50回記念ということで初回でもやったバレンタインネタの新作を当日に投稿。
内容は短い話がたくさんある形式となっています。
【2月13日の前夜祭】
2月13日、恋する乙女にとっての祭典であるバレンタインデーを翌日に控え、女性比率の高いここ怪獣娘保護組織GIRLS東京支部でも乙女達は翌日に備え、それぞれ準備のために動いているのだった。
宮下アキ、白銀レイカ、牛丸ミクのかぷせるがーるずの3人と黒田ミカヅキはそれぞれ訓練を終えて廊下を歩いていた。
「いよいよ明日はバレンタインで空気が色めいてるねぇ」
「確かにそうだね」
「色めき、ときめき、心めきめきだねぇ」
「心砕けてませんか!?」
「だ・け・ど……そんな浮わついた空気は上辺だけ。バレンタインはバーリトゥード!」
「ば、ばーりとうど?」
突然の単語にそれぞれ頭に疑問符を浮かべる中、レイカはスマホで入力して検索をしていた。
「え~と……」
バーリトゥード(Vale tudo)は、ポルトガル語で「何でもあり」を意味し、20世紀においてブラジルで人気を博すようになった、最小限のルールのみに従って素手で戦う格闘技の名称である。
(※Wikipediaより引用)
「……らしいですね」
「つまり、どゆこと?」
「バレンタインは何でもありの戦いって事かな?」
「そのとーり!それはチョコをチョコで洗うかのごとき壮絶な死闘!」
「何その甘そうな戦い」
「いや、バレンタインはそんな殺伐とした日ではないかと……」
「ノンノン。そんな甘い考えじゃ甘い物しか作れないよ!」
「甘いチョコになっちゃうの!?」
「いいよね、それで」
ミクが驚き、アキの静かなツッコミが今日も冴え渡るのだった。
「で、リボンなんだけどさ」
「いきなり話題変えないでよ」
「リボン?」
「ラッピング用ですか?」
「あー、違う違う。リボンはリボンでも……」
アキは一糸纏わぬ姿でピンク色のリボンのみをその肢体に巻き付けていた。
そのリボンの下にはアキの普通サイズの胸や乙女の秘所が隠されている。
その状態でアキは頬を染め、潤んだ瞳で最愛の人を見つめるのだった。
『食べて……』
その一言は彼の理性を奪い去り、他の何も見えなくさせるには充分だった。
「……的な感じで『プレゼントは私』って使うリボンだよ!」
「な、なるほど!?」
「おー、アキちゃんダイダン~」
「ちょ、何でイメージが僕なのさ!?」
ミカヅキのイメージにレイカは頬を染め、ミクはアキをからかい、アキは慌てるのだった。
「えー、定番じゃん。裸リボン」
「定番じゃないよ!」
(裸リボン……確かに破壊力はありますが……中々に勇気が要りますね。けど、これの3倍返しとなると……はっ!?婚姻届!?)
「ウインちゃん~?どうしたの~?」
「い、いえ……なななんでもありませんよ!?」
裸リボンと聞いてあらぬ妄想を考えるレイカだった。
──────
道理サチコ、鳴無ミサオ、葦原ルイ、そしてメカギラスの怪獣娘の4人はバンドの練習帰りにバレンタインに向けての話をしていた。
「バレンタインいよいよだねー」
「そうだな」
「今年は……どうしようか、迷いますね」
「……渡す相手がいないから義理なんだけど」
メカギラスのみ彼氏が居ないこともあって全く気乗りしていなかったが、医務室勤務の女医の朝日野から聞いていた話を思い出した。
「そういえばノイズラー、バレンタインは貰う側だったとか聞いたけど」
「え、そうなんですか?」
「どこで聞いたんだよ……。まぁ、なんでか知らないけどアタシ、チョコ貰うんだよなぁ……」
「あー、うん。確かにノイズラーなら貰うよねー」
「たぶんその男子と見まごう凛々しさのせいじゃないの?」
「うっせ」
ミサオは確かにクール気味で胸も発育途上、そして私服もズボンが多いこともあり初対面の時は冗談混じりにサチコから男の子かと言われた程である。
──────
GIRLSの廊下にて、風巻ヨウは湖上ランを発見して駆けて行った。
「あ、エレキングさ~ん!」
「マガバッサー、廊下は走らない」
「すいません、えへへ」
「待ってよ、バサちゃん」
そこに遅れて竜波ユカもやって来た。
「それでどうしたの」
「これです、これ!」
ヨウはポケットから小さな筒状の物を取り出した。
「口紅?」
「いえ、チョコリップです」
「リップ型のチョコ?」
「はい。それでこれを唇に塗って、食べてって言う用ですよ!」
「…………」
ランは頭の中で唇にチョコリップを塗って『食べて?』と言う自分を想像した。
「悪くは無いけど、それだけ味気ないわね」
「う~ん、やっぱりそうですか~」
「やっぱり手作りがいいんでしょうか?」
「そこは自分次第よ。流石に市販のチョコ菓子渡すだけでは味気ないし、どうせなら思い切りやらないと」
「よーし、そんじゃアタシ も思い切りやっちゃいます!行こ、ジャッパ!」
「ちょ、バサちゃん引っ張らないで~!」
ヨウはユカの手を引いて走り去っていった。
「こら、廊下は走らな……もう行ってしまったわね………………」
ランの手元にはヨウが見せてきたチョコリップが残されたのだった。
「使ってみようかしら…………」
ボソリとランは呟くのだった。
─────────
【2月14日のバーリトゥード】
2月14日、バレンタイン当日。
都内某所にてクララ・ソーン、キングジョーのバレンタインイベントが行われてた。
お菓子メーカーとGIRLSのタイアップ企画でキングジョーがCMキャラクターを勤めるチョコレート菓子がキングジョー本人より手渡されるイベントである。
彼女のファン達はキングジョーからチョコレートを受け取るべく集うのだった。
そんな会場に警護役として印南ミコ、印南マコのガッツ星人の二人が配属されていた。
「相変わらずの人気だねー、おジョー」
「はい、おかげさまで大盛況デス♪」
「結構時間掛かりそうだけど、まぁ……想定内に収まると思うわ」
ここに居る三人は今回のイベントの開始時間の関係上、恋人にまだチョコレートを渡せていなかった。
彼女達のカバンの中には乙女の覚悟と勇気と衝撃と希望と運命と願いが込められたチョコレートが入っている。
当然、今日の彼女達にとっては最重要な品であり、イベント中もミコとマコの分身が常時見張っておくつもりである。
「はぁ……一番に渡せなかったのはちょっと残念デスね」
「けと、一番のチョコは渡すでしょ?」
「はい♪さ、そろそろデスね!」
「ん。いってらっしゃい」
そうしてバレンタイン記念のイベントは始まるのだった。
尚、キングジョーさんから貰ったチョコ菓子に歓喜する闇の紳士か居たそうな。
────────
ゼットンは大急ぎでチョコレートを作っていた。
前日、急な任務が入り本来予定していた時間にチョコレートを作る事ができず、疲れから帰宅した直後にそのまま眠ってしまっていた。
そして目が覚めた時には既にバレンタイン当日である。
やがてチョコレートは作れたが時間的にあまり凝ったものは作れないので溶かして固めたシンプルな品になってしまった。
「……はぁ…………」
ため息ひとつ、深呼吸。意を決して、彼に届けに向かうのだった。
……だがしかし、無情にも彼女のソウルライザーに連絡が入った。
「!…………」
前日に続きシャドウの巣の制圧任務が入ったのだった。
「こんなときに…………!」
ゼットンは少し涙目になりながらもテレポートでシャドウの巣を潰しに向かうのだった。
尚、シャドウの巣は怒りのゼットンにより過去最速で殲滅されたそうな。
──────
GIRLS東京支部の一室にて、岡田トモミと歌川ベニオは休憩していた。
「助かったぜピグモン……」
「もー、そのくらい別に良いですよ」
ベニオはバレンタインに向けてチョコレートを作ろうとしていたがどうにも上手くいかなく、前日にピグモンに協力してもらい、なんとか形にしたのだった。
「……ていうかなんで素手でチョコレート粉砕してたんですか?」
「いや……その方が俺っぽいかなって……」
前日、ベニオは板チョコを刻む所 をビニールに入れて素手で粉々に粉砕していた。
包丁を用いて細かく刻むのと同じ状態にできる辺り、流石のパワーである。
「けどまぁ……みんな渡せてるみたいでなによりだよな」
「はい~。みなさん、バレンタインを楽しめてて何よりです~」
────────
バレンタイン当日の夕方、メカギラスの怪獣娘(※現在は変身前の姿)と医務室勤務の朝日野ショウカは医務室で机に突っ伏していた。
「やっと終わりましたね……バレンタイン……」
「全くだな……どこもかしこも甘ったるい空気ばっかりだった……」
この二人は現在、恋人も気になる人もおらず、周囲程バレンタインに傾ける情熱が無かった。
義理チョコをそれなりに渡したが、あくまでも義理である。
本命を作っていた周囲と比べると熱量が違うのであった。
「あ、そうだ。朝日野先生にもあげます」
「そうか。ならお前にもあげよう」
それぞれ、残っていたチョコレートを交換するのだった。
「これ、友チョコですかね?」
「友チョコ…………一瞬共食いチョコをイメージしてしまったんだが……」
「なんですかそれ……」
朝日野の脳内には『トモダチはゴチソウ』と言いながら互いを食い合うチョコレートケーキがイメージされていた。
「そんなことより、来年こそは本命渡せる相手が欲しい……!」
「……いっそのこと略奪愛は?」
「それはノーサンキューです」
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【2月15日の後の祭】
バレンタインの次の日、白銀レイカと湖上ランは少し眠そうにしていた。
「ふぁ……」
「ん……ぁ……ウインダム、寝不足?」
「そうですね。エレキングさんも?」
「ええ、そうね」
そんな二人の背後に朝日野ショウカは現れた。
「夕べはお楽しみでしたね……と言った方がいいのかな?」
「「!?」」
驚いて二人は振り向くのだった。
「ふむふむ……本当にお楽しみだったようだね」
「い、いえそんなこと……」
「首筋にキスマークついてるぞ」
「え、嘘!?」
「ちゃんと確認した筈……」
「うん、嘘」
慌てる二人を朝日野は楽しそうにからかっていた。
「ま、お熱いようで何よりかな」
「あの……その……」
「ま、支障でない程度にしときなよー」
そう言うと朝日野はひらひらと手を振りながら去っていくのだった。
「唐突だったわね……」
「ですね……」
「……ていうかなにやったの?」
「裸リボンを少々……エレキングさんは」
「唇にチョコ塗ってキス……」
二人は顔を赤くして目を反らすのだった。