髪はアッシュブロンドと描写しています。
ツッコミが有る方は、感想までお願いします。
「それでは、始めっ!!」
サダルメルク学園に留学してから、早いもので一週間が過ぎました。
座学を一通り復習した。と言う事で、今日から本格的な実技が始ります。
「緊張するな」
「そうですわね?」
一週間も過ぎれば、クラスでグループが出来るのは異世界でも同じでした。
やはり同じ出身国でグループを作る事が多くて、
私もアナレイト王国出身者のグループに居ます。
「おはよう!今日の調子はどう?」
「………」↑(指を立てている)
「貴方に心配される事じゃないわ」
ですがフェイは、早くもサリエーラの生徒の輪に入っていました。
初日で結構な騒ぎを起こしていた気もしましたが、
付き合いを成立させている様子です。
白織・サイネリアとソフィア・ケレン。
そして二人の婚約者、フェンブレン・ツヴァイ・サイサリス。
三人共、元クラスメイトの転生者です。
白織は神獣の巫女だと噂されていますから、特に目立っています。
「フェイは凄いよな?
サリエーラで、もう上手くやってるんだ」
「そうですわね?」
「カティア」
口から先程と同じ言葉が出ていました。
上の空です。流石にシュンに心配させてしまいます。
出来る事なら、私もレン(婚約者)と同じグループが良かった。
「今からでも行って来たらどうだ?」
「ですが」
サダルメルク学園に留学してから、まだレンと話しが出来ていません。
講義に出席しているようですが、終れば姿を消してしまいます。
レンは転移が得意ですから、
学園内でも使っているのでは?と思う程のロスト振りです。
「こう言うのは、一人で悩んでいても仕方無いから」
「シュン」
これは他人から見た方が良く解る。と言うヤツでしょうか?
実の妹に好かれても天然スルーなシュンに、アドバイスを貰う日が来る何て!
「レンバートン君。前へ」
「はい」
ですが私が動くより早く、レンの出番が来ました。
レンもスタンダードに、帝国出身者のグループに居ました。
講師に指名されて、前に出ます。
今日の実技は、一定距離からの射撃です。
的に向かって魔法で射撃します。但し火属性は禁止。延焼防止の為です。
比較的火属性が得意な私は、それだけで不利な内容。レンはどうでしょう?
「そう言えば?」
レンの事ばかり考えていましたが、
帝国のグループに、ユーゴーやイッセーが居ませんでした。
それ処かこの一週間!学園で二人を見掛けた記憶が有りません。
「男子寮でも見掛け無いな」
「留学して居ないのでは無いですか?」
シュンやスーも、二人を見ていないと証言します。
留学して居ない!?まず在り得ない展開だと思うのですが、どうでしょう?
今年は例の神獣の件で、誰もがサリエーラへ留学を希望しましたから。
アナレイト王国だけでは無く、帝国でも同じだと思うのですが。
イッセーはまだしも、帝位継承者のユーゴーまで来ないのは可笑しいです。
「流石は主席だな?レンバートン君」
「いいえ」
と思っている内に歓声が上がります。
レンが射撃の実技で、見事にパーフェクトを出しました。流石です。
「若葉さんっっ!!!」
ですがレンのパーフェクトも、続く三人の前では霞みました。
ツヴァイとソフィアはまだ良かったです。
まだ常識の範囲内で、レンと同じパーフェクトを叩き出しただけ。
ですが白織は、氷魔法で的の周辺を全て凍結させました。
「しかも今【ヒャド】って呟きましたよね?」
ヒャドと言うのは、某有名RPGに出て来る呪文です。
氷系の下級呪文。作中で一番弱い氷の魔法。
「これってアレだよな?
【今のはメラゾーマでは無い。メラだ】って言うあの」
「使ったのは、ヒャドですけど」
バーン様のアレです。
シュンと二人で、懐かしいネタを思い出しました。
こうして初めての実技は終り、タイミングをすっかり逃していました。
†
「うわあああぁぁぁっっっ!!!!!!」
実技の講義が終って、これからどうしましょう?
と言う処で異変は起きました。誰か生徒の突然の悲鳴。
「魔物?学園の中で!?」
「黒いタラテクト!?」
声が聞こえた方を振り向くと、
其処には影のような黒いタラテクトらしい魔物が!
それも七体。いつの間にか野外演習場に姿を現していました。
「戦えない者は下がると良い」
「下がりなさい、邪魔よ」
突然の非常事態に、生徒達の行動は様々でした。
大半は逃げ惑うばかりですが、避難誘導をする生徒も居ます。
サリエーラグループのツヴァイと、意外ですがソフィアです。
逃げ惑うしか出来無い生徒達を庇って、黒いタラテクトの進行を防いでいます。
「若葉さんっ!!」
シュンや私は、前に討って出ようとしました。
前に引き付ける事で、後方に逃げた生徒達を狙わせない為です。
ですが半数の三体が後方へ行ってしまいます。予想以上に速い!
「………」
その内更に二体は、
壁役のツヴァイとソフィアの処に行きましたが、
残りの一体は棒立ちの白織の処へ!
ですが白織は、棒立ちのまま結界を張って攻撃を防いでいます。
結界が破れる気配は有りません。寧ろそのまま後方を守っているようです。
「シュン!私達は前の敵を!!」
「あぁ、解った」
白織は、
後方のサリエーラグループは大丈夫そうでしたから、前に集中します。
「見た事の無いタラテクト種だ。新種なのか?」
私とシュンが暫く後方に気を取られている間に、
前方を支えていたのは、レンとスー。それに知らない女子生徒がもう一人。
アッシュブロンドに綺麗な碧色の瞳。
実戦経験も有るのでしょうか?動きに躊躇が有りません。
「レン君!」
「あぁ、助かる」
女子生徒の支援魔法を受けたレンが、反撃に出ます。
タラテクト種は炎に弱いのが常識ですから、レンが選んだのも炎の魔法。
「灼けろ」
炎の範囲魔法。では無く、これは熱エネルギーそのものですか!?
閃熱が二体の黒いタラテクトを捉えて焼却。
ですが残り二体は、持ち前のスピードで回避してしまいます。
「レン君!危ないっっ!!!」
「ユーリ!」
残り二体の内一体が、術後硬直で動けないレンを狙います。
私とシュンは、スーと残りの一体を相手にしていたから間に合いませんでした。
レンにユーリと呼ばれた女子生徒が、
レンを庇って黒いタラテクトの凶刃に掛かりました。
「爆ぜろ」
ですが黒いタラテクトの凶刃が、確かにユーリを貫いた瞬間!
黒いタラテクト自身も引き裂かれて怯みます。
其処へレンの爆裂魔法が炸裂して、黒いタラテクトが塵になりました。
「無茶をする」
「私は【磔刑の聖女】だから」
「そうか」
黒いタラテクトに貫かれて、
致命傷でも可笑しく無かったユーリの傷は、既に塞がり始めていました。
これは自動回復系のスキルでしょうか?
結局残りの一体は、シュンやスーと協力して私達が。
後方の三体はツヴァイ達サリエーラグループが、いつの間にか仕留めていました。
†
「いやぁ、突然の出来事で大変だったね?」
「手伝ってくれ、フェイ」
フェイは後方で避難誘導をしていたのを、私は気付いていました。
迂闊に龍の力を見せる訳には行きませんから、仕方有りません。
ですがフェイも、いざと言う時は助けてくれた筈です。
「それより白織やソフィアは凄かったよ?
勿論ツヴァイも」
何でもフェイが言うには、
あの三人の後ろには、全く攻撃が来なかったらしいです。
おかげで避難した生徒も、余り動揺していないとか。
「問題無く、クエストクリアだな?」
「………」コクコク
「当然の結果ね」
凄い余裕そうですあの三人!
そして仲が良さそう。特にツヴァイと白織が、空気が違います。
「若葉さん」
「シュン。あの二人、婚約者ですのよ?」
「解ってる」
本当ですか?少し心配ですが、今はレンです。
レンはユーリと言う女子生徒を連れて、早々に引き上げました。
多分保健室に連れて行く為です。私も保健室に向かいます。
「レン」
「カティアか」
レンは、保健室から出て来る処でした。
ユーリは保健室で眠っています。寝かし付けた処らしいです。
「自傷スキルと仕切り直しのスキル。
それに慰め程度の止血スキルだ。あんな戦いでは、いつ死んでも可笑しく無い」
「それが磔刑の聖女」
ユーリーン・ウレン。磔刑の聖女。
噂には聞いた事が有ります。神言教の新しい聖女だと。
そしてその聖女が、
元クラスメイトの【長谷部結花】だと、レンは言います。
「長谷部さんでしたの!?」
確か長谷部さんはレンの、枝葉連理の隣りの席でした。
ですが特に親しかった印象は有りません。
「それはそうだろう。碌に話した記憶も無い。
機会が有ったのは転生した後だ。だから此処でも間違えた」
「間違えた?」
「ユーリを見捨てた。
こうなる前に、助けられた筈だった」
†
補足&解説枠。
ユーリ登場回の補足です。
黒いタラテクト
白織が用意したグレーター・タラテクトの怪しい影。
転生者の実戦的実力チェックの為の動く的☆
白織がチューニングした代物なので、速度に極振り気味。防御が紙装甲。
当たらなければ意味が無い!を地で行くステータス。
侵入経路の偽装として、少し離れた場所に穴が掘って有る。
この穴が学園外まで繋がっています。
灼けろ/爆ぜろ
大体のお察しの通り、
灼けろ→ベギラマに相当。爆ぜろ→イオラに相当する魔法。
磔刑の聖女
神言教の聖女の一人であるユーリの異名。
自傷スキルで受けたダメージを対象に映して、
自身は仕切り直しのスキルで致命打からも生存する。
そして慰め程度の止血スキルで傷を癒す。
それがいつ死んでも可笑しく無い。と称されたユーリの自己犠牲戦法。
磔刑の聖女と呼ばれる由縁である。
聖女は勇者をサポートする癒し手ですが、聖女にも序列が。
序列一位が勇者の共となり、聖女自体は複数人存在する。と言う設定。
転生者の中にも反射系の転生特典持ちも居ますが、
自傷は反射系でもダメージ移しでも無く、ダメージ【映し】です。
次回はユーリとの再会過去回。