春風は衝撃の如く   作:鯛と琴

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東京優駿

「内ラチから2m47cm……先頭から3・5バ身……この位置から好位抜け出し……見えましたッ!」

「カホちゃん、イメージトレーニングは終わった?」

「スズカさん! これはイメトレではなくて占いです! お告げに従って正確に事を進めれば絶対に勝てるのです!」

「そう……なんでもいいけど、油断はしないようにね。相手は無敗の皐月賞ウマ娘、ミハルストライクなんだから」

「ええ、ですがここは日本ダービー。『最も運のあるウマ娘が勝つ』レース。シラオキ様の加護を受けた私に死角などありません!」

「そうだといいのだけど…」

地下バ道でチームメンバーと話すカホウタイケンは絶好調といった様子で、やや調子に乗っているようにも見える態度でこちらを一瞥した。

確かに日本ダービー……東京優駿を評した格言には『最も運のあるウマ娘が勝つ』というものがある。

しかし、それは多人数で走っていた昔のダービーを指した言葉。今、東京2400mに求められているのは純粋な実力。

確かに彼女も相当の実力者だ。中山とは違い差し切りも成功しやすい。それでも、勝つのは私だ。

『さあ14番カホウタイケン、5番ミハルストライク、注目の2人が揃って登場だ!』

『2人とも調子は万全のようですね、これは予想ができません』

『ミハルストライクが無敗三冠に王手を打つのか、それとも初の敗北を味わうことになるのか…注目の日本ダービー、今出走です!』

 

 

ターフは絶好の良バ場。この足元ならば皐月賞のような失態はない。

初めから全員ブッちぎる……!

『ゲートが開いた! 先頭に飛び出したのはやはりミハルストライク! 続いてヒノモトリーチがそれを追いかける!』

「……早ッ…!?」

観客、そして後続がどよめく。これまでの速度とは比べものにならないスタート。

『そこから2バ身開いてカホウタイケン。普段よりややペースが早いようですが…』

『この展開だと差しでは追いつけない可能性もあります。意図は不明ですが結果的に好位置につけていると言っていいでしょう』

リーチとの差は1、2バ身……と離れていくが、一方でカホウは一定の距離を保って追走してくる。

『さあ先頭3人が既に向こう正面に差し掛かる超ハイペース! 後方は大きく離され縦長の展開です!』

カホウと後続の距離が開き、結果として最短最良の道を走るカホウ。好位置とスタミナ温存の両方を与えてしまった。

この状況を予測してか、はたまた本当に幸運なのか。こちらとしては想定外の事態だが……

『ここでミハルストライクがさらに加速──!?』

スタミナ勝負に乗ってくると言うのなら、全身全霊で叩きのめしてやろう。

こちらもストライド走法で脚の負担は大きく減り、今まで以上のスタミナを発揮できるのだから。

『なんだあの走り方は!?』

『見たことのないフォームです…まるで、空を飛んでいるような』

「な……! あれについていったらスタミナが……でも、お告げ通りに走るには……」

カホウの判断は遅かった。既に私に釣られたウマ娘が一人、二人とカホウに並ぶ。

第3コーナーに入る。走り方の都合上このフォームのままでは曲がれず多少減速するが、慣性のままにスパートをかける。

それは後続を掛からせるには十分な緩急だった。みるみる内にカホウは馬群へと飲まれていく。

『第3コーナーを超え第4コーナー! ミハルストライクが未だに独走中だ! その差は7…いや、8バ身!』

「くっ……無茶苦茶な……! ですがこの位置は内ラチから2m47cm、お告げ通りの位置です!」

馬群の中からカホウがこちらを睨む。その目の前には幸運にも、道が開いていた。

『最終直線、まだ差は埋まりません! このままミハルストライクが独走してしまうのか!?』

「いいえ、逃しません、私の脚ならここから差し切れるハズ……!」

『いや、カホウタイケンが馬群から抜け出している! とんでもない末脚だ! 6バ身、5バ身…!』

京都新聞杯と同じ、圧倒的な加速を見せるカホウ。

ここからは単純な実力勝負。

『残り300m、カホウタイケンが差すか…!? いや、ミハルストライクだ、さらに加速する! 差は縮まらない……っ!!』

坂を超えた時点で勝負は決した。

平地に入れば私はもっと飛べる。

飛翔する私にはこの場の誰も追いつけない。

もし伍するとすれば……と、ゴール版を横切りながら、観客席にいるライバルと目を見合わせた。

『無敗二冠達成──! ミハルストライク! 一着はミハルストライクだぁぁっ!!』

 

 

「あれがミハルストライク……すげぇ、あんなカッコいい逃げは見たことねぇ……! アイツが動画を撮ってこいって言ったのもわかる気がするぜ……」

「興奮してるね、ウオッカちゃん」

「ああすみません、フク先輩の妹さんが負けちゃったのに……」

「いや、それはいいんだけど…私の逃げはカッコよくない?」

「あっそこなんですね?」

「フクキタルさんもカッコいいですよ!」

「ふふ…ありがとう、スペちゃん」

「あの…妹さんのことはいいんスか?」

「ふわぁ……まあ、カホウはいろいろ未熟なところもあったから……これを機にもっと強くなってくれるハズ…だ……し……すぅ……」

「あ、寝ちゃった」

「……疑うわけじゃないんですけど、こんな調子だから本当に妹のことを考えてるのかって周りが言うんスかね」

「それはあんまり言わないであげてください。フクキタルさん、カホウちゃんがリギルに入ったの結構気にしてるみたいだから……」

「す、すみません、スペ先輩」

「まあ、とにもかくにも、フクキタルさんを車まで運びましょうか」

「……そ、そっスね…」

 

 

皐月賞を超える大歓声に迎えられて、ウィナーズサークルに上がる。

思えば、モミジと戦うためだけに随分と凄いことをやってしまったような気がする。

だが、それも次の菊花賞でいよいよ果たされる。

「みなさん、応援ありがとうございます。現生徒会会長(トウカイテイオー)と同じ無敗二冠を達成できたこと、誇りに思います。ですが、私の目的はもっと単純で、ライバルと戦うことだけ。菊花賞で待っているから、必ず上がってきて」

会場は誰も、そのライバルというのが先日デビューしたモミジのことだとは思わなかっただろう。

困惑し、ざわつく人々の中で、本人だけがこちらを見据えて頷く。

彼女と観客にこう宣言しよう。

「そして私はライバルに勝って、三冠を達成する!」




プチ設定資料 マチカネフクキタル①
私たちの知るマチカネフクキタルとは異なる道を歩んでいる。クラシック級では同期の三冠ウマ娘、ナリタブライアンの影に隠れていたが、シニア級で大逃げのスタイルを確立し宝塚記念を制した。

設定資料作ったんですが、どこかに置いた方がいいですか?

  • 後書きで一人づつ紹介してほしい
  • 1話の前に小説として挿入して欲しい
  • 最新話の後に小説として挿入してほしい
  • 活動報告で小出しにしてほしい
  • いらない
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