「ぐっ!!」
戦いから既に1分が経過していた。
先程まで戦っていたデスローグとの戦いを含めても既に2分の時間が経過していた。
それはウルトラマンが地球上で戦える3分というタイムリミットの中でも特に危機的状況であった。
胸にあるカラータイマーからは既に残り時間が少ない事を示すように、青から赤へと代わり、点滅し始める。
それが分かっていながら、陸は目の前で戦っているムジナに対して、未だに攻撃を仕掛ける事ができず、手に持った武器で、その攻撃を受け流す事しかできなかった。
「あと1分っ、1分!!」
それは戦う相手であるムジナも分かっており、その目は大きく見開きながら、口を大きく開かせながら、見つめる。
怪獣の姿になっているからこそ、その口は大きく不気味であり、ゆっくりとそのタイムリミットを待つのか、それとも自身の制御できない欲望に従うように喰らうのか。
それが、今の彼女の中で思考が支配されており、その時を待っていた。
「ムジナっ、お願いだから、聞いてくれっ!
俺は、絶対にお前から離れないっだから」
「駄目だよ。
ウルトラマンと怪獣。
もぅ、それだけで離ればなれなのは決まっているような事っ!!
だから、絶対にっ」
そう言ったムジナの言葉と共に鋭い尻尾の一撃が陸の手に持つ武器を大きく吹き飛ばす。
「これでっ!!」
それと共に拘束しようと、そのままカラータイマーへと向けて、鋭い一撃が襲い掛かろうした。
「ここでっ負けてたまるか!!」
その一言と共に、陸の姿はムゲンクロッサーからブレイブチャレンジャーへと姿を変わり、その一撃を腹部で受け止める。
カラータイマーという急所を避け、ダメージを最小限へと留めると共に
「見様見真似だ!!」
その言葉と共に陸の身体は突然燃え始める。
「なっ」
その現象を見て、驚きを隠せないムジナは目を見開き、驚きを隠せなかった。
陸が行った手段、それはウルトラマンの中でも最も危険な技の一つである『ウルトラダイナマイト』である。
ウルトラマンタロウの代表的な技の一つとして、全身の炎を身に纏い、相手に突っ込み爆発させるという自爆技に近い技である。
陸の現在の姿であるブレイブチャレンジャーに使われているウルトラマンメビウスはそのウルトラダイナマイトを使用する事ができるが、それはあくまでもバーニングブレイブという形態だからこそできる事。
それをオーブ・ウルトラマン・ティガの3人のウルトラマンの力で無理矢理活性化させる事で、無理矢理再現した技である。
「そんなっ陸っ」
「はああぁぁ!!!」
その雄叫びと共に、陸は真っ直ぐとムジナの尻尾を引き寄せ、そのまま彼女を抱き締める。
「一人なんて、させないからな」
「っ」
陸のその一言と共にムジナの目の前は巨大な爆発が起きる。
爆風に巻き込まれ、周りの建物は溶ける中、爆心地の中心であるムジナは無傷だった。
EXレッドキングの性質もあり、炎には強い身体を得ている彼女にとって、無理矢理起こしたウルトラダイナマイトに大きなダメージを与える事はできなかった。
だが、それはあくまでも身体だけだった。
「りっく」
その言葉と共にムジナは目の前で起きた出来事を信じられないように周りを見る。
最後に行った自爆とも言える行動に驚き、そして一瞬だけ感じた彼の温かさ。
だが、それは爆発の中でなくなった。
それがムジナにとって、心に大きなダメージを与えていた。
「あっあっあっああぁぁ」
そうして、ようやく自身に何が起きたのか分かったムジナは悲しみの雄叫びをあげた。
怪獣がウルトラマンに勝利した。
その光景を見た人々はきっと絶望的だっただろう。
雄叫びをあげながら、ムジナの変身は解かれ、元の人間の姿になると共に周りを見る。
「りく、どこ」
そこから行った彼女の行動は溶かれた街の中を歩き始めた。
先程まで変身に使っていたジードライザーは地面に捨てられ、周りを探す。
ふらふらと、ゆっくりと姿を消した陸を探し求めていた。
「どこにいるの。
ねぇ、自爆なんて、嘘だよね。
あの技だって、タロウだって、メビウスだって。
ウルトラマンは再生したんだから。
陸だって、再生しているよね」
そう、かつて、陸と一緒に見たウルトラマンの内容を思い出しながら、まるで縋るように探す。
火傷しようと、傷つこうと、関係ないように。
「ムジナ、何をしているの?」
そう、彼女に話しかけたのは、彼女の怪獣同盟の仲間であるシズムだった。
「陸がいないの。
どこにも、さっきまでいたのに、どこにも」
「陸?
誰それ?」
「ウルトラマンジード。
さっきまで、ここにいて、まだ再生しないの」
「はぁ何を言っているの、ムジナ。
ウルトラマンは、ムジナが殺したんでしょ」
「殺した」
その一言を聞くと共にムジナはゆっくりと目を見開く。
「そんな訳ない。
陸は死んでない。陸は私を置いて行ったりしない。
だって、陸は何時までも一緒に、私と一緒に」
そう言い、ムジナは事実を信じられないように走って行った。
「ムジナ、変わったね。
けど、まぁ、思った以上にとんでもない力だったな」
そう言いながら、ムジナが落としたジードライザーを手にする。
「それでそっちはどうするの?」
「私からは何も」
そうシズムの声に合わせるように現れたのはダークネス・ファイブ最後の一人であるメフィラス星人 魔導のスライだった。
「ベリアル陛下の後継者という事で、死力を尽くしましたが、まさかあのような結末になるのは、非常に残念だ」
それだけ言い、スライは呆れたように呟く。
「それじゃ、どうするの?
このまま地球を去る?」
「そうですね。
それも良いかもしれませんが、あのウルトラマン擬き、それにダイナゼノンでしたか?
あれはその内、私達の行く手を阻むでしょ。
ならば、この世界で始末するのも一つの手」
「へぇ、それは僕もかい?」
そう、スライに尋ねるようにシズムは尋ねる。
「ふふっ、まさか。
私としては君のような考えも実に興味深い。
それにその目的が達成されたとしても、我々の邪魔にはならない。
ならば、それを見届けるのも余興」
そう言い、スライが手にしたのは一つの注射器だった。
「それは?」
「ベリアル陛下の細胞。
実験体の覚醒の為に施した奴とは違いますが、あなたのその身体ならばこの量でも問題ないはず」
「そうだね」
その言葉と共にシズムはそのまま手に持った注射器を自らの身体に刺す。
同時にその身体は光輝き、その手には新たな怪獣カプセルが出来上がる。
「これは予想外!!」
「そう、だったら、もう行くね。
これも今度試してみるよ」
それと共に、シズムはそのまま姿を消した。
「さて、あとはあの実験体のジードライザーを回収したい所ですが、果たして、どこに消えたのやら」
それと共にスライもまた姿を消した。