俺と一夏が友達になってから少し経った頃。
一夏の姉である千冬さんの付き合いで篠ノ之道場という剣道場へ一夏が行くことになったらしいのだが、何故か一緒にいた俺まで行くことになった。
「一夏ぁ、俺まで行く必要あるの?めんどいんだけど。」
「いいじゃないか、折角だし一緒に剣道した方が楽しいだろ?それに蓮華だって強くなりたいだろ?」
「えぇ〜、俺もう十分強いしぃ〜。」
「ほう、君は一夏の友達の蓮華といったな?君が強いなら私と打ち合ってみるか?自分の力量を知るのもいいだろう」
「おい蓮華、千冬姉と打ち合っても絶対勝てないって、逆に怪我するって、危ないからやめとけよ。」
確かに一夏の言う通りかもしれない。俺は実際自分でいっちゃあれだが強い、が相手が千冬さんとなれば話は別だ。
俺はまだ小学一年生、技だって全部使いこなせるわけではない。つまり『今の』俺じゃ千冬さんに勝つことは出来ない。
「いえ、遠慮しときます。ここは一夏の言う通りやめておきます。俺だってまだ死にたくないですし。」
「なにも殺したりはしないんだが…君から見た私はどう映っているんだ?」
「あえて言うなら、世界最強の姉…ですかね?」
「もういい………着いたぞ。」
そんな事を話していたらどうやら篠ノ之道場に着いたらしい。
「私は用で少し離れるがお前達は道場で剣道でもやっていろ。」
「分かった、千冬姉。」
「了解〜。」
俺たちは千冬さんと別れて道場へ向かった。中に入ると見覚えのある少女がいた。
「一夏、あれ同じクラスの篠ノ之じゃないか?」
「蓮華もか、俺もちょうどそう思ってたとこだ、取り敢えず色々聞いてみようぜ。」
「いいけど…普通挨拶が先じゃないか?」
俺が言った事などお構いなく一夏は篠ノ之に話しかけた。
「お前同じクラスの篠ノ之だろ?俺、織村一夏よろしくな!」
一夏は笑顔でそう言ったが篠ノ之は不機嫌そうな顔で一夏と俺に向かって言った。
「ここへなにをしに来た?何か用か?」
「まあな、一夏の姉の千冬さんに着いて来たんだ。で千冬さんに道場にいろって言われて来て見たら篠ノ之がいたんだ。」
「…そうか。なら私が相手をしよう。」
ほう、この私の相手をすると?よろしい力というものを見せてやろう………なんて展開にはしないしする気もないから一夏に任せるか。
「一夏任せたぞ…俺の分まで存分にやってこい。」
「なっ!?ずるいぞ蓮華お前もやれよ!」
「俺みたいな奴が相手だと篠ノ之に失礼だろ。」
「いや、確かに体はお前弱いけど体力とか身体能力高いじゃんか。」
今、一夏が言った様に俺の体力とか身体能力はかなり高い一夏が思ってる以上に、だがそのせいか俺の体は他の人よりも怪我をしやすい。その証拠にこの前転んだだけで骨折したし…
まあ篠ノ之の相手をしないのは別の理由なんだけど、まあいいや。
「気のせいだ一夏、お前ならできる……多分。」
「朧月はやらんのか、ならば織斑!勝負だ!」
「いや、ちょっ、待てよ!」
「問答無用!いくぞ!」
そして一夏は剣道初心者のため篠ノ之に勝てるはずもなく千冬さんが帰ってくるまでやられてたのは言うまでもない。
翌日、学校へ行くと一夏は篠ノ之と仲良くなったとでも思ったのだろうか、普通に話しかけていた。まあ普通に無視されてたけど…。
それがきっかけなのかは分からないが一夏と篠ノ之はお互いに反発しあい言い争いをする様になっていた。
そこは俺が上手く止めてたけど……一夏よ…君はフラグを建設するのが仕事じゃないのか?
そんな関係のまま1年が過ぎた。
以前一夏と篠ノ之の仲は進展せず反発しあうばかりだ。
ある日、俺が久し振りに一夏たちの剣の腕を見ようと道場へ向かう途中に篠ノ之、そして同じ学年の男子達がいた。
篠ノ之と…その他数名…なにしてるんだ?
俺が考えているとすぐにその答えは分かった。 一人の男子が篠ノ之に向かって言った。
「この男女ー何か言ってみろよー。」
それに釣られて他の男子も似たようなことを言っている、対して篠ノ之は無視を決めている。そして俺は……
えぇー、やり方古典的ー古いよ〜、てゆうかここって道場まで行く道の途中だろ?そこまで篠ノ之をバカにしたいの?お前ら暇すぎだろ、てか篠ノ之のこと好き過ぎだろ、それならyouもう告っちゃえよ!的な?そしてフラれろ、現実を知りなさい。
くだらないこと考えてた。
まあ…俺が手を出すかどうかはもう少し様子を見てからだな。
〜箒side〜
何なんだこいつらは?私に何か言うと思えば男女などと訳の分からないことを…。
「何か言ってみろよー怖くて何も言えないのかー」
一人の男子がそう言うと周りの奴らもゲラゲラと笑い出す。
「ふんっ、お前らの様な口で言うことしか出来ない弱い奴などに言う言葉が無かっただけだ、弱い犬程よく吠えるとはこのことか。」
私は怒ってつい言い返してしまった。
だがこれだけ言えば奴らも何も言ってはこないだろう。
不意に後ろを見てみると男子が一人、怒ったのだろうか?顔を赤くして私に殴りかかって来ていた。
「なっ!?」
私はそう声を発するだけで動けないでいた。唯一したことは目を瞑ったぐらいだ。
殴られるっ!私はそう思っていた、しかし……いつまで経っても来る筈の衝撃がこない。
どうしたというのだ?私はそう思い恐る恐る目を開けてみるとそこには驚きの光景があった。私に殴りかかって来ていた男子が腹を抱えてうずくまりその男子と私の間にもう一人男子がいた。
「朧…月…?」
「あぁ、そうだよ篠ノ之、お前の知ってる朧月蓮華だ。」
朧月はそう言った、恐らく朧月が私を助けてくれたのだろう、そう考えていると朧月は私をバカにしていた男子達の方を向き、言った。
「もう終わりか?そんなんじゃ篠ノ之になんて勝てないぞ?」
朧月はそう言い放った、すると他の男子達は怒っているのか先程よりも声を大きくし言い返す。
「なんだよ!お前らだって口ばっかじゃんか!弱いのはそっちだろ!」
「もっともな意見だな、なら俺を倒してみろよ、それで弱いかどうかはっきりするだろ?」
「な!?」
朧月のやつは何を言っている?相手は5人もいるんだぞ?勝てる訳ないだろ!直ぐに辞めさせなければ!
「おい朧月!そんな奴らの事は気にするな!お前がやられる必要はないだろう!」
「まあまあ、篠ノ之はそこで見てろよ………さて、お前らいつでもいいぜ、かかって来いよ。」
「このっ!馬鹿にしやがって!お前なんて俺達がボコボコにしてやる!」
そう一人の男子が言うと5人全員が蓮華に向かって殴りかかりに行った。
このままでは私のせいで朧月が……。
箒はそう思って直ぐに助けに行こうとした、だがその必要はなかった、既に蓮華は5人全員を倒し終わっていた。
な!…朧月はあの短い間に何をしたというのだ?
箒は驚愕していた、自分が助けなければという考えに至るまでの少しの間で蓮華は5人全員を倒し終わってしまっていたからだ。
箒が蓮華に一体何をしたと聞こうとしたがその前に蓮華が男子達に言った。
「お前らどうする?まだやるのか?」
「このやろー!何でお前が邪魔するんだよ、お前は関係ないだろ!」
確かにそうだと箒は思った、知り合いではあるが私はこいつとさほど仲良くない、なら何故?何故朧月は私を助けたのだろうと。
少し間が空いてから蓮華は言った。
「自分の知り合いが、身近な人が、目の前で傷つきそうなら俺はそれを全力で止める、それが篠ノ之みたいに可愛い子なら尚更だ。」
蓮華は初めは真剣に言っていたが最後の方は少し笑いながら言った。
こ、ここ、こいつは可愛いだなんてな、何を言っているのだ!////。
箒は今まで男の同年代の子に可愛いなどと言われた事が無かったので顔を赤くしていた。
「それと……
蓮華が今までで一番真剣な声で言い始めた。
もしも、お前らがまた篠ノ之を傷つけようとしてもその時も俺がお前らの相手になってやる、お前らが篠ノ之に何をしようと俺が何度ても守り抜いてみせる!」
その時の蓮華の瞳はとても真っ直ぐで透き通っていた、箒にはそんな蓮華が今まで見た誰よりもカッコよく見えた、箒はそのままずっと蓮華のことを見ていた。
自分が初めて好きになった人の事をずっと………
〜蓮華side〜
「はぁ、やっとどっかいったか、あいつら……篠ノ之〜大丈夫か?………?篠ノ之?」
蓮華が男子達を追い払ってから篠ノ之に声をかけたのだが篠ノ之から返事がない……
篠ノ之のやつどうしたんだ?…顔が少し赤いな、夕日のせいか?いや、もしかしたら熱でもあるのか?だとしたら早く病院とか連れてかないといけないし確認しないと。
ピトッ
「え〜と、熱は無いな、顔が赤いのはきっと夕日のせいだな。」
俺は篠ノ之に熱がないか確かめるべくおでこ同士をくっつけた。くっつけた瞬間に篠ノ之の体がビクッとなったけど少しびっくりしただけだろう。
「きゅ、急に何をする!」
「え?な、なにって篠ノ之に熱がないか確かめただけだけど、だって篠ノ之の顔が赤いから熱でもあるのかと思ってさあ。」
「なら先にそう言え!」
「わ、分かったよ、それは俺が悪かったよ、ごめん篠ノ之。」
「…箒」
「え?なに?」
「…私の事は箒と呼べ。
「分かった、じゃあ箒、取り敢えず道場へ行こう、一夏も待ってるだろうし。」
「あぁ、そうだな!」
箒は俺に初めて見せてくれた満面の笑みでそう言った。
その後道場へ行くと待ちくたびれていた一夏に色々言われた。けど俺が箒と呼んでいたこともあって一夏も含めて俺たちは名前で呼び合う関係になれた。
俺と一夏と箒は3人、大事な友達同士になったのだった。
篠ノ之が落ちました。もっと私に文才があれば……そう思う今日この頃です。