12月。
ジュニア級も終わりを迎えようかという頃に、私はメイクデビューへ出走する。
デビューをこの日に決めたのは、トレーニング期間を長く設けて万全を期すためだった。
「無敗ってお前…! そりゃアイツをその気にさせてくれとは言ったけどよ…!」
最初はそう言っていた釛誠も、だんだん乗り気になってきたらしく、終いには異常なテンションで無敗への意気込みを叫んでいた。
……正直、ちゃんと寝ているか心配になるレベルのテンションだったが、トレーニングに支障はなかったので良しとする。
『4番ミハルストライク、1番人気です』
『この面子では頭ひとつ飛び抜けた実力ですからね。他のウマ娘たちがどう対抗するかといったところですが……』
そんな解説通り、私の仕上がりはほぼ完璧に近い状態になっている……少なくとも直前まではそう思っていた。
『少し、というか、かなり表情が硬いですね?』
『無敗を目標にしているだけあって緊張しているのでしょうね。落ち着いた走りができるといいのですが』
いざパドックに出てみると、負けられないということを強く意識してしまい、足が思うように動かなくなっていた。
というか調子乗って記者に無敗宣言のことバラしたよね釛誠? じゃなきゃ解説がそんなこと知ってるわけないもんね?
おかげさまで私は観衆の注目の的。これで負けたらそれこそモミジの言った通りになってしまう。
だったら尚更負けられない、勝たなくては。そんな強迫観念がどんどん身体を硬くする。
深く息を吐いて、なんとかゲートに入るも、無理をした心臓はさらに跳ね上がった。
落ち着け、私──瞳を閉じてそう念じると同時に。
ゲートが開いた。
『ミハルストライク、やはり緊張していたのか、大きく出遅れたーっ!』
「あーあー、やっちゃってんじゃん」
「お、モミジ、見に来たのか」
「まあ、見に来いって言われたからね。それより大丈夫なの、あれ?」
「まあ想定内だよ。あの程度離された程度で負けるタマじゃない」
「まあ、それは一緒に走った私も理解してるけど」
「それに、勢いで宣言した言葉の重みを背負ったまま、これからクラシックに挑むんだ。それがどういうことなのか、自覚してもらう必要がある」
「ふーん…思ったよりはちゃんと考えてるんじゃん」
『さあここから第3コーナーおっとここで! 早くも仕掛けてきたミハルストライク! やはりやや掛かり気味か!?』
『彼女の強みでもあるロングスパートですが、直線の長いこのコースでもスタミナが持つかどうか……』
「いや、逆だ。スタミナ勝負でアイツに敵う奴はいない」
『さあ最終直線に入る! 逃げる先頭! 追いかけるミハルストライク! その差は既に1バ身!』
「でも、急勾配の坂が待ち構えて…」
「バカ野郎、三冠を目指してて坂の特訓を怠る訳ないだろ。あの坂こそ、アイツの狙撃ポイントだよ」
『ミハルストライク抜け出した! 坂を最初に登ってきたのはミハルストライクだ! そのまま一気に突き放してゴォール!! 無尽蔵!!』
「だから言ったろ?」
『こんな怪物がまだ眠っていた! 来年のクラシック級は波乱が期待できそうだ!!』
「なるほど。でもスタミナを鍛えてるだけで勝てるほど、クラシック級は甘くないと思うけど」
「ああ、それについては考えがある。アイツにもまだ伝えてないがな。実は──」
ウイニングライブを終えて、控室に戻る。
「お疲れ。どうだ、緊張したか?」
「まあ、かなり…でも、終わってみたらどうってことはありませんでしたね」
「今回はな。だがこれから挑むレースはそうもいかない」
それは自分でも理解している。だが、今日のレースを経験して、実際にその舞台に立っても冷静でいられる自信はなかった。
「ゲート難を解消できれば、お前はもっと強くなれるはずだ。だから最低限、緊張のコントロールは必ずできるようになっておけ」
「わかりました。それで、次のレースは…」
そう尋ねると、釛誠は待ってましたと言わんばかりに笑った。
「1月の若駒ステークスだ。そこでお前に『逃げ』て勝ってもらう」
「えっ、えええええ!?」
プチ設定資料 ミハルストライク②
芝、長距離、追込が得意。地方ではダートも走っていたが、本人曰く「芝の方が若干走りやすい」らしい(芝B/ダートC/長距離A/追込B)。
設定資料作ったんですが、どこかに置いた方がいいですか?
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後書きで一人づつ紹介してほしい
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1話の前に小説として挿入して欲しい
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最新話の後に小説として挿入してほしい
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活動報告で小出しにしてほしい
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いらない