後2、3話で次の章いけるかな?
現在、私の目の前には今日転校してきた鳴上誠也くんと一般人になりすましていた堕天使の天野優麻さんーーもといレイナーレがいる。一触即発の展開に空気が重くなっていた。
だが私はぬか喜びさせられた事に対して不満が溜まり、心の中でため息を吐いていた。本当に私の期待を返して欲しい。
それにしても鳴上くんはここまで追いかけて来たのだろうか。だとしたら非常にまずい。ただでさえ堕天使に襲われるという予想外の事態に混乱していたのに転生者が関わってくるとなると私一人で対処できるはずもなかった。
そんな私の心情を知らず、二人は会話を始めていた。
「いきなり出てきて誰かと思えば……あなた、どうやって結界内に入ってきたの?」
「さあ? どうだろうな。だが、ただの高校生じゃねえことは見れば分かるだろ?」
鳴上くんは腰に携えた日本刀に手をおく。見るからに本物の得物を持っている事から一般人というのは間違っているだろう。レイナーレもそれに気づいたのか目を鋭くして睨みつけた。
「それで、私になんのようかしら?」
「そんなのわかりきってるだろう堕天使レイナーレ。お前の悪行を止めに来たんだ。彼女には指一本触れさせねえぜ!」
「あはははっ! 随分威勢のいいことね! 不安要素には変わりないし、あんたにはここで死んでもらうわ!」
そう言うとレイナーレは光の槍を私達に向けて投擲した。いきなりの戦闘に私は考え事を中断して身構えるが、鳴上くんは私の前に立つと抜刀の体勢になる。
「雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷!」
鳴上くんは抜刀した刀を下から上に斬り上げ、雷のような衝撃波を飛ばした。それは光の槍と衝突して弾き飛ばしてしまう。
「なっ、私の槍をただの刀で!? あなた、その剣技はいったいなんなの!」
「教えるかよそんなもの! 雷の呼吸 弍ノ型 稲魂!」
鳴上くんはレイナーレの言葉を無視してまたもや刀を振る。半月を描くように振われた斬撃が怒涛の五連撃で放たれ、レイナーレは光の槍を2本作り出し対応しようとするが、あまりの速さに対処が遅れ二撃ほど喰らってしまう。
「ぐはっ! ただの人間如きが私に傷を負わせるなんて……」
「どうだ? 降参するなら今のうちだぞ?」
「誰がするものか! クソッ、なら神器を持つあの子だけでも!!」
そう言うとレイナーレは槍を持って私に向かってきた。どうやら強行手段で私を攫うことに切り替えたようだ。
「(大丈夫。あれくらいの速さなら避けられーー)」
「させるか! 雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃!」
「きゃっ!!」
「くはぁっ! わ、私の腕がぁああっ!!」
私が避けようとした瞬間、鳴上くんは電光石火の勢いで私の前に立ちレイナーレの片腕を斬り払った。片手で傷口を押さえながら上空で苦痛の声を上げている。
「くっ、ちょっと斬れたか……」
鳴上くんは先程の衝突で光の槍に当たっていたのか腕の部分から血を流していた。
「怪我はないか?」
「う、うん。それよりも怪我して……」
「平気だってのっ! 君を守るためなら痛くもなんともねえって!」
「(いや、さっきのは私でも避けられたんだけどな〜。怪我するくらいなら助けに来なくても良かったのに)」
「さて、おいレイナーレ。これ以上続けるってなら次は頭を落としてやるぜ? それが嫌なら諦めて撤退するんだな」
「くうっ! 覚えておきなさい! またすぐにその女の神器を奪いに来てやるわ!」
レイナーレはそう叫びながら翼をはためかせ、飛び去っていった。鳴上くんはそれを見た後、持っていた刀を納刀すると此方に顔を向けた。
「もう大丈夫だぜ。堕天使は俺が追い払ったからよ」
「……あ、うん。ありがとう」
私はぎこちなくだけど感謝の言葉を向ける。正直関わりたくない相手に助けてもらったのでこの後どうすればいいか私は悩んでいた。
「そういえば桐生のやつはどうしたんだ? ……あ、そうか。もしかして俺と二人きりになるのが恥ずかしくて用事があるって嘘ついてたのか。成る程成る程、それは仕方ない」
「(なんか自己解決させてる……あ、そうだ! 彼の話に合わせるようにしてこの場をやり過ごそう!)」
そう私は決断すると、一応違和感がないように接することにした。
「そういえばさっき怪我したよね。ちょっと見せて」
「お、おいおい。いきなりなんだ…て、おおっ?」
鳴上くんは驚いたような声を上げる。淡い光が私の両手から現れ、鳴上くんを包んだからだ。
私は神器『聖母の微笑』という力を宿していて、対象を治癒する事ができる。流石に欠損部位を元に戻すことはできないけど、回復速度や練度に関しては申し分ないと太陽くんに褒められていた。
そのためモノの数秒で鳴上くんの傷は消え、癒せる事ができた。鳴上くんは傷がなくなった箇所をまじまじと見つめる。
「これって『聖母の微笑』か? 成る程、転生神もそこはこの世界に合わせるっつう訳だ」
「それってどういう……」
「おっと、悪い悪い。こっちの話だ。さて、色々と混乱してると思うから改めて自己紹介するぜ」
鳴上くんはそう言うと、何故かキメ顔でこちらを見てきた。
「俺は転生者、鳴上誠也だ。でも俺はただの転生者じゃなくて、特殊なチーム。転生者討伐隊に所属してんだよ」
「はあ……(転生者は分かるけど……討伐隊って何のこと?)」
「転生者討伐隊……転生者の中には特典を悪用してこの世界に被害を与えようとしているんだ。俺はその神から悪行を企てる転生者を討伐するように言われてる。勿論、さっきみたいな普通の悪い奴だって倒すぜ」
「(あ、教えてくれるんだ。解説ありがとう。そっか、そんな人がいるのか……)」
太陽くんからは聞いた事がないので、恐らく彼も知らない事なのだろう。後で教えてあげる必要がある。その為にも他に情報はないか聞き出すことにした。
「えっと、その転生者討伐隊って鳴上くん以外にいるの?」
「ああ、一応この街にいるのは俺も合わせて三人だな。基本はグループで行動するんだけど今は別行動だぜ」
「そのグループで鳴上くんはどれくらい強いの?」
「お、それ聞いちゃう香織ちゃん? 俺はリーダーに並ぶくらいすっげえ実力を持ってるぜ!」
「へえ、そうなんだ(なんでそこで偉そうになるんだろう? というか、いつの間にか名前呼びになってるし)」
ふざけた態度に私は少し面倒になりながらも、少なくとも先程の戦闘で鳴上くんの実力は太陽くんには及ばなそうだったので一安心した。
並ぶと見栄を張っているせいでリーダーの人の実力は分からないが、それなりに聞き出せたのでここで切り上げることにした。
「とにかくありがとうね。鳴上くん、お陰で助かったよ」
「お礼なんていいって。それよりもここは危険だ。一刻も早くここから離れた方がいい」
「うん、私は今日は帰るね。じゃあまた明日……」
「待ってくれ! 一人で帰らすわけないだろう。いや、むしろ家に戻った所で奴らに狙われるだけだ。俺と一緒にいた方がいい。君は俺が守ってみせるさ!」
「あ、ちょっと!!」
鳴上くんは私の手を引くと強引に引っ張り、私を連れていくのだった。振り解こうにも頑丈で離れない。
「(これじゃあ帰れないから太陽君とエッチできない!? そんなぁああっ!!)」
私は悲惨な現状を心の中で叫んだ。
◇◇◇
太陽side
「香織がレイナーレに襲われた?」
「は、はいっ! その際、転生者討伐隊を名乗る者に匿われ消息不明です!」
「マジかよ。せっかく堕天使達を倒したってのに、これじゃあ無駄になっちまったな」
部下の焦った報告に、俺は頭を抱える。
現在俺は駒王町の外れにある古びた教会に足を運んでいた。理由としては報告にあった香織を狙う堕天使達を始末する為である。
そしてその堕天使。ミッテルト、カラワーナ、ドーナシークは重傷の傷を負いながら地面に倒れていた。それぞれが呻き声を上げている。
「くそ、何という力だ……ッ!」
「う、ごけない……おのれ、赤龍帝め…ッ!」
「痛いよぅ…」
この通り堕天使達の始末は完了し、後はレイナーレを片付けるだけだったのだが転生者が絡んできて話がややこしくなってしまったのである。
「どうするのじゃ太陽。このままでは香織の身に何が起こるか分からんぞ」
堕天使の始末に着いてきた蓮姫が俺に問いかけてくる。それに対して抱えていた頭を振ると俺は座っていた瓦礫から立ち上がった。
「香織を迎えにいくぞ。黒服、お前達はこいつらの処理でもしとけ」
「「「「はっ!」」」」
「太陽、お主……もしや怒っているのか?」
「まあな。気づかない内にイライラが溜まってたのかもしれないな」
無理もないと思う。ここ最近の転生者達は原作が始まるからと無闇に活動を激しくさせ俺が始末する羽目になるし、そんな邪魔者を排除したのにアーシアは消息を断ち、さらには香織が転生者に連れ去られようとしているのだ。
既に終わった事件。
一度自己解決した事。
新たに出てきた問題。
そんな事実が俺の中で沸々と湧き出す。いつの間にか赤龍帝の籠手を出現させ、竜のオーラを体全体に纏っていた。
「ここまで俺をイライラさせて、俺の女に手を出したんだ。その転生者が歯向かおうとしたら俺の龍帝の力でぶっ殺してやるよ」
「なっ!? 何なのこれは!?」
そんな時、最後の堕天使であるレイナーレが教会の方に戻って来ていた。見ると片腕を負傷していて血がダラダラと流れている。香織をつれていったと転生者にやられたのだろう。
そんなレイナーレを見て、俺は一応声をかける。
「よう、堕天使レイナーレ。遅い帰還だったな。お前の仲間は全員始末してやったぞ」
「あ、あんたがこれをやったの!?」
「見りゃ分かるだろ。というかもう俺はお前に興味がないんだ。とっとと失せろ。そうすれば命だけは助けてやるぞ」
「黙りなさい! このまま指を咥えているわけないじゃない。それにあなたのそれ。『赤龍帝の籠手』ね! アザゼル様から危険により始末の命令を受けてるわ! ここであなたを殺した後、あの女の神器も手に入れて、私はーー」
『ーーWelsh Dragon Balance Breaker!!!!!!!!』
刹那、赤い鎧を身に纏った俺はレイナーレの頭部を鷲掴み、地面に叩きつけた。
「……あがっ!?」
「雑魚なカラスに用はない。死ね」
グチャッ!!!
そのままレイナーレの頭を握り潰すと、俺達は教会を後にするのであった。