双子(疑惑)ですが、なにか?   作:LW

30 / 33
もうクリアしている案件では?
と言う感じですが、ふとした切欠で噴出するかと。


30 いつも、ありがとう

「雨が降っていないのは、良いけど」

 

「霧が晴れるのを、期待するのは無駄のようです」

 

雪那の、龍の移動速度と飛行能力は偉大だった。

サダクビア領に即日到着。雪那の召喚は解除。

此処からは、峡谷を地上から行く事になる。

ソフィアの言う通り、雨は降っていない。だが峡谷は霧で覆われていた。

 

「ミストドラゴンが、出そう」

 

「実際にミストドラゴンが出ても、対処法は有る」

 

ミストドラゴン。要は半実体型の幻獣だ。

霧状になると物理が通らなくなる事が有名だが、

実際に戦うなら、魔法が普通に通りそうな印象が有る。

 

「来ます」

 

霧の中から現れた敵を、最初に捉えたのはセリオだった。

レーダーに因る広域索敵能力。

この霧の中でも、問題無く機能しているらしい。

 

「こっちも捉えたわ」

 

「いつもの事」

 

ソフィアは探知の並列運用。

眷属支配の音波探査も得意だが、探知の方が高性能かつ低リスクだ。

 

白織が視覚に頼らないのはいつもの事だった。

目を閉じたままで、様々な情報収集手段を保有している。

 

「対龍兵装は失いましたが、微力ながら助力出来るかと」

 

と言ってセリオが装備したのは、腕に装着するタイプの大剣だった。

それはドラゴンキラーに酷似していた。

と言うよりセリオの来歴を想定すると、ドラゴンキラーしていた武器の筈。

 

「セリオの勇姿、見せて貰えるか?」

 

「はい。行きます」

 

セリオが先陣を駆ける。

かなりの速さだ。これでスラスターを失った加速無しの状態である。

素足のDEXだけで、霧の中から現れるコボルトの群を蹂躙して行く。

 

対龍兵装で龍と戦う事が前提のセリオにとって、

ドラゴンキラーはメイン処か、サブウェポン以下のナイフでしか無い筈。

 

コボルトは普段、鉱山などの穴倉を根城にしている。

聴覚/臭覚が鋭く、霧の中でも平然と活動可能。

索敵能力が高い方で、決して油断して良い相手では無い。

 

無いが、セリオの敵では無かった。

時折迂回して背面か側面を取ろうとするヤツも居たが、

 

「無駄」

 

接触が成功する前に、白織が布陣した蜘蛛の巣に囚われて行く。

動きを封じられたまま捩られて、文字通り襤褸雑巾のようになる。

 

「次が来るわ」

 

「ゴーレムか」

 

セリオがコボルトの群を粗方片付けると、

次にゴーレムの部隊が姿を現す。

ゴーレムは一般的に、自然発生する代物では無い筈。

近くに遺跡でも有るのか?

 

「隠す気も無い駄作ね」

 

ゴーレムは刻印で起動して、弱点になっている事は有名である。

だから大抵のゴーレムは、刻印を上手く隠しているケースが殆どだ。

だがこのゴーレムは後頭部。

少し高い位置に有るだけで、弱点が露出してしまっている。

 

「ダメよ、隠さないと。恥を知りなさい」

 

ゴーレムの部隊は、ソフィアが即席で作った落し穴に嵌った。

穴に嵌ったゴーレムを、蹴りで悠然と砕く。

無抵抗の相手に止めを刺すソフィアが、何とも愉しそうである。

 

「デカイな、中ボス出現!と言った処か?」

 

地響きを鳴らして、巨大なゴーレムが姿を現す。

ゲームで言うなら正に、中ボス出現!と言う展開。

だがデカイだけだ。

峡谷の狭いフィールドに合っていないし、鈍重なのも変わらない。

物理的に道を塞いでいるだけの、路傍の石だった。

 

「邪魔だ」

 

拳に龍の力を集束して、普通に跳躍して頭を殴った。

確認はしていないが、

今までのゴーレムは頭に刻印が有ったから、憶測でしか無い。

 

「やはりデカイだけだったか」

 

巨大ゴーレムは、地面に倒れる前に砕け散った。

刻印を破壊したからでは無い。

拳の打撃力が、巨大ゴーレムの耐久値を遙かに上回った結果である。

 

 

「それで、どうします?

 ルートの争奪戦から始めますか?」

 

サダクビア領の峡谷に、二体の龍が降下する。

白銀の雪那から降りたのは、私達四人。

向こうはフェイを含めて三人。フェイ、カティア、首席君だ。

 

カティアは勝ちに行く~と言っていたから、

これからのルート選択も重要になる筈。

 

学園側から渡された資料では、

峡谷を正面から抜けるルートと、迂回ルートが。

其処に儀式の実行ポイントが有るらしい。

 

「いや、此処で潰し合う事は無い。

 こちらは迂回ルートで行く」

 

「そうですか、

 向こうで会うのが楽しみです。レンバートン殿下」

 

「同じ元クラスメイトだから、と親しい顔をする心算は無いが。

 此処は公式外、敬語は無しで構わない」

 

「そうか、ではまた後でだ。レンバートン」

 

首席君は帝国の王子様だからと、

珍しいオリくんの敬語を聞く事になる。

 

そして首席君が選んだのは迂回ルート。

カティアとフェイを連れて、其方へ向かう。

私達は正面のルート。

 

そうしてコボルトやらゴーレムやらと戦闘になって、日が暮れた。

私達は、素直に野営する事にした。

夜間行軍する程、この課外講義に力は入れていない。

 

「準備が整いました。こちらです」

 

「くっ流石は本職!」

 

夕食の時間。

料理が得意なソフィアだけでは無く、本職メイドのセリオが居る。

食材も真面な物を、充分に保管して空納している。

もう迷宮サバイバル時代とは、食のLvが違う。

魔物肉を、コボルト肉を実食する機会はもう無いっっ!!!

 

「食事時の白織は、本当に幸せそうだな?」

 

「魔物肉の不味さを体験したから」

 

折角の料理が不味くなるから、実体験の食レポは口にしない。

だけど昆虫系は特にダメ!不味くて、エグくて、臭い。

 

「鯰か鰻なら、今食べても良い」

 

「其処だけ聞くと、真面な食事の話だが」

 

「美味しい魔物肉の話なのよね」

 

と言う訳で何の問題も無く、平穏な食事の時間が過ぎて行く。

そして入浴!旅先でもお風呂は欠かさない。

前にやった事が有るから、ただの反復作業。

露天風呂的なバスタブを製作。今日は三人で入る事になる。

オリくんは見張りを兼ねた順番待ちだった。

一緒だと、汗を流す処じゃなくなるから。

 

「本当にオートマタなの?って言いたくなるわ」

 

「ナノマシン、凄い」

 

セリオの肌は綺麗だった。

特に背中が、背中には瑕が一つも無い。

 

セリオの背中には、翼が有った。そう聴いている。

人類を滅ぼすと決めた、龍の軍勢との戦争。

その戦いの中で、対龍兵装と共に翼を喪失した。

だけど喪失した翼の傷痕は、今はもう何も無かった。

 

 

「これは、作為的じゃないかしら?」

 

「二人用だから、必然」

 

一日の終り、就寝の時間。

今夜は私が用意した、蜘蛛の糸のハンモックで眠る事になる。

私にとっては懐かしい寝床。

神化して人型になってからは、屋敷で普通に布団だった。

だけどこのハンモックで眠るとなると、我が家に帰った気がして来る。

 

「こっちがソフィアとセリオ。

 これがオリくんと私」

 

「確かに用意したのは白織だけどっっ」

 

当たり前のように、ハンモックは二人用の物を用意した。

ペア分けも、製作者権限でオリくんとペアだ。選択肢は無い。

これを拒否すると、後はもうマントに包って眠るしか無くなる。

常時霧に覆われて湿った峡谷の地面で、進んでやりたい行為では無い。

 

小規模とは言え、旅に出るのにテント一つも持参しないとか!

温い。圧倒的に温い。

流石は日帰りのソフィア、だから容易く出し抜かれる。

私は華麗にソフィアを黙らせる事に成功した。

 

「思ったよりも快適だな」

 

「頑張ったから」

 

オリくんが私の作ったハンモッグに身を委ねる。

快適だと好評化で安心する。本当は少し不安だったから。

 

睡眠は真面な生き物なら、誰でも摂らなくてはならない。

そして無防備を晒さなくてはならない時間でも有る。

だから迷宮サバイバル時代は、色々と試行錯誤したモノだった。

 

今回見張りも立てずに眠るのは、ハンモックの防衛機能を信じているから。

周囲には、蜘蛛の糸のセンサーが張り巡らされている。

迷宮サバイバルを生き抜いた自信作の一つ。

もしこれをあっさり拒絶されたら、流石にショックだ。

 

「白織?」

 

瞼を開く。

赤い目でオリくんを見つめる。

オリくんは、目を見た方が私の事が解ると言っていた。

だから瞼を開く。伝わって欲しいから。

 

「いつも、ありがとう」

 

だって、このハンモックはどう見ても蜘蛛の巣だ。

本当は怖くない?拘束されたり捕食されたりとか、心配じゃない?

今は神化して人型だけど、私は蜘蛛の魔物だよ?

 

オリくんはいつも、当たり前のように壁を乗り越えて来る。

それがどれだけの難易度なのか、考えた事も無いんじゃ無いかと思う。

 

だから私はハンモックの中で、

開いた瞼をもう一度閉じて、唇を合わせる。

この想いと、感謝が伝わりますように。

 

 

補足&解説枠。

些細な切欠で、種族の壁は出現する。

 

迂回ルート

イメージは某エターナルソードの、マロリガン攻略戦。

正面ルート、砂漠横断ルート、迂回ルートが在る。

正面ルートは当然ながら防衛ラインが最も厚く、

砂漠横断ルートも旨味が少ない。

迂回ルートが、殆ど正規ルートだと思う。

 

正面ルートに魔物の群が現れたのは、

こっちの防衛ラインのイメージの名残り。

 

日帰りのソフィア

二人旅レベリングツアーの設定。

実は日が暮れると、白織の転移でケレン領の自宅に戻っていた!

原作の旅と比べると、確実にイージーモード。

夜はベッドで寝られる。と言う超贅沢な旅☆

 

旅に出るのに、

ソフィアがテントやシュラフを持参し無かったのは、これが原因。

白織はツヴァイに「用意は、私がする」と言っています。

 

いつもありがとう

皆さんは、モン娘系18禁恋愛ゲームのプレイ経験は有りますか?

私は有ります。

其処で、種族の壁を体感しました。

 

「いつも人の姿で出て来てくれてありがとう」と。

割とガチで、人外ヒロインに感謝を伝えたくなりました。




因みに何の因果か、
↑のゲームの推しヒロインの種族は、アルケニーと言う蜘蛛系です☆

次回はカティアチーム探索パート。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。