先祖はパワハラ上司らしい 自分は頑張ろう   作:ケツアゴ

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頭無惨

「俺は悪くない。俺は悪くないんだ……」

 

 とある男が酒に酔ったのか真っ赤になった顔でハンドルを握りながら呟いていた。バックミラーにはサイレンを鳴らしながら制止を促すパトカーの姿が映り、彼はそれから逃れる為にアクセルを強く踏み込むのだが、酔っている上に慣れない車に久々の運転というのもあって危うい走りだ。

 

「こんな事になったのも全部彼奴が悪いんだ!」

 

 数年前、彼はそれなりに大きい剣術道場の後継ぎだったのだが、(酒を飲んでから)車で出掛けた時、前をフラフラと歩いていた女性(但し横断歩道の信号は青)を跳ねてしまった。相手の過失を主張するも聞き入れられず、理不尽に思った彼は自らの無罪を信じて逃走、(盗みを繰り返して)各地を回った先で立ち寄った居酒屋から出た後、(他人のバックに入っていた車のキーを使い)車に乗って出た所を警察に呼び止められて逃走劇が始まった。

 

 

 そして最後にハンドルを切り損ねた彼は反対車線を走っていたトラックの前に出てしまい、その生涯を終えた。

 

 

 

 

 だが……。

 

 

 

「そう……だ。俺…儂は悪くない。ひぃいいいいいい! どうして何奴も此奴も可哀想な儂を虐めるんじゃ!」

 

 炎上した車から這い出して来たのは額に大きな瘤を持つ老爺の姿をした呪霊。この直後、追跡していた警察官は無残な死体で発見される事となる。

 

 

 

 

 

「……以上だ。次に私が現れる迄に試しておくように。そうだな、例の狛治とやらで試しておけ。奴ならばそれなりの結果となるだろう」

 

 折角の良い気分でのお昼寝の最中に夢に現れた無惨は極之番を僕に教えると満足そうにして消えて行く。僕としては使いたくない内容だったんだけれど、僕が使うのは当たり前って疑っていない。

 

「ほほぅ。不満そうだな? よく聞け。私の言葉に従っていれば貴様は呪術師として成長出来る。私すら越え、あの忌々しい呪いの王さえも相手にならぬ事だろう。成長に免じ此度の不敬は特別に許してやるから精進せよ」

 

 これで二度目の対面だけれど、童磨以上に嫌いになれそうだよ。この人と結婚したご先祖様は凄く苦労したんだなって思っていると視界が揺れる。多分僕は目覚めるんだろう。それにしても千年も経ったら見た目が全然違う……あれ?

 

 よく見れば無惨の右腕の指が途中まで消えている。さっきまではちゃんと有ったのに。

 

 

「ああ、これか? 今の私は己の呪力で術式に記憶と人格を刻んだが、使えば消耗されるのは当然だろう。これも血を分け、術式を引き継がせた子孫の為だ。会える回数には限りがあるが、その間は精々私に感謝するのだな」

 

 そんな風に言って姿を消すけれど、そもそも人質に取られない為に家族を消すとか、今回みたいに禄でもない技を身を削って伝授するとか、子孫への思いやりは確かに存在するけれど、その方向性が絶対に間違っている。童磨も言っていたけれど、本当に無惨な頭をしているなあ。似なくて良かった……。

 

 

「んっ……」

 

「お目覚めですか? 今、高専内は騒がしくなっていますし、少し部屋でノンビリしましょうか」

 

 僕が起きるとハサンがギュッて抱き締めて顔を胸に押し付けている体勢だった。流石に恥ずかしいから後ろを向くんだけれど、体の向きは変えられても腕から抜け出せる程には弱くない力だ。確かに外が騒がしいし、忙しいなら邪魔しないように大人しくしてようか。

 

 

「ゲームでも一緒にする? 堕姫が買ったけれど五条さんと夏油さんにボッコボコにされたからって泣きながら貸してくれた奴があるし、練習して今度は二人を倒さないと」

 

「ええ、ご一緒します」

 

 抱き枕にされた状態から解放された僕はゲームの準備を終えるとハサンの膝に座る。もう定位置になっちゃったな。それにしても本当に何が起きたんだろう?

 

 

 

 

 

 

「はっ! 御三家って呼ばれてた癖に情けないなぁ。弱いんだなぁ」

 

 童磨の奴から聞いた話じゃ随分と恵まれた連中だったって話じゃねぇか。俺も堕姫もその連中には創示を利用したいって奴程度にしか思ってなかったが、被害状況に笑いが出て来る。

 

「外出中の当主を除き、下っ端の呪術師まで全滅、生き残りは倉に閉じこめられていた双子の女の子と使用人。財産やら呪具も結構持ち出されたらしいぜ。世の中には酷い事をする奴も居るんだな。俺には想像も出来ないぜ」

 

「いや、アンタなら平気でしそうだがなぁ」

 

 まあ、今後は呪術師界で暫く混乱が起きるだろうし、呪霊だの呪詛師連中の相手に俺達まで忙しくなるかもな。まあ、創示の奴経由だが貰えるもんが貰えるんなら俺は構わねぇよぉ。人間の頃と違って美味いもんは沢山食えるし、興味深い事も沢山有るしなぁ。

 

「おっ! そういや昨日テレビで観た映画の続編が公開するんだよなぁ? 堕姫、見に行かねえかぁ?」

 

「うーん、私は好みじゃ無かったし、別の映画にしておくわ。でも私達だけで出掛けると五月蠅いし……歌姫でも誘おうかしら? 適当な任務をパパって終わらせてさ。ポップコーンとかも楽しみよね」

 

「そうか。……しかし本当に良かったなぁ」

 

 今の妹の姿を見て心の底からおもう。梅の奴……堕姫は染まりやすい奴だから俺のせいで随分と気性が荒くなっちまったし、そのせいで客の目玉を潰して焼き殺された。だがよ、今じゃ人間辞めて化け物になったのに毎日が楽しそうだし、頭が足りなくて我が儘なままだが人間の頃よりずっと良い。

 

「良かったって何が?」

 

「……気にすんなぁ」

 

 まっ、わざわざそれを言うのは俺らしくないから絶対に言わないんだがよぉ。忠義なんてもんはねぇが、あの小僧の為に動いてやろうって少しは思うぜぇ。

 

 

「フォウフォーウ!」

 

「こらこら。あんまり俺を蹴らないでくれよ、フォウ。結構痛いんだぜ?」

 

 校内は随分と騒がしくなってやがるが、その知らせを俺達に持って来た奴はフォウの野郎にテシテシって感じに蹴られ続けてやがる。彼奴、本当に嫌われてるよなぁ……。

 

 

「まあ、暫くは学生も忙しくなるだろうね。そのせいで只でさえ任務で減ってる一般的な座学の時間が減るんじゃないのかな? それにしても未熟な子供を動員しなくちゃ手が足りないって呪術師界隈も大変だよね」

 

「座学かあ。私も算数と国語と一般常識は学べって言われてるけれど忙しいなら受けなくっても良いわよね? ずっとゲームしていたいし」

 

「駄目に決まってるんだろうがよぉ。お前は少し頭の使い方を学べよぉ」

 

「そうだぜ? もう直ぐ天元が体を新しくする時期だし、今の内に学んどかないとさ。……もしかしたら上弦の壱になるだろう”彼”の出番も有るかもね」

 

「ああ、あのお爺ちゃんね。いやいや、それはないんじゃないの? 私とお兄ちゃんが居ればだいたい大丈夫よ」

 

「さて、どうなるだろうね」

 

 ……また面倒そうな事言ってやがる。勘弁して欲しいぜ。

とあるキャラクターの強化案

  • キャラメルマン
  • バイキンUFO
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