先生と夜蛾さんが訪ねて来る数日前、僕と童磨の二人で行く公害発生源場ツアー出発日まで僕が受け継いだ術式を始めとした呪術の授業が行われていたんだ。
「君の術式の根幹は”変化”。変化ってのは劣化だの何だの言って嫌い、”不変”が好きだって言っていたんだから笑えるんだけどね。その術式の為に君以外から呪力を奪ったんだから尚更だ。ああ、何て哀れなんだろう。呪術師とは特権階級で選ばれた人間だって教わりながらも使えないんだから。ほら、じゃあさっき試したみたいに使ってご覧」
心は空っぽで性格は”糞のどぶ川煮込み ~腐敗した生ゴミを添えて~”みたいだけれど、童磨は能力だけは高いらしく教え方も上手だ。これがなかったら絶対に他のが残されて、此奴は絶対に消されていただろう。
寧ろ多少能力が落ちてもマトモな性格のにしなかったのか問い詰めたいけれど、無惨は童磨と同レベルだから多分他のも大概だと思う。
自称芸術家のナルシストとか承認欲求の塊とか居そうな気がするよ。
……僕の目標は術式の継承に伴って心の奥底に居るらしい無惨の撃破、そして縛りによって消えた家族を取り戻す事。この童磨は嫌いだけれど、その為には何だって利用してやる。
それにしても……。
「縛りって強制するのは難しいんだよね? それを何代にも渡って自分の死後も結ばせてるって割りには、お前の性格をどうにか出来なかったの?」
「ちょっと口が過ぎるぜ? 無惨様は能力が高いのに行動がお粗末様だったのは認めるけれど。名前も頭も無惨だよね」
「いや、口が過ぎるのはどっちだって話じゃない? ……ま、良いか」
相変わらず表面だけショックを受けた振りをしている童磨に教わった通りに呪力を操って術式を発動させる。僕の目の前で空中が上下に裂けて巨大な口が出現したんだけれど、牙が鋭くって鬼か何かの口みたいだ。
試しに中に頭を入れて覗き込んで見たけれど凄く広くてどれだけ物が入るのか分からない。お祖父ちゃんみたいな口臭がしなくて良かったな。
「おいおい、躊躇無く頭を突っ込むとか君もイかれてるな。俺は下僕兼指導者として心配だぜ」
「胡散臭っ。所でこれって何の役に立つの?」
「そう言えば詳しく教えていなかったっけ? 術式の名前は”十二鬼月”。それにちなんで上弦と下弦それぞれ六体ずつの呪霊を創り出して従えたり出来るんだ。因みに俺は上弦の弐さ」
僕の顔に自分の目を近付ける童磨。目潰ししてやろうと見ると両目に文字が浮き出していた。……えっと、何て読むんだろう?
「……呪霊を創り出す?」
「うん、そうだよ、先生。えっと、先ずこれを見て欲しいんだけれど……」
「これは……!? 呪力の結晶だと? いや、負でも正でもない言わば無色の……」
僕が口を出現させると中に手を突っ込んで砂利位の大きさをした透明の物体を取り出して手渡す。呪力が無い人には見えない物だけれど、呪術師にはどんな物なのか分かるのか夜蛾さんには分かったみたい。
「これは一切の方向性を失った呪力の結晶で、握り潰したら呪力が回復するらしいよ。コップの中身以上は注げないみたいに限度が有るらしいけれど。ついでにこっちが負の方で、こっちが正の方。これは握ったら怪我が回復する」
「正の力……。その年齢で反転術式が使えるのか」
「童磨には普通の呪力より攻撃が通るらしいからって頑張って覚えたよ。……本人がタフだから大して効果が無かったけれど」
「教えたのは俺だぜ。教える為に無理矢理覚えさせられたからね。……呪霊を創る方は今から見せた方が良いか。さて、この結晶は無色だけれど、方向性を持った呪力を後から足せば全てを染める事が可能だ。ごちゃ混ぜになった負の念よりも一方向に力を注いだ方が強いんだ。俺が冷害やら雪害とかの寒さへの畏れを元にしたみたいにね」
テーブルの上のお茶に童磨が指を伸ばせば瞬く間に凍り付く。夜蛾さんや先生は呪術を使った童磨に警戒を見せるけれど、童磨は気にせず倉に保管していた呪物を取り出した。
「無惨様の縛りの一つに”呪物を収集する”ってのが有ってさ。見えもしないのに無意識で集め、外に漏れない呪術を使った倉に貯蔵していたよ。大抵は口に入れて呪力を搾り取るだけなんだけど……この二つは面白いのが創れそうだから取っておいたんだ」
「じゃあ、早速」
童磨が出したのは結構古いのかボロボロの鎌と簪。凄く強い呪力を感じるんだけれど、互いに結び付いて離れまいとしているんだ。もしかして持ち主は家族だったのかな?
「いや、待ちなさい。君の力を試す必要は有るが……ちゃんと準備を整えた場でだ」
「此処で創り出すのは不安材料が多いからな。大丈夫、俺も一緒に行くから呪術高専の施設に行こう。其処で試すだけ試した後はお前の保護を開始するから」
夜蛾さんが慌てた様子で僕を止め、先生が優しく語り掛けて来る。……うーん、確かに不安だよね。童磨の奴に乗せられてたよ。
「じゃあ、今から向かうが高速のインターチェンジでお昼ご飯にしよう」
夜蛾さんと先生と一緒に大きな車に乗り込み、童磨は口の一つに入って貰った。上弦に選ばれたら色々特権が有って、口の一つに個室を与えられるらしいんだ。
「まあ、俺達の生殺与奪の権利は君に委ねられているし、謀反を起こしても自動で処刑が行われるのは共通なんだけど。んじゃあ、俺は酒風呂にでも入っているよ。……昨日戦った三匹みたいに、その二人じゃ到底敵わないのに襲われたら助けに入るけどね」
ヒラヒラと手を振りながら口の中に童磨は入って行く。
「先生、生殺与奪って何?」
「彼奴を好きな時に退治出来るって事だ。ほら、シートベルトをちゃんとしておけ」
「はーい」
まあ、どうせ術式を使いこなせない今の僕じゃ無理だろうし、彼奴って嘘を禁じられていても勘違いさせれば良いやって性悪だし……少し眠くなって来たや。
昨日は夜遅くまで起きていたからか車の揺れの心地良さもあって僕は眠りに落ちて行った……。
「……夜蛾さん、創示はどうなるでしょうか?」
「危険視される一方で能力は役に立つ。まあ、監視を付けるのは確定だが秘匿死刑にはならないだろう。……あの童磨という呪霊も情報を小出しにして自分に易々と手を出せない様にしているな。千年前に鬼邸無惨……鬼舞辻無惨に仕えていた特級呪霊か。随分と情報を持っていそうだし、従属の縛りも有るから除霊するにしても延期だろう。不愉快な事だが。……しかし、海やら山やらで公害物質を消していたのが呪霊の力らしいが、随分と子供らしい名を付けたな」
「”怪獣”とまで付けていますからね。絵本か特撮番組にでも影響されたのでしょう。……公害怪獣ヘドラ、一体どんなのやら。ああ、確か二年生に呪霊を使役する特級呪術師が居るそうですね」
戦った三匹 どこの火山頭と植物と海洋生物なんだろう
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とあるキャラクターの強化案
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