『ゲートが開いて一斉にスタート! ミハルストライク前に出ます、今回も逃げの体勢だ! それに並んでヒノモトリーチ!』
──今回の弥生賞だが、逃げで行けばハナの競り合いになる。
レース前、釛誠はそう告げた。ハナの競り合いになれば、当然速度で劣る私は前を譲ることになるだろう、とも。
『ここで先頭は入れ替わりヒノモトリーチ! 2バ身リード!』
その言葉通り、私の前に栗毛の少女が立ちはだかる。
釛誠は追込で戦ってもいいんじゃないか、と言っていたが、中山の直線の短さを考えると追いつけなかった時が怖い。
それに、すれ違った私にはわかる。あれは明らかにオーバーペース。
『向正面に入ります。先頭は依然ヒノモトリーチ! すぐ後ろにはミハルストライクが控え、後続も差を詰めてきています』
若駒Sを大差で勝利したことで、私は盛大に目立ってしまった。
それはモミジが恐れていることでもあるが、裏を返せば他の競争相手に威圧を与えることもできるということ。
その圧は、ハナを奪って前に出なくてはという強迫観念に変わり、やがてスタミナを喰らうだろう。
焦った時点で、もはや私の土俵の上。
スタミナ勝負に持ち込んで……一気に逃げる!
『ミハルストライクがここで前に出ます! そして第3コーナーに突入!』
『スタミナにモノを言わせた大胆な戦法ですが果たして』
『後続も次々に仕掛けますが、まだ距離がある!』
第4コーナー、そして最終直線。
後ろを4バ身以上突き放し、一気にゴール版へ。
唯一競り合っていたヒノモトリーチもどうやら沈んで──
『ここでヒノモトリーチ仕掛けます!』
『翻弄されただけあって仕掛けるのは送れました、が…!』
『凄い末脚だ! 2バ身、1バ身と差を詰めていく!』
な──!?
いや、振り向くな……!
『ミハルストライクか! ヒノモトリーチか! 並んだ! かわすか!?』
流石にこれまでの相手とは違う。
立て直してきたどころか、短い急坂の直線でここまで詰めて来るなんて。
でも……こんなところで負ける訳にはいかない!
『いや……届かない! ミハルストライク、逃げ切ってゴォールッ!! 宣言通り、無敗で皐月賞へ駒を進めたぁーッ!』
掲示板に順位が表示される。クビ差の決着だったようだ。
あ、危なかった……!
これが重賞レース……!
なんとか勝ったが……次の皐月賞は距離、コースともに同じ条件。
そしてそこには、ヒノモトリーチを含めた強敵が集うことになるだろう。
1ヶ月後、私はそこで戦えるだろうか。
「あっぶねぇーっ! よく粘ったな、ミハル」
「はぁ…はぁ…はい…少なくともここで負ける訳にはいかないので…」
「そうだな。次はいよいよG1、皐月賞だ。厳しい戦いになるだろうな」
「あと…1ヶ月しかないんですよね。大丈夫でしょうか…」
「不安になる気持ちもわかる。だがお前は今回ちゃんと勝ったじゃないか。それに適度な挑戦は覚醒状態を引き起こし、成長に繋がる」
呼吸が落ち着くにつれ、不安も和らいできた。
釛誠の言う通り、強い相手に勝たなければモミジを振り向かせることもできないだろう。
「とりあえず、皐月賞までにもう少しスピードを出せるように調整する。間違っても無理はするなよ」
「それは、わかってます」
覚悟と不安が入り混じる皐月賞。
その舞台は、さらなる波乱が巻き起こることとなる。
プチ設定資料 ミハルストライク④
クラウチングスタートの習得により、中距離と逃げの適正が上がった(中距離B→A/逃げD→A)。
設定資料作ったんですが、どこかに置いた方がいいですか?
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後書きで一人づつ紹介してほしい
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1話の前に小説として挿入して欲しい
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最新話の後に小説として挿入してほしい
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活動報告で小出しにしてほしい
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いらない