いや、それだと幼女になっちゃう……
朝は戦争である。
朝は時間と戦い、眠気と戦う。"春眠暁を覚えず"と言う諺がある通りに春特有の心地よい風や暖かい陽気は眠るのにもピッタリだ。
そして朝は時間が無い、登校時間ギリギリまで眠り、飛び出すように家を出ていく。
この様に普通は時間や眠気と戦うものだが、僕は違う。僕の敵は人だ
「ほぉら、秋くんもう時間だよ~ご飯できてるよ~」
間延びした甘い声で僕の名を誰かが呼んでいる。
今日は平日で、僕は学校に行かないといけないのだが人間の三大欲求の一つの睡眠欲には勝てない。
声のお陰で多少意識は浮上したがまた水底の奥深くへと沈む
「ん……あと5分……」
「もぅしょうが無いな~」
天使の眠りへの誘いに誘われて僕はまた眠気に身を委ね………ん……?
ここである異変に気がついた。
僕はお金持ちの友達のツテで家を安く借りて一人暮らしをしている。
でも、今僕以外の声がしていた。
身体を勢いよく起こして声の主を探そうとする。
「わぁ!びっくりした〜」
謎の声は僕の隣にいるらしい。
寝ぼけ眼を擦りながら横を見るとそこには、エプロン姿の水島茉莉花さんがいた。
こちらが向いたのに気づくとニコリと優しい笑みを浮かべる。
「茉莉花さん!?」
「うん、茉莉花だよ~」
「あの……茉莉花さんなんでここにいるのでしょうか」
鍵はちゃんとしっかり掛けて寝ていたはずだ。セキリュティも清水グループの安心安全の防犯のはずで、そこの一人娘以外きっと開けられる人なんていないはず……
「前に家に入らせてもらった時に合鍵作ったんだよね~ほら、可愛いでしょ?」
ぷらりんと指からぶら下げられたものを見ていると確かにそれは僕の家の鍵の形と酷似していて色々なキーホールダーが付いていていかにも女の子らしい。いや、そうじゃなくて
「何勝手に作ってるんですか!?」
前からよく家に来てご飯とか掃除をしてくれていたりしたけれど、遂にはしてはいけない所まで行ってしまわれた様である。
「秋くんの事は茉莉花が何でもしてあげたいからだよ〜!」
「……」
一体僕はどうすればいいのだろう。
このまま茉莉花さんに身を委ねてもいいかもしれない、だってこんなに女の子らしくて面倒みも良くて家庭的でスタイルもいい。こんな人と一緒に居れたら幸せに絶対になる。いやでもそしたらダメ人間一直線だ。
取り敢えず目の前のご飯を食べて考えようか。
いただきます。と手を合わせて箸を手に取りご飯を口に入れ……ようとした。
まさに口に入れようとした時に茉莉花さんに箸を取られた。
「はい、あーん」
「いや、自分で食べれますって……」
「はい、あーん」
茉莉花さんはいつもMerm4idの練習とかでDJの鳴らす爆音の音楽を近くで聞いているから耳が難聴になってしまった。だってさっきから僕の話聞いてないもん
諦めて差し出されているご飯を食べるとふっくらと炊けていて、噛むと鼻から香ばしい香りが突き抜ける。
味噌汁も無理やり気味に飲むと味噌や出汁の風味がたまらない。
全てあーんで朝食を食べるという稀有な体験をした後に水でも飲もうと席を立つ。
すると尋常ならざる力で僕の肩を茉莉花さんが押さえつける。えっ?力強すぎない?
肩がミシミシ言うくらい強い、ダリヤさんに引けを取らないくらい。
「どうしたの~?」
「いえ、水でも飲もうかと」
「やってあげるね~」
すると茉莉花さんは棚からコップを出し水を入れ僕の前に置いた。
そのコップに伸ばした手を普段おっとりしている茉莉花さんに似つかないスピードで手刀で取り払わられた。
そして、コップを茉莉花さんが持ち、それを飲ませられる。
まるで介護されている気分
「いや、僕赤ちゃんじゃないんで自分で出来るんですけど……」
「いいの、茉莉花が何でもしてあげるから。秋くんはずっとここにいてくれればいいからね」
助けてさおりさん。あなたのDJ仲間がおかしくなってしまいました。
いつも練習の時こんな大変な思いをしてたんですね、今度一緒に苦労でも語り合いましょう
「あ!今別の女の子の事考えてた!今は茉莉花のことだけ考えてくれればいいの」
サラッと心の中を読まれた。そんなにわかりやすいかなぁ?
「そういうのは彼氏にしてあげてください」
「いないもん」
「茉莉花さんは可愛いので直ぐにできますよ」
「可愛い?茉莉花が?ありがとー!大好き!」
顔を一瞬りんごの様に真っ赤に染めたかと思いきやロケットのように凄い勢いで僕に抱きついてくる。
理性がゴリゴリと削られていくのが分かる。
あー茉莉花さん、甘酸っぱいいい匂いする、そしてムニムニと形を変える柔らかいものが~!
モデルとやっているという茉莉花さんのスラリと細く伸びた脚や腕、細身の身体。しかし出る所は出ているという身体に抱きつかれるというのは中々僕には刺激が強い
「茉莉花ね、好きな人いるんだ」
「なら僕なんかに構ってないでその人にしてあげてください、誰ですかその人は」
別に言われてもわかんないだろうけど。
でも茉莉花さんの好きな人か…世話好きな茉莉花さんの事だから母性本能をくすぐるような可愛らしい男性だろうか。等と考えていると急に頬に柔らかい感触があった。
驚いて彼女の方へ見ると何とも蠱惑的な笑みを浮かべていた。
きっと僕はキスをされたのだろうか。
「今のでわかった?」
「いやぁ、分かりません」
「頬にキスしたんだけどな」
「え?その人に今みたいにキスまでしたんですか!?」
「む~~!勇気出したのに!!」
どんどんと悔しそうに机を叩く茉莉花さん。何とも子供っぽくて可愛らしい。
何かその人とあったんですか……
§§§
あの後腕を組みながら学校へ行くというとても恥ずかしい経験をした後にクラスメイトの犬寄しのぶに先程までの事を話した。
「何で私に言うんだよ。わざとなのか?」
「え、茉莉花さんの好きな人って誰だろうと思って」
「は?」
待って睨まないで怖いから
「でも驚きだよね、まさか好きな人いるなんてさ」
「私はまぁ、知ってたけど」
「嘘!?」
「いや、わかり易すぎる程だっただろうが」
「どんな人なんだろうな……」
「そういばキスされたところってどこだ」
「え、ああ、ここかな」
ちょんちょんと指で場所を示すとしのぶは鞄からウェットティッシュを取り出した。
一枚出すと僕の頬を削り取るように力強く何度も何度も拭いた
「痛い痛い」
「リップとかついてたら大変だろうが」
その後ウェットティッシュが二、三枚乾いてしまう迄拭かれた。
いや、拭きすぎじゃない?そんな取れないものなのかな。僕の頬は取れそうになったけどね。
人物紹介
秋
頬にキスはどこぞの筋肉ハーフや財閥の一人娘のせいで慣れた。その時に頬にキスは女の子流の挨拶だと教えてもらった為動揺はあまりしない。苗字がないのはめんどくさかった為。必要になったら考える
水島茉莉花
主人公のお世話をしてあげたい系女子。
ゆくゆくは自分に全て身を任せてくれるのを望んでいる。主人公の周りの事は何でもしたいし頼って欲しい。
あの後自分でやったことに対して恥ずかしくなって顔が真っ赤になっていた。案外初心で純情。可愛いね
活動報告でリクエスト募集しているのでこんなシチュでこの人を見たい!みたいなのがあればぜひお願いします~