菊花賞。
クラシック最後の一冠。
そして、私たちの約束を果たす場所。
ついにその日がやってきた。
誰もが無敗三冠を期待して止まない。
観衆までもが緊張を張る京都レース場。
そんな逆風に怯えることもなく、モミジはパドックに堂々と出て行った。
『1枠1番はキンイロモミジ。2番人気です』
『デビューからここまで3連勝。一気に駆け上がってきた遅咲きのステイヤーがついにG1の舞台に立ちます』
『3番人気、2枠4番カホウタイケン』
『ダービー、そしてセントライト記念での雪辱を晴らせるか』
『6番人気はヒノモトリーチ、3枠6番での出走です』
『打倒ミハルストライク。作戦を変更し、今度こそ勝利を目指します』
これまで戦ってきた相手も、この場に集っていた。
まさにクラシックの集大成。
『さあそして、堂々の1番人気。無敗三冠がかかったミハルストライクが今現れました。枠番は4枠7番での出走』
だから私も、これまでの努力の全てをぶつけて迎え討つ。
世代の頂点として、努力の証明者として、モミジの好敵手として。
勝利を、獲りに行こう。
「いよいよだな、モミジ」
「ああ、うん」
「どうだ? 俺の言った通りだったろ、ミハルはお前のライバルとして、お前を導いてくれるって」
地下バ道からコースへ向かう僕に、釛誠が問いかける。
僕は先を行くミハルの背を見据えながら答えた。
「そうだね…腹立つくらい、トレーナーの思惑通りだよ。ミハルと走るのが楽しみでしょうがない」
「もうレースは怖くないか?」
「…いいや、怖いかな。でもそれよりワクワクが勝ってるって感じ」
「そうか…そりゃ、そうだよな」
「でも大丈夫、ミハルがいるから。全力で走って、勝ってくるよ」
ミハルもずっとプレッシャーと戦ってきたハズだ。
今だって、僕なんかよりずっと怖いはず。
それでもミハルは先に行った。
だから、足を止めてる暇はないんだ。
ようやく捉えたその背中、もう逃がさない。
その背中を追い越すのは、今日だ。
『キンイロモミジがゲートに入り……これで全ウマ娘出走準備は整いました』
ゆっくりと手を地につけ、脚を伸ばす。
観客の声すら聞こえないほど、感覚が研ぎ澄まされ──
目の前のゲートが、ガコン、と音を立てた。
『今、スタートです!』
脚はひとりでに地面を蹴り、18人のど真ん中を突っ切って先頭に躍り出る。
驚くほどに身体が軽い。
モミジとの戦いに心臓が高鳴っているせいだろうか。
『先頭はやはりミハルストライク! その後ろ2、3バ身離れてヒノモトリーチさらにその外から5番──』
今の私はコーナー如きで止まらない。
馬なりに1周目の第4コーナーへ。
『後方ではキンイロモミジを囲みこむ形で集団を形成しています。外にカホウタイケン後ろは11番──』
「シラオキ様があなたに注意しろと言っておりました…あなたを外には行かせませんよ……!」
「そりゃなかなか的を得たお告げだね。でもせっかくの予言なら、結果まで聞いておきなよ──僕が勝つって結果をさぁ!」
「ッ、生意気なぁ……!」
モミジの名前が呼ばれたのを皮切りに、耳がようやく実況の声を捉える。
それでも私は振り返らない。心配せずともモミジは絶対に上がってくる。
リードを広げながらホームストレッチへ。
三冠への期待と、ハイペースへの不安が混じる歓声を切り裂いていく。
申し訳ないが速度を緩めるつもりはない。
気を抜けば負けるだけだ。
「まずい、これ以上あのペースについていくと体力が……! 弥生賞の時と同じ、何かの作戦…なん……だよね……?」
『第2コーナーを超えて向正面! 止まらない止まらないミハルストライク! 8バ身差の大逃げだ! 掛かってしまっているのか!?』
『驚きですが、ハイペースながらやはりラップタイムは正確です。もしかするとこれは……』
「う、嘘…まさかあれがミハルの本来の……」
「ああ、そのまさかだよ」
「な、あなた、いつの間に前に……!?」
「君の予想…いや、お告げにはなかったタイミングで悪いね。早めにギア上げていかないと流石に追い付けないから、さッ!」
『ヒノモトリーチがペースを落とし後続が差を詰めてきます! 後続集団の先頭はキンイロモミジ、カホウタイケンが外からそれを追います!』
「さあ、勝負だミハル!」
「させるか……! せめて、せめて2着だけは……!」
『ここでキンイロモミジが仕掛けた! ヒノモトリーチも譲るまいと加速、モミジの進路を塞ぐ形です!』
「僕が欲しいのは1着なんだよ! 邪魔しないでもらえるかな!」
「わぶっ……!」
『キンイロモミジがヒノモトリーチを交わす! 先頭のミハルストライク目掛けて上がってきた!』
来た……!
初めて戦った時と同じプレッシャーが、脊髄をビリビリと伝う。
懐かしくもある感覚。あの時は恐怖したんだったか。
今はむしろ、脳を、身体中を奮い立たせて仕方がない……!
『キンイロモミジだ! 独走中のミハルストライクに並ぶのはキンイロモミジだ! 差が1バ身、2バ身……どんどん詰まっていく!』
「ミハル──────ッ!!!」
前から近づいてくる悲鳴にも似た歓声。
それにぶつけるように、モミジの叫び声が響く。
そして────
『第4コーナー曲がって直線、上がってきたのはキンイロモミジとミハルストライク! 後ろは大きく離れ、完全なマッチレースだぁぁっ!』
そして、モミジは私の横に並んできた。
設定資料作ったんですが、どこかに置いた方がいいですか?
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後書きで一人づつ紹介してほしい
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1話の前に小説として挿入して欲しい
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最新話の後に小説として挿入してほしい
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活動報告で小出しにしてほしい
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いらない