先祖はパワハラ上司らしい 自分は頑張ろう   作:ケツアゴ

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今回は繋ぎ的な


下僕と義兄

報告書

 

 以前より確認されていた呪力の空白地帯の乱れを観測。同時期に起こった各地の公害汚染物質の消失現象の際に確認されていた児童を二つの空白地帯に含まれる小学校の生徒及び住宅の住民と確認。

 

 周辺地域で活動する”窓”が知人だとして同行を要請。児童との接触を計る事とする。

 

 尚、未確認事項ではあるが特級に匹敵する呪霊が児童と行動を共にするという情報も有り。接触の際は支援を要請する。

 

 

 

 

「やれやれ、前々から聞いてはいたが此処までとはな……」

 

 指令を受け報告書にあった日本家屋の前までやって来た夜蛾は周囲から一切の呪力を感じない事に驚いていた。

 呪力とは人の負の感情から発生するエネルギーであり、呪霊を形作る物。故に病院や学校、ホラースポット等に多く集まるのだが、此処に来る前に立ち寄った小学校も目の前の家と同様に不自然な程に呪力を感じない。

 

「それで件の少年は親戚だったな? 狛治」

 

「はい。事故死した俺の妻の弟で、普段やっている道場の門下生です。前から呪霊が見え始めた様子が有ったので接触すべきか相談していたのですが……」

 

 (俺の妻が死んだのはあの子の出産予定日の数日前の事、近所の剣道道場の師範の息子の飲酒運転による事故だった。妻が死んだ後も親戚付き合いは続いているし、俺にとってあの子は自分の弟と同じ存在だ。……人違いなら良いのだが)

 

「その時期と空白地帯の乱れが発生した時期が合うとなると間違いは無さそうだな」

 

 調べた限りでは数百年に遡っても非呪術師の家系であり、他の親族にも呪霊を見る力の持ち主は存在しなかった事から偶に存在する突然目覚めたケースだと夜蛾は判断する。

 

「その子……確か創示君は七歳だったな。空白地帯が突然発生した時期から考えて何らかの術式を無意識に使っているという事か。共に行動する呪霊の情報も考えれば確認の結果次第では保護をした方が……」

 

 調べる限りでは一般家庭の出であり、呪詛師の可能性は極めて低い。ならば無自覚の呪術の行使だろうし、保護が妥当だと判断した夜蛾は狛治を連れて来たのは正解であったと思う。

 呪霊に視線を悟られない為のサングラス姿だが、任侠映画に出番がありそうな強面の自覚は有ったからだ。

 

 問題があるとすれば共に行動していたという呪霊だが、家からその様な気配は一切せず、今は居ないと判断した。

 

 声が背後から聞こえたのはその時だ。

 

「ああ、それは助かるな。俺じゃあ教えてあげられる事に限界があるし、餅は餅屋だ。俺の主の保護を頼むよ」

 

「「!」」

 

 突然響いた声と感じる強大なな呪力。二人が乗って来た車に寄りかかる呪霊は報告書にあった見た目に合致する。感じる力も大袈裟な話ではなく特級に分類される規模。

 

 だが、夜蛾が気になったのは呪霊の言葉だ。

 

「主……だと? この家の少年の事か?」

 

「ああ、その通り。まあ、千年前に結んだ縛りで俺はあの子に仕えてるのさ。取り敢えず中でお茶でもどうだい? 茶菓子でも出すよ」

 

 呪霊の姿が消え、二人の背後の門が開く音がする。振り向けば件の呪霊の姿があり、ヘラヘラとした笑みを浮かべながら手招きをしていた。

 

 

「虎穴に入らずんば、か。おい、お前は戻って……」

 

「いえ、創示は俺の生徒で……弟ですから」

 

 下がる気はないと判断した夜蛾は狛治の同行を許可し、警戒を最大限にしながら家の中に入っていった……。

 

 

 

 

 

「それで笑えると思わないかい? 術式に拘る余りに子孫達の呪力を一切残らず奪い去り、その結果として呪術師の一族である事すら忘れられているんだからさ」

 

 突如現れて家の中に招き入れた呪霊……童磨は流暢な言葉遣いで比較的友好的な態度で接して来た。”信用出来ないだろうから”と口にして嘘を言わない事と互いに非戦闘という条件で縛りを結ぶまでして、語るのは鬼邸家の千年前の先祖の話。

 

「……無惨か」

 

 どうやら夜蛾さんは知っているみたいだが俺は聞いた事がない。それよりも俺には気になる事があった。

 

「おい、創示は無事なんだろうな? あの子に何かあった時は……」

 

「勿論無事だよ。あの子は俺の主だって言っただろう? 狛治殿。狛治殿じゃ俺には到底敵うまいが、その蛮勇は評価するよ」

 

 ヘラヘラと笑う顔を向けて来る呪霊には苛立ちしか感じない。言葉の全てが軽薄で胡散臭い。縛りを結んでも言葉に信用に足る重みを感じないでいた。

 

「しかし自らと同じ術式を持たないで生まれた一族への扱いもそうだが……思い遣りと口にしながら家族を奪う行為には反吐が出る」

 

「だろう? 主もそれで呪術師になる覚悟を決めたんだが、健気だとは思わないか? そんな動機じゃ途中で死ぬ事になったり自分の行いを嫌悪する時、絶対に家族を恨む事になるのにさ」

 

「……だったら何故それを口にしない。止めるのが筋だろう」

 

 何で此奴と創示が共に行動しているのかを聞き、そうなる様に誘導した此奴を俺は絶対に許さないだろう。

 だが、お前は違うぞ、創示。一番辛いのはお前で、悪いのは無惨とやらと童磨だ。

 一番苦しんでいるお前が何で茨の道を進む必要が有るんだ。

 

「いやいや、だって俺は主の意思を尊重するだけだからね。おっと、縛りを結んでいるのを忘れたのかい? これ以上主の周りから誰かが消えるのは辛いから止めてくれよ」

 

「……狛治」

 

 振り抜きそうになった拳は夜蛾さんに掴まれ、目の前の男にたたき込めない。俺の拳が効かないのは分かっているが、それでも……。

 

 いや、駄目だ。一番怒るべきなのがあの子なら、俺の役目はなんだ? あの子を守る事だ。

 

 

「夜蛾さん、保護が決まった後、俺が身元引受人になります」

 

「そうか。では任せる。……この先に居る様だな」

 

 何度も来た家だから目の前の襖が居間に続いて居るのは知っている。遊びに行けばテレビを見ていた皆が出迎えてくれた場所だ。

 

「創示、入るぞ」

 

「先生!?」

 

 声を掛ければ驚いた声が聞こえ、襖を開ければ何時もと同じく座椅子に腰掛けた創示の姿がある。だが、何時もなら座椅子に座った誰かの膝に座って居たのに今は一人だ。

 

「えっと、先生も呪術師だったの? そっちのヤクザみたいなオジさんは誰?」

 

「いや、俺は呪術師ではない。そんな事より……辛かったな」

 

 少しショックを受けた夜蛾さんを置き去りにして俺は創示を抱き締めてやっていた。妻が死んだ時、俺は悲しくて泣いた。だが、此奴は未だ七歳で祖父母と両親を急に失ったんだ。俺なんかの悲しみなんてそれに比べれば小さな物だろう。

 

 

 

「じゃあ俺は茶菓子の準備をしてくるし、主はその間に術式の説明でもしておいてくれ。呪霊も呪術も呪物すら喰らい自在に操る無惨から受け継いだ物のさ」

 

 ……呪術師にならずに過ごせと説得はするが、もし駄目なら此奴を殴り飛ばす為の修行はきっちりと付けてやろう。

 過酷な世界で生き抜く為に。大切な家族を恨む時が来ない様に……。

とあるキャラクターの強化案

  • キャラメルマン
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