春風は衝撃の如く   作:鯛と琴

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夏合宿

『キンイロモミジだ! すいれん賞を制したのはキンイロモミジ! 大差をつけて圧勝ォーッ!』

2500mの長距離をものともせず、モミジは2勝目をあげた。

本人に言わせれば、長距離の方が『調子がちゃんと上がりきる』らしいが、この勝利はそれだけではないだろう。

私も菊花賞に向けて、さらにトレーニングを重ねなければ。

夏の合宿に向けて気持ちを新たにし、レース場を出た私たちは──

「ダイヤ! キタ! やーっておしまい!!」

「はい! ゴールドシップさん」

グラサンとマスクで顔を隠した、正体不明のゴールドシップ達にずだ袋を被せられ、連れ去られた。

 

 

「つれてきたぜスカーレット!」

ずだ袋が外され、目を開くと、そこはチームスピカのトレーナー室だった。

その部屋の一角を陣取り、パソコンと睨み合っていた少女は呼び声に気づいて立ち上がる。

「あら、ありがとう」

白衣を靡かせて私たちを迎え入れたのはダイワスカーレット。

「手荒な真似してごめんなさいね。これがスピカ流なのよ」

「噂には聞いてたけど本当に拉致られるなんて…」

「それで、スピカがウチみたいなチームに何の用だ?」

「ええ、チームマーズの2人と、私たちスピカとで合同合宿を開きたいの」

「えっ、す、スピカとですか!?」

「驚くこたねぇだろー? 今やオマエは無敗二冠。ダービーも勝利して名実ともに世代最強のウマ娘なんだから」

「まあそれもあるけど…アタシはミハルちゃんの特殊な走り方に興味があるの」

聞くところによると、スカーレットさんはウマ娘の速さについて研究をしているらしい。

「ウオッカに録画させたダービーの映像を見たけど…長い一完歩を高速で行う走り方。実況の『空を飛ぶような走り方』というのはまさに言い得て妙ね」

スカーレットさんはそのまま、無意識で行っていた私の走り方の特徴を解説した。

私はスパートの開始時に、右足で地面を蹴り、走り幅跳びのような姿勢で跳んでいるという。

当然、着地時の姿勢を一気に深く潜らせて重心を前に移動させたあと、自然に左足より前に出ていた右足で勢いよく地面を蹴り上げている──らしい。

「まるで四足歩行生物の襲歩を二足でやってるみたい。少なくとも、ウマ娘じゃなければこんな複雑な動きを数秒でこなすのは不可能よ」

「私もどうやってやってるのかはわからないんですが…正直、この走り方は凄くしっくり来るんです」

「なるほど…だがこの走り方、足への負担が大きすぎないか? やらせておいて何だが、心配になるんだが」

「そうね、ただミハルちゃんの場合、足がすごく頑丈なの。入学時に身体検査をしたでしょう? その資料を見せてもらったのだけど、これだけ『故障しないこと』に特化した足はなかなかないわ」

スカーレットさんが足の頑丈さを数値化した資料を出す。イクノディクタス、ゴールドシップ、ハルウララ…ときて、その上に私の名前があった。

「あれ、でも僕の方が上なんだね」

モミジが言う通り、私のさらに上には彼女の名前がある。

「ええ、あなた達の頑丈さは羨ましいわ。私は常に気を配らないといけないほど足が弱いから…」

「じゃあミハルの走り方を真似しちゃおうかなぁ」

それは困る。せっかく私のスピード不足を補えることができたのに、モミジとの差が開いては意味がない。

もっとも、止める権利は誰にもないのだが。

「できるならやってみるといいわ。スピカのメンバーで試してみたけど、ミハルちゃんの走り方を真似できたのは1人だけだったから」

「あれなー、アタシもやってみたんだけど、足がカバンの底に入れておいたイヤホンみたいに絡まるんだよ」

「1人だけ…ってことは、できたやつがいるんだよな?」

「ええ。それがダイヤちゃんよ」

私たちは振り返ってサトノダイヤモンドを見た。

彼女はまさにこれから私が臨む菊花賞で勝利したウマ娘のひとり。

おとなしそうな見た目ではあるが、さきほど私をずだ袋に詰めて運んだ張本人でもある。

「難しいこととか、挑戦せずにはいられない性分なので…」

私たちから一斉に目線を向けられたサトノさんは、恥ずかしそうに答える。

「そこで、ダイヤちゃんとミハルちゃんをチームとして合宿を行ってもらいたいの。そうすれば、アタシはデータを取れるし、ミハルちゃんはその走り方をさらに万全のものにできる」

それは、願ってもないことだ。断る理由がない。

「どうする、ミハル?」

「もちろん、やりたいです。トレーナー…!」

「なら、決まりだな」

「ありがとう、詳しいスケジュールとかはあとでウチのトレーナーとも話し合って決めるわ」

「よろしくね、ミハルちゃん」

サトノさんがそう言いながら柔らかく微笑みかけてくる。

「ちょっと待って、僕は誰とトレーニングすればいいの?」

「ああ、それは──」

「ああ、お前のことならアタシが面倒見てやるぜ。アタシはお前に並々ならぬシンパシーを感じてるんだ」

「えっ」

「お前にはそうだな……エデンに至る『覚悟』みたいな? 『スゴ味』みたいな…? まあとにかくスゲーもんを感じるんだよ!」

モミジの顔が青ざめていく。

ゴールドシップといえば、3連覇のかかった宝塚記念で120億円もの大金をものの数秒で溶かした伝説の馬。

その問題児っぷりはウマ娘になっても健在だ。実力は確かなのだが……

「よっしゃあーッ! アタシと一緒にこの夏はダイオウイカの討伐を目指そうぜ! お前ならきっと超音波ビームだって出せる!」

「何のトレーニングをするつもりなんだよぉ!?」

真っ当にトレーニングをする気が湧いてきたと思ったら、こんなことになるとは。哀れ、モミジ……

そんなこんなで、私たちの波乱の夏合宿はスタートするのだった。




プチ設定資料 ダイワスカーレット①
レースに出走する傍ら、アグネスタキオンの研究室を引き継ぎ、ウマ娘のトレーニングのサポートや、怪我の防止などに尽力している。

設定資料作ったんですが、どこかに置いた方がいいですか?

  • 後書きで一人づつ紹介してほしい
  • 1話の前に小説として挿入して欲しい
  • 最新話の後に小説として挿入してほしい
  • 活動報告で小出しにしてほしい
  • いらない
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