最近ルービックキューブにハマってます。
前回のあらすじ!
星川さんの思いつきで2週間後にライブをやる事になった私達は、スタジオを借りて練習を始めた。しかし、メンバー全員がほぼ初心者だった!このままじゃ一曲演奏するどころか合わせることもできない。そこで私達は一般通過Afterglowの皆さんの力を借りて一から基礎を叩き込んでもらう事にしたのだった。もちろん私は見学だけどね!あらすじ終わり!
そんなこんなで次の日の学校です。時刻は朝の7時半。何故こんな早い時間に学校に来ているのかというと、
《明日朝7時半に学校集合!よろ‼︎》
というメッセージが昨日星川さんから来たのである。ちなみにこれが伝えられたのは深夜2時。いくらなんでも急すぎるわ。その時間まで起きてゲームしてた私も私だけど。
そして現在、私達は星川さんがベースを弾いているのを椅子に座って見ていた。
「どう?」
「成長速度バグってません?」
星川さんの演奏は、素人の私から見ても昨日の上原先輩に引けを取らないほど上達していた。
「昨日の今日で上達早すぎませんか?」
「私って始めるのは遅いけど、始めたら早いのよね〜」
いわゆる天才型か。羨ましい限りです。
「流石ですルルナさん。私も負けてられないですね!」
「これならホンバンに間に合いそーデスね!」
「でも、まだまだやる事はいっぱいあるんだよね〜。やる曲もそうだし、衣装から何やらもだし………セトリ表ってのも書かないとだし」
星川さんの言うとおり、演奏以外にも準備する事はまだまだある。楽器が弾けるようになったからといってライブに出れるとは限らないのだ。
「曲数はだいたい三曲ぐらいを考えてるかな。最近有名な曲を二曲ほどカバーするとして………一曲オリジナルを作ってみようと思うんだよね」
「また急ですね。もう慣れましたけど」
星川さんがサラッと重要な事を言ったけど、もうこの程度で動じなくなった自分がいる。星川さんの思考はだいたい読めるようになった。星川さんもよく私の心を読んでくるし、これでおあいこだね!
「でも曲作りって結構難しいんだよね〜。この前試しに作ってみたんだけど、ラーメンとチャーハンの歌しか出来なかったよ」
「なるほど。その日のご飯がラーメンチャーハンセットだということだけ分かりました」
むしろ何故それを曲にしようとしたのか。
「まあ時間もないしオリ曲は一旦置いておくとして、問題は機材等の準備だよね。私たち初心者だから、本番に最低でも何が必要か調べる必要があるし………」
「機材なら麻弥センパイが詳しいと思うので聞いてみマスか?今だったら演劇部室にいると思うので」
「ほんと?是非お願いしたいかな。やっぱり素人だけじゃどうにもならないしね」
そう言いながらリラさんとルルナさんは教室を後にする。そして、教室には私と岸峰さんだけになった。岸峰さんと初めて会った時は怖くて近寄り難かったけど、もう二人きりになっても怖くなくなった。慣れたものだ。
「よし、じゃあこっちは衣装でも決めるか」
「え、岸峰さん衣装担当なんですか?」
「どういう意味だよ」
衣装の用意はてっきりモデルの星川さんや演劇部員のリラさんが請け負うのだと思ってたけど、これは予想外だった。
「ルルナ様の魅力を最大限活かせる衣装を用意できるのは私だけだからな!」
「あー、そういうこと………」
その一言で納得がいった。やっぱり岸峰さんは岸峰さんだった。
「一応昨日も何着か候補をルルナ様に送ったんだぜ。ほら」
そう言ってスマホの画面を見せてくる岸峰さん。確かに、どれも可愛らしくて星川さんに似合いそうなものばかりだ。
ただ、
「これ、岸峰さんがいちいち着る必要ありました?」
どの写真も、岸峰さんが衣装を着て自撮りをしているものだった。
「いや、最初は服だけの写真を送ってたんだが、途中からルルナ様が『伊月が着てるところを見てみたい』と言ってきたものだから………推しの要望には全力で応えないとな!」
「それはなんとなく分かってましたけど、毎回手で顔を隠しながら自撮りするのやめません?なんかそういう系の写真みたいになってますよ?」
「普段こういう服着ないから恥ずかしかったんだよ。悪いか?///」
そう言いつつ少し照れた様子で顔を背ける岸峰さん。ちょっと可愛いかも。
「で、星川さんには褒められたんですか?」
「ま、まぁ………褒められはしたんだが………」
「???」
「………『まるで女の子みたいで可愛い』って………」
「あ………」
そう言う岸峰さんの目は笑っていなかった。多分褒め言葉のつもりなんだろうけど、悪意がない分よりキツい。
「それにしても、よくそこまで星川さんを愛せますね。いつから推してるんですか?」
「中学3年の頃からだから、一年ほど前だな」
「あれ?思ってたより最近………」
岸峰さんほどの信者なら、てっきりデビューした頃から知ってるのかと………
「歴なんて関係ねぇよ。好きな気持ちがあれば古参だろうが新参だろうが一緒だよ」
「なんか、いいこと言いますね」
「それが私の幸せだからな。昔は遠くから見ていた推しが今は一緒にバンドするような関係になって、今が人生のピークなんじゃないかって思ってるよ」
そう言う岸峰さんを見て、少し羨ましくなった。
陰の者とはいえ、周りと足並みを揃えるほどには生きてきた自信はあるけど、心から今が幸せと思った事は無いかもしれない。
高校に入って知り合いも増えて、毎日が充実してると思ってた。でも、心のどこかでそれを否定している自分がいたのかもしれない。私には、こんな日常は似合わないと思っていたから。
もしかして、速水さんの言っていた言葉の意味ってこういう事なのかな?
それってつまり………私、陽キャになりたいって思ってるってこと⁉︎
いやいや、私に限ってそんな思考に陥るわけないじゃないですか〜。
私はひっそりとおとなしく生きることを目標にしているんだから‼︎
うん、こんな事を考えてる事自体おかしい事なんだ。速水さんの言葉の意味がなんとなく分かったけど、気にしちゃダメだ!
「良かったですね。星川さんとバンドを組めて」
「おう!」
だから私は、当たり障りのない言葉を使う。
これからも私が陰キャとして確立していくために。
こんな私でも、周りと同じように過ごせるように。
いつか、この日常が終わったとしても心残りのないように。