「~♪」
「御機嫌だな、ソフィア」
「そうね?こう言うのも悪く無いわ」
と言っているけど、明らかにソフィアの顔は弛んでいた。
解り易く言うなら【幸せそうな笑顔】と言うヤツだった。
オリくんの腕を取って、幸せそうに微笑んでいる。
何だろう?このファンタズマゴリアの悪夢を彷彿とさせる展開は!
勿論これには事情が有る。
そうでなければ学園の中で、こんな空気の読めない行動は取らない。
「ソフィアに、ストーカー?」
「典型的な尾行タイプよ。間違い無いわ」
「遂に来たか!」
学園に入学してから、一ヶ月程が過ぎた。
そんな在る日。今日は屋上で昼食を摂っていると、
ソフィアからそんな話題が上がった。
ソフィアが言うには、
一人で行動している時に限って、尾行者が居る。と言うモノだった。
日本に居た頃の物差しで言うなら、ソフィア狙いのストーカーと言う事になる。
だけど此処はファンタジーな異世界で、ソフィアは吸血鬼だ。
最悪のケースでは、ソフィアの正体を嗅ぎ付けた某国某組織のスパイ。
ソフィアの身体目当ての変質者。告白したいだけの一般生徒が相手でも、
何かの拍子で、ソフィアの正体が露見する恐れが有る。
だからもしストーカーらしい相手が現れたら、
三人でキッチリ対処する!そう決めていた。
「それで、相手の身元は?」
「探知で追跡済よ。でも、知らないヤツね」
でもソフィアは、易々とストーキングされる無力な女子生徒じゃない。
背中を向けたままでも、ストーカーを探知で調べられる。
「オリくん、どう?」
「アナレイトの伯爵家の子弟だった気がするが、それだけだ。
まずは振るいに掛けるしか無いだろう」
スパイか変質者ならこっそり処理する。
一般生徒が相手なら、初見は穏便に追い払う事にしている。
「経験が無いけど、上手く行くものなの?」
「大抵のヤツは諦めるだろう。
危険人物なら、襤褸を出す処だ」
と言う訳でオリくんとソフィアの、公開イチャコラタイムが始った。
まず登校風景!朝からオリくんとソフィアが、腕を組んで登校。
幸せオーラを振り撒いている。
「えっと、何が有ったの!?」
「色々有った」
直接訊いて来たのはフェイ一人。でも、
これにはターゲット以外にも、絶句してガン視している生徒が多数存在した。
ソフィアは身体がエロいから【当ててるのよ】状態になっている。
「学生のイチャコラと言ったら、これでしょう!」
「おぉ、これが噂のソフィアの手作り弁当」
お昼休みには、ソフィアが料理の腕を披露した。
レベリングツアーでもお世話になった、ソフィアの手料理だった。
「ほら、白織も」
「私の、分?」
「白織だけ、除け者に何てしないから」
「………」コクコク
オリくんだけでは無く、私の分のお弁当まで用意してくれるソフィア。
どうやら料理の腕は衰えていないらしい。
「懐かしい美味しさ♪」
「白織とソフィアは、二人旅をした時期が有ったな。
その時のイベントか?」
「美味しいって言ってくれるのは嬉しいけど、
アレを【懐かしい】で片付けられると、微妙な気分になるわ」
少し恨みを滲ませた視線になるソフィア。
心外である。あのレベリングツアーは、ソフィアの為の企画なのに!
どうして恨まれるかなぁ!?
「解って無いって顔ね?
なら言うけど、いきなり毒料理は無いでしょう!?
初日で死ぬかと思ったわ」
「弱毒だった。毒耐性は必須」
最初から致死量の猛毒を並べた事は無い。
ちゃんと調整した弱毒料理だった筈。
旅に毒耐性は必須だと思う。いつも真面な食糧が手に入るとは限らないから。
「確かに毒耐性のLvは上がったし、役に立ったわ。
でも当時の私は赤ん坊だったのよ!?あ・か・ん・坊!」
あの頃のソフィアは、まだ自由に歩けもしない時期だった。
恐らくだけど、
ソフィアが初めて立ったのを目撃したのも、両親では無く私だと思う。
「本気で殺されるかと思ったわ。
あの後の事だから」
「………」
あの後。と言うのは、ソフィアの告白の事だ。
ソフィアは、オリくんの事が好きだと私に告げて来た。
大きな決断。勇気が必要だったと思う。
本人に告白するのと同じ位の難易度だったかもしれない。
でもその直後にエルフの、
サイボーグポティマスの襲撃が有って、返事は保留になる。
私はただ、自衛手段が必要だと思っただけで他意は無かった。
まぁソフィアのレベリングは怪しい影の分身任せで、
本体の私は、オリくんと平穏に過ごしていたけどネ☆
「それにしても、
これはお約束の【ソフィアは良いお嫁さんになれるぞ】とか、
その手のパターンのイベントが来る美味さだ」
「そう言う時は、素直に私を褒めなさい。
もう婚約者だけど」
話題が移って、オリくんの凄い好評価!でも気持ちは解る。
ご飯が美味しいのは、とても幸せな事。大迷宮で経験済の出来事である。
「ソフィア、結婚してくれ」
「!?」
「ちょっ!?いきなり何を言い出すのよ、アナタはっっ!!!」
スマートにソフィアの手を取って告白。
ソフィアはあぁ言ってるけど、顔が赤い。結構本気にしてると思う。
「使い古しの常套句だからな。
不意打ちしか無いだろう?」
†
「これで、諦めてくれれば良い」
その後もオリくんとソフィアの、イチャコラと言う名の誘導は続いて放課後。
遂にターゲットは動いた。動いたと言うより、走り去って行った。
二人のシュガー具合に耐え切れなくなって逃げた?それとも諦めた?
諦めてくれると助ける。これ以上は、面倒な処理コースになる。
騎士上りの伯爵家の子弟で、ストーカー君で良いか。
ソフィアは諦めた方が身の為だよ?主にお互いの為に。
「Ⅱ?もう良いんじゃないかしら!?」
「盛り上がってる」
夕暮れの教室。差し込む夕日。そして抱き合う二人。
ソフィアは学園の中だからと口では拒絶しても、強く抵抗しない。
やがて諦めたのか、二人の唇が重なる。
イチャコラしている内に盛り上がったらしい。もうストーカー君も居ないから。
「………」
席を外そう。それが暗黙のルール。
ソフィアもオリくんの婚約者で、
昔から好きな人の醜い奪い合いは、
冷める原因!と言うのがラブコメの常識である。
「サイネリアの花」
何と無く、学園の庭園までやって来る。
其処に白いサイネリアの花が咲いていた。
新しい名前のモチーフだから知っている。
どうやら魔法で管理されているようで、季節外れの花も咲き誇っていた。
花を愛でるとか、私のガラじゃない。
サイネリアの事を知ったのも、名前が新しくなってからだ。
「若葉さん」
「S君」
そうやってガラにも無い事をしていると、誰かが近づいて来る気配がする。
それは件のストーカー君と、そのストーカー君を連れたS君だった。
フェイのマスターで、転生者の一人。それにアナレイトの王子様だったっけ?
今は何処か、険しい表情を浮かべている。これはどう言う展開!?
「バルトンに聞いたよ。どうしてアイツの!?」
「?」
S君の良く解らない主張を聞かされた。
まずはオリくんが、ソフィアとイチャコラしていたと聞かされる。
知ってる。ついさっきキスシーンまで目撃した。
夕暮れの教室でキスシーンとか!恋愛ゲームなら、確実にCGシーンである。
それでオリくんは、最低の二股だと!
どうしてそんなオリくんの婚約者をやっているのか?と聴きたいらしい。
どうして、どうしてか。
私も、日本で女子高生として過ごした。
私一人を見て欲しい。と言う一般的な感情が、無いと言ったら嘘になる。
だけどソフィアの事も別に嫌いじゃない。
「好き、だから」
それに揺らぐ事の無い想いが有る。
オリくんへの想いは、ソフィアが隣りに居ても揺らぐ事は無い。
言葉にすればたった一言。それだけだった。
「若葉さん。
そんなにアイツの事が?」
「………」コクコク
S君も、誰かを好きになれば解ると思う。
実妹ちゃんとメイドさんと、フェイが居て本命が居ないのはどうかと思うけど。
S君は俯いて退場。
ストーカー君も心配そうな顔で追従して行く。
もしかしてこれはアレかな?と思ったけど、
私から起こすアクションは何も無かった。
†
「それで、今度は何が有ったの?」
「何も無いわ、ただの平常運転でしょう?」
前回のソフィアとの腕組み登校に続いて、今日も注目を集めていた。
今回ばかりは賛同出来る。逆の立場でもまず注目する。
「~♪」
今回、隣りで腕を組んでいるのは白織だ。
しかもかなりの上機嫌!誰にでも解るだろう微笑みを浮かべている。
ソフィアは平常運転だと言うが、そうでも無い。
今まで【目が見えないから】と言う名目で、手を繋いで登校はしていた。
だが腕を組んで登校した事は無い。
そして当然の事ながら密着している。
決して忘れる事の無い感触と温もりが、登校中に伝わって来る。
今回のイチャコラ判別作戦は下策だったかもしれない。
白織に寂しい想いをさせたらしい。
白織が解り易く積極的になるのは珍しいから、直ぐ解る。
だから念を入れて白織にだけ聴こえるだろう音量で、
この気持ちを、好意を伝える。白織の応えは?
「知ってる」
きっと傍から聴いたら、アッサリとした応えだったかもしれない。
だが腕を組んで密着している自分だけは解る。
腕を組む拘束力が増大して、密着度と感触が↑↑。
微笑みは、笑顔にクラスチェンジしていた。
†
補足&解説枠。
ソフィアイベントと思わせて、白織イベントでした☆
サイネリアの花
白織が独りで、庭園の花を愛でている光景。
傍から観測すると、寂し気な絵になると思う。
→白織のシュレインには、がしがしそう見えています。
バルトン
原作では、課外講義でシュレインとテントを建てていた班メイト。
本作でも実技でシュレインに助けられていた。
シュレイン→白織に気付いて、シュレイン様の為に!
とツヴァイ達三人に探りを入れている内に、ソフィアに惚れた設定。
因みにソフィアは?
夜にしっかりと欲求を発散しているので、【魅了】は暴走していない。
殆どいつでも好きな相手(ツヴァイ)を抱けて、血も吸える!
と言うとても恵まれた環境下で過ごして居ます。
暴走の余地は無く、ソフィア側に落ち度は全く無い状況。
当初は決闘イベントも想定していましたが、
白織のシリアスお断りの後で、
決闘騒ぎまで起こすとザコ臭いので、カットしました。
今後の予定としては、
雨はいつ上がる?(課外講義)
臨海学校☆(水着イベ)
友を訪ねて三千里!(魔族領への旅)
などと構想していますが、やはり公開未定です。