異世界学園編再スタート。
旧25で使う予定だったシナリオを再編。
21 退屈で平和な学園
「準備は万全らしいな?」
「………」コクコク
試着以来の白い制服に袖を通す。
メイド服も着慣れたけど、これも悪く無いと思う。
今日から遂に学園生活が始る。
だけど今年は色々有るだろう事も予想の内だった。
いつもならアナレイト王国の学園に行く筈の留学生が、
今年は揃ってサリエーラのサダルメルク学園へやって来る。
今年に限ってサリエーラが門を開いて、留学生を受け入れたからだ。
この流れに各国が同調。
サリエーラは異教の国なのに、希望者が続出。
これには勿論理由が有る。
私が黒の核晶を手に入れた時に起きた戦争。あれが遠因だった。
黒の核晶が埋まった頭上で起きた戦争。
黒の核晶を知る私にとっては、とても愚かな行為に思えた。
私を巻き込むな!と。即座に戦いを終らせても文句は言えない暴挙だった筈。
私の介入で戦争は早期に終息。
サリエーラを侵攻した連合は総崩れを起こして壊走。
事の発端となったオウツは、サリエーラに逆侵攻されて属国になった。
オウツも神言教の信仰国で、
しかもエルロー大迷宮の在る国だから、統治は大変だと思う。
まぁ征服したサリエーラは頑張って欲しい。私の領分じゃないから。
でもこの戦争で、私の神獣の名が知れ渡った。
サリエーラを守護する白い神の如きタラテクト!とか、
本物の神獣様は、魔王やってます。そっちに行って下さい。えぇ本当に!
と言っても戦争に参加したのは私だ。
あの戦争から、私を探ろうとするヤツが増えた。
これは諜報機関って言うか、スパイってヤツだよね?
うん、鬱陶しいから尽く始末したよ!
誰でも知ってるあの黒い害悪か!?と思う程湧いた。でもそれを始末した私!
最近になって漸く湧きが止まった位だ。
此処まで来て漸く留学の話に戻る。
サリエーラは異教の国だから、長く留学生何て受け入れてい無かった。
だけどどう言う訳か、今年から留学生の受け入れを始める。
神獣の情報が欲しい各国は、これを好機だと捉えた。
パイプを作りたい人も居ただろう。
そんな訳で今年のサリエーラは賑う事になる。
「白織。手を」
「………」
世の中ではそんな動きが予想されるけど、私は気楽な学生生活を送る。
私は学園ではただの学生。
目が不自由で、婚約者であるオリくんの手に引かれる無力な女子生徒!
と言う設定で行く事にした。
他に目を閉じて生活する合理的な理由が浮かば無かったからだ。
「白織の目は綺麗だから、やはり残念では有るが」
「そう言ってくれるのは、オリくんだけ」
今はまだオリくんと二人だけだから、と。瞼を開ける。
私のこの紅い目を見て、綺麗だ何て言う人はオリくんしか居ない。
この目は多くの邪眼系の力を秘めた、ガチで即死級の危険物である。
何より眼球の数が人とは異なる。気持ちの悪い物の筈だった。
なのにこの目を見て綺麗だ何て言うのは、婚約者補正だと思う。
だけど綺麗だと言われるのが嬉しく無い筈も無くて、
こうして二人で居る時は瞼を開いている。
でも登校時間も迫っていたから、私はいつものように瞼を閉じた。
「恋人繋ぎ」
繋いだ手は、自然と恋人繋ぎにシフトしていた。
気持ちも繋がっているようで、嬉しくなる。
「ツヴァイ様」
オリくんのメイド枠で同行するセリオとも合流して、学園へ登校する。
座標は予め把握しているから、転移で王都まで移動する。
まだ少し時間が有るから王都を歩いて学園に向かうと、
噴水の在る中央広場の辺りで、オリくんの視線に気付く。
「【神獣の巫女】事件を、思い出していた」
「あれは、苦い経験」
あれは私が白織・サイネリアになって、まだ日が浅い頃。
オリくんの婚約者だと堂々と名乗れるのが嬉しくて、
一度だけ社交会に出席した。出席して、果てし無く注目され続けた。
若葉姫色の容姿を、Dの美貌を甘く見ていた。
何よりサリエーラの女神教信者を、甘く見ていた。
私の肌や髪がただ白いだけで、神獣の巫女だと謳い出した。
私は人混みに呑まれた。日本の通勤通学ラッシュかと思った。
これで痴漢が出ていたら、つい死傷者を出す処だった。
でも絵のモデルに!と言い出すヤツは居た。無断創作に走っていそうである。
そしてクタクタになって帰宅。
あれから社交会には出席して居ない。それでも随分噂になったらしい。
気付けば、あの時を彷彿とさせる視線が集まっていた。
†
「おはよう、Ⅱ。白織」
白織が視線を切ろうと後ろに隠れ出した頃、
予定通り学園の校門前で、ソフィアとも合流した。
ソフィアも学園に着いたばかりらしく、馬車から旅行鞄を下していた。
「ソフィアは一人なのか?」
ソフィアは一人で、車輪付きの結構大きな旅行鞄をコロコロしている。
実際に使うと解る事だが、車輪付きでも旅行鞄は重い。
非力なお嬢様の所業では無かった。
観察力の高い者なら、ソフィアの力が結構有る事に気付くだろう。
メラゾフィスが使用人枠で来るのかと思っていたが、違うらしい。
「メラゾフィスはお父様の側近だもの、
それに男だから、女の園には連れて行けないでしょう?」
これから学園で三年、寮生活になる。
当然だが男子寮と女子寮で分かれている。
だが使用人の性別は判定されていない。
現に異性のセリオが、同行可能となっている。
部屋は流石に別室だった。隣りに使用人用の控室が有る。
だがソフィアは、自身の正体を隠さなければならない。
身近な者も少ない方が良い。
身の回りの世話は自分で出来るから!と押し切ったらしい。
「その証明の為に久しぶりに家事を手伝って、
驚かれたわ、まだ何も教えて無いのにって」
「ソフィアは家事に自信が有るのか?」
貴族の身で、家事を習う機会は無かった筈。
ケレン家は真面な伯爵家である。余計にそれは無い。
これは日本に居た頃の経験の筈だ。
「それなりの苦労はしたから、
一通り行ける自信は有るわ」
多くは語らない。
ソフィアは、転生を心から喜んでいるタイプだからだ。
転生したソフィアは、笑顔が増えたと思う。
今も微かに笑顔を浮かべている。
「どうしたの、Ⅱ?」
「ソフィアは、笑顔が増えたと思ってな?」
今度は少し驚いた顔。
そして空いている方の腕を取られる。
「それ、白織の手を取りながら言う台詞じゃないから。
でもそう思うなら、それはⅡのおかげよ?」
こうして両手に花状態で初登校を果たす。
右手には白織が、左腕にはソフィアが、目立たない筈も無かった。
†
「門戸を開き、我々を迎え入れて頂いた事にまず感謝を。
この経験を活かし、両国の理解と発展に尽力を誓います」
一応入学式は有った。
諸外国から留学生を迎い入れたのだから当然だった。
だが偉い人の話は異世界でも長く無駄である。
無駄では無かった事は、入学生代表の主席入学者の顔を確認した位だ。
主席入学者は留学生だった。
転生者の白織でもソフィアでも無い。知らない留学生。
と言っても肩書は知っている。レングザンド帝国の第二王子だ。
「アイツ、枝葉か」
気になったので、人混みに紛れて鑑定。
無許可の鑑定はマナー違反だが、入学式の人混みでは特定不能だろう。
そして確認した。レングザンド帝国第二王子、
レンバートン・レングザンドは、元クラスメイトの転生者。
【枝葉連理】。確か学年主席だったヤツだ。それ以外は知らない。
そのレンバートンがそれらしい宣誓を告げて、入学式は終了。
そして教室に移動。
教室は日本の大学でも在りそうな、見下ろし型の教室だった。
席は自由席だったので、迷う事無く最後席を選ぶ。
この手の自由席では、一般的に前に座った方が意欲的な生徒だと評価され易い。
多くの留学生が在籍する中。
サリエーラの自国生として、高評価を狙って行くべきだろう。
だが美人二人を両手に花!と言うのは目立ち過ぎた。
背後を壁にして視線を減らさないと、白織がストレスで倒れる!
それ程の視線が集まっていた。
白織に向けられる視線。
大半は【好奇心】と【興味】。
白織の美貌に惹かれた最も解り易い視線。
害虫である。どうでも良くは無いが、今はどうでも良い。
次に多いのが【探る】ような【観察】の視線。
神獣の巫女の噂を確かめようとする懸命な野次馬や、
少しでも神獣様の情報が欲しい、他国のスパイなども此処に含まれる。
最後に少数の【驚き】の視線。コイツ等は転生者だろう。
白織は、転生者から見れば白い若葉姫色だ。
転生前の知っている顔が、そのまま来たから驚いている感じだった。
実は白くなっただけのヤツは、白織以外にも居る訳だが?
その白くなったヤツが、白織を見て一番驚いている感じだった。
これはイベントが来るかもしれない。
『退屈』
初日はオリエンテーションで終り!と言う事は無く、講義は始った。
他国の留学生が居るから、と気合が入ったカリキュラムである。
だが転生者的には温い講義だ。転生者特権で、
この手の座学は早々にクリアしている。ヌルゲーだった。
『このLvなら、座学で学ぶ事は無いな?』
『退屈』
地獄の迷宮サバイバルを突破した経験を持つ白織は、
余程ヌルゲーなのか?同じ台詞が二回出た。
念話で愚痴る時点で、かなり配慮はされていると思われる。
『そうだな。なら、しりとりでもするか?
【ゲームに出て来そうなワード縛り】だ』
『する』
応えは直ぐに返って来た。余程退屈だったらしい。
この後白織と、しりとりで退屈な時間を潰した。
こうした無駄な過ごし方も、学生らしいと言えば学生らしい。
それが学園生活の始りだった。
†
補足/説明枠。
遂に始った学園生活の補足です。
王都と学園
王都がサダルメリク。学園がサダルメルク。
素直に【サダルスゥード】か【サダクビア】で行け!
と言う感じですが、これで行く事に。
サダルメリクは水瓶座の星の名前。
サダルメルクは、某推し天使ヒロインの守護星。
サダルメリクが正式名称らしいですが、サダルメルクの方が馴染み深いです。
それなりの苦労
原作では、安アパートに住んでいた。と言う描写が有ります。
親が仕事で忙しく、家事を自分一人で担当していた。
直ぐに一人暮らしが出来るLvの家事能力!と言う設定。
白織は裁縫が得意なので、ソフィアは料理上手に設定しました。
材料費が低コストでも、美味しい料理!的な工夫系のヤツです。
↑エプロン姿で台所に立って、
(美味い)料理を作ってくれるソフィア!ってかなりハマると思う☆
白織以外の白いヤツ
お察しの通り、これはフェイ。
既に人型になっています。そして白いです。
若葉姫色と名乗る休憩中のDに、手を出した勇者☆
生きているのが不思議な位だと思う。アニメ版では株が爆上り中!
アニメ版最終回を視聴後、
現代兵器アタックを喰らわせてもポティマスなら、
情け容赦無い隔離と殺処分で即応して来そうだと思ったので、
旧21~24は全変更する事にしました。
後は断罪イベントが浮かんだ事。
レンの役目も減って、色々変更する予定。
次回はもう一人の白いヤツとの遭遇。
平和な学園ならではの展開だと思います。