『ウマ娘』。
彼女たちは、ときに数奇で、ときに輝かしい歴史を持つ別世界の名前とともに生まれ、その魂を受け継いで走る、という。
事実、トゥインクル・シリーズで名を揚げているウマ娘は、誰も彼も別世界で偉業を成し遂げた馬たちの名を冠していた。
あるものは無名の家系からアイドルになった。
あるものは名家の血筋とは異なる道を歩んだ。
あるものは偉業を阻んで嫌われた。
あるものは負け続けても愛された。
細かな差異こそあれど、その運命は変えられない。
あの有馬記念を見た時に、僕は思い知ったはずだ。
キンイロモミジという競走馬は存在しない。
少なくとも、僕が人間だった頃の記憶にはそんな名前はなかった。
だから、どれだけ周りから『才能がある』ともてはやされても、僕はそれを信じることができなかった。
ハルウララはそんな僕にとって希望でもあり、絶望でもあった。
負け組の星とも呼ばれた彼女の活躍を見て、トレセン学園に入ろうと決意した僕は、同じ彼女の有馬記念を見て、覆せない運命というものを感じた。
彼女ですらそうなのだから、無名の僕にはきっとロクでもない結末が用意されているんじゃないか。
そんな風に考えてしまった時、既に脚を動かそうという気力は果てていた。
──彼女に会うまでは。
「お疲れ、モミジ。大健闘だったんじゃない?」
「ああ、ドリームトロフィーリーグを走ってる先輩相手に5着。これで期待するなと言う方が無理な話だな」
エキシビジョンレースを終えた僕を、ミハルと釛誠が迎えにきた。
フォローにも挑発にもとれるその言葉に、僕は口角をあげて言い返す。
「でも5着は5着だよ。ま、そのぶん菊花賞こそは1着になるからね。ミハルも僕のライバルとして、ちゃんと仕上げてきてよ?」
「当たり前でしょ。モミジと戦うためにここまで来たんだから、モミジこそ変な走りはしないでね」
自信満々に煽り返される。あの走りの弱点はもう克服できたのだろう。
正直、最初に模擬レースで戦った時、僕はミハルを潰すつもりでいた。
ミハルストライク──僕と同じ無名の、そのウマ娘の走る姿は、ハルウララを思い出させた。
その姿を見て、純粋に戦いたくなったのが嘘、というわけではない。
彼女の走る姿にはどこか惹かれるものがある。
しかし、それと同時に、僕は彼女を疎ましく思ったのもまた事実だ。
彼女を負かして、諦めさせてやろうと、最終直線で本気を出した。
僕の狙い通り、ミハルは落胆し、怒り、しばらく悩んでくれた。
たった数日の間だったが。
そのあとは、知っての通り。
ハルウララのレースを見る彼女に、思わず話しかけて、少しだけ本音を吐いてしまったこともあって、むしろ彼女の闘志に火をつけた。
結果として、彼女はその言葉通り、無敗でダービーウマ娘になった。
もう一度言う。彼女の走る姿にはどこか惹かれるものがある。
気づけば僕まで心に火がついていた。
ミハルと全力で戦いたい。
勝ち負けなんてどうだっていい。
今では、そんな理論的ではない考えが、僕の中を占拠していた。
こうして僕たちの合宿は幕を下ろし、菊花賞の前哨戦が始まる。
僕が臨んだのは、セントライト記念。
『最終直線に差し掛かり先頭との差は4バ身!』
『後方が巻き返せるか気になる開きですが』
『最後方からカホウタイケンが仕掛ける! それを追うようにキンイロモミジ!』
相手はダービーでミハルと戦ったカホウ。
競り合っただけあって、それだけの実力はあるが……
『カホウタイケン先頭を捉えるも……ッ、キンイロモミジが並んだ! 並んだ!』
生憎、今の僕はミハル以外眼中にない。
こうなった僕を止められる者なんて他には誰も存在しない。
『キンイロモミジ! さらに伸びる! 3番手を大きく突き放してキンイロモミジ1着! カホウタイケンは2着です!』
さあ、決着をつけようか、ミハル。
僕を本気にさせたことを後悔させてやろう。
プチ設定資料 キンイロモミジ④
あまりにもレースに出走する気がなかったため、理事長によって『第二次エデン計画』が建てられたが、ミハルのおかげでその必要はなくなった。
設定資料作ったんですが、どこかに置いた方がいいですか?
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後書きで一人づつ紹介してほしい
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1話の前に小説として挿入して欲しい
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最新話の後に小説として挿入してほしい
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活動報告で小出しにしてほしい
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いらない