『4枠4番はミハルストライク。デビュー戦で大いに観客を沸かした期待の新星です』
『今日は落ち着いているようですね。前回以上の好走が期待できそうです』
『ファンからも1番人気に推されています』
実況はそう言うが、正直心臓はバクバクである。
1ヶ月の練習を経て望むこの若駒ステークス。負けられないだけでなく、これまでとは違う戦法で挑むのだ。緊張しないはずがない。
それでも前回ほどガチガチにはなっていない。緊張の対処法を教えてもらったおかげか、ゲートに進む足取りも順調だ。
あとは特訓の成果を見せるだけ……!
『さあ各ウマ娘ゲートに入り…おっと、ミハルストライクの様子がおかしいですね?』
『しゃがみこんでいるように見えます。具合でも悪いのでしょうか』
整バ係の人も心配して近づいてくる。
私はそれに「大丈夫です、このまま始めてください」と答えた。
『どうやらこのままレースが始まるようですが…あの体勢にどのような意図があるのか』
『そう思うと、今回のレースもかなりの波乱になりそうですね。楽しみになってきましたよ』
実況が困惑するのも無理はない。
この世界は競バが世界的な人気になっている。
その影響で人間が体を使って行う競争競技はほとんどと言っていいほど発展していない。
だからこそ、人間だった頃の知識は私の武器になる…!
「あれって…クラウチングスタート!?」
「来たかモミジ…てか、よく知ってるな」
「あ、ああ…前になんかの本で見たんだよね……はは」
「地面を急角度で蹴れるあの体勢なら、小柄なアイツでも…!」
『各ウマ娘、一斉にスタート…ッ!? ミハルストライク、一気に前に出た!』
『これは予想できませんでしたね…彼女の脚質は追込のはずですが…』
『ミハルストライク、完全に逃げの姿勢だ! リードは1バ身!』
「まるでラストスパートみたいな前傾姿勢…普通のウマ娘があのペースで走ればすぐに沈むところだけど…」
「そこはアイツの得意分野、って訳だ」
ここまでは完璧…!
だけど気は抜けない。レースはここからが本番…!
『ミハルストライク、さらに上がっていきますが…』
『ラップタイムは平均的、冷静にレースを進めていますね』
『後ろとの差は3、4バ身!』
後ろとの差を保って行ってもいいけど……ここはさらに突き放す!
『ミハルストライク、ペースを落とさずに向正面へ!』
『流石にやや掛かり気味でしょうか』
否。
ここは京都競馬場。3コーナーから4コーナーにかけて坂がある。
これだけ差をつけて、ここで一度ペースを落とせば……
『ここでミハルストライクがようやくペースを落とします! 後続が一気に差を詰めますが…!』
『完全にペースを握られましたね、坂を登った時点で全員バテバテです』
「なるほど、これまでのまくり戦法は京都じゃ難しいから、この戦法で戦わせたと…」
「まあ、そういうことだな。別のレースに出ても良かったんだが、それだと楽勝すぎて成長にならないと思ってな…ライバルがいればその必要もないんだが」
「レースねぇ。ま、ミハルがG1を勝ってから考えるかな…」
「はあ…まあそう言ってられるのも今のうちだと思っとけ」
『対してミハルストライクは余裕の表情! そして下り坂から再び加速!』
『後続は全く追いつけない! そのまま直線を走りきって……』
自分でも驚くほどの圧倒的リード。こんな可能性が私にもあったなんてと思うと、向かい風も心地よく感じた。
これが、新しい私の戦い方……!
『大差をつけて今ゴォールッ!!』
「作戦通り、だな」
「確かに完璧な勝ち方だね…でもあれ、ルール的には大丈夫なの? 審議ランプ点いてるけど…」
「え? そんな馬鹿な、だって俺は…」
『前代未聞のスタートに審議が行われているようですが…って、貴方は!?』
『諸君ッ! 審議の必要はない!』
「秋川理事長!? 何故ここに…って、ちょっと、マイクを奪わないで…!」
『報告ッ! ミハルストライクのトレーナーから質問を受けて熟考した結果、問題はないと判断した!』
『理事長、失礼ですが理由をお尋ねしても…?』
『うむ! 私はかねてより、全てのウマ娘が活躍する機会を儲けたいと思っていた。URAファイナルズの設立もそれが目的だからな!』
『それは承知しています』
『課題ッ! URAファイナルズ設立後も、体格の小さいウマ娘への偏見が多く見受けられる! 小柄でも強かったウマ娘は存在するが、パワーという点では不利を被ることも多い!』
「なるほど…」
『しかし、体格の大きいウマ娘があのスタート方法を真似してしまったら意味がないのでは…』
『狭隘ッ! ゲートの中であの体勢を取るには小柄でなければ不可能! これらの理由から、あのスタート方法がウマ娘の可能性をさらに広げると判断した!』
『なるほど、よくわかりました』
『そもそも降格処分は他のウマ娘を妨害した際の危険を考慮してのものであり今回の件とは関係ない! 解説は以上! 邪魔をしたな、マイクは返そう!』
「あっ、はい…えー、とのことで、今順位が確定しました。降格は無くそのままの着順となります!』
「ったく、ヒヤヒヤさせやがって…」
「それは私のセリフなんですけど…?」
地下バ道で私を出迎える釛誠を笑顔で威圧する。
「いや理事長が言ってたろ、俺はちゃんと許可取ってたんだって!」
「まあいいですけど。それより、次のレースはやっぱりアレですか?」
「ああ…次は皐月賞の前哨戦、弥生賞だ」
プチ設定資料 ミハルストライク③
本編で小柄と言われているように、身長は141cmでスリーサイズは上から77、56、72。ちなみにレースで不利なこと以外、特に気にしていない。
設定資料作ったんですが、どこかに置いた方がいいですか?
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後書きで一人づつ紹介してほしい
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1話の前に小説として挿入して欲しい
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最新話の後に小説として挿入してほしい
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活動報告で小出しにしてほしい
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いらない