双子(疑惑)ですが、なにか?   作:LW

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今回はユーリとの再会、過去回です。


27 磔刑の聖女Ⅱ

「これが現実!と言った処か」

 

鑑定の儀を受ける為、聖アレイウス教国までやって来た。

態々教国を訪れて、たった今大聖堂で教皇自らの鑑定を受けた処だった。

これは大変名誉な事らしく、王族の特権らしい。

 

だが元日本人の身では、どうしても宗教は胡散臭く感じてしまう。

根っからの無信教!と言うヤツか?

神に祈るより、自分でやる事が有るのでは?と思ってしまう。

それともそれは、

祈る事しか出来無い状況に追い込まれていない、恵まれた者の戯言なのか?

 

現に大聖堂が在った荘厳で綺麗なメインストリートを外れると、

其処はスラムに繋がっていた。

日本に居た頃の、■円の募金で子供が助かります。

と言う募金のCMの、現実Verの光景が目の前に広がっている。

 

神を信奉する宗教国家の現実だった。

神は全てを救えない。だから神の声(神言)を聞こう。

多くの神の声を聞いて強くなろう。Lvを上げよう!と言うのが神言教の教えだ。

 

LvUPやスキル獲得時のシステムコールを、神の声だと信奉している。

確かにスキルは、ギフトと呼ぶのが相応しいかもしれない。

 

「要は頑張って自分で何とかしろって事だ」

 

その教えに従って、特にスラムに施す心算は無い。

しかも此処は帝国では無く、外国の聖アレイウス教国だ。

スラムの改善は、この国の為政者の仕事だろう。

 

「これは、結界か?」

 

スラムを立ち去ろうとした処で、異変に気付いた。

辺りが突然霧に閉ざされた。閉ざされて、道が解らなくなる。

これは濃霧でも、産業革命的なスチームでも無い。霧の結界だった。

霧の結界が、道を閉ざして封じている。

 

「帝国の継承者を狙ったテロか暗殺?

 それともただの物取りか」

 

普通に考えれば、帝国の継承者を狙ったテロか暗殺を疑う処だろう。

だが此処はスラム!スラムでは、人の命は安くなる。

パン一切れの方が、人の命より高くなるのがザラの世界。

襲われる理由など何でも有り、と言う事だ。

 

「と、思っていた訳だが」

 

暫く冷静に状況把握に務めたが、襲撃が無い。

疲れて気が抜けるのを待っている。と言う線も有るが、何か可笑しい。

 

「探索するしか無いか」

 

霧の結界の探索を始める。

霧が発生して道が閉ざされているだけで、他の脅威が存在しない。

このままではやがて衰弱して死にはするだろう。

だが直接的な害意が無かった。拘束目的の結界の可能性も有るが、

結界の御立派さを思うと、どうにもアンバランスだった。

 

「これは暴走に巻き込まれたパターンか?」

 

これは襲撃では無く、事故!そんな気がして来た。

やがて霧の結界の中で、同じ年頃の子供が蹲っているのを発見する。

子供は眠っていた。疲れ果てて眠っているように見える。

 

「コイツが術者なら助かるが、どうするか」

 

 

「それが長谷部さん?」

 

「そうだ。鑑定の儀の、帰り道の事になる」

 

長谷部結花。ユーリーンは捨て子だった。

残念ながら珍しくも無い不幸!と言う事になる。

これは教国だけの話では無い。何処にでも有るありふれた不幸だ。

 

「【夢見る乙女】?」

 

「名前がキラキラだが、それが霧の結界の正体だ」

 

ユーリは絶望していた。

在る日突然!親に捨てられて呆然としていた。

親に捨てられて、これからどうしたら良いのか?

これから自分は生きて行けるのか?

 

そう言った未来への不安、混迷が霧の結界となって具現化した。

元々はキラキラネーム通り、

理想の夢を具現化するスキルらしいが、やはり暴走中だった。

 

「これは!」

 

「連理君。なの?」

 

当時の自分は、

この術者候補をさっさと起こして、事態の終息に務めたかった。

だが元々そう言う性質なのか、転生者同士で波長でも合ったのか?

蹲るユーリに触れただけで、パスが繋がる感覚がした。

 

すると景色が一変。霧が立ち込めるスラムが、

転生前に見慣れた平進高校の教室に変わる。

アッシュブロンドに綺麗な碧色の瞳。容姿的な面影は全く無かったが、

目の前で蹲る子供が、隣りの席だった長谷部だと確信する。

 

「そうか、なら尚更。蹲っている場合では無いな」

 

「連理君?」

 

だが相手が誰であろうと、ユーリが結界の主である事に変わりは無い。

この結界はユーリの心の不安その物だ。ならそれを解消すれば脱出可能。

だから説いた。蹲るより、これからの事を考えて早急に動くべきだと。

 

「でも、私一人でどうしたら!?」

 

「教会を頼ろう。確か孤児院が在った筈」

 

安直だった。

教会の孤児院が全ての子供を救ってくれるなら、そもそも孤児は存在しない。

だが気楽に考えていた。

多少の寄進を握らせれば、ユーリを引き取ってくれるだろうと。

帝国の人間である自分では、これが最大限の対処だろうと判断した。

本当に安直だった。そして愚かな選択でも有った。

 

「ありがとう連理君!本当にありがとう!!」

 

「今はレンバートンだ。レンで良い」

 

「解ったよ、レン君!」

 

そして予想通り、教会は喜んでユーリを引き取ってくれた。

これからユーリは教会のシスターか、小間使いにでもなるのか?

それは解らない。ユーリの人生だ。好きにすれば良い。そう思っていた。

 

「それから長谷部さん。ユーリはどうなったのですか?」

 

「結界は解除されて、無事帝国に帰還する事が出来た。

 逸れた供の者とも合流して、すっかりユーリの事も忘れた」

 

だが残念ながら、話は此処で終らない。

それから数年が経過して、成長したユーリと再会する機会が有った。

 

 

「磔刑の聖女?」

 

「はい。聖アレイウス教国から、教会からの援軍。

 新しい聖女様と、信徒兵の援軍です」

 

「新しい聖女様のお披露目。と言う事か」

 

「レンバートン殿下にこれ以上の戦力など、過剰戦力だろうに。

 全く教会も露骨な事をしよる」

 

アレはありふれた討伐任務だった。

帝国の領土に現れた、特に珍しくも無い魔物の討伐任務。

其処へ副官から告げられた報告に、ロナントが鼻を曲げる。

 

確かに自分とロナントだけでもオーバーキルだろう。

だがそれを言うなら、そもそもロナントが居る時点で過剰戦力だ。

 

「ロナント、帰還するか?」

 

「それは殺生ですぞ!レンバートン殿下!!

 是非とも殿下の魔導の深遠!このロナントに拝見させて頂きたくっ!!」

 

「教師でも講師でも無い。教えられる事は無いと言った筈だが?」

 

ロナントの意志は固い。酷いオーバーキルだ。

そして更に追加される過剰戦力!教会は余程、新しい聖女を使いたいらしい。

 

「なら先陣は聖女様の部隊に任せよう。

 こちらは支援に徹すれば良い」

 

「殿下。それでは魔導の深遠が!いや帝国の威信が!!」

 

「ロナントの口から帝国の威信などと言う言葉が出るとは、

 善からぬ事が起きる前触れだな?警戒を厚くしろ」

 

討伐作戦前の軽口。冗談の心算だった。しかしこの冗談は的中する。

新しい聖女の部隊が魔物の群に接敵した。そして目撃する。聖女の戦いを。

 

「何だ。アレは!?」

 

「反射魔法?いや被害を移す呪詛の類ですかな!?」

 

それは何とも無謀な自己犠牲戦法だった。

魔物の只中に飛び込んで応戦。しかし捌き切れる事無く反撃を受ける。

反撃を受けて倒れる聖女。だが反撃に出た魔物も倒れた。

確かにこれはロナントの言う通り、反射かダメージ移しの類だろう。

 

だが何度倒れても起き上がり、

また倒れる聖女の姿を見て、これはそう言う安直な物では無いと確信した。

 

「これより帝国は支援行動を開始。

 さっさと終らせる」

 

「おぉっ殿下!」

 

帝国の支援で、魔物の討伐はあっさり完了。

瑕付いた聖女は、美しく成長したユーリだった。

だがあの綺麗な碧色の瞳は閉ざされ、アッシュブロンドの髪も瑕だらけだ。

再会に会話は無く、担架で運ばれて行った。

 

「ユーリはすっかり聖女になっていた。

 あぁやっていつも、瑕付きながら戦っているらしい」

 

「レン」

 

選択を間違えたのだと、そう実感した。

安直な判断だった。帝国の人間だから何だ?外国人だからどうした!?

あの時教会に預ける事無く、帝国で保護して置けば!と後悔している。

いくら帝国の人間で外国人でも、自分は帝位継承者だ。何とでも出来た筈。

人一人。ユーリ一人位!助けられた筈だ。

ユーリを聖女にして、過酷な人生を選ばせる事も無かった筈だった。

 

「相談。して欲しかったです」

 

「カティアの顔を見たら、弱音を吐きそうだった。

 全て、ブチ撒けたくなる」

 

カティアに後ろから抱き付かれる。

こうなる気がしていたから避けていた。だが拒む事は、やはり出来無い。

 

「撒いてくれて構いませんのに。

 婚約者でしょう?」

 

「ユーリの件以外にも、色々有った。

 まだ話していない事がゴロゴロしている」

 

「話して下さい。レンに何が有ったのか、知りたいですわ」

 

 

補足&解説枠。

ユーリとの再会。過去回です。

 

鑑定の儀

アニメ版ではシュレインが、教皇と会っていたシーンが有ります。

アレを鑑定の儀だと仮定。

アナレイト王国に教皇を招待した可能性も有りますが、

本作のレンは鑑定の儀を受ける為、聖アレイウス教国まで行った設定です。

 

ユーリーン・ウレン

原作では赤ん坊の頃に、既に捨てられて孤児に。

本作ではレンが、鑑定の儀を受ける年に捨てられています。

これは帝国の第二王子であるレンが、

教国の孤児であるユーリに、赤ん坊の頃に会えるフラグが無いからです。

 

夢見る乙女

ユーリの転生特典。理想の夢を具現化するスキル。

今回は不安や混迷が形となって、霧の結界が具現化。

平進高校の幻影は、接触に因る一時期的な共通投影です。

 

ロナント

レングザンド帝国の、人類最強の魔法使い。

魔法マニア同士レンとは仲が良く、討伐任務などに同行したがる。

レンを手本とすべき師匠を視る目で見ているが、

原作の白織を見るような、崇拝の域には達していない。




過去レンとロナントが、
ダメージ【移し】と言っているのは誤解釈。ダメージ【映し】が正解。

この後カティアは帝国で何が有ったのか聴く事になりますが、
真相編はスキップして続きます。

次回はソフィアにストーカーが!?
と言う話しになる予定ですが、公開未定です。仕事が☆
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