陰キャな私のバンドライフ   作:ハナルナ

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どうも、ハナルナでーす。
お久しぶりです。実に7ヶ月ほど投稿していませんでした。
少しずつですがまた投稿していきたいと思います。


10話 人の黒歴史はそっとしておくのが吉

「Vtuber………」

 

 それを知ったのは中学生になってすぐの頃だ。この頃も陰キャは健在であり、私には友達と呼べる人物が一人もいなかった。自分で言ってて悲しい。

 そんなある日のこと。いつものようにクラスで自分の机にポツンと座って気配を消していたところ、ふいにクラスの女子が話している会話が聞こえてきたのだ。

 最初は気にしていなかったのだが、どうやら話題の中心になっているのはそのVtuberというものらしい。

 

『今ってさー、VTuber?っていうのかな?そういう人たちの時代なんだね』

『なんか可愛い女の子とか男の人がバーチャルな世界で活動してるんだっけ?』

『そうそう!私もちょっとだけ見たんだけどさ、結構可愛かったよ!』

 

 Vtuberという存在自体は知っていたものの、当時の私はその言葉を聞いて少し興味を持った。

 だがしかし、それは所詮インターネットの世界に存在する架空の人物。現実の世界には存在しないものだと思っていたし、そんなものに自分が心惹かれるとは思えなかった。

 だが………

 

「……すごい」

 

 その数日後、偶然にも見かけた動画サイトでとある有名なVtuberの配信を見た。そこで彼女は歌ってみた動画を上げており、その姿を見た瞬間に私の胸は大きく高鳴った。

 それからというもの、私は毎日のように彼女の配信を見ては歌を聞いたり雑談を聞いたり。時には他のVtuberさんとのコラボもあり、彼女が多くの人と交流していく様子はとても楽しそうだった。

 そしていつしか、私の中の感情が大きく変わっていった。

 

 ――この人みたいになりたい。

 ――笑いたい。

 ――誰かと一緒に楽しい事をしたい。

 

 気づけば私は、Vtuberという存在に憧れていた。

 そこからはもう、一直線だった。誕生日やお年玉を3年分前借りして安い配信機材を揃えたり、週末は一人でカラオケに行って歌の練習をした。幸いなことに、両親はそこまで口うるさくなかったので私が何をしようと特に何も言わなかった。

 そしてついに迎えた中学2年になってすぐの頃。私は親を説得して、晴れてバーチャルの世界へと足を踏み入れた。

 これがVtuber“咲夜ハナ(もう一人の私)”の始まりである。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

ーーーーー

 

ーー

 

 

 誰しも、思い出したくない過去というものがある。

 例えば、人前で恥ずかしい思いをしたり、取り返しのつかない失敗をした時などがあるだろう。しかしそれは普通に生活していれば未然に防ぐ事がある程度可能である。

 だが、陰キャにとっては普通に生活していても恥ずかしい思いをする事が多々あるのだ。ゆえに、人の倍以上の黒歴史がある。

 そしてその事を指摘されると人は、大抵こう答える。

 

「えっと………何のことですか?」

 

 と……。

 これは嘘である。人間は忘れる生き物ではあるが、決して記憶力が皆無な訳ではない。むしろ逆で、物凄く鮮明に覚えているものだ。

では何故、この質問をすると“知らない”と言うのか? 答えは簡単だ。

 

 ーー都合が悪いから……

 

 自分の黒歴史を隠すために人に嘘をつく。人間として最低な行為であるが、これは仕方がない事でもある。

 そうでもしないと、やっていけない事が世の中には存在するからだ。

しかし、この嘘は一部の人間には効果がない。

 

「配信の時と喋り方は違うけど、私の耳は誤魔化せない」

 

 例えば、“私以上に私の事を理解してくれている人物”には。

 

「……」

 

 私は今、人生最大のピンチを迎えていた。

 

「ねぇ、どうして目を逸らすの?」

「だって、あなたの事知らないし………」

「この前本屋で話したよね?」

「うっ…」

 

 そう。この子はこの前本屋で出会った少女なのだ。

 だけど私は名前までは知らない。ただ、彼女は私の事を知っている。しかも、私の過去まで………。

 

 正直に言うと怖い。

 彼女の事は知らないけれど、きっとヤバい子なのは分かる。このまま会話を続けたら何をされるか分からない。

 だから早く逃げないと……!

 

「あ、もうすぐ授業始まる!じゃあね!」

「ストップ」

「ひぃ!?」

 

 後ろを振り向いた瞬間、手首を掴まれてそのまま壁に押さえつけられる。これが俗に言う壁ドンってやつだろうか?(多分違う)

 そんな呑気なことを考える暇もなく、目の前の少女は真剣な表情を浮かべながら言った。

 

「ねぇ、あなたが咲夜ハナなんでしょ?」

「し、知りませんねぇ………?」

 

 これまでにないほどの圧を受けながらも、私は必死に嘘をつく。頼むから解放してくれ〜‼︎

 

「…………分かった。そこまで言うなら」

「へ?」

 

 あれ?意外と早く解放してくれた………。

 よかっt

 

『こんハナ〜‼︎夜に咲く一輪の花こと、咲夜ハナでーす‼︎』

「ぎゃぁぁあああああああああ⁉︎」

「いいよね、この挨拶」

 

 よくないよ‼︎なにいきなりスマホ取り出して私の初配信動画を爆音で流してるの⁉︎頭おかしいだろ‼︎

 

「あと、この動画なんかも」ポチッ

『今日はペ○ヤングの激辛MAXエンドを何分で食べれるか挑戦していきまーす‼︎ズゾゾゾゾッ!!ゔぇっほぉおおおおお⁉︎』

「ぎゃああああああ⁉︎やめろー!!!」

「面白いよね」

 

 あの時はノリでやった企画だけど、今になって見たら黒歴史以外の何者でもない‼︎

 

「うぅ………アーカイブ消しておくべきだった………」

「さて」

 

 項垂れる私をよそに、彼女は話を進めていく。

 

「あなたは私に嘘をついた。それは許されないことだよ」

「うぅ……ごめんなさい」

「許さない。罰を与える」

「そ、それだけは勘弁して下さい‼︎」

 

 必死に懇願する。すると、彼女はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「ふーん……じゃあ、あなたの全てを聞かせてもらうよ?」

「わ、分かりましたぁ……」

 

 こうなった以上、全てを話すしかない。私は諦めて全てを白状することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流石にあと数分で授業が始まる状況でゆっくり話す事は出来なかったので、放課後に再び会う事になった。

 そんな私が待ち合いの場所として呼び出されたのが、まさかの………

 

「せ、生徒会室………」

 

 どうやら彼女は生徒会役員だったらしく、ここなら二人きりになれるとのことだった。思えばお昼の放送の時のお便りも、彼女が生徒会役員なら私に読ませることは可能だ。

 扉に手をかけて考える。ここを開けて中に入ればあの時の事を話す事になるのは目に見えている。しかし、今ここで何も知らないフリをして帰れば話さなくていいのでは?と。よく考えれば簡単な事だった。そっか、このまま帰ればいいんじゃん。あー、なんでこんな簡単な事今まで思いつかなかったんだろ。さて、帰ってゲームでもしますかー。

 

「あ、やっぱり来てた」

「遅くなってすみませんでした」

 

 踵を返して帰ろうとした瞬間に向こうからドアを開けられた。もう逃げられないようだ。観念しよう。

 

「じゃあ行こうか」

 

 そのまま私は彼女に促されるままに部屋へと入った。そして、彼女についていく形で部屋の奥まで行き椅子に座った。

 

「まず自己紹介かな。私は一年B組の速水悠。あなたは花村杏さん」

「うん、分かってますよ?なんで確認したんですか?」

「もしかしたら人違いかなって思って」

「ここまで来て人違いだったらしばき回しますからね?」

「怖いなぁ」

 

 全然怖そうじゃない。なんだこの余裕のある感じは。これが生徒会のやり方かっ‼︎くっ、悔しい!

 

「まぁ冗談はこれくらいにして。単刀直入に聞くけど、あなたは咲夜ハナでOK?」

「………はい。それで合ってます」

「良かった。ずっと会いたかったんだ。私、本当にあなたのファンだから」

「あ、えっと………ありがとうございます……」

 

 彼女の真剣な眼差しから、多分この言葉は嘘ではなく本心なのだろう。正直私の過去を知ってる事に対して怖い部分があるけど、素直にファンと言われて少し嬉しくなったのは事実だ。だって、こんな風に面と向かってファンですって言われたことなんてないもん。

 

「あの、どうして私の事を?」

「うーん……どこから話せば良いのか分からないんだけど、そうだね……まずは咲夜ハナの好きなところを挙げていく事から始めようか」

「そ、それは恥ずかしさでどうにかなりそうなのでやめてください!」

 

 いきなりとんでもない爆弾発言が来た。待って待って。好きとかそういう言葉軽々しく使わない方が良いと思います!勘違いする人もいるかもしれないんですよ!?(自分がまさにそれ)しかも目の前にいる人がその張本人だし……。

 

「大丈夫だよ。ちゃんと考えてるから」

「へ?何をですか?」

「まず、アバターの見た目が好き。それから声も好き。性格も好き。歌も好きだし、それといつも笑顔を絶やさないところがすごく可愛い。それに、一生懸命頑張ってる姿を見ると応援したくなるんだよね。あと、料理配信で不器用ながらも一生懸命なところも好き。あ、もちろんそれ以外の事も全部好きだよ?それから……」

「ストップ、ストーップ‼︎」

 

 その後も延々と続きそうな勢いだったので慌てて止める。これ以上続けられたら本気で心臓が持たない。というか、顔が熱い。絶対真っ赤になってる自信あるわこれ。

 

「何?まだ半分しか言ってないんだけど?」

「言わなくていいって言いましたよね⁉︎」

「本当に咲夜ハナのファンか疑ってるような目をしてたから………」

「いえ十分ですよ。もう分かりましたから」

「分かったなら良かった」

 

 くっ、この人本当に何を考えているか分からない!表情が顔に出ない事に加えて淡々と喋っていくから掴みどころがない!これまでの人生で初めて会うタイプかもしれない。

 

「あ、そうだ。一つ聞きたいことがあるんだけど」

「なんでしょうか」

「なんで配信をやめたの?」

「っ………それは…………」

 

 予想していた質問ではあったが、いざ聞かれると答えに詰まる。自分の中ではもう終わった事だけど、それを他人に話すとなると躊躇ってしまう。

 

「あ、話したくないなら言わなくていいよ」

「へ?」

 

 いきなりの言葉につい間抜けな声が出てしまった。え?言わなくていいの?自分から聞いておいて?

 

「どこまでがセーフでどこまでがアウトなのかを知りたかった。無理やり話させるのは気が引けるから」

 

 うーん………やっぱりよく分からない人だ。こっちだってそれ相応に覚悟してここに来たのに、何も聞かずにはい終わりとなるとは。まぁ言いたくないことではあったから良かったけど。でも………

 

「じゃあ、なんで今日呼んだのです?」

「うーん…………」

 

 そう質問すると、速水さんは少し考えて、こう言った。

 

「いちファンとしての感想だけど、今の花村さん、昔みたいに笑えてないように思えたから、かな?」

「………え…?」




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