憑依転生者 兵藤一誠
竜崎太陽。
特典として『赤龍帝の籠手』を手に入れた転生者。彼はその力で数多くの女性を侍らせ、己の欲を思いのままに満たしていた。
紅桜蓮姫…
白崎香織…
他にも囲っている者を出したらキリがない。
そんな彼がこの世界にいる事で、一番の被害を受ける事になった人物が一人存在する。
兵藤一誠。
『ハイスクールD×D』の主人公であり、ヒロイン達とエロ展開をしながら熱いバトルを繰り広げて物語を進めていく存在。
そんな彼の力を太陽が宿した事で彼は運命から外される存在になろうとしていた。しかし、それをある一人の神が利用した。
憑依転生ーーそんな特殊な立場として彼は駒王学園に在籍していたのだ。
◇◇◇
「……ねえ? 私のお願い聞いてくれない?」
「はいこれ、2万円」
「サンキューッ! 最近部活の子と遊びすぎて使いすぎちゃったのよね〜。あ、言っとくけど教師にチクったらあんたに襲われそうになったって言いふらすから」
女子生徒はそう言うと俺から奪った金をポケットにしまいながらこの場を去っていくのだった。
「今月もピンチだし、カツアゲはもう勘弁だなぁ…はあ、小遣い欲しい」
俺はそう愚痴りながらため息を吐いた。
……突然だが、俺の名前は兵藤一誠。この世界の主人公キャラクターを依代として生を受けた憑依転生者である。
何故女子生徒にカツアゲされてるか、疑問に思うやつはいると思う。それは主人公である俺がこの駒王学園にいる事で他の転生者が俺を排除しようとしたからだ。
転生者達はどうやらこの世界のヒロインを手に入れるために色々と張り切っているらしい。それで主人公である俺がいるとヒロインを取られてしまうと思ったようだった。
実力行使で来るのなら俺の敵ではない。しかし一部の転生者は陰湿で俺に様々な冤罪をなすりつけてヒロインから遠ざけようとしたのだ。今では一般生徒まで巻き込んだイジメに発展している。
時には更衣室を除いた犯人として警察沙汰になり、
またある時は下着泥棒の罪を着せられ、
ついには先程のようなカツアゲが頻繁に起こっている。
そんな訳で俺はこの学園の嫌われ者。女子生徒と目を合わせただけで殺意を向けられる程、状況は最悪だった。
「そもそも。俺はこの世界の原作知らねえし……ヒロインも誰か分からなかったっつうの」
そう、俺は『ハイスクールD×D』の物語を読んだことがない。ゆえに予備知識を知らずにこの世界に来たのだ。
前世で死に、神と出会いこの世界に転生させられると言われた矢先、神が太鼓判を押してこの身体に憑依をしないかと勧めてきた。
その時の俺は状況に呑まれていたので神の言葉を全て聞き入ってしまい、この身体を手にしたというわけだ。
「それに本来俺の身体に宿ってるらしい『赤龍帝の籠手』もない。とんだハズレクジだろ……神の馬鹿野郎が」
そんな独り言を愚痴りながら、俺は深く溜息を吐いた。だがいつまでも嘆いていても仕方ないので、俺は早く部室に向かうことにした。
学校の敷地内にある旧校舎に入り、とある一室の前まで着くと俺は扉を開ける。
「部長、遅くなりました」
「あらイッセー、ようやく来たのね」
「うふふ。遅刻はあまり良くありませんわよ」
部室にはこの学校の二大お姉様にして悪魔ーー『王』のリアス・グレモリーと『女王』の姫島朱乃が挨拶をしてくれる。
そう、俺が所属する部活はオカルト研究部。『ハイスクールD×D』のヒロイン達が多くいる場所だ。
この学校に入学して間もない頃、転生者と戦っていた最中にリアス部長達と出くわし特殊な力に興味を惹かれたと誘われ、眷属悪魔となった。
因みにこの世界で一番重要だった事は入部してから知った。本当は強い味方をつけて転生者達との抑止力になってもらおうと思っていたのだが、より転生者に狙われる事になってしまった。本当についてない……。
因みに二人は俺の悪評を間に受けてはいない。何でも「貴方を見れてばそんな事をしないことぐらい分かる」らしい。上級悪魔の観察眼が凄まじいのだろうか? まあそういう事でここは俺の心が安らぐ唯一の場所だった。
俺はそんな二人にお辞儀をして中に入ると白髪の女生徒ーー『戦車』の搭乗小猫がソファにいることに気づいた。見れば両手にたい焼きを持ちながら食べている。
「よう、小猫ちゃん。今日もいっぱい食べるね」
「……どうも」
軽く挨拶をして俺は部室の端っこに腰を据える。小猫ちゃんが座ってるソファは空いているにも関わらずだ。理由はあまり関わらないようにする為。
実は俺は小猫ちゃんの下着を盗んだ罪に問われてたことがある。
もちろん俺はそんな事はやってない。しかし彼女の下着がなくなった後、俺の鞄からなくなった下着が見つかり冤罪を着せられたのだ。
どうやら転生者の中にいた窃盗系と隠蔽系の特典を持った奴らがタッグを組んだようで、証拠もなく警察沙汰になりかけた。
しかし小猫ちゃんは鼻が効くので、現場からの匂いで俺が犯人でないと分かり、俺への怒りも嫌悪もない。だが当然それを一般人に証言できる訳なく、俺と小猫ちゃんは加害者と被害者として距離を取って活動しているのだ。故に微妙に気まづい所もある。
そんな事を考え、俺は近くにいた『騎士』の木場祐斗に話しかける。
「よう木場。ちょっと遅くなっちまった。俺が来るまでなんかあったか?」
「……」
無視。無視である。俺の挨拶に聞く耳を持たないどころか殺意を持った目で俺を見てきた。
「な、なんだよ」
「……兵藤君。悪いけど話しかけないでくれるかな」
「いや、ただ確認しただけなんだが……」
「うるさいよ。同じ眷属悪魔だし邪険にするつもりはないけど、君とは仲良くするつもりはないからね」
「コラ祐斗、いい加減にしなさい。 イッセーはーー」
「すみません」
木場はリアス部長の言葉を遮り、部室の奥へ行ってしまった。それを見てリアス部長は何ともいえない顔をする。
「ごめんなさいねイッセー。やっぱり『あなたの力』が気に食わないみたい」
「……仕方ないですよ。事情は知ってるので俺も割り切ってます」
木場の事情ーー聖剣が憎いことは知っているので俺の事を認めたくない気持ちは理解できる。俺の《特典》はそれに関係するからな。
そんな俺の発言にリアス部長は安心したような笑みを浮かべると改めて部室全体を見渡した。
「さて、全員揃った事だし。部活を始めましょう」
『はい、部長』
こうして、俺の悪魔としての活動が始まるのだった。
◇◇◇
「ふう、今日も契約完了。しかし魔力が足りないからって自転車で移動って、残念すぎるだろ」
俺はお得意様との契約を終え、自転車で夜の風に吹かれていた。本当に兵藤一誠という人物はこの世界の主人公だったのか、自転車を漕いでると疑問になる。
これで魔王や邪龍、神と戦うことになるのだと思うと不安で仕方がない。
「まあ、すぐに強敵とは当たらねえか。それまでに強くなるよう頑張んねえと…」
「見つけたぞ兵藤一誠!」
突如として走行中の前方に一人の男が叫んできた。見れば常人とは思えないオーラをまとっていて俺を睨んでくる。俺はうんざりとした顔になると自転車を止め、改めて転生者に顔を向けた。
「また転生者かよ……いい加減困ったなー」
「何だその反応は! まあいい。お前は俺が殺してやるよ。観念するんだなぁ」
「誰が殺させるかよ。はあ、遅くなると部長にどやされるし、さっさと片付けるか……」
そう愚痴りながら俺は腰にドライバーを装着した。
『聖剣ソードライバー!』
装置されたドライバーの発生音と共に、俺はワンダーライドブックを取り出し、ページを開いた。
『ブレイヴドラゴン!』
『かつて、全てを滅ぼすほどの力を秘めた神獣がいた……』
音声がなり響くと俺はページを閉じ、ドライバーに装填する。するとドライバーから待機音が流れ始め始め、俺の背後にブレイヴドラゴンのライドブックが出現した。
それと同時にベルトの剣ーー火炎剣烈火を掴み、その合図を告げる。
「変身ッ!」
『烈火抜刀! ブレイヴドラゴン!』
『烈火一冊! 勇気の龍と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く!』
抜刀と同時に俺が剣をクロスさせるように剣を振ると炎の十字が形成され俺の顔と交わる。その後真紅の龍に包まれ、炎の剣士ーー仮面ライダーセイバーへと変身した。
これが俺の特典『仮面ライダーセイバー』
俺は前世ではあまりアニメやラノベは見てなかった。しかし特撮ものだけは幼稚園を過ぎても好きで、転生させた神が融通を聞かせて用意してくれた戦士の力である。
「なっ!? 仮面ライダーセイバーだと! なぜお前がそんな力、て…まさかお前は、憑依転生者なのか!?」
「いや、さっきの話の流れで分からなかったのかよ。人の話は聞いてほしいんだが……」
「う、うるせえ! そんなのどうでもいいんだよ! へっ、それならそれで問題でもねえしな! テメェを殺して俺が主人公ポジションについてやるぜ!」
そう転生者が叫ぶと俺に向かって走り出してきた。
「……主人公ポジション? そんなのっ、欲しけりゃくれてやるよ!!」
「ガハッ!」
俺は半ギレになりながら転生者を剣で振り払い、後方へと吹き飛ばした。
「あのなぁ…俺だって好きでこんな姿になった訳じゃねえんだよ! どいつもこいつも物欲しそうにしやがって! 俺はこんな立場で散々なんだよ! 転生者に狙われるし、女子には嫌われるしっ、いい事なんて一つもねえ。楽観視した価値観で、俺を見てくるんじゃねえよ!!!」
俺は怒りをあらわにしながら、怒涛の剣戟で転生者に攻撃した。今までにもこのような敵が襲いかかってきて、お前の立場を奪ってやると言ってきたのだ。俺の苦労も知らないくせにそんな事を言われ続ければ当然ストレスが溜まり、今爆発した。
俺の剣に転生者は対処しきれず、焦りの表情を見せている。
「ば、馬鹿なっ!? 『赤龍帝の籠手』はないはずなのに、なんて実力っ。やっぱりお前、主人公チートで何か特別な力を…」
「黙れっ! そんな力ねえっていってんだろうが! その戯言、すぐに言えなくしてやるよ!」
俺は火炎剣烈火をソードライバーに装填しなおし、トリガーを引くと力強く抜刀した。
『必殺読破! 烈火抜刀! ドラゴン一冊斬り! ファイアー!』
剣の刀身に灼熱の炎が纏わり、俺は一気に地面を踏み込むと転生者に刃を向けた。
「火炎十字斬ッ!! 死ねええええええ!!」
俺は必殺技の名前を叫ぶと華麗な剣捌きで転生者を斬り刻んだ。
「ギャアアアアアァァァァッ!!」
転生者は悲鳴をあげ斬られた傷口から大量の血を噴き出しその場に崩れ落ちた。
「はあ、はあ、はあ……少しイライラしてたな。反省反省」
俺は怒りを少しずつ鎮め、その場に歩み寄ると転生者の首に刃を添える。
「クソが…俺が、こんな……所で……」
「残念だったな。俺に手を出そうとしたことがそもそもの間違いだったと思うぜーーじゃあな」
俺はその言葉を最後に聖剣を振り、転生者の首を飛ばして絶命させた。それを確認すると俺は聖剣に目がいってしまう。
「……やっぱり、この血は慣れないな」
特撮の仮面ライダーにはなかった生々しい赤い血。それが自身の持つ剣に塗られていた事にこれが現実だと思わせられる。
それはかつて、前世の俺が最後に見た光景にもあって……。
「……いや、この事は深く考えちゃダメだな。辞めだ辞め」
俺はそんな思考を途中で辞めると変身を解き、転生者の死体を少ない魔力でなんとか処理するとオカルト研究部の部室へ戻るのだった。
兵藤一誠の特典は『仮面ライダーセイバー』でした。これも今回の話を悩ませた一つでとある方の作品と被るので書いていいか不安になったのです。しかし仮面ライダーで兵藤一誠と一番合いそうなのがセイバーだったのでやっちまいました。盗作とか言われないかビクビクします。