は当たり、第3コーナーを超えた時点で、カホウは混戦の渦に飲み込まれていた。
前は逃げウマ娘がスパートに入り、後方大外からは追込をかけるウマ娘。
「あれ、勝てるんですか……?」
「厳しそうだな……末脚は抜群だから前が開けばというとこだが」
「開きますよ。そして勝つのはカホウです」
いつのまにかフクキタルさんは起きており、さっきとは違う真剣な目でそう言った。
その言葉通り、バ群は不自然なほど綺麗に散り、カホウの前に道ができあがる。
『第4コーナーに入って…ここでカホウタイケンが一気に仕掛ける!』
そこからは圧倒的だった。
カホウが加速した、と思った次の瞬間には先頭争いをする2人に並び立っていた。
『カホウタイケンだ! 内からかわしてカホウタイケンがゴォォール!!』
日本ダービーで彼女と相対するのが恐ろしくなるほどの実力。
釛誠が目をつけるのも納得だった。
だが……それを見た私に芽生えたものは、不安とは違った何か。
もう少しで何かが掴めるかもしれない。
日本ダービーまで、残り半月。
プチ設定資料 キンイロモミジ③
驚異的な差し脚を持つ生粋のステイヤー。逆に、中距離以下だと煮え切らないまま終わることが多い(中距離C/長距離A/差しS)。左方向への斜行癖がある。
設定資料作ったんですが、どこかに置いた方がいいですか?
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後書きで一人づつ紹介してほしい
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1話の前に小説として挿入して欲しい
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最新話の後に小説として挿入してほしい
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活動報告で小出しにしてほしい
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いらない