「ピクミン」の発見は世界中で報道された。言うまでもなく世界中の人はピクミンに注目した。学者達は自分達も研究してみたいと研究チームに協力要請を送ってきて、世間の一般人はピクミンの可愛さからSNSなどで話題になったりグッズが制作されるなどの熱狂が巻き起こった。
ピクミンが発見されたPNF-404では辺境の地とはいえ密猟者などが来る事が想定されたため、厳重な警備が布かれる事になった。
世界はピクミン一色となった。
ある大学の研究室で、教授達は皆集まって話し合いをしていた。助手や生徒だけでなく各界の有名な学者がこの部屋に集まっている。皆が集まっている前にはテーブルがあり、テーブルの上には一つの籠が置いてある。その籠の中にはPNF-404の環境が再現されており、ちょっとしたテラリウムのようになっている。その籠の中には世界中が注目を浴びている生物、ピクミンとタマネギのような物体が入っている。彼らはこの中で観察・飼育されているのだ。
中にいるピクミン達は皆のんびりと休んでおり、ある者は植物の葉の上や石の上で昼寝をしており、ある者は植物の茎などを使ってかくれんぼをしており、ある者は鬼ごっこをして遊んでいる。物凄く癒される光景が教授達の前で繰り広げられている。
「いやしかし、本当にゆったり寛いでいるな……」
「僕達を怖がっていない…… 天敵がいない環境だから敵と疑わずに寄って来るんでしょうか?」
「それは分からん。最初の調査はPNF-404のほんの一部分しか調査していない。もしかしたらピクミンの天敵が存在している可能性もある」
「しかし、ピクミンは何をエネルギー源にしているのでしょうか?」
教授と生徒が話をしている中、ある学者が疑問を口に出す。それはピクミンのエネルギー源。
「植物なら光合成や根から吸い取る栄養を元にエネルギーを得ている。だがこのピクミンは、葉は頭頂部に生えている一枚のみ。根に至っては根に相当する部分が足になっている。仮に一枚の葉の光合成でエネルギーを得ているとしても、一日中体を動かしたりする程のエネルギーを得られるとは思えない……」
「エネルギー効率がかなり高いのでしょうか?」
「どうだろうな…… これから調べてみないと分からん。だが……」
学者はそう言うとピクミンの方を見た。ピクミン達は皆楽しそうに遊んでいる。学者の視線に気づくとピクミンも学者の方を見つめている。邪心を一切持っていないような表情で。
「……?」
「こんな…… 無垢で純心な生物を調べようとするのが…… 少し抵抗感が……」
「「「「…… あぁ~…………」」」」
学者の言いたい事が分かった。悪意が無い生物を調べる事に少なくとも抵抗感を感じているのだ。さすがに解剖とかはもってのほか論外だ。
「非破壊的検査をしましょう。それで何とか……」
「そうですね。それでいきましょう」
「?」
一先ず今後の検査法は非破壊的検査方法を行う事にした。感情豊かな生物を傷つけるのは抵抗感をどうしても感じる。今後ピクミンに関する研究を行う上で、如何にピクミンを傷つけないかが重要な点になる。教授はそう思った。
後日、教授達は再びPNF-404に来ていた。今回は前回よりも調査についていく人数が大幅に増員されており、4班に分かれて行動する事になった・今回は調査用にドローンが用意された。
「これが今回の探査に使用するドローンですか?」
「そうだ。今回は4台使用する」
教授は今回使用されるドローンを生徒達に紹介する。どれもメカニカルな外見をしていて、高級感が漂っている。
「左からドルフィン号初号機*1、ドルフィン号*2、ドルフィン2号機*3、ドレイク号*4だ。どれも値段が高いぞ」
「どれくらいの値段なんですか?」
「一機150万円だ」
「……高いですね」
「壊したら弁償ものだぞ? 何せエンジニアのプロであるアルフ*5氏が手掛けた逸品だ」
値段の高さを知った生徒達は少なからずとも驚き、皆ドローンをじっと見つめる。絶対に壊さないようにしようと心の中で決めた。
「ついでに、今回の調査でドローンは上空から地形の把握や飛行生物の捜索をするのが目的だ。取り扱う事はあまりないから安心してくれ」
それを聞いた生徒達は心の中で溜まった不安を吐き出した。それと同時にもっと早く言って欲しかったと心の中で呟いた。
「よし、それじゃあ探検を始めるぞ。ドローンを飛ばして地形を把握しながら進んでくれ」
こうして2度目の探検が始まった。今回は前回よりも人数が多く、探索範囲も広いため何かしら発見があるのではと調査隊の皆期待を寄せていた。
「ピクミン!」
「黄色いピクミン!? 耳がある…… 新種のピクミンだ!」
「ピクミン!」
「青色で、水中でも活動出来るピクミンだ! 口が付いているのか?」
「ピクミン!」
「岩のように固いピクミンだ。結晶を壊せる程の硬さとは……」
「ピクミン!」
「羽が付いていて空を飛べる!? 凄いピクミンだ!」
「これは…… 花でしょうか?」
「赤や黄色に青…… 変わった形の花だ」
黄色いピクミンを発見した班は地面から生えた奇妙な花を見つけた。赤色・青色・黄色・灰色・桃色・紫色・白色、計7色の花が生えている。
「や!」
「え!? 黄色いピクミンが赤い花に入っていったぞ!?」
此処に来る前に遭遇した黄ピクミンの内の何匹かが入っていった。ポンッ という気持ち良い音が発して黄ピクミンは花の雌蕊と思しき部分に消えていった。
すると、花弁が一瞬で閉じて、それと同時に赤い種子が地面に落ちていった。さらに種子を出した花は急激な速度で枯れていった。
「え!? これは…… ピクミンの!?」
地面に落ちた種子は直ぐに芽を出した。葉がユラユラと動き、まるで自分を引っこ抜いてと言うかのようだ。黄ピクミンは芽を指差している。試しに抜いてみると、予想通りピクミンだった。色は赤色。
「この花の色と同じ…… 花にピクミンを入れると、花の色のピクミンが出てくるのか?」
赤は勿論、黄・青・灰・桃は先程の通信で別の班が遭遇したピクミンが出てくるだろう。だが、此処には紫色と白色の花もある。もしやこの花にピクミンを入れると……
「もしかして……」
すると、その考えを汲み取ったのか数匹の黄ピクミンが紫色と白色の花に入っていった。先程と同様にポンという音と共に紫色の種子と白色の種子が放出され、花は直ぐに枯れてしまった。種子は地面に落ちると葉を出してユラユラと動いている。
「……引き抜いてみよう」
調査班はゆっくりと引き抜く。すると、
「ピクミン!」
「ピクミン!」
紫色で大柄な体格のピクミン、赤い大きな目を持つ白いピクミンが姿を現した。
「これも…… ピクミンだ……!」
此処で、また新たなピクミンが発見された。
別の場所の調査隊では、ドローンで奇妙な生物を発見していた。カタツムリみたいに突き出た目と背中が赤地でそこに白い斑点を持つ生物が複数確認された、体長10cm程の生物。小型ロボットを使って近づくことにした。そのロボットは高さ20cm程度の小型ロボットで、背中にはドローンの羽根が付き、四足で歩き腕で物を掴むことが出来るロボットだ。
「これが調査に使うロボットですね。以前の探索でも持ち運んだんですけど使わずじまいでした」
「そうだ、その名も『スパロウ*6』だ。これを使ってあの生物が危険かどうか調べる」
「ピクミンと初めて会った時はいきなり出会いましたから使う選択肢が思い浮かばなかったんですよ。もし危険な生物だったら何されてたか……」
「まぁピクミンの時は何事も無かったが、万が一のこともある。毒を持っていたら大変だ。だから未知の生物を見つけたらこれを使う。よし、行け!」
調査隊の内の一人がスパロウを起動させて奇妙な生物の場所に向かった。
奇妙な生物達は大きさが大1匹・小2匹の個体が3組、合計9匹いる。大きい個体は鼻提灯を出してぐっすり眠っており、小さい個体は辺りをうろついている。恐らく親子なのだろうかと調査隊のメンバーは予想している。
小型の個体2匹がスパロウに気付いた。すると、スパロウの方に向かって来ている。スパロウの足をガジガジと噛み始めた。生物の牙はあまり大きくないためスパロウには大したダメージは負っていない。その様子に気付いた別の小型の個体4匹も近付いて来て噛み始めた。
「足を噛んでいる。大柄の相手に立ち向かう辺り凶暴なのでしょうか」
「かもしれんな。小さいが鋭い牙を持っているしな」
しばらくすると小型の個体はスパロウの足を噛むのを止めた。相手に敵わないと考えたのだろうか。すると小型の個体は上を向いて大きな声を出した。何事だと調査隊のメンバーは思ったが、声が響いた瞬間大型の個体3匹が一斉に起きたのだ。大型の個体3匹は全員スパロウの足を噛みついた。小型の個体より噛む力は強い。しかし、スパロウの足はこれしきの事ではダメージを負わない。
「大きいだけあって噛む力は強いが、スパロウはこれくらいの事では傷付かない。だが長引くのは良くないな…… そうだ!」
「? どうしたんですか?」
「これをやってみよう」
スパロウを操作する調査隊のメンバーが、腕を動かすレバーに指をかけた。
スパロウの腕が動き始めた。大型の個体は何事かと思い少し離れる。すると腕は円を描くようにグルグルと回り始めた。大型の個体も小型の個体も追いかけるように視線をグルグルと回り始める。すると、目を回してしまい皆ぐったりと倒れてしまった。*7しばらく起きそうにない。
「やったぜ! これがスパロウの力だ!」
「なんじゃそりゃ……」
それって力と言うのか……? 調査隊のメンバーはそう思った。そしてその生物を捕獲する事になった。
そして、進めていく内に様々な未知の生物が発見され、調査隊はその度に驚きと好奇心を表情として表すようになった。
「口から火を吐くぞ!? どんな生物なんだ!?*8」
「こっちは岩を吐くぞ! どうなってんだ!?*9」
「綺麗なトゲトゲの徳利がふわふわ浮いてる。美しいわ~*10」
「蛆みたいな虫…… か? 大きな顎を持つ紫色の奴と可愛い桃色の奴がいるな*11」
「巻きパン? いや、生物だ!*12」
「地面から蛇が出て来た! いや、こいつは烏? 何なんだ?*13」
「ぎいやああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ! 蜘蛛ぉぉぉぉぉぉ! …… てあれ? 四本足だわ? 蜘蛛じゃないのかしら?*14」
「クラゲが空を飛んでる! 何なの、この生き物!?*15」
「ナメクジ? ウミウシ? 光に反応する奇妙な生物だ!*16」
「何かを背負う蜘蛛か…… ん、四本足だから蜘蛛じゃないのか?*17」
「炎を纏ったナメクジか!? でも燃えてるからちょっとかっこいいかも*18」
「電気を出すネズミだ! スパロウを使ってなかったら痺れてたな……*19」
「水晶の鋏のカニ!? 凄いな……*20」
「水弾を吐くアメンボか? まるでテッポウウオみたいだ*21」
「アヒル…… いや、二本足の…… いや、アヒルか?*22」
「虫のようなスズメのような…… 虫なのかな?*23」
「ウサギみたいにぴょんぴょん跳ぶ虫か…… かわいいかも!*24」
「巨大なトンボだ! まるで古代生物みたいだな!*25」
2回目の探索はPNF-404の各地で様々な未知の新種が発見された事で、学会は大騒ぎするだろうと多くの調査隊のメンバーは思った。
その予想は正に実現する事になった。
白ピクミンの台詞の文字色のカラーコードは「c0c0c0」です。