俺が廃ビルの中に入りしばらく進んでいくと、ホールのような場所に辿り着く。
そこには血を流して倒れている者や気を失って動かない物影などがおり、それらを処理するサングラスをかけた黒服達がいた。
すると黒服の一人が俺がいるのに気づき、こちらへ駆けてくると頭を下げた。
「太陽様、報告します。今回討伐した転生者は全部で八名。アイテム系の特典は全て回収しアジトへ輸送中です」
「結構多いな。早めに片付けろよ」
「了解しました」
そう言って黒服は作業に戻っていった。
彼らは俺がこの世界で生き抜く為につくった組織の傭兵部隊であり、力で言えばある程度の転生者と渡り合える程の実力がある。つくった本人である俺もそれは認めていた。
そんな事を考えていると、ホールにザシュッという斬られた音と苦悶の声が上がった。
何と死んだと思われていた転生者の一人が立ち上がり、近くにいた黒服に襲いかかったのである。
「グハッ!? な、何で生きて……」
「へッ。『赤龍帝の籠手』がリーダーだったのか。死んだフリして待っていたのは正解だったぜ。お前等全員殺してやるよ」
黒服に刺さった刀を無造作に引き抜くと、こちらを向いてそう言い放った。どうやら死んでいなかった転生者は、こちらの状況を探ってたらしい。
ホール内に緊張が走る。
「……すぐに対処を」
「いい。お前らは下がってろ」
対処しようと動いた配下の黒服達を下がらせると、俺は転生者の前に立つ。
ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!
そして不意打ちで銃を放った。クズのような所業で黒服達も「ええぇ……」と反応していたが、すぐに顔を強張らせる。転生者が撃たれたにも関わらず倒れる様子を見せなかったからだ。
よくよく見れば先程打ち出した弾が傷穴から出てきて、肉がそのまま塞がってしまう。転生者はニヤリと笑った。
「へへへ、効かねえよそんなちゃっちい弾」
「回復系ではなく再生か…中々レアな力を引き当てたな。死んだフリできたのもソレのおかげか」
「自己再生しか出来ないがな。だが銃を使うなんてお前雑魚だろ? どうやら二次創作に出てくる屑赤龍帝みたいにまともな鍛え方はしてないって訳だ。これなら俺でも余裕で殺せるぜっ!」
転生者はそう言って、俺に斬りかかる。
「死ねええええッ!!!!」
ーー俺はそんな転生者に思いっきりボディブローをかましてやった。
「ーーゴハァァアアッ!」
「誰が銃に頼ってる雑魚だって? 残念、見込みが甘いぞ」
転生者は吹き飛ばされ、ビルの壁に激突して身体をめり込ませる。再生の力で傷は無さそうだが、苦悶の表情が見えた為痛覚はあるようだった。
「こ、この…ッ! やっぱり格闘術使うんじゃねえか。なら銃なんて使ってんじゃねえよ!」
「何でだよ。人を殺すのにはこれが一番確実じゃねえか」
ツッコミを入れながら使わない銃をしまう。
そもそも俺はバトルがしたいんじゃなくて、邪魔者を殺したいだけだ。故に戦闘では基本銃でやるが強い相手には拳で戦っている。ここは剣で銃弾を斬るなんて芸当が当たり前の世界だからな。
すると転生者は壁の瓦礫を払いながら、改めて刀を構える。
「今度は油断しねえ。真っ向から斬ってやるよ!」
「おう、こいやこいや」
俺のふざけた様子に怒りを見せながら剣を振りかぶり向かってきた。俺はそれを余裕で避ける。
その後も転生者は刀で襲いかかってきたが俺には傷一つ与えられない。
「何でだよっ! 何で当たらねえんだ!」
「そんな剣術じゃ届かねえよ。とはいえ流石に籠手で武器持ちは面倒だな…なっ!」
「ゴハッ!!」
一度体勢を立て直す為、がら空きの腹にパンチを入れ後方に下がる。そんな時俺の足元に剣が転がっていた。おそらく黒服達が対処した転生者が使っていたものだろう。特典ではなかった為回収はしていなかったようだ。
「ラッキー。ちょっと借りるか」
足を器用に使い、落ちた剣を空中に蹴るとそのまま手でつかんだ。
「拳の次はチャンバラだ。うまく対応できるかなっ!」
『Boost!』『Transfer!』
倍化した力を剣に譲渡すると俺は一気に踏み込み転生者に斬りかかる。
「て、テメェ剣まで使えんのかよ! どんなチート使ってんだ!!」
「チートじゃねえよ。普通に鍛錬して普通に使いこなしてるだけだ。俺の籠手はどの戦闘でも相性がいいからなっ!!」
『赤龍帝の籠手』は持ち主の力を倍化させ、対象に譲渡も可能な神器だ。それを活かせばどんな戦闘でも使用できるので戦術の手札を増やす事は必然だった。
それに、この籠手を宿しているだけで転生者は勿論、原作の三大勢力も襲いかかってくる。事実これまでに何度も修羅場を経験した。そんな状況を数十年送ってれば、戦闘技術は嫌でも身につく。
「お前は神から貰った力に頼りすぎて戦闘技術が身に付かなかったんだな。ご愁傷様」
「こんな、ことがっ、あってたまるかっ…!」
「お前に喋ってる余裕があんのかよ? それを見逃すほど馬鹿じゃねえぜ!」
俺は最後、力一杯に横薙ぎに一閃。
バキィインッ!! と甲高い音を響かせ、転生者の刀を破壊した。
「なっ!? 俺の刀がっ!」
転生者は驚いているが、武器が壊れたのは当然だろう。
俺は戦闘中に継続していた倍化を剣撃の中で行い追加で剣に譲渡していた。故に剣の強度や威力も増したため、転生者の得物は保たなかったのだ。
そんな丸腰になって隙ができた転生者の両脚を、俺は問答無用で切断した。
「ぎゃあああああッ!!」
「これでも生きてるのかよ。まあ逃げられないようにするのと、再生する時間を稼ぐだけが目的なんだけどな」
「…ざ、けんな…ッ! 俺は、こんな所で、死ぬ訳には……」
転生者はそう叫ぼうとこちらを向くが言葉を失い絶句する。俺が手元に魔法陣を展開し、転生者に向けていたからだ。
「さて、お前の再生は炭化した細胞でも可能なのか。俺の炎魔術で試してみようじゃないか」
「ま、待てっ! そうだ、俺はもうヒロイン達に手を出さないっ! あんたの好きにしていいから殺すのだけはーー」
『Transfer!』
「死ね」
転生者の命乞いに耳を傾ける事なく、俺は力を魔法陣に譲渡して豪炎を放った。
「ぎゃぁあああああーーーッ!!!」
燃え上がる灼熱に包まれ、転生者は絶叫をあげた。
しばらくその断末魔が続いたが、次第に聞こえなくなり燃え尽きた時には転生者は黒焦げになった姿で、再生するようには見えなかった。
「命乞いをするくらいなら、はじめから企むなっての。馬鹿な奴だ……」
俺は動かない事を確認すると籠手をしまい、黒焦げになった死体に背を向ける。しかしこの時、転生者は再生こそできなかったが、微かに意識を保っていた。
「(クソ……が…せめて、道連れ……に)」
転生者は最後の力で、無防備な背中に一撃を喰らわれようとした。
しかし、それは叶わずに終わる。
「ーー風刃よ」
転生者が俺に斬りかかろうとした刹那、突如上空から風の刃が落ち黒焦げになった転生者を切り刻んだ。
「う……そ…だ………」
最後にそんな声が聞こえたが、転生者は煤のように粉々になり、今度こそ死んだ。
「全く、油断するでないわい」
天井から老人くさいセリフが聞こえる。
上を見上げれば、ホール内を剥き出しになっていた鉄骨に先程の口調とは裏腹の幼女が座っていた。
姿は小学校高学年くらいで上等そうな和服を着込んでいる。そのアンバランスは明らかに異質な雰囲気を纏っていた。
「気づいてたに決まってるだろう。でもお前が助けてくれるって分かってたからそのままにしたんだ。信頼だよ信頼」
「たわけ。何故儂がそこまでしなければならん。今回は単なる気まぐれじゃ。ありがたく思え」
そういうと、まるで一輪の花びらが舞い散るようにゆっくりと地上へ降りてくる。
彼女の名は
俺の仲間……というより、契約者と言った方が適しているだろうか。
とある諸事情で追われている身らしく、数年前に二天龍の力を見込まれ、俺の組織で匿うことになった妖術師だ。
性格は先の言動でもわかるように刺々しく、数年前に彼女と初めて対峙した時はとても好戦的で殺す気で襲いかかってきた時もある。現在は落ち着いているが、怒らせれば妖術で何箇所ものクレーターを残す事になるだろう。
因みに幼く見えるが年は300を超えている。ロリババアを現実で見れるのは物語の世界ならではだろう。
「……お主今、余計な事を考えただろう」
「いやいやまさか。今日も可愛くて魅力的だと思っただけだ」
「戯け、このロリコンが」
蓮姫はぷいっと顔を逸らした。こういった仕草は子供らしく好感が持てるのだが、デレをあまり見せないので少し寂しい気持ちもある。
因みに契約者というのは、匿う代わりに俺と性的な関係を結ぶようにしているからだ。弱みに漬け込むようで最低と思うかもしれないが、転生者なんてそんなものだろうと俺は既に割り切っている。
そんな訳で、俺は蓮姫に近づくと頭に手を置き撫でた。
「まあ、助けてくれたのはありがとうな。お礼に今日の夜はお前と過ごそうじゃないか」
「焼き殺すぞ。ふざけた事を抜かしている暇があるなら後処理を済ませろ」
「へいへい、連れないね〜。おいお前ら、後は頼んだぞ」
『わかりました』
俺の指示に、黒服達は後処理を再開させた。それを呑気に眺めていると蓮姫がこちらを見ているのに気づく。
「どうした蓮姫?」
「……ここの所、お主は戦う事が多いな。それも《テンセイシャ》と名乗るやつばかりじゃ。一体奴らは何者なのかえ?」
「前にも言っただろう。俺と同類で特殊な力を持った野蛮な奴らだよ。簡単に言えば俺と同じ女を狙ってる敵だな」
「……お主、儂を目の前にしてよくそんな事が言えるな。まあ既にお主に手を出されてる者は多いが……」
「何だ、嫉妬でもしてるのか?」
「……………うるさいわい」
蓮姫は不貞腐れるような顔をする。
予想外の仕草に俺はポカンとしていると、蓮姫は頭に置いていた手をとり引っ張った。
「ほら、さっさと行くぞ」
「え、何処へだ?」
「何を言っておる……今日の夜は儂とまぐわうのだろう? さっさとしないと夜が明けるではないか」
「……こりゃまたゴリゴリのツンデレ発言を」
素直じゃないロリババアに苦笑しながら、俺はその場を黒服達に任せ、帰路に着くのであった。
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