『【強欲】と【色欲】を捧げる』『【嫉妬】を捧げるわ』
「オリくん、ソフィア」
オリくんとソフィアの声が聞こえた。
すると蛇腹剣の拘束が解けて、インウィディアは灰のように崩れ堕ちる。
「アワリティアとルクスリアは!?」
さっきのオリくんとソフィアの声。
嫉妬だけじゃなくて、強欲と色欲も捧げられていた。
ならアワリティアとルクスリアも!と期待を込めて確認したけど、
アワリティアとルクスリアは健在だった。
アワリティアは苦し気にのた打ち回り、
ルクスリアも大火球の制御を失い、地上に落下している。
弱体化はしているらしい。
「中々楽しかったよ。
次が有れば、正気のキミと戦いたかったかな?」
どうやら向こうも決着が着いたらしい。
立っているのはアリエルだ。
イラはノイズを上げながら消滅した。
「魔法担当!」
アワリティアとルクスリアが弱体化している内に、止めを刺す!
魔法担当と協力して、二つの魔法を同時展開。
「メドローアッッ!!!」
まずはデカブツのアワリティアだ。
あの竜の巨体で、メドローアを回避する余地は既に無い!
「随分世話になったけど、未練は無い。
【暴食】を捧げる」
アワリティアのカバーに入ろうとしたグラが、
アリエルの宣言で消滅した。
メドローアは暴食で止まる事無く、アワリティアを葬る。
「残りは、ルクスリア一人!」
ルクスリアは、地上に墜ちてまだ倒れていた。
私は二発目のメドローアを構える。
メドローアなら、クリフォトを完全消滅させられる筈。
もう魂の残り香になってまで、使い潰さる事も無い!
「メドロー………」
これで終り!ルクスリアにメドローアを放とうとしたその時、
ルクスリアが輝き出して、辺りが光りに飲み込まれた。
†
「此処は、知ってる」
光りが治まると、また別の場所に居た。
今度も日本の街並み。でもこれは知っている。
平進高校が在る地元の街だ。空も普通に青い。そして何より、
「この姿も、懐かしい気がする」
私は日本に居た頃の、黒髪の女子高生の姿に戻っていた。
下半身も足が二本!普通に人間の足だった。
懐かしい二本足は、何だか鈍足過ぎる気がした。
「この展開。アレだよね?」
この展開は心当たりが有る。
判定無しでこれがそうだと気付けた時点で、
多分オリくんのオリハルコンメタルは有効。
それでもこうして見えているだけ、これの凄まじさを体感する。
直ぐに叡智様で干渉して、事態を打開する事も考えたけど。
私は好奇心に駆られて街を行く。
自分がどんな悪夢を見る事になるのか、興味が湧いたからだ。
「オリくん、ソフィア!?」
無意識に歩くのを委ねると、辿り着いたのは教会だった。
何だか見覚えの有るクラスメイトらしい人達が、参列している。
何の集まりかって?これは結婚式だ。
オリくんとソフィアの結婚式だった。
オリくんの礼服姿も決まっていたけど、ソフィアが!
ソフィアのウエディングドレス姿が、とても綺麗だった。
何て言ったら良いかな?幸せオーラを噴出している。
あのソフィアが!いつも影を落としている感じのソフィアが、である。
私はそれを見ているしか出来無い参列者だった。
「やっぱりこれって幻燈結界(ファンタズマゴリア)!!?」
ファンタズマゴリアとは!
原作でルクスリアが得意とした、凶悪な幻覚結界である。
捕らえた者の精神をズタズタに破壊して、SAN値直葬に追い込む。
原作でも、某実戦部隊が壊滅している。
「ああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!!」
幻覚だとしっかり認識しているのに、ガンガンSAN値が減る!
結婚式のイベントが進んで、指輪交換!誓いのキスシーンへ移行!
オリくんが、ソフィアとキスしてるぅぅぅっっっ!!!!!!
飛び出して止めたかった。でも、
ソフィアが余りにも幸せそうだったから、つい躊躇してしまう。
性質が悪いよ、ファンタズマゴリア!流石の悪名高さだ!!
「まだ、続くの!?」
その後は呆然とヴァージンロードを見送って、
ブーケトスも逃す事になる。ブーケを手にしたのは、男の大島君だ。
女子の参列者から非難の声!でも大島君の周りは盛り上がっていた。
しかも悪夢は結婚式だけで終らなかった。
オリくんとソフィアは、マイホームを購入した。
結婚式編が終り、次はイチャコラ夫婦生活編らしい。
「ちょっとこれって、まさかだよね!?」
流石は某実戦部隊をSAN値直葬に追い込む悪夢!
ファンタズマゴリアは情け容赦無かった。
オリくんとソフィアは、初日の夜から夫婦の営みに突入した。
ベッドに押し倒されるソフィア。
その姿に抵抗の素振りは無い。
私は耐えられなくなって廊下に出る。
廊下に出て目を閉じて耳を塞ぐ。それでも声は聞こえた。
「アアアアアアッッッッッッ!!!!!!」
余りのショックで、結界を破る事も忘れて倒れる。
倒れて、夜が明けた。
それからはもう!散々な展開だった。
その後も毎晩営みが行われて、私はそれを見せ付けられ続ける。
やがてソフィアのお腹が大きくなった。
妊娠→出産とイベントが進んで、オリくんとソフィアに子供が産まれる。
生まれた子供は、ソフィア似の女の子だ。可愛い。
私は子供を産みたく無いと思っている。
それは禁忌をカンストさせて、この世界の真実を知ったからだ。
気持ち悪かった。自分が殺した相手が、
自分の子供として産まれるかもしれない現実が!
それでも子供は可愛いかった。
また笑顔が増える。だけど、其処に私は居ない。
「そもそも何で私が居ないかな!?」
これはアレなの?私が不在。
帰って来なかった世界線の結末とか、そう言うヤツ!?
だから私が居ないの!!?
「それとも、アルビノじゃないから?」
自分の髪を見る。
黒髪だった。日本に居た頃の黒い髪。
オリくんは私の事を好きだと言ってくれた。
でもオリくんは、アルビノ好きだった。
それで私がこの世界に居ないのかもしれない。
「YES]
保留していたタッチパネルをクリックする。
Dの事とか!戦闘ノウハウとか!どうでも良くなった。
私はただ、オリくんと一緒に居たいだけだった。
†
≪スキルを還元します≫
≪ステータスを還元します≫
≪称号を還元します≫
≪スキルポイントを還元します≫
≪経験値を還元します≫
≪D謹製『神の基本講座』をインストールします≫
≪神化を終了します。これ以降システムサポートを一切受けられません。
ご利用ありがとうございました≫
神化が完了した。
Dは戦闘ノウハウが一旦零に!と言っていたけど、
→システムサポートを一切受けられません。
と言う一文が、一番拙かったと思う。
オリくんのオリハルコンメタルのパスが、切断されている。
復旧の目処は、多分無い。
私が神化してスキルが、互換性の無い下位システムになった所為だ。
PS1でPS2のゲームはプレイ出来ない。それと同じ事。
オリくんのオリハルコンメタルに護られている感覚が恋しい。
そして危険な行為だったとも思う。
仮にもファンタズマゴリアの只中で、アレが悪夢だと気付けたのは?
間違い無くオリハルコンメタルの効果だ。
それが神化に因って切断された訳だから、
神化と同時に、悪夢に囚われても可笑しく無かった。
だけど元々ファンタズマゴリアは、
それが悪夢だと認識さえ出来れば破れた筈。
神化完了後に悪夢は破れて、現実に帰還する事が出来た。
「はっ!?サリエル様!!?」
どうやらアリエルも悪夢に囚われていたらしい。
今、正気に戻りました!と言う顔をしている。
「行ける」
スキルを、ステータスを、称号を、
残ったスキルポイントも、経験値も還元した。
Dの言っていた通り、戦闘ノウハウは組み直さないと行けない。
このままでは、本来なら木偶の坊の案山子だった筈。
だけど私はショートカットに成功していた。
神化後。ファンタズマゴリアに囚われる事で、
戦闘ノウハウを、悪夢の中で組み直した。
たった今出て来たのは、その後だ。私はもう戦える。
私は再度!メドローアを構える。
ルクスリアは、立ち上がろうとしていた。
その姿に、もう私が知っているルクスリアの覇気は無い。
「お休みなさい、ルクスリア。
リーゼロッテ・ヴェルクマイスター」
メドローアを放つ。
もう二度と、貴方の眠りが妨げられませんように。
そう祈りを込めて消し飛ばした。
「おめでとうございます。
黒の核晶!GETです☆」
はいはい。そうでした。一応それが目的だった。
空が青く晴れて、黒い月が大地に降りる。
事情を知らない原作キャラが居たら、
奈落堕としEDに見える展開である。でも此処に原作キャラは居ない。
無事に黒の核晶も手に入れる。
「これからどうする?」
色々と終った事を悟って、アリエルが話し掛けて来る。
結局手に入れた黒の核晶を含めて、やるべき事は多々有るだろう。でも!
「えっ人型になったから、オリくんを迎えに行く?
あぁうんそっかぁ~、白ちゃんにはちゃっかり番が居るんだっけ?
いやいや、番が居るのは大切な事だと思うよ?」
神化してアルビノになった事を散々確認して、
足も二本になって街へも自由に入れる!これでオリくんを迎えに行ける。
少し、ファンタズマゴリアで見た悪夢に魘されていた。
早くオリくんに逢いたい!そんな気持ちに囚われている。
「もう少し、待って貰えるか?」
先を急ぐ私の前に現れたのは、黒い人。
この異世界の管理者。黒龍ギュリエディストディエス。
まだ続くの?もう終りで良く無い!?
†
補足/説明枠。
異世界転生編も、もう終盤です。
強欲と色欲を捧げる
仮に七大罪の支配者スキルを全て揃えて挑んでも、
ルクスリアとアワリティアは、執念で残存する展開!
強キャラのスペルビアが、素直に沈むだけで御の字とも言う。
刀使いは優遇傾向な気がする。
逆に本作では、グラが強化されたと思う。
ダイ大原作でもメドローアをマホカンタ出来るので、
暴食でメドローアを処理出来る判定。
ファンタズマゴリア
11原作でも、猛威を揮ったファンタズマゴリア!
18禁攻めも余裕で出ます。
原作でも痴漢に遭って倒れる白織です。
恋人が他の女と営んでいるのを目撃したら、確実に倒れます。
悪夢だと認識出来る時点で、オリハルコンメタルは有効。
どんな悪夢だろう?と、確認しようとしたのがアウト。
自分でブラッドリミッターを解除するのと、同じLvの行動。
今回のソフィアの結婚式は、SANチェックが一番低い悪夢。
18禁攻めを解禁すると、酷い展開に堕ち続けます。
この悪夢イベントは白織に、
【でも子供は可愛い】と思わせる重要フラグ。
原作の白織は赤ん坊のソフィアも、もぐもぐしようとした程!
【美味しそう】から【可愛い】に、
人間的感性にジョブチェンジさせるには、数多くのフラグが必要。
今回の実体験もその一つです。
此処から私が最も描きたい、白織三大イベントに繋がります。
突然の11クロスで混乱したと思います。
ですがそれは、このファンタズマゴリアのイベントを描きたくなったから。
と言う事にして下さい。他にも理由は有りましたが、主な動機はそれです。
決戦+白織フラグに丁度良かった。と言う事。
次回は黒い人の出番です。