最近DTMにハマってます。
『今の花村さん、昔みたいに笑えてない』
そう速水さんから言われた言葉が、頭の中に残り続けている。正直、そんな事を言われるとは微塵も思ってもいなかった。まぁたしかにここに入学してからロクなことがなかったけど、笑えてないつもりはなかった。
だから、笑えてないと言われて少し戸惑ってしまったのだ。
「……あーもう! 」
頭をブンブンと横に振り、余計な考えを払拭する。そして私は、自分の頬を思いっきり引っ叩いた。パンッという乾いた音が部屋に響き渡る。
「ちょ、花村さん大丈夫?」
「あ、すみません……ちょっと考え事してて………」
私が急に自分の頬を叩いたからか、星川さんが心配してくれた。
「もしかして、ライブで歌う曲を考えてくれてたり?」
「絶対に歌う気はないので安心してください」
ただでさえ悩んでるのに悩みの種を増やしてくるなこの陽キャめ。
そうだ。今は速水さんの言葉の意味よりこの現状をどうにかしなければいけない。
私たちが今いるのは俗にいうライブハウスという所だ。バンドをする人がスタジオを借りて練習をしたりする場所である。なぜこんなところにいるのかと言うと、それは昨日に遡ることになる。ていうか昨日色々ありすぎな。
***
速水さんと別れ、帰宅しようとしていた時のことだった。
「あ、花村さん!待ってたよ〜」
もう日も沈みかけている時間だというのに、教室に星川さんが待っていた。リラさんと岸峰さんもだ。
「明日、スタジオ借りて練習したいんだけど花村さんも行くでしょ?」
「練習……?何のですか?」
「今度のライブに向けてよ!予約今日のうちに取らなきゃだから、花村さんずっと待ってたのよ」
え、私を待ってたんすか。
「いやでも私楽器とか弾けないですし……」
「大丈夫だよ〜。私だって初心者だし!」
「何が大丈夫なんですか………?」
「それに、花村さんはボーカルだから楽器の心配はいらないわよ!」
「だから、やるって一言も言ってませんよね………?」
「じゃあ明日4人で予約入れるね!」
「聞けー」
人の話聞いてくださいお願いします。
結局そのまま押し切られてしまい、次の日の放課後、私たちは練習をしに行くことになった。
「というか、何で教室で待ってたんですか?」
「だって花村さんの連絡先誰も知らないんだもん」
あ、交換するの忘れてました………
***
というわけで現在に至ります。あの後帰宅しながら皆さんと連絡先を交換してちょっぴり嬉しくなったのはまた別の話。
「みなさんでバンドを組めるの、すっごく楽しみにしてました!」
リラさんが目を輝かせながらそう言った。その横では岸峰さんがこくこくと首を縦に振っている。まぁ岸峰さんの場合、みんなでというより星川さんとの方が大きいような……
「ていうか岸峰さん、ドラム出来たんですね」
「いや、ちゃんと叩くのは今日が初めてだ」
「え?普通に叩けてるような………」
「ルルナさんからバンドに誘われたその日から空き箱とかでみっちり練習したからな!」
「あー……」
確かに、この星川さん信者ならやりかねない。
「よし!それじゃあさっそく始めようか!」
「はい!」
「おぉ!」
まぁ、そんなこんなで、私たちのバンド活動が始まったのでした。
「いける気がしない………」
バンド活動が終わりました。
「諦めるの早くないですか⁉︎」
始めて早々、星川さんが弱音を吐いた。さっきまでの勢いはどこに行ったのか。
「ベースってギターより簡単って聞いてたからいけるかなって思ってたけど、全然難しい………」
「当たり前です」
むしろそこまで自信があった方が驚きだ。というか………
「この中で楽器経験あるの、冷静に考えたらリラさんだけじゃないですか⁉︎」
バンドしようってずっと誘われてたから相当自信があったのかと思ってたけど、まったくそんな事はなかった。
よくよく考えればメンバーはRoselia大好き陽キャにイギリス人少女に星川さんガチ勢のヤバいやつしかいない。まったくイカれてやがるぜ!私はやる気ないのでメンバーに含まれませんどうぞ。
「ワタシもギターがそれほどウマイわけではないので、どちらかというとショシンシャですね」
「本当!?」
リラさんが手を挙げてそう言うと、星川さんが食いついた。
「ハイ!イッショにガンバりましょう!」
「うん!」
「……なんだろう。すごくモヤっとする」
初心者といっても差に限度があり過ぎる気がする。だってさっきのリラさん凄い速さで指動いてたもん。ギターにあまり詳しくないけど、絶対初心者の域を超えてる気がする。
「とりあえず、今日は自主練習という形にしたらどうですか?聞いてた感じ、まだ全体で合わせるっていうレベルでもないですし」
「でも早く形にしないと、ライブまで2週間しかないんだよ?」
「形にする前に基礎が出来てないんですってば!ていうか、このレベルでライブに参加するって言った事が不思議でならないんですが⁉︎」
私の意見に賛成なのか、リラさんと岸峰さんはコクりと首を縦に振った。それを見て星川さんも渋々頷く。
「じゃあ、花村さんは何か歌ってくれたりしないかな?」
「だからやりませんってば」
目をウルウルさせて懇願してくる星川さん。この人どんだけ私を歌わせたいんだよ。ファンか?
まあ自主練習なら私の出る幕じゃないし、今日はもう帰らせてもらおうとしますかね。
「どうしてこうなった………」
数分後、それぞれが自分の練習に励む中さっきまでいなかったはずのメンバーが増えました。
「杏ちゃんも一緒に練習しよ!」
「帰っていいですか?」
「え〜、せっかく来たのにそれはひどいよ〜。よよよ〜」
「パン食べながら言っても説得力無いですよ………」
そう言いながら椅子に座っている私を挟むように青葉先輩と上原先輩が抱きついてくる。あまり人に触られるのは好きじゃないけど、大きさの違う2つ、いや4つの膨らみに心地良さを感じている自分がいる。お巡りさんこちらでーす。
なぜAfterglowの皆さんがここにいるのかって?説明しよう!スタジオを後にしようとした我々だったが、そこでちょうど練習をしに来たAfterglowさんと出会ってしまった。そしてなんやかんやあって先輩達に楽器を教えてもらおうという流れになったのだ。説明終わり!
「ひまり先輩、この次は………?」
「あ、そこはね〜……」
星川さんに呼ばれて私から離れる上原先輩。残念、もっと堪能したかったのに………
「杏、お前………」
「大丈夫です。自分でも正直気持ち悪いなって………」
岸峰さんに若干引かれたけど、しょうがない。夢を見て何が悪い!男の夢は終わらねぇ‼︎
失礼、私女でした。
「スミマセン、蘭先輩。せっかくのレンシュウをジャマしてしまって………」
「気にしなくていいよ。こうやって教える事で私達もいい刺激になるし」
ふと目を向けるとリラさんと美竹先輩がギターを弾きながら話していた。ちなみになぜ青葉先輩が教えてないのかというと、教え方がアレだからとのこと。なんとなく言いたい事は分かる。
ていうか、リラさん教えてもらう必要無い気もするけど。
「みんな熱心ですな〜」
「頭にアゴを乗せないでください」
「乗せ心地がいいんだよ〜」
「その状態でメロンパン食べないでください!顔にポロポロ落ちてくるんですが⁉︎」
ほんとマイペースの擬人化だなこの先輩は!
「あはは……モカちゃん、後輩を困らせちゃダメだよ?」
「ほんと羽沢先輩は天使ですなぁ」
「うぇっ⁉︎」
ヤバい、口に出てしまった。私の周りがアレな人ばかりだから、羽沢先輩が天使に見えてしまう。久しぶりに会っても変わらない安心感。まさに普通の擬人化!あ、いい意味でですよ?
「え、えっと………あ、ありがとう……?」
こちらこそ、ありがとうございます!
「にしても、2週間後にライブってまた思い切った事したなー」
と、宇多川先輩が声を上げる。まあ当然そう思うわな。私も思ったもん。むしろ思わない方が不思議だ。
「やっぱり、そうですよね。花村さんにも言われました」
「いや、それが普通ですって」
普通じゃないのはあんたと、それを疑問に思わない他2人だよ。
「でも、みんなでバンドしたいっていう思いの方が先走っちゃって、気づいたらライブの予定まで立ててて……」
「………」
星川さんの気持ちもなんとなく分かる。星川さんがずっとガールズバンドに憧れていたという話は何度も聞いていたから。
「技術も準備も何もかもが大雑把ですけど、それ以上に今がすっごく楽しいんです!」
「星川さん………」
たしかに今の星川さんを見ていると、毎日を誰よりも楽しんでいるように思える。いや、星川さんだけじゃない。リラさんも岸峰さんも、一緒にいる時はずっと楽しそうに笑っている。
あれ?じゃあ私は………?
私は、今この瞬間を楽しめているの………?
「まあ私たちが楽器出来なかったとしても、花村さんに歌ってもらったらなんとかなります!」
「いい話だと思ったらすぐこれだよ!」
星川さんのことちょっとは見直してたのに、最後の最後でぶっ込んできやがってこの陽キャが。
やっぱり陰キャと陽キャは相容れない存在なのだ。
その後、なんやかんやみんなで練習した後にファミレスでご飯を食べて帰路についた。
なんか大事なことを考えていた気がするけど、陽キャオーラにあてられてそれどころじゃなかった。
ただ………
「私たちも自主練頑張るから、花村さんもボーカルの件考えててね!」
「………考えておくだけですよ」
この人達とバンドを組んだら、私も毎日を楽しめるのかな?
不服だけど、そう思った自分がいた。
最近『ぼっち・ざ・ろっく』に似てると友人から言われましたが、全く関係ありません。
でも、原作を連載開始当初から見てるほど大好きです。
(というか、きらら作品全般大好きです)