「~♪」
腕の中で抱き締めた白織を撫でると、
心地好さ気に頭を預けて来る。
白織が体験した迷宮サバイバルは、過酷の一言で表すのも緩過ぎた。
まずは良く生きていてくれた事への感謝を伝えるべきだろう。
気が付けば、白織の頭を撫でていた。
「オリくんの事、聴きたい」
「こっちはド定番のスキル検証だ」
訳の解らないまま異世界転生して、
現実を受け入れると、直ぐに行動に出た。
異世界転生はスタートダッシュが命だ。
転生して直ぐに成長チート出来るかどうかで、
今後の異世界生活の全てが決まる。
幸い貴族の家に転生したらしく、
無力な赤ん坊時代にいきなり死亡!と言うオチは無さそうだった。
なら次は、何が出来るか?だ。
異世界のお約束で、スキルやら魔法やらの存在を知る。
自己検証開始。無力な赤ん坊の身だが、これなら寝転がりながらでも出来る。
転生したからなのか?初期からやたらとスキルポイントが有る。
初期ポイントは80000ポイントだった。スキルの修得し放題だ。
しかし焦る事無くスキルの効果を確認して行く。
まずはキャラビルドの方向性を決めなくては!
大雑把に言って、戦士系とか魔法使い系とかのアレだ。
趣味趣向で言うならやはり魔法使い系だが、
物理優遇のパターンも多い。
戦士系でガンガン範囲攻撃が出来るケースも珍しく無い。
戦士系も充分有りだろう。
「稀少鑑定(レアセンサー)。有った!」
だがまずは、獲得済みのスキルの有無を確認した。
あのDは言っていた。
それは魂に由来する貴方の能力だと。
案の定!稀少鑑定のスキルが、初めから使えた。
スキルポイントすら使っていない。
この稀少鑑定のスキルは?
ファンタジーお約束の鑑定能力と、
レアモノをセンサーで探す複合スキルだった。
初めはLV1で産廃スキル同然だったが、
頭痛と休息のループで、即行でLV10にカンストさせた。
今や鑑定は便利スキルと化し、
レアセンサーの有効範囲も飛躍的に向上した。
今では文字通りセンサーのように、レアモノが何処に有るかが解る。
「この方角、隣りの領地?
ケレン領か?」
既に地理は把握している。
まだ本を与えられる年では無いので、
透視系の魔法で、寝転がったまま本棚の本を読んだ。
次の一ページ先を調整して透視するのが、中々難しい。
魔力を操る練習にもなったが、無駄に困難な読書だったと思う。
どうやら隣りのケレン領の辺りに、素晴らしいレアモノが有るらしい。
自宅はサリエーラ国のサイサリス領。領主の家だったが、
自宅に有るどの財宝よりも強い反応が、ケレン領の方角からしている。
これは行くしか無いだろう。
≪【催眠LV1】を取得しました。残りスキルポイント78900です≫
意を決して、次のスキルポイントを切る。
100ポイント消費の、洗脳系下位スキル【催眠】だった。
最上位スキルの【色欲】も有ったが、どうにも罠臭いので修得を控える。
壊れスキルには、相応のデメリットが有るのがお約束である。
特にスキル名が七つの大罪なのが怪しい。
このスキルを作ったヤツが居たら、
「名前で気付いて下さい☆」とか言われそうだ。
↑イメージキャラは、あのDだ。ヤツの笑顔が綺麗に嵌った。
この催眠のスキルを使って、まず世話役のメイドの思考を誘導した。
誘導して母親に会う。次に母親も催眠誘導して領主の父親に会った。
最後に領主の父親も催眠誘導して、隣りのケレン領行きを促す。
ケレン領とは良好な関係を築いていて、
些細な理由でも訪問が可能な事は、既に把握している。
ケレン領には、同い年の領主の娘が居るらしい。
生まれた子供を自慢する、親馬鹿の役をやって貰う事にする。
差して強くも無い催眠で、父親は呆気無くケレン領行きを決めた。
本当は自慢したかったのかもしれない。
こうして家族でケレン領へ行く事が決まった。
赤ん坊の身で隣りの領地へ行くなら、この辺りが最適解だろう。
ケレン領には素晴らしいレアモノが存在する。
今はまだ、何も知らずに期待を膨らませていた。
†
≪【念話】を取得しました。残りスキルポイント78800です≫
即行で念話を修得した。
100ポイントの消費だ。躊躇いは無い。
『一応確認するが、お前は根岸だな?』
『折原、なの?』
ケレン領に着いて暫く、領主に紹介された。
そして件の領主の娘の方もだ。
名前はソフィアと言うらしい。何故かあのゲームの某PCの面影が有る。
直ぐに稀少鑑定で確認した。
人族 吸血鬼 LV1 名前 ソフィア・ケレン(根岸彰子)
いきなり色々ツッコミ処は有るが、まずは念話で中の人を確認。
やはり根岸らしい。根岸がガチでソフィア化している!
『APPにスキルポイントを極振りしたのか?』
『最初に訊くのがそれ!?
確かに美少女キャラになったと思うけど』
『美幼女処か、赤ん坊だがな?
まぁ恐らく美少女になると思うが』
『ありがとう。で、どうしたの?
今回の件は貴方の差し金でしょう?』
ソフィアにスキル検証の序に、レアモノ探索をしに来た事を伝える。
盛大に溜息を吐かれた。何故だ!?
『貴方は、変わらないわね?』
『稀少鑑定の検証には丁度良いと思った。
これで白織を捜せそうだ』
『白織を、捜す?』
『何故か解らないが異世界転生して、
同じ教室に居た根岸も転生していた。
なら白織も、何処かで転生している筈だ』
『広い異世界を、何の当ても無く!?』
『その為の稀少鑑定だ。
なぁ根岸』
『ソフィアって呼んで。
私は文字通り、生まれ変わったの』
『解った。ソフィア、でだ。
向こうでずっと思っていた。
【自分はきっと、誰かを好きになる事は無い】と』
『………』
『少しゲームをやり過ぎたかもしれない。
普通に人間は、対象外になっていた。
スキルポイントを使い果たしていた』
『………』
『だが白織を好きになった。これはレアイベント。
出逢いは、人生のレアイベントだ!』
『だから?』
『だから白織は、稀少鑑定で捜せる。
このスキルは、きっとその為に有る。
アイツは、トゥルーヒロインだからだ』
重い沈黙が暫く続く。
柄にも無い事を語っただろうか?
だがこの決意を、誰かに聞いて欲しかった。
これから始る、長い旅の宣誓を!
『バカなヤツだとは思っていたけど、
貴方は本物のバカよ』
その言葉とは裏腹に、
「好きにすれば良い」そう言われた気がした。
†
『それで、結局家のレアモノって何なの?』
『それを近くで確かめに来た』
話しが一段落した処で、最初の話題に戻る。
ケレン領に有る筈の素晴らしいレアモノについて、だ。
稀少鑑定で、確認作業に入る。
『これは鉱物資源だな?
ケレン領の地下深くに有る』
『鉱物資源?』
『マズイな、破滅的にマズイ』
『何よ?鉱物資源の奪い合いとか、そう言うヤツ!?
ダイヤ?石油?まさかウランとか言わないわよね?』
『その中で言うなら、ウランが一番近い』
『ちょっとおおぉぉぉっっっ!!!!!!
何言っちゃってるのおおぉぉぉっっっ!!!!!!』
『ガチだ』
『ちょっと待ちなさい!此処は家の領地なのよ!!
其処の地下に、ウランの鉱脈!?』
『ウランよりマズイ。
これは【黒の核晶(コア)】だ』
『黒の核晶!?
って、ゲームのアイテムでしょう!?何で!!?』
黒の核晶(コア)。
ダイ大に登場する、史上最悪の爆弾だ。
掌サイズより少し大きい位の爆弾で、それ一つで大陸一つを消し飛ばせる。
原作で大魔王バーンは、
この黒の核晶を6つ同時に起動させる事で、
地上の全てを消し飛ばして、魔界に太陽を照らそうとした。
『正確には、黒の核晶と呼ぶのが相応しいエネルギー結晶の鉱脈だ。
それが、ケレン領の地下深くに有る』
『何も変わらないわよっ!!
足元に黒の核晶が有るのとっっ!!!』
『そうだな?地雷原でタップダンス処か、
核ミサイルの上で、昼寝をしろと言うLvか?』
『ねぇⅡ?
貴方の処にお嫁に行くから、連れ出してくれない!?』
『家の領地は隣りのサイサリスだ。
黒の核晶の有効範囲外には、出られないぞ?』
『ああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!!』
ソフィアが、SANチェックに失敗した顔をしている。
無理も無い。あの黒の核晶だ。
『絶対とは言わないが、安心しろ。
かなり深い場所だ。そう簡単には爆発しない』
『本当!?
フラグとかじゃなくて!?本当に爆発しない!!?』
『恐らく、な?』
『安心出来無いぃぃぃっっっ!!!!!!
やっぱり、お嫁に行っちゃダメかしら!?』
『白織がトゥルーヒロインだから、
先に他の嫁は娶らないぞ?』
『白織何処よぉぉぉっっっ!!!!!!
さっさと姿を現して、私を助けてぇぇぇっっっ!!!!!!』
ソフィアが完全に発狂していた。
それを何とか宥めて、今に到る。そして白織と再会した。と言う流れだ。
†
補足/説明枠です。
今回は、悪名高い黒の核晶に関する補足有。
稀少鑑定(レアセンサー)
折原鋼が生来から保有するユニークスキル。
通常鑑定と、レアモノを探すセンサーの複合スキル。
レアモノとは【物】だけでは無く【者】も指す。
詰りレアアイテムだけでは無く、レア種族も捜す事が出来る。
エルロー大迷宮脱出時の白織の種族は【ザナ・ホロワ】。
充分レア種族であり、レアセンサーで捉える事が可能である。
催眠
貴族転生物で、
ソフィアの両親のようにしっかり育ててくれるケースは少ない気がする。
仕事が忙しくて、子育てはメイドの仕事!的なイメージが強い。
赤ん坊が、両親と同じ部屋に居る事すら珍しい。
黒の核晶
ダイ大に登場する史上最悪の爆弾。
これ一つで、大陸一つが消し飛ぶと謳われている。
蜘蛛ですが~の世界では、ケレン領の地下深くに鉱脈が眠っている設定。
爆発力だけでは無く深淵魔法と同じ追加効果が有り、
不死スキルだろうと、転生系スキルだろうと、
捕まれば魂までも完全に爆殺されて、転生などの余命処置は一切取れない。
今回話題に上がった黒の核晶の、正体に気付いたでしょうか?
察しの良い方は使い道も予想可能の筈!
と言っても使い道は、複数有ったりしますが☆
次回は絶望を希望の糸に!
上機嫌の白織さんが行く☆