怪獣娘一言シリーズ   作:電王牙

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久しぶりに単発回。

主に『お化け屋敷編』からの派生といった所。


ミカヅキとホラー映画

その日、ゴモラの怪獣娘の黒田ミカヅキは恋人である空地レンの下宿しているアパートの部屋に泊まりに来ていた。

……といってもミカヅキも隣の部屋で一人暮らしをしているのでほぼ毎日遊びに来ているが。

 

「レ~ン~ちゃ~ん~夕飯まだ~」

「おー、待ってろ~。今作ってるから」

 

そんなミカヅキはレンのベッドの上で寝転がりながら夕飯ができるのを待っていた。

今日はレンが作る日だった。

 

レンが作った夕飯を食べ終え、二人は寛いでいた。

 

レンが何気なくテレビを見ているとある映画のCMが流れた。

 

「あ、今日レッドマーダーやるのか」

「ふぇ!?」

「…………相変わらず、これ苦手なのか」

「…………うん」

 

レッドマーダー。

70年代に作られたB級ホラー映画であり、低予算ゆえのチープさと妙に強烈な殺害シーンからカルト的な人気があり時折再放送されている。

殺害シーンの被害者はあからさまな人形なのだがその人形のチープさとやたら多い血糊が妙な迫力を出しており、トラウマとなっている者も多い。

 

ミカヅキは幼少期にこれがトラウマとなってしまっていた。

 

「あの時のお前の怯えかた凄かったからなぁ……」

「うぅぅ……なんでレンちゃんは平気だったのさ」

「隣で自分以上に怯えてるお前が居たお陰で逆に落ち着いてた」

「ひどいー!」

 

ミカヅキは手をブンブン振って抗議した。

 

「というか隣で大泣きしながらおもr 」

「わー!わー!そこは思い出さないでー!?」

「あー、うん……。まぁ、見ない方向でいいか?」

「…………いや、見る」

「大丈夫か?」

「うん!今度こそ克服する!」

 

しかし、これまでもそう言って失敗してきたミカヅキだった。

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

そして『レッドマーダー』の放送時間になった。

二人は並んで座っており、ミカヅキはレンの上着の袖をギュッと握りしめていた。

 

「始まったな」

「…………ぅぅ」

 

冒頭から少しして少女が夜道を歩いている場面、突如として不穏なBGMが流れてくる。

 

「……来るぞ」

「ひっ……!」

 

背後から忍び寄る真っ赤な仮面を着けた殺人鬼。

少女が振り替えるり、その姿を目撃する。

殺人鬼の右手には血に塗れた大振りなナイフが握られていた。

 

『キャアァァァァァ!!!?』

 

「ひぃ……!」

「おーい、大丈夫かー?」

 

更に袖を握る力を強めるミカヅキをレンは心配する。

 

その間にも状況は進んでいった。

TV画面の中では逃げた少女が捕まり、引き摺り倒され、ナイフで滅多刺しにされ殺害される場面となった。

刺す、斬る……その音も吹き出す血も凄かった。

 

「やぁ…………!」

 

その場面を見る直前にミカヅキは固く目を瞑り、レンの上着をギュッと掴んで身体を震わせていた。その瞳には涙が浮かんでいる。

 

「……もう見るの止めないか?」

「……!」

 

目を閉じ、歯を食いしばりながらミカヅキは顔を縦にブンブンと振る。どうやらやはり駄目だったようだ。

 

レンはリモコンを操作してTVを消す。

 

「ほら、消したぞ」

「う……ぅぅぅぅ……」

「よしよし、お前はがんばった」

「こわか……怖かったよぉ…………」

 

ミカヅキはレンに涙ながらに抱き着いた。レンはそんな彼女の頭を優しく撫でるのだった。

 

 

 

「ところで今日は一人で寝られるのか?」

「無理!こわいから一緒に寝て!」

「へいへい。それじゃ今日はとっとと寝るぞ」

 

昔から変わらぬ様子に安堵を覚えつつ、二人は同じベッドで眠りに着くのだった。

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

夜、レンが眠ろうとしていると。

 

「…………ねぇ、レンちゃん」

「……どうした?」

「えっとね…………その……」

「?」

「お…………」

「お?」

「おトイレ…………いきたい」

「…………どっち?」

「…………おしっこの方……怖いからついてきて…………」

「…………はぁ、分かったよ」

 

こうして二人は布団から出て、トイレに向かうのだった。

 

「レンちゃん、見ないでよ!?」

「分かってるって」

「そ、それと聞かないでね!?」

「あー、分かった分かった」

「それにそれに、呼んだら答えてね!?」

「どないせいちゅーねん」

 

ミカヅキはトイレの中に入っていった。

 

「レンちゃん、居る~?」

「居るよ~」

 

入ってすぐに衣擦れの音ともにミカヅキの声が聞こえた。

 

(黙っててみるか?……けど流石にかわいそうだからなぁ……)

 

「レンちゃ~ん~……」

「居るって」

 

暫くすると水音が響いた。二人の間にはなんとも言えない気まずさが発生した。

 

(はやく終わってよぉ……)

(はやく終わってくれ……)

 

そして、顔を赤くしたミカヅキはトイレから出てきたのだった。

 

「ご、ごめんね……付き合わせちゃって……」

「あー、いいからさっさと寝よう、な……」

「うん……」

 

こうして二人は恥ずかしさを覚えつつ、眠りに落ちるのだった。

 




解説コーナー

・黒田ミカヅキ
今回のヒロイン。ホラー系自体はそこまで苦手では無いのだが、『レッドマーダー』の影響でスプラッター系が苦手であり、完全にトラウマと化している。

尚、トイレで声掛けを無視して黙っていた場合は本気で泣いていた。

今作における彼女は高校に上がった後でGIRLSの仕事との兼ね合いで上京&都内の高校への転校をしており、現在アパートで一人暮らししている。


・空地レン
ミカヅキの彼氏。ホラー耐性は高め、というより隣でミカヅキが怯えているのを見て逆に冷静になっているタイプ。

ミカヅキがGIRLSの寮に移ってから都内に親の仕事の都合で引っ越しした後、再び親が転勤、自分は残ってアパート暮らしとなった。
ミカヅキとは別の高校に通っており、同じアパートに住んでいるのは偶然である。


・『レッドマーダー』
説明した通りのB級ホラー映画。
モチーフは赤い通り魔ことレッドマン。
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