と言う感じですが、ふとした切欠で噴出するかと。
「雨が降っていないのは、良いけど」
「霧が晴れるのを、期待するのは無駄のようです」
雪那の、龍の移動速度と飛行能力は偉大だった。
サダクビア領に即日到着。雪那の召喚は解除。
此処からは、峡谷を地上から行く事になる。
ソフィアの言う通り、雨は降っていない。だが峡谷は霧で覆われていた。
「ミストドラゴンが、出そう」
「実際にミストドラゴンが出ても、対処法は有る」
ミストドラゴン。要は半実体型の幻獣だ。
霧状になると物理が通らなくなる事が有名だが、
実際に戦うなら、魔法が普通に通りそうな印象が有る。
「来ます」
霧の中から現れた敵を、最初に捉えたのはセリオだった。
レーダーに因る広域索敵能力。
この霧の中でも、問題無く機能しているらしい。
「こっちも捉えたわ」
「いつもの事」
ソフィアは探知の並列運用。
眷属支配の音波探査も得意だが、探知の方が高性能かつ低リスクだ。
白織が視覚に頼らないのはいつもの事だった。
目を閉じたままで、様々な情報収集手段を保有している。
「対龍兵装は失いましたが、微力ながら助力出来るかと」
と言ってセリオが装備したのは、腕に装着するタイプの大剣だった。
それはドラゴンキラーに酷似していた。
と言うよりセリオの来歴を想定すると、ドラゴンキラーしていた武器の筈。
「セリオの勇姿、見せて貰えるか?」
「はい。行きます」
セリオが先陣を駆ける。
かなりの速さだ。これでスラスターを失った加速無しの状態である。
素足のDEXだけで、霧の中から現れるコボルトの群を蹂躙して行く。
対龍兵装で龍と戦う事が前提のセリオにとって、
ドラゴンキラーはメイン処か、サブウェポン以下のナイフでしか無い筈。
コボルトは普段、鉱山などの穴倉を根城にしている。
聴覚/臭覚が鋭く、霧の中でも平然と活動可能。
索敵能力が高い方で、決して油断して良い相手では無い。
無いが、セリオの敵では無かった。
時折迂回して背面か側面を取ろうとするヤツも居たが、
「無駄」
接触が成功する前に、白織が布陣した蜘蛛の巣に囚われて行く。
動きを封じられたまま捩られて、文字通り襤褸雑巾のようになる。
「次が来るわ」
「ゴーレムか」
セリオがコボルトの群を粗方片付けると、
次にゴーレムの部隊が姿を現す。
ゴーレムは一般的に、自然発生する代物では無い筈。
近くに遺跡でも有るのか?
「隠す気も無い駄作ね」
ゴーレムは刻印で起動して、弱点になっている事は有名である。
だから大抵のゴーレムは、刻印を上手く隠しているケースが殆どだ。
だがこのゴーレムは後頭部。
少し高い位置に有るだけで、弱点が露出してしまっている。
「ダメよ、隠さないと。恥を知りなさい」
ゴーレムの部隊は、ソフィアが即席で作った落し穴に嵌った。
穴に嵌ったゴーレムを、蹴りで悠然と砕く。
無抵抗の相手に止めを刺すソフィアが、何とも愉しそうである。
「デカイな、中ボス出現!と言った処か?」
地響きを鳴らして、巨大なゴーレムが姿を現す。
ゲームで言うなら正に、中ボス出現!と言う展開。
だがデカイだけだ。
峡谷の狭いフィールドに合っていないし、鈍重なのも変わらない。
物理的に道を塞いでいるだけの、路傍の石だった。
「邪魔だ」
拳に龍の力を集束して、普通に跳躍して頭を殴った。
確認はしていないが、
今までのゴーレムは頭に刻印が有ったから、憶測でしか無い。
「やはりデカイだけだったか」
巨大ゴーレムは、地面に倒れる前に砕け散った。
刻印を破壊したからでは無い。
拳の打撃力が、巨大ゴーレムの耐久値を遙かに上回った結果である。
†
「それで、どうします?
ルートの争奪戦から始めますか?」
サダクビア領の峡谷に、二体の龍が降下する。
白銀の雪那から降りたのは、私達四人。
向こうはフェイを含めて三人。フェイ、カティア、首席君だ。
カティアは勝ちに行く~と言っていたから、
これからのルート選択も重要になる筈。
学園側から渡された資料では、
峡谷を正面から抜けるルートと、迂回ルートが。
其処に儀式の実行ポイントが有るらしい。
「いや、此処で潰し合う事は無い。
こちらは迂回ルートで行く」
「そうですか、
向こうで会うのが楽しみです。レンバートン殿下」
「同じ元クラスメイトだから、と親しい顔をする心算は無いが。
此処は公式外、敬語は無しで構わない」
「そうか、ではまた後でだ。レンバートン」
首席君は帝国の王子様だからと、
珍しいオリくんの敬語を聞く事になる。
そして首席君が選んだのは迂回ルート。
カティアとフェイを連れて、其方へ向かう。
私達は正面のルート。
そうしてコボルトやらゴーレムやらと戦闘になって、日が暮れた。
私達は、素直に野営する事にした。
夜間行軍する程、この課外講義に力は入れていない。
「準備が整いました。こちらです」
「くっ流石は本職!」
夕食の時間。
料理が得意なソフィアだけでは無く、本職メイドのセリオが居る。
食材も真面な物を、充分に保管して空納している。
もう迷宮サバイバル時代とは、食のLvが違う。
魔物肉を、コボルト肉を実食する機会はもう無いっっ!!!
「食事時の白織は、本当に幸せそうだな?」
「魔物肉の不味さを体験したから」
折角の料理が不味くなるから、実体験の食レポは口にしない。
だけど昆虫系は特にダメ!不味くて、エグくて、臭い。
「鯰か鰻なら、今食べても良い」
「其処だけ聞くと、真面な食事の話だが」
「美味しい魔物肉の話なのよね」
と言う訳で何の問題も無く、平穏な食事の時間が過ぎて行く。
そして入浴!旅先でもお風呂は欠かさない。
前にやった事が有るから、ただの反復作業。
露天風呂的なバスタブを製作。今日は三人で入る事になる。
オリくんは見張りを兼ねた順番待ちだった。
一緒だと、汗を流す処じゃなくなるから。
「本当にオートマタなの?って言いたくなるわ」
「ナノマシン、凄い」
セリオの肌は綺麗だった。
特に背中が、背中には瑕が一つも無い。
セリオの背中には、翼が有った。そう聴いている。
人類を滅ぼすと決めた、龍の軍勢との戦争。
その戦いの中で、対龍兵装と共に翼を喪失した。
だけど喪失した翼の傷痕は、今はもう何も無かった。
†
「これは、作為的じゃないかしら?」
「二人用だから、必然」
一日の終り、就寝の時間。
今夜は私が用意した、蜘蛛の糸のハンモックで眠る事になる。
私にとっては懐かしい寝床。
神化して人型になってからは、屋敷で普通に布団だった。
だけどこのハンモックで眠るとなると、我が家に帰った気がして来る。
「こっちがソフィアとセリオ。
これがオリくんと私」
「確かに用意したのは白織だけどっっ」
当たり前のように、ハンモックは二人用の物を用意した。
ペア分けも、製作者権限でオリくんとペアだ。選択肢は無い。
これを拒否すると、後はもうマントに包って眠るしか無くなる。
常時霧に覆われて湿った峡谷の地面で、進んでやりたい行為では無い。
小規模とは言え、旅に出るのにテント一つも持参しないとか!
温い。圧倒的に温い。
流石は日帰りのソフィア、だから容易く出し抜かれる。
私は華麗にソフィアを黙らせる事に成功した。
「思ったよりも快適だな」
「頑張ったから」
オリくんが私の作ったハンモッグに身を委ねる。
快適だと好評化で安心する。本当は少し不安だったから。
睡眠は真面な生き物なら、誰でも摂らなくてはならない。
そして無防備を晒さなくてはならない時間でも有る。
だから迷宮サバイバル時代は、色々と試行錯誤したモノだった。
今回見張りも立てずに眠るのは、ハンモックの防衛機能を信じているから。
周囲には、蜘蛛の糸のセンサーが張り巡らされている。
迷宮サバイバルを生き抜いた自信作の一つ。
もしこれをあっさり拒絶されたら、流石にショックだ。
「白織?」
瞼を開く。
赤い目でオリくんを見つめる。
オリくんは、目を見た方が私の事が解ると言っていた。
だから瞼を開く。伝わって欲しいから。
「いつも、ありがとう」
だって、このハンモックはどう見ても蜘蛛の巣だ。
本当は怖くない?拘束されたり捕食されたりとか、心配じゃない?
今は神化して人型だけど、私は蜘蛛の魔物だよ?
オリくんはいつも、当たり前のように壁を乗り越えて来る。
それがどれだけの難易度なのか、考えた事も無いんじゃ無いかと思う。
だから私はハンモックの中で、
開いた瞼をもう一度閉じて、唇を合わせる。
この想いと、感謝が伝わりますように。
†
補足&解説枠。
些細な切欠で、種族の壁は出現する。
迂回ルート
イメージは某エターナルソードの、マロリガン攻略戦。
正面ルート、砂漠横断ルート、迂回ルートが在る。
正面ルートは当然ながら防衛ラインが最も厚く、
砂漠横断ルートも旨味が少ない。
迂回ルートが、殆ど正規ルートだと思う。
正面ルートに魔物の群が現れたのは、
こっちの防衛ラインのイメージの名残り。
日帰りのソフィア
二人旅レベリングツアーの設定。
実は日が暮れると、白織の転移でケレン領の自宅に戻っていた!
原作の旅と比べると、確実にイージーモード。
夜はベッドで寝られる。と言う超贅沢な旅☆
旅に出るのに、
ソフィアがテントやシュラフを持参し無かったのは、これが原因。
白織はツヴァイに「用意は、私がする」と言っています。
いつもありがとう
皆さんは、モン娘系18禁恋愛ゲームのプレイ経験は有りますか?
私は有ります。
其処で、種族の壁を体感しました。
「いつも人の姿で出て来てくれてありがとう」と。
割とガチで、人外ヒロインに感謝を伝えたくなりました。
因みに何の因果か、
↑のゲームの推しヒロインの種族は、アルケニーと言う蜘蛛系です☆
次回はカティアチーム探索パート。