今日は晴れの日だ。植物にとっては光合成をするのに打ってつけの日だ。地面から生えている植物達は葉に光を当てて光合成をしている。光合成により作られた栄養が植物を活き活きとさせる。植物にとって天国のような天気だった。
それはピクミンにとっても同じだ。
籠の中にいるピクミン達は石の上にのんびりと座っている。葉はユラユラと動いており、皆眠っているかのように目は細い。もしかしたら皆眠ってしまったのだろうか。今は昼。昼寝する時間帯でもあるので有り得なくも無い。
「~……」
「~……」
「~……」
「~……」
「~……」
「~……」
「~……」
今まで見つかったピクミンが皆直線状に並んで座っている。そして、新種のピクミンも座っていた。
「キュ~……」
その姿はピクミンと言うよりチャッピ―であった。チャッピ―の背中からピクミンの葉を生やしたような生物だ。
その生物は「コッパチャッピ―」。ヤドリピクミンに寄生されたチャッピ―、ハチャッピーの幼体。彼もピクミンとはとても親しく、何時もピクミンと一緒に遊んでいたりする事が多い。コッパチャッピーも眠たそうに眼を細めており、鼻からは鼻提灯を浮かべている。
「まるで兄弟みたいだ。仲が良いな……」
ピクミン達が眠る様子を見て教授は薄らと呟いた。ピクミンとはもう何年も過ごしている。研究のために飼育しているのだが、最早家族みたいな存在となった。
そんな様子を学生が見ている。今は暇な時間なのでピクミンをじっくりと見ている。
「此処にいるピクミン達と過ごして何年経ったか…… 何だか僕達の研究グループの一員というか、マスコットみたいな存在になりましたね」
「確かに、うちの大学のマスコットみたいな扱いになってる」
「今でも人気の生物ですからね。メディアにも引っ張りだこ。そこらのアイドルよりも人気です」
「グッズも大人気、ゲームもテレビも人気、ここまで人気が続くのも珍しいと思う」
「僕もグッズを買ったんですよね、可愛くて……」
学生はこっそり持っている小さなピクミンの人形を見せた。可愛らしくデフォルメされたピクミンのぬいぐるみ。フェルトで構成された、鞄に入るくらいの、手ごろな大きさのぬいぐるみ。
「……中々可愛らしい出来だな」
「ですよね。良いですよね、これ」
「ピクミン達も気に入りそうだな」
ピクミン達は人間的な感情を持っている事からぬいぐるみを与えても喜ぶだろう。試しに後でぬいぐるみを与えてみよう、と教授は考えた。ふとテレビを付けてみると、そこには料理の番組が写っていた。
『では、今日のお料理はシャコモドキの天麩羅とデメジャコの網焼きです!』
料理番組ではPNF-404で発見された生物、シャコモドキとデメジャコの料理だ。PNF-404における新種の発見は食糧問題も解決できるのでは、と注目されている。さすがにピクミンは食べないが。
『この調理方法は食のスペシャリストであり権威であるルーイ*1氏が確立しました!シャコモドキやデメジャコだけではなく、様々な生物の調理方法を見つけた彼は現在食糧問題解決の糸口としてPNF-404の……』
「あ、美味しいんですよね、シャコモドキとデメジャコって。僕はウオノコの刺身*2や大地のエキス*3が好きで……」
「スーパーでも売られるようになったよな……」
「すっかり身近な食材になったな。レストランや酒場でも出される人気食材ですよ。赤いピキノツユクサは新しい辛味調味料として人気ですし(対して紫のピキノツユクサは石化作用があるから取り扱いが完全に禁止されてるんだよね……)」
「食の革新だけでなく、技術面でも大きな革新があった」
教授が別のチャンネルに切り替える。すると、今度はドローンが荷物を運んでいる様子が映し出されている。ドローンの下部の機械から新鮮な食材を下ろしている。
『ホコタテ運送の新しい運送方法です! ご覧ください! 食品は新鮮な状態を保っています! これなら収穫した食材を新鮮なまま遠隔地に配送する事が出来ます!』
「これも実用化されるな……」
それはホコタテ運送の運送技術である。コガネモチやツリタラシの構造を参考にして確立された運送方法である。これによりホコタテ運送の事業は日本だけでなく世界中に広まった。
『日本とアメリカで本格的に導入され、その後他国でも段階的に実施される予定となっております。日本だけでなくアメリカでも好評で、ホコタテ運送アメリカ支部長のオリマー*4氏のコメントは……』
教授は別のチャンネルに切り替えた。すると、今度は宇宙旅行に関する事が報道されている。
『今、宇宙ステーションではスペースデブリの回収が進んでおります。キャプテン・チャーリー*5氏の的確な指示でデブリが着々と集まっています。コマンマンやオオマンマンを参考に造りだされたデブリ回収機はどんどんデブリを吸収していき……』
「……スペースデブリも随分減ったみたいだな」
「ここ数年で激減してるんですよね。何だか凄いですよね」
学生の言う通り此処数年で生活が激変した。ある経済学者は「新時代」と呼ぶ位には大きく変化している。PNF-404がその切っ掛けである事は言うまでもない。
すると、助手が部屋に入ってきた。何枚かのA4容姿を持っている。
「あ、教授。いましたか」
「ん、どうした?」
「やはり駄目ですね。先日発見されたアメボウズはあらゆるセンサー等に反応しません。そもそも体が水飴状である理由もまだ……」
「そうか……」
「紫ピクミンの衝撃でなければ実体化出来ない理由もまだ分からないです」
「アメボウズは紫ピクミンの衝撃を恐れてるのか?」
二人が話してる内容は、PNF-404で見つかった生物、アメボウズの事を話している。石のローラーに跨った水飴状の人型生物。それだけでもかなり異質な生物(そもそも生物なのかすら不明。便宜上生物として扱われている)だが、センサーの類に反応しないのだ。発見当初は集団幻覚では? と疑われた。
「ある学者は、存在が別の次元に固定されているが紫ピクミンの衝撃により此の次元に固定される、という説を提唱しています」
「異次元まで飛躍するとは……」
「そういえばアメニュウドウとかも謎なんですよね! 仲間なのかもしれません!」
助手のテンションが高くなった。未知の物を目にすると興奮してしまうのが学者の性なのだろうか。このテンションは何年経っても変わらない。
「ピクミンの繁殖も行われてるが…… まさかペレット草が使われるとは思わなかった」
「ていうかよくあんなものを作れましたね」
「ペレット草? あれですか?」
助手は手持ちの用紙を取り出した。その用紙の写真には長く伸びた茎・花の雌蕊がある部分に「1」や「5・「10」・「20」と書かれている円柱形の物体が実っている。まるで作り物のような、だが確かに存在する植物だ。
「ピクミンの数を正確に産むために大地のエキスの利用と遺伝子改造により作られた植物、ペレット草*6。よくアラビア数字を表すように出来ましたね」
「遺伝子工学の発展のおかげだ。PNF-404の生物の遺伝子のおかげでもあるが」
「技術の発展を感じますよ。その技術で作ったヒカリエノキ*7も観賞用として人気ですし」
教授は人類の技術の発展を感じた。遺伝子と言う極小の世界を操る事が出来る程技術が上がった。10年や100年経てばどれ程上がるのだろうか。漫画やアニメでしか有り得ないような技術も確立されるのだろうか。
「PNF-404での調査はまだ続いている。あそこはもはや金鉱脈や油田よりも価値のある場所だ。これからも新たな発見があるだろう」
「最近は地域名も付いたんですよね? 樹海のヘソ*8とかねむりの谷*9とか交わりの渓流*10とか…… あと緑の水辺*11とかもありますね!」
「地域名のネーミングセンスもなかなか良いな」
「調査隊の皆が付けましたからね。本当に良い名前ですよ。まるでゲームのステージ名みたいです!」
学生の言う通りPNF-404に地域名が付いた。当初は調査隊がいる場所を簡潔に表現するために命名したのだが、それが何時の間にか定着したのだ。今では正式名となって使われている。
「あ、教授。そろそろ時間です」
「学会の時間か」
教授は学会に行く準備をし始めた。鞄には学会で使用する書類などを入れる。今日の学会はやや遠いためしばらくは帰って来れないだろう。
「駅の売店に行けばピクミンの商品を買える時代になりましたね。メーカーオリジナル商品としてトノサマチャッピ―とかショウグンチャッピ―*12なんて粋なぬいぐるみもありますし」
「ご当地ピクミンとかもありますからね! 帰りに買ってみましょうよ!」
「財布に余裕があったらな。それじゃあピクミンの世話を頼む」
「分かりました」
こうして教授は学会に向かうべく外出しようとした。部屋を出る前にふとピクミンが入っている籠を見る。ピクミン達は自分が外出する事を察したらしく、皆目を開けてこちらを見ている。自分もピクミンの方を見る。
「あ、もしかしてあれをやりたいのか?」
「ウン!」
教授は最近よくやってる“あれ”をやることにした。ピクミン達は知能が高いため人の仕草を真似する事が多い。この籠の中で暮らすピクミン達もすっかり人とあまり変わらない動作を行うようになり、それと同時に感情表現も積極的に行う。
ピクミンのやりたい事を察して教授は外出する時によくやる“あれ”をやる事にした。
「行ってくるよ!」
「「「「「「「「ピックミ~~ン!」」」」」」」」
今日もピクミン達が帰りを待っている。
次回は後書きです。