最近、私のD4DJには星四という概念が無いんじゃないかと思う程、りんく誕生日からずっと各ガチャ10回は引いてるけど出ない。
僕は、今日八時に起きた。
むくりと布団から立ち上がり、いつの間にか用意されていた朝食を食べた。
最後にお茶を一息で飲み干してゆっくりと時間をかけて息を吐く。
そして、僕はこれまでの事を振り返る為に目をつぶった。
今までの僕は絵空ちゃんを初めとする色んな女の子に振り回されてきた。
女の子に振り回される男なんてかっこ悪いじゃないか。
今までは力が無かったから成されるがままだったけれど今日からは僕は変わる。
僕は、今日からトレーニングをするんだ!
***
筋肉沢山=強い、という短絡的な方程式が頭の中に出来上がった僕は、ジムを経営している由香ちゃんに電話をした。
「お邪魔しまーす」
入ると戦う男の汗の匂いが僕の鼻に漂う。
「いらっしゃーい!秋、早かったね!はい、ぎゅー」
カウンターから顔を出したこのジムの経営者の娘、笹子・ジェニファー・由香は僕を視界に捉えるやいなや僕をぎゅっと抱きしめる。
彼女は今、薄手のTシャツにショートパンツというラフな格好で中々僕の理性に強烈な一撃を放ってくる。
辞めてと言ってもこれがアメリカの挨拶だ。と辞めてくれない。ここは日本なのに……
そして、僕は由香ちゃんとの家族皆と一緒に写真を撮るという謎のプロトコルみたいな事を行った後、その写真は家族写真の様にジムの壁に飾られる。
お父さん曰く「その内うちの家族になるんだから問題ないだろう?」と言う多分僕の知らない世界で使われている知らない言語を使っていたので、僕は理解するのをやめた。
由香ちゃん達と家族……?と幾ら首を捻って考えても分からなかった。
「今日はどこを鍛えるの?」
「んー、全体的に筋肉が付くようにメニューを組んで欲しいかな」
マッチ棒の様な腕に力を込めても力こぶは対して出来ないのが情けない。頑張れ僕の上腕二頭筋。
だからといって鍛える部位が偏るのもいけないしね。
「分かったわ!私の特別メニューにするから!!」
「いや……あの……軽めでお願いします……」
僕のお願いは聞き入れられなかった。
誰かに骨は拾ってもらおう。
***
「はい、休憩!」
「あぁぁ………」
僕は床に倒れ込んだ。張り切っているのか知らないけれど絶対初心者がやるメニューでは無い。足はもう産まれたての子鹿の様にプルプルしているし、手はもう力が入らない。
スポーツドリンクを一口飲んで、僕は汗をタオルで拭いた。
僕と同じメニューを由香ちゃんもやっていたのだけれど、由香ちゃんは未だ余裕な表情をしている。彼女の筋肉、体力は目に見張るものがある。今も彼女の腹筋は惜しげも無く外気に晒されているけれど、きっと毎日コツコツと彼女が頑張った証なのだろう。
凄いなぁ……
僕は今寝そべるだけで床に汗の海が広がっていくよ……
「おつかれ~♪特性のスムージーだよ……ってきゃぁ!」
僕に水筒に入ったスムージーを渡そうとしていたら丁度僕たちの汗で湿った床で由香ちゃんが滑った。由香ちゃんだけに。
……うん、対して面白くなかった。忘れて。
間に合うかな……
「いたたた……」
周りに顔を向けるとスムージーはやはり水筒に入れてあったので無事だった。
何で作られているのか気になるけれど、まぁいい。いや、生の鶏肉とか入ってたら僕は死ぬかもしれない。
「ごめーん、秋……」
「いや、僕は大丈夫なんだけど……」
僕にも由香ちゃんにも怪我が無いようでとても良かった。うん、いや、それは良かったんだけどこの体勢だよねぇ……
由香ちゃんが僕を押し倒している、という風に見えてしまうこの体勢。
動こうとしたら、由香ちゃんにガシッと肩を掴まれた。
「秋……」
なんだろう、由香ちゃんが僕の見る目付きがとても怖いような気がする。
汗やそれに交じって香る香水、女の子の甘い匂い、運動したから赤く染まっている頬、そして何だか色っぽい声。
更に今までとは反対に目は肉食動物が餌を見つけたかのように鋭き目。
肉食動物に囚われてしまった草食動物はただ死を待つ事しか出来なくて。
と思ったらどこからか視線を感じた。
二人でそちらを向くと由香ちゃんのご両親が目を煌めかせてこっちを見ていた。
「えっと…ごめん!秋!」
サッと飛び引いた。
「えっと……大丈夫だから」
何となく気まずい。僕はこの後由香ちゃんの両親に何て言われるのだろう。
『義母さんって気軽に呼んでくれてもいいんだよ、うちの跡取りみたいなものだからね』
とまぁ、こんな感じだろうか。由香ちゃんの両親のお母さん、お父さんの発音はどこかねちっこさを感じる。発音は僕、おかしくないと思うんだけど……
「うん、こんな時はハグだよね!」
立ち直ったらしい由香ちゃんがむくりと起きて僕に両手を広げてジリジリと近づいてくる。アメリカンコミュニケーションは僕にはハードルが高い。
一歩近づいてくる度に一歩後ずさる。
すると、ハッと気づいたように由香ちゃんは自分の服をくんくんと嗅ぎ始めた。
「ごめん、私汗臭かったよね……」
なんだろう、由香ちゃんにしっぽの幻影が見える気がする。そのしっぽは力無く垂れ下がっていてとても悲しそう。
僕も由香ちゃんの首筋辺りを嗅いでみる。
「あの……ちょっと秋……?」
「いや、臭くないよ、寧ろいい匂い」
「本当に!?それじゃあ私も……」
由香ちゃんも僕の匂いをくんくんと嗅ぎ始める。傍から見たらとても不思議な光景だろう。
「うん、とってもいい匂い~、私、この匂い好きかも~」
「僕の方こそ汗臭いだろうに」
「相性がいい時は相手の匂いを不快に感じないらしいから、私達相性ピッタリなんじゃない?」
「そうかもね」
「結婚しちゃう?」
「僕に由香ちゃんには釣り合わないよ、僕には勿体ないくらいさ。もっと素敵な人がいると思うよ」
「結構本気だったのに……」
肩を落とした様子の由香ちゃん。
どうしたんだろ?
分からないからいっか、明日筋肉痛確定だなぁ……と僕は彼女をよそ目に考えていた。
***
次の日、僕は一日中筋肉痛で動けなかった為学校を休んだら、携帯の連絡アプリの通知がその日鳴る止むことはなかった。
笹子・ジェニファー・由香
取り敢えず好きな人の何処かを常に触っていたいタイプ。ハグは挨拶と洗脳したが自分自身は心臓がドッキドキ。案外乙女
由香両親
はよ婿こいよ、私たちは筋肉つけて待ってるぞ
ハーフとかのハグを気軽にするコミュニケーションが激しい系キャラクターが実は乙女だったら可愛いねっていう妄想