「御見事です。皆様」
そう賛辞を述べる。それは心よりの評価でした。
あのドラゴンテラーは、決して楽な相手では無かった筈です。
恐ろしい浸蝕率と範囲を誇る致死の腐蝕攻撃。
システム内スキルの殆ど全てを干渉させない不死性。
難攻不落と評価しても良い布陣。
ですが難敵だった筈のドラゴンテラーを、
容易く踏破して見せました。
「もう戦闘面では、お役に立てないかもしれません」
ツヴァイ様は龍の力を手に入れて、
その両隣りには、白織さんとソフィアさんが居ます。
特に今回活躍した白織さんの実力は圧巻です。
対龍兵装を失い、
ただのメイドとなった私では、と。
「これは?」
ドラゴンテラーから勝利を収めて、皆様は健闘を称え合っています。
私は天候操作を終えて、
装置の席を発とうとしたのですが、そのシグナルに気付きました。
どうやらこの天候操作装置には、衛星通信機能が搭載されていたようです。
衛星通信自体は、珍しい機能では有りません。
前文明時代ではありふれた機能で、私も日常的にその恩恵を受けていました。
特にサテライト・サービスは、戦線を支える要とも言えるシステムでした。
問題は、衛星通信が利用可能状態である事。
支援衛星サザン・クルス。
サテライト・サービスの送信施設であり、衛星通信の要。
HMX-13シリーズは、
サザン・クルスからのサテライト・サービスで、戦況に応じてアップデート。
各戦線で収集された情報の共有化も計られています。
そしてサザン・クルスは、MAエネルギーの大規模変換施設です。
衛星軌道上から、世界を巡るMAエネルギーを吸い上げます。
対龍最終兵装サテライト・キャノン。そのエネルギー供給源でも有ります。
龍はサザン・クルスを、最優先殲滅対象に定めました。
衛星軌道上へ上り、サザン・クルス陥落を計ります。
前文明時代末期。人類と龍の終末戦争。
数多の激戦の一つ。南十字流星戦線の幕開けです。
人類の明日を賭けた衛星軌道上の、
傷付き力尽きた者から、流星となって消える天空の戦い。
数多の龍とHMX-13シリーズが、流星となって消えました。
ですが最終的に、敗北したのは人類。HMX-13シリーズです。
数多の龍の死と引き換えに、サザン・クルスは陥落。
HMX-13シリーズは、サテライト・サービスの恩恵を失い敗走します。
「サザン・クルスは、確かに陥落した筈です」
サザン・クルス陥落後。
龍は衛星通信網を、徹底的に破壊しました。
以降HMX-13シリーズは、歴史から姿を消す事に。
問題点は、断たれた筈の衛星通信が生きている点です。
「サザン・クルスが?」
サザン・クルスが生きている。と言う事は無い筈。
他に運良く生き残った通信衛星が在った?或いは復旧した?
前文明時代では、自己修復を備えた物も確かに存在します。
HMX-13シリーズの対龍兵装が、良く見知った例えです。
ですが衛星一つの復旧となると、莫大なエネルギーを消費します。
自己修復機能に因る復旧は、現実的とは思えません。
「!」
故に絵空事だと、嘲うかのようにシグナルが途絶。
もう見慣れた通信不能状態に戻ります。
「真相は闇の中、ですか」
†
「対龍兵装が?」
「はい。微弱ですが、反応が有ります」
最後に不死スキル持ちのドラゴンテラーまで現れて、
深淵魔法やら分身投影からの多重攻撃を披露する事になったけど、
今度こそ終った。課外講義もこれでクリア。
雨雲が晴れて、空に蒼穹が戻る。
結局装置の操作には、前文明知識が必要だった。
指定されたポイントに着くだけだと、魔力の搾取損だった筈。
それでも私はラナリオンが使えるから、その場合もクリア出来たけど☆
今回の必須キャラだったセリオから、
ノンストップで次のイベントの報告が入る。
対龍兵装。
HMX-13シリーズが、
前文明時代に使用していた主兵装。外付けの追加オプション。
今では貴重なナノマシン製で、自己修復機能まで常備。
対龍最終兵装サテライト・キャノン。
MAエネルギーを大量に消費して放つ最終兵装。
世界を滅ぼし掛けた禁断の【MA兵器】。
「捉えた。
これはレンバートンか?」
オリくんの稀少鑑定(レアセンサー)は流石で、即座に対象を捉える。
学園への帰り道。峡谷の分れ道の交差路。
其処でカティアとフェイ、ターゲットの首席君を補足。
「学園に到着する前に確保する。
それと、一応顔は隠して置くか」
「………」コクコク
相手は帝国の王子だから、変装する事になった。
私はモシャスも使えるから、変装はイメージだけで行ける。
私は白いのがとにかく目立つ。
白いだけで神獣の巫女と呼ばれる位だ。此処は変えないとマズイと思う。
変装後の私は黒髪だった。
日本に居た頃を思い出す風貌。だけど、
これは若葉姫色と言うより、アリエルよりな気がする。
流石の血縁!直接遭っているから、イメージが偏ったかもしれない。
「白織!
直ぐに終らせるからな!?」
「オリくん。アルビノ好き過ぎ」
オリくんのアルビノ好きは筋金入りである。
テンション↓↓↓が半端無い。
「偽名も決まったか?」
「ミストアリエル」
うっかり名前バレもしないように、偽名を使う事になった。
偽名の元ネタはミストバーンだ。
アリエルの本体何て護る処か喰い破ったけど、何と無くノリで決めた。
「オリくんは!?」
「驚かせたか?
見ての通り、アワリティアで行く。名前はクロウだ」
オリくんはアワリティアの姿に変装していた。
実際に黒騎士と戦った身としては、流石に驚く。
変装しているのは黒騎士Verの姿で、
原作を知らなければ、鎧装束って事で行けなくも無い。
偽名の元ネタはアワリティア(ゲオルギウス)が、
封印していた邪竜クロウ・クルワッハから来ている。
オリくんは龍の力を継承しているから、竜繋がりである。
「セリオ!その姿は!?」
「はい。栞と御呼び下さい」
セリオォォォッッッ!!!!!!
セリオがアルビノになっていた。
これは人形繋がり何だろうけど、まさかの栞コスである。
しかも禁書目録聖省(インデックス)の、白い使徒コスだった。
「アルビノ枠が空いてしまいましたので、
僭越ながら補完させて頂きました」
「素晴らしい気遣いだ!!」
「恐縮です」
と応えてカーテシーを決める栞。
って、栞は此処で!
カーテシーを決めるようなキャラじゃないでしょうがぁぁっっ!!!
オリくんのテンションが↑↑
原作では明確な描写は無いけど、栞はパッと見てアルビノである。
しかも栞とアワリティアは、最終バトルを演じた仲!詰り原作再現コンビッ!!
「ソフィアは!?」
「何か、問題が有るかしら?」
いつものカールは解けてロングに、髪の色は豪奢な金に染まっていた。
年齢的に本編の女王Verじゃなくて、外伝の王女Verだと思う。
「フローラ様!?」
「選んだのは私だけど、
キャラ名で呼ぶのに躊躇いが無いわね!?」
†
「闘魔滅砕陣」
何だか酷い仮装大会に参加した気分になったわ。
でもこれは現実。結局この仮装で仕掛ける事に!
初手は白織、ではなくミストアリエル。
闘魔滅砕陣で、カティアと枝葉君を拘束。
フェイは奇跡的な直感で、滅砕陣の拘束を回避。
「どうか、動かないで下さい」
「ちょっ!!
その如何にもヤヴァそうなのは、何なの!?」
「少々龍を屠り続けただけの、骨董品です。
竜の鱗も容易く切断出来ます」
だけど滅砕陣を回避したフェイは、
喉元にドラゴンキラーを当てられている。セリオの、栞の仕業だった。
栞がいつの間にか、フェイの背後を取っていた。
「回収は完了した」
「突然だな。説明は無いのか?」
Ⅱが演じる黒い鎧騎士。
クロウが枝葉君から、金属片を回収する。
対龍兵装は、本当に欠片でしか無かった。
「レンバートン、
転生特典は知識チートの【百識】」
転生特典。
転生者に与えられた特別なスキル。
私の転生特典は、どう考えてもハズレだった。
百識は知識チートらしいけど、
「この組み合わせは危険だ。
かつての過ちを繰り返す事が出来る」
対龍兵装と知識チート。
MAエネルギーの再発見。大量消費。
かつての過ちに、手が届くかもしれない。
「フローラに服従させる事も考慮したが、
他の男を侍らせるのは、無いな」
「クロウ」
私が吸血すれば、眷属支配で懸念は完封出来る。
けれど私は、クロウの血に慣れ過ぎていた。
夜が訪れる度に、クロウは私の牙を受け入れてくれた。
安息と快楽と血の鋼の味。
オリハルコンメタルで吸血衝動を抑えているのも大きいとは思うけど、
もう他の男の血を吸う何て、考えられない。惚れた弱みだった。
『後で、やり直して』
『今のヤツをか?』
クロウはミストアリエルが一番だから、
こうして解り易く、私に独占欲を示して来るのは珍しい。
それを仮装中の偽名で語らないで欲しい。
「神言教の工作員か?」
「似たようなモノだ」
「レングザンドの、開戦にも?」
帝国が開戦の準備を進めている。
と言う情報なら既に掴んでいるわ。でもそれは、
「解っているだろう?アレはユーゴーの暴走。
仕掛けたのはエルフで、帝国は踊った。それだけの事だ」
†
補足&解説枠。
帝国の過去編!始ります。
天候操作装置
前文明遺産。
前文明知識持ちのセリオか、知識チートのレンが居ないと微調整は不能。
サザン・クルス
南十字星はサザンクロス。ミステリーの常連星座。
日本では、波照間島(沖縄)で観測出来るのが有名。
クルスは来栖川エレクトロニクスのクルス。
モシャス
ダイ大仕様。
術者以外にもモシャスの施術が可能。
百野栞
典型的な魔術師ヒロイン。
カーテシーだけならまだしも、
間違ってもドラゴンキラーをブン回して、近接戦を演じる事は無い。
栞は全身義体で、
オートマタやメイドロボとは、異なる設定を所有。
前半のセリオの昔語りで、
完全にGXのノリだろお!?と思った方!正解です☆
次回は帝国の過去編。あの人のやらかしです。