先祖はパワハラ上司らしい 自分は頑張ろう   作:ケツアゴ

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愚か者

 今回の任務は妙に呪霊が発生してるって場所の調査だった。どうせ呪物でも有るんだろうし、それを破壊してさっさと終わる筈だったんだがな……。

 

 

「あの餓鬼の術式、矢っ張りえげつないな、おい」

 

 簡単な任務の筈が突然現れやがった特級呪霊。あの糞みたいな性格の特級呪霊が逃しやがった三体の内の一体で、仲間からは花御って呼ばれていたらしい。

 

 認めたくはねぇけれど千年前、つまりは呪術の最盛期に生まれた特級呪霊の童磨の実力は確かで(戦ったら俺が絶対勝つが)、其奴が言うには宿儺の指換算で八本辺り。本来なら少しは楽しめそうな奴だが、今はだいぶ弱ってやがる。

 

 脇腹を大きく抉る傷跡。再生速度が反転術式の比じゃない特級呪霊が治せてないって事は余程消耗したって事で、それは彼奴の術式の仕業だ。

 

 術式・十二鬼月。基本的な技は空中に生み出した口で呪力を食うんだが、要するに呪力で構成された物なら呪力だろうが喰っちまうし呪具だって呪力を食い尽くされたら只の武器になっちまう。ましてや呪力の固まりである呪霊なんざ頑丈だろうが関係無い。魂ごと食い千切られて終わりだろうぜ。

 

 てか、本当なら童磨の力で倒せた筈だろ。さては回復させて二度食いさせる気だったな、あの野郎。お陰で面倒な事になっただろうがよ。

 

「ひゃははははは! 矢っ張り楽しいな! 弱い奴を虐めるのは楽しいな!」

 

『ぐっ!』

 

 そんな花御だが、あんな餓鬼を襲っちまっただけでも運が無いのに、遭遇した他の手下の中でよりにもよって鵺に出会うなんて運が無い奴だ。

 まあ、俺は適当に見学で楽させて貰うけどな。

 

『力が抜けて行く……?』

 

「そりゃそうだ。俺の術式の力は”自分より弱い奴と弱った奴を弱体化させる”だからな。おっと、術式開示で威力増加か」

 

 既に特級じゃなく一級程度に弱まった花御を鵺はいたぶりながら戦ってるし、遊んでやがるな。”物語の悪役に対する嫌悪”を元に生まれただけ有るな、彼奴はよ。

 

「……にしても弱ってるのになんで襲って来たんだ?」

 

 さっさと終わらせて調査も終わらせたいと思った時に一つの考えが頭を過ぎる。おい、まさか此奴は……。

 

 

「おい、其奴は足止めだ!」

 

 仲間だっていう残り二体の特級呪霊、火山頭と蛸みたいな奴がこの先に居るんだ。しかも此奴より弱ってるな。

 

「あぁ? んじゃ、お前が先に行って来いよ。俺は此奴と遊んでるからよ。……領域展開・『御伽奇譚・悪童之宴(おとぎきたん・あくどうのうたげ)』」

 

 ……いや、マジ? 彼奴って領域展開まで使えるのかよ。

 

 

 周囲の風景が一瞬で塗り潰される。床や壁、天井にさえ穴が開いたボロボロの社。空は暗雲に覆われて日の光は差さない。それに妙に獣臭くて不愉快だ。

 

 

「ひゃははははは! 俺様は解除が苦手だから此処から出るのは大変……何でテメェが居るんだよ」

 

「いや、俺が先に行く前に展開したんだろうが、ボケ」

 

「うっせぇ、ノロマ! さっさと行っておけば良かっただけだろうが!」

 

 計らずとも時間稼ぎに協力させられちまってるじゃねぇか。こうなったら速攻で倒して解除したら直ぐに追うしかねえ!

 

 

『これは僥倖。感謝しますよ、愚かな……いえ、凄く愚かな子達よ』

 

「「うっせぇ!」」

 

 結論から言えば花御を倒した後で拠点らしい場所は見つけたんだが残りには逃げられていた。まあ、幾つか呪具だの呪物だの残していたのを回収したからセーフだな。……夜蛾が五月蝿いだろうがよ。

 

 

「てか、俺達が来た切っ掛けってこの呪物とかだよな? 古いのが結構あるけれどコレクターでも居たのか?」

 

「そんな連中に凄く愚かって馬鹿にされた俺達って……」

 

「忘れろ!」

 

 

 

 

 

「よう。久し振りだな、”呪詛師狩り”」

 

「……そうだな」

 

 今回はちょっとした様子見の予定だった。最近呪術師の間で出回っているゲームの回復アイテムみたいな結晶。それを作り出せる術式を持っている餓鬼を浚うか……最低でも殺すかって依頼だったんだが、前金貰う前に来て良かったな。

 

 ……呪力を一切持たない代わりに研ぎ澄まされた五感で感じた最高にヤバい気配。餓鬼が強い呪霊を連れてるって話だったが、ちょっと情報が足りないだろ。空に僅かに開いた空間の隙間から外を観察する巨大な赤い目。鼻の中が痛くて泣きそうになる程に強烈な刺激臭。ありゃ俺でも死ぬレベルの毒持ちだ。

 餓鬼を殺したりパニックになられたりして暴走でもされたら国が終わるだろ、ありゃ。あんな餓鬼をよく飼ってるぜ。

 

「……お前か」

 

 その餓鬼を連れているのは昔はダチだった男だ。呪霊を何とか見られる程度の呪力しか持たない代償で得た力は俺より遥かに下だが、元々の肉体自体が異常に強い上に格闘センスだって抜群。確か恋人が出来た時点で呪詛師相手の仕事から窓に変わったんだっけか?

 

「……何の用だ」

 

「久し振りだってのに態度が悪いな。まあ、既にダチじゃ無いからだがよ」

 

 確かに此奴と俺はダチと言える関係だった。あの糞みたいな家に居た頃は組んだ事も何度か有った位だ。だが、それも昔の話。

 俺は狛治の名前を呼ばないし、向こうも俺の名前を呼ばない。それで良いだろ。

 

 向こうは俺を警戒してか餓鬼を庇うようにして立つ。……写真で見せられた恋人に少し似ているな。いや、結婚したんだっけか? それに確か元々の名字は……ああ、成る程ね。死んだカミさんの身内か。

 

「警戒しなくても大丈夫だ。俺は割に合わない仕事はしない主義だからよ。今回の仕事は受けねぇよ」

 

「そうか。……おい、甚爾」

 

「名前で呼ぶな。俺とテメーは既にダチじゃねぇんだ」

 

 狛治が何か言おうとしたが俺はそれよりも先に人混みに紛れて消えて行く。ったく、カミさんが死んでから随分と腑抜けになってた癖に昔に戻った感じだったな。

 

「……家族ねぇ。そういや俺の餓鬼って名前何だっけか?」

 

 自分が名付けたのは覚えてるんだが思い出せない。まあ、思い出せない時点で俺にとって大した価値は無いって事だな。

 前に見た幸せそうな狛治の顔が浮かび、続いて俺の餓鬼を抱く女の顔が浮かぶ。タバコを一本取り出して吸っていると今回の依頼主からの連絡が来ていた。

 

 

「……おう。ちょっと見たが話よりヤベェ餓鬼だ。出回った物を掠めとる方が楽だなありゃ」

 

 前金は惜しいが割に合わない仕事だ。金が無いが諦めるか。……俺の餓鬼は何処に住んでたっけな。

 

 

 

 

「ねぇ、あの人って……」

 

「俺の古い知り合い……いや、友人だ」

とあるキャラクターの強化案

  • キャラメルマン
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