六月の新イベント開幕。
「雨、ずっと降ってる」
空は雨雲に覆われて、雨が降り続いている。
久しく太陽を見ていない気がした。そんな空模様。
日本で言う六月の雨。雨季の雨だった。
生きる為に水が必要なのは勿論経験済だけど、これは長い。
雨続きで、今度は水害が起きそう。
「白織は、雨が嫌いだったか?」
「………」フルフル
雨が嫌いと言う事は無い。
元々アウトドアの活動的なキャラじゃないから、
巣穴(家)に籠っていても、退屈はしない。
湿気が酷くなると、髪の管理が大変になる位。
神化で人型に成ってからは、特にそう感じていたりする。
でもオリくんは、長い髪が好きだった。
長い髪は管理が大変だけど、手入れは怠っていない。
「最も綺麗な髪は、【銀髪】だと思っている」
何かで髪の話題が出た時に、オリくんはそう宣言していた。
私はアルビノで、髪も白いんですが!?
「だがそれ以上に好きなのが【アルビノ】だ」
「………」コクコク
包み込むように抱き締められて、
愛されている事を実感する。この感覚が、私は好きだった。
「でも、フェイも白い」
だけどオリくんの腕の中で気付いてしまう。
同じ魔物転生のフェイも、人型になると白くなると!
「いや、白ければ何でも良い訳じゃ無いからな?」
と言う一幕が有って、私の髪は長いままだった。
今では自慢の髪である。
「オリくんは?」
「屋根の下の安全圏で、眺めるだけなら。
イベント的にも、何か起こりそうで好きだ」
イベントか、
この雨でも何か起きたりするのかな?と思っていたら、本当に起きた!
と言っても些細なイベントだ。
現時点での上位成績者が、発表されただけ。
日本でも、有名進学校とかでやるヤツである。
「首席?」
「おめでとう、と言って置こうか?」
首席は私で、
次席が入試で首席だった帝国の王子様。
その後の三位にオリくんが、四位にはソフィアがランクインしていた。
特にソフィアの順位は絶妙。
一番目立つ上位三位を避けながら、好成績をキープしている。
「手加減、した?」
「この手の学園物では、首席に面倒な強制イベントが入り易い。
対策はすべきだと思わないか?」
それって私が、考え無しに地雷を踏み貫いたって事!?
と言ってる内に呼び出されて、【雨雲の巫女】とやらに指名されてしまう。
雨雲の巫女は、日照り続きの干ばつ。
それに丁度今のような、長雨の時に儀式をする巫女らしい。
サダクビア領。
サリエーラの辺境で、何も無い霧深い盆地だった気がする。
其処まで出向いて儀式をして来るのを、
課外講義扱いで受ける事になる。(強制)
「オリくん、ソフィア!」
「下手を打ったわね」
「付き合うのは構わないが」
雨雲の巫女に指名されて、サダクビア領行きが決まる。
課外講義扱いだけど、道中護衛を連れて行く事が出来る。
勿論私は、オリくんとソフィアにお願いしたんだけど?
「確か白織は、
天候操作も出来たな?」
「ラナリオン」
そう!態々辺境に行って、
怪しい儀式をしなくても、私にはラナリオンが有る。
たった今から雨雲を晴らす事も出来た。
「まぁ折角の課外講義だ。
突発イベントを愉しむのも、アリだろう」
†
「太陽の光」
「随分と久しぶりな気がするわ。悪く無いものね?」
厚い雲を抜けて、雲の上の蒼穹に出る。
其処には久しく目にしていなかった太陽が、当然のように輝いていた。
太陽の光を浴びて、ソフィアが気持ち良さ気に身体を伸ばす。
それで良いのか吸血鬼!?と言いたくなる光景である。
「まぁ、かなり久々だからな?」
「はい。日頃から乾燥処理が必須でした」
ソフィアの奇行にオリくんとセリオが、寛容に応える。
そう、オリくんのメイドであるセリオだ。
今回の課外講義は(通常なら)長旅になるので、
護衛だけでは無く、メイドの同行も許可されている。
セリオの同行は助かるので、迷う事無く同行して貰う事にした。
「それにしても、流石ね?」
「龍だからな?」
私達は今、雲の上に居る。
下は雨続きだから、目的のサダクビア領まで雨雲の上を行く事にした。
セリオを含めた四人で乗っているのは、オリくんが召喚した白銀の龍だった。
オリくんは神化する為に、あれから定期的に龍の血を接種している。
今ではもう、龍関連のスキルをかなり修得していた。
今回の龍(眷属)召喚もその一つ。
オリくん自身は、こんな主人公臭いスキルは似合わない。
と良く愚痴っている。
「この子、名前は?」
「名前か、そうだな」
この子は私も初めて見る。まだ名前は決まっていないらしい。
これで龍では無く鳥系なら、【ラーミア】と呼びたくなる展開だった。
それにしても見事な白銀である。
降り積もったばかりの処女雪のような、穢れ無き白銀。
それに通常の龍種では無く、【雪龍】と言うレア種族らしい。
オリくんの趣味趣向が滲み出ていた。
「【雪那(セツナ)】。
お前は名前は、今から雪那だ」
雪那。
雪龍の子にそう名付けると、雪那はそれに応えるように咆哮を上げる。
それは龍の声だと思えない程の、歌うような綺麗な声だった。
「オリくん。
雪那は ――― 」
もしかして人型になったりするの!?
と訊きたくなったけど、それがやって来る。
「良しっ追い着いたっっ!!!」
「飛ばし過ぎですわっ!フェイッッ!!」
白い龍。龍の姿に戻ったフェイが、雲を突き抜けて姿を現す。
背中にはマスターのS君の姿は無く、カティアと首席君が騎乗していた。
「レンバートンとカティアか、
あの二人が何故此処に?」
「カティアも、雨雲の巫女」
呼び出されたのは、私だけじゃ無かった。
ソフィアと同率四位のカティアも、雨雲の巫女に指名されている。
フェイと首席君は、恐らくカティアが選んだ護衛役。
「ちょっ!?
それって競争相手って事なの!?」
「好きにすれば良い。そう答えた」
†
「あら、白織」
「………」
上位成績者が発表されて、呼び出しが掛りました。
それに応じて学生指導室を訪れると、先客が居ました。
白織です。白織・サイネリア。
元クラスメイトの転生者。
フェイと同じ白いアルビノ。ですが何かが違う。
一部では神獣の巫女と噂されています。
今に到るまで少し話しをする機会は有りましたが、
一対一で対面するのは初めて。
白織はツヴァイやソフィアと仲が良くて、いつも一緒ですから。
三人で完結しているみたいで、
余り他のクラスメイトと過ごしている処を見掛けません。
「雨雲の巫女ですか、
それなら、今回は競争相手ですわね?」
「………」
そんな白織共々、雨雲の巫女に指名されます。
ですが白織は、特に興味が無い様子です。
「課外講義ですのよ?
評価点が高いのは、殆ど確定だと思いますが」
「結婚、するから」
これは、結婚するから就活はしない!と言うノリでしょうか?
ですがそう主張する白織自身が首席です。
「それとこれとは別の話です。
それに、私は其処まで楽観していませんわ」
「違うの?」
暫く婚約者トークで盛り上がります。
白織は典型的な、好きな話しになると饒舌になるタイプのようです。
こうして婚約者の話しをしている白織を見ていると、
噂の神獣の巫女とは程遠い、ただの恋する乙女に見えます。
「私は本気で行きますわよ?
やっぱり勝ちたいですから」
「好きにすれば良い」
白織と話しが出来て、今日は少し仲が良く成れた気がします。
それで課外講義の方はどうしましょう?
サダクビア領までそれなりに掛りますし、護衛(同行者)も必要です。
「雨雲の巫女?サダクビア領?
カティアの頼みだ。勿論付き合おう」
「はい!宜しくお願いしますわ♪」
レンが快く同行を引き受けてくれた。
自分でも、声が弾んでいるのが解ります。
あの一件以来、レンとも普通に話せるようになりました。
「えっ課外講義?
なら私が、乗せて行ってあげるよ」
「良いんですの?シュンが居ませんのに」
その後でフェイと遭って、サダクビア領まで乗せて貰える事になりました。
シュンが塞ぎ込んでいるから、退屈だそうです。
シュンは白織に告白して玉砕したとか。
あれ程仲が良いのですから、無謀です。
「シュンは家族に任せるって事で、
それじゃあ早速行こうか、勝ちたいんでしょう?」
†
補足&解説枠。
白織&カティアの友好イベント入りました☆
雨雲の巫女
魔法適正では無く、単純に魔力量の多い女子が選出。
カティアと同率のソフィアは、これを上手く誤魔化しています。
ラナリオン
原作では雨雲を呼ぶ天候系呪文!となっていますが、
本作では、雨雲を【操る】天候系呪文。と言う設定。
雪龍の雪那
色々と盛りましたが、人化の予定は無し。
雪那はモブの騎乗龍です。
セリオもモブメイドからの出世ですが☆
学生指導室
そろそろ気になっているかもしれませんが、学園にフィリメスは不在です。
本作ではケレン領が健在なので、ソフィア父がしっかり報告済。
サリエーラ上層部に、エルフ襲撃の件が伝わっています。要警戒中。
自国の事なので、
国外では平和の使者を謳うエルフも、
サリエーラ国内では、傲慢で危険な仮想敵として知られている設定。
婚約者トーク
カティアはすっかり女子をやっているので、
大島が若葉に告白した件は、無意識に避けています。
告白されたのもDの方なので、白織も訊かれるまで記憶の底です。
シュレインは玉砕したばかりなので、スーと居残りです。
ユーリがパーティーに加わるのは、まだ早いかな?と言う判定。
レンはカティアが口説きました☆(未公開)
次回はサダクビア領の探索を予定しています。