転生したら鳥人だった件   作:狼ルプス

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裁判と職人達の新たな門出

夜の蝶から、俺達は、王宮へと連行され、牢屋で2日程過ごす事になった。

 

しかし、それなりに良い食事が出ているようだし、部屋の調度も整えられている。

 

六人一緒に入れられているので、牢屋というより大部屋という感じだ。待遇は、そこそこマシな印象を受けた。

 

 

「俺が短気を起こしてしまったばかりにみんなも巻き込んじまった……スマン!」

 

カイジンさんが謝ってきた。しかし、ここにそんな事を気にする者は誰もいない

 

「カイジンさん、大丈夫!問題ないさ!」

 

「そうそう、親父さんが気にする事ないですよ!」

 

「………!」

 

三兄弟も同じ気持ちのようだった。正直カイジンさんのパンチはスッキリする一撃だった

 

「それより、釈放されたら、俺達もカイジンさんに付いていきますよ!」

 

「旦那方、俺達がついて行ったら迷惑かい?」

 

「………」

 

 ミルドさんも何を言いたいのか、俺の理解力では判断出来ないが、気持ちは伝わった。

 

「勿論、大歓迎だ!皆、まとめて面倒見てやるさ!ただし、扱き使うから、覚悟しとけよ!」

 

「ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!」

 

 

「「おう!よろしくな!」」「うー!」

 

 こんな調子で、俺達は釈放された後の事を相談し始めたのであった。

 

一日目はそうやって過ぎて行き、二日目の夜のことである。

 

「カイジンさん、ベスター大臣…でしたか?貴方の事を目の敵にしていませんでしたか?」

 

 

ルインが質問をしたのだ。これに対し、カイジンは苦虫を噛み潰したような顔になり、溜息をつくと話し始めた。

 

 

実はカイジンさんは、元、王宮騎士団の団長の一人だったのだそうだ…とは言っても、王宮騎士団は全部で7つの部隊があり、その内の一つを任されていたらしい。

 

工作部隊・兵粘部隊・救急部隊の裏方三部隊、

 

重装打撃部隊・魔法打撃部隊・魔法支援部隊の花形三部隊、

 

そして、最も重要な、王直属護衛部隊である。

 

 

カイジンさんは、工作部隊の団長を務めていたそうだ。そして、その時の副官が、ベスター大臣だったという。

 

「ヤツは、侯爵の出でな、『金で地位を買った』とまで言われていてな…俺が庶民の出だったものだから、妬んでいたんだ。複雑だったんだろうよ。庶民の下で命令を受けるのも屈辱だったのかもしれんしな…俺には、他人の気持ちなんて思いやる余裕がなくてな。王の期待に添おうと必死だったんだよ。そんな時に、あの事件が起きたんだ…」

 

「事件?」 

 

「長くなるぞ?」

 

「大丈夫です。聞かせてきださい……」

 

「わかった……」

 

そう言って、カイジンさんは語ってくれた、彼が、軍を辞めるきっかけとなった当時の事件を。

 

 

 

魔装兵事件──

 

当時、ドワーフの工作部隊は、新しい技術革新もなく、7つの部隊の中で最低の評価に甘んじていた。そんな工作部隊は、二つの派閥に分かれたのだ。

 

技術立国の立場から「工作部隊は花形であるべきだ」…そう主張するベスター派、

 

そして、「今のまま、堅実に研究を進めるべき」という主張のカイジン派だ。

両者は議論が拮抗し、会議で結論が出る事は無かったという。

 

そんな中、エルフの技術者との共同開発の『魔装兵計画」が立ち上がった。

 

「この計画を何としても成功させ、工作部隊の地位を確固たるものにしよう」、そうベスターは考えたという。

 

そのベスターの焦りをカイジンが指摘したが、庶民出の上司の忠告には、聞く耳を持たなかった。

 

結果、焦ったベスターの独走により、精霊魔導核の暴走を引き起こし、計画は頓挫した。当時最高の技術者を集めて行われた魔装兵計画はこうして終焉を迎えたのだ。

 

しかしその失敗の責任を取って、カイジンは軍を去る事になった。ベスターが、自分の失敗を全てカイジンに押し付けた上に、軍の幹部を抱きこみ、偽の証言まで用意した為である。

 

 

「(絵に描いたような悪人だな)」

 

「(ある意味解りやすいな。要するに、カイジンさんがこの国にいるといつまた軍に返り咲いて自分の地位を脅かすか解らないと、こういう訳か…)」

 

 

「まあ、そういう訳で、俺がこの国から出たら、アイツも少しはマシになるかもしれんさ」

 

 そう言って、この話を締めくくった。三兄弟も、当時の事件の真相を知る者達で、ベスター大臣を嫌っていたのだそうだ。そんな話を聞けば、俺だって嫌になる……。

 

 しかし、貴族相手に殴ったのだ。このまま無事に、釈放されるとは思えない……。そうした俺の心配に、

 

「大丈夫だろ、一応。俺は退役したとはいえ団長にまでなったおかげで、準男爵の地位を戴いている。庶民が貴族に対してってのなら、裁判待たずに死刑もありえたけどな!」

 

そう言って、カイジンさんは「ガハハハハ!」と大笑いしている。

 

 

「(全く笑えない……)」

 

いざとなれば脱獄しよう…リムルと俺は内心そんな事を考えたのだった。

 

 

そして、裁判の日となった。俺達は、王の前へと連行された。

 

 

ドワーフの英雄王──

 

目の前にしたら、その圧倒的威圧感が半端ではない。

 

現王、ガゼル・ドワルゴ。

 

目を閉じ、椅子に深く腰掛けている。ドワーフらしくがっしりとした体付きは、まるで迸るエネルギーを秘めた筋肉の鎧だった。

 

 

「(あの人が…ドワーフ王国の王、ガゼル・ドワルゴ……相当な手練れだ……)」

 

 

両脇に、騎士が控えている。この二人も強いと感じるが、王の前には霞んでしまう。

 

 

「(この王、やばいな)」

 

「(ああ、いざって時はパパっと逃げるつもりでいたけど、これは……!)」

 

二人はこの世界に来てから初めて感じる危機感だった。一人の男が王の前に膝をつき、何事か確認した。そして、王の許可を得て立ち上がり、

 

「裁判を始める!皆、静粛にせよ!!!」

 

裁判の開始が告げられた。

 

 

 

1時間かけて、双方の言い分が発表される。当事者である俺達に、ここでの発言は許されない。

 

この場で自由に発言出来るのは、伯爵位以上の貴族だけである。

 

それ以外は、王の許しが出るまで発言は許されないらしい

 

発言すれば、発言した時点で、罪が確定する。さらに、不敬罪まで上乗せされると言う。

 

冤罪も何も関係ない。それが、ここのルールなのだそうだ。代理人に、全てを任せるしかない。

 

この代理人とは、この二日間、何度も顔を会わせて打ち合わせしている。

 

俺達が過ごした世界で言うなら弁護士みたいな者であろう。

 

「(ルイン、嫌な予感がしないか?)」

 

「(この代理人……黒い匂いがするな)」

 

 

二人の不安は的中する事となってしまう

 

「と、このように、店で寛いでお酒を嗜んでおられたベスター殿に対し、複数で店に押し入り暴行を加えたのです!これは、断じて許されるべき行為ではありません!!!」

 

「それは事実であるか?」

 

「はい!私も、カイジン殿からの聞き取りだけではなく、店側からも調書を取って御座います!先の言い分に相違ない事は、間違い御座いませぬ!!!」

 

 

「(…は?え、何だって?)」

 

「(裏切りか……これは…不味くないか?)」

 

カイジンの様子を見ると、一気に顔が赤くなり、次第に青ざめ始めている。

 なんせ、言い訳もさせて貰えないのだ。ちなみに…代理人が嘘を吐く事は、許されていない。バレたら死罪である。余程の覚悟か、何らかの事情が無ければ、嘘を吐くなど考えられないのだが……。

 王の前で、下賎な者に発言を許さない為のシステムだが、今回は最悪の方へと運用されてしまったようだ。

 

「王よ!お聞き届け頂けましたでしょうか?この者達への厳罰を申し渡しください!」

 

 

「(リムル、あいつ殴っておけばよかったかな……?)」

 

「(まぁ落ち着け、ルインちゃん…)」

 

 

さらに、こちらを見やり、勝ち誇った笑みを浮かべている。

 

「(うっわっ、腹立つ笑み……!)」「(殴りたくなるだろ?)」

 

 

 ドワーフ王は目を閉じたまま、微動だにしない。その様子を確認し、傍仕えが王に代わって発言を行う。

 

「静粛に!!!これより、判決を申し渡す!主犯、カイジン!この者は、20年の鉱山での強制労働に処す。その他、共犯者!この者共は、10年の鉱山での強制労働に処す。それでは、この裁判を閉廷…」

 

「待て…」

 

 重く、深い静かな声が、閉会の言葉を遮った。王が目を開けて、カイジンを見つめた。

 

「久しいな、カイジン!息災か?」

 

「…は!王におかれましても、ご健勝そうで、何よりで御座います!」

 

 一拍おいて、カイジンが返答した。王の問いかけには、返事しても大丈夫のようだ。

 

「よい。余と、そちの仲である。本題である、カイジンよ、戻って来る気はあるか?」

 

 周囲がざわめいた。ベスター大臣は一気に青ざめる。ふと見ると、裏切った代理人は、死にそうな程の土気色の顔色になっていた。

 

「恐れながら、王よ!某は、すでに主を得ました!この契りは、某の宝であります。この宝、王の命令であれど、手放す気はありませぬ!!!」

 

「無礼な!」

 

兵士が声を上げ、その場にいた兵士全員がカイジンさんに槍を向けた。

 

その言葉に、周囲が気色ばむ。護衛の兵士から、カイジンに向けて殺気が放たれる。

 

それでも、カイジンに怯えは無く、むしろ堂々と胸を張って、王を見つめていた。

 

その目を見て、王は再び目を閉じた。

 

「で、あるか……」

 

そう呟く。辺りを、再び静寂が支配した。

 

 

「判決を言い渡す。心して聞けえい!!!カイジン及び、その仲間は、王国より国外追放とする!今宵、日付が変わって以後、この国にいる事を余は許しはしない。以上!では、余の前より消えるがよい……」

 

 

 

王が目を見開き、大音声で言い渡す。

 

 

「(ホッ……国外追放だけで済んだか。でも……)」

 

「(何処か……寂しそうに見えるな……カイジンさんのことをそれくらい信用していたみたいだ)」

 

二人が感じたのは何処か寂しそうな雰囲気だった。カイジンは涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、裁判は閉廷し、俺達はドワーフ王国から立ち去る為、荷造りをし、門の前に立っていた。

 

 

「兄貴、元気でな」

 

「迷惑をかけたな。お前も元気で」

 

ドワルゴンの出入り口で、最後の兄弟の会話をしていた。必要な荷物を背負い、カイジンさんとカイドウさんは寂しそうな顔をしていた。

 

「旦那方、兄貴を頼む」

 

「心配ない。こき使うだけだ」

 

「リムル……!お任せ下さい。カイドウさん、色々とお世話になりました」

 

カイドウさんの言葉に、俺はお礼を言った。牢屋にいる間、お世話になっていたから、とても感謝している。

 

「これより判決に従い、カイジンとその一味を国外追放とする。早々に立ち去れ!」

 

その言葉と同時に、出入り口の門は閉まっていった。

 

「さて行くか」

 

「森で俺達の仲間達が待っています」

 

「ああ」

 

門が閉まるのを見てから、俺達そう言い、カイジンさんも頷き、歩き出した。色々あったものの職人を連れて帰るという目的は果たされたのだった。それもこれ以上ないと言っていいほどの腕前の職人達を。

 

「(リムル、何か忘れていないか?)」

 

「(ん?何か忘れ物でもあったか?)」

 

「(いや、剣はリムルに預けてるから問題はないが……)」

 

「(じゃあ問題はないだろ!)」

 

「(そうだな、それじゃあ行くか…)」

 

「(おう!)」

リムルはルインの頭の上に乗っかり、森で待たせているリグル達と合流する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ZZZZZZZ……」

 

 

口を塞がれた上に忘れ去られたゴブタの寝息が仮眠室から響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「代理人は捕らえたな?厳罰に処せ。」

 

「はっ!」

 

一方、ガゼル王は部下に命令していた。部下はその命令に頷いた。

 

「あのスライムと人間、いや、有翼族(ハーピィ)を監視せよ。あんな魔物が解き放たれているとは」

 

 

有翼族(ハーピィ)?そのようなものは裁判にはおられませんでしたが…」

 

「絶対に気取られるなよ。絶対にだ」

 

「……はっ!」

 

ガゼル王はもう一つ命令し、その命令を念押しした。疑問を持った部下は少し間を開け、一段と大きな声で返事し、部屋から出た。

 

「あのスライムは化け物だ!まるで暴風竜ヴェルドラの如き!それに、あの有翼族(ハーピィ)……いずれは世界に破滅をもたらす化け物となろう!」

 

 

 

ガゼル王は何もいない部屋でそう呟いた

デザストがリムルとルイン達の世界に行くのはあり?

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