シュナ達の着せ替え人形から解放された翌日、リザードマンの同盟交渉を任せていたソウエイが戻った。
俺はリムルと鬼人達を連れて、製作部門をまとめた建物の織物部屋を訪れた。
「お待ちしておりました。ルインさん、リムル様。出撃用の武具の準備は整っております」
「おお……」
「…へぇ、いいじゃないか」
俺達の防具一式が完成したということで、工房の主となったシュナ、カイジンさん、クロベエ、ドワーフ三兄弟が出迎えてくれる。シュナも自分の着物を織り上げていており巫女服に仕立てられていた。
リムルに渡されたシンプルなシャツやズボンには、シュナの高い技術で編み込まれており、丈夫な作りとなっている。青の革ジャケットやブーツは、ガルムさんやドルドさんの作品で、いずれも文句無しの仕上がりだった。
そして俺はシンプルに紺色のロングコートに下は民族衣装のような服装となっている
「似合ってるぞリムル、やっぱりお前は青が似合ってるな」
「お前もな!何か私服と戦闘着どっちもいけそうな服装だな(ルインの着てるこの服装、どっかで……)」
着替えが終わり、部屋を出ると、待っていたシュナが俺達を見つめる。
「お二人とも、とてもよくお似合いですわ」
「ありがとう。今更だけど、シュナもその服、似合ってるぞ」
「うふふ、ありがとうございます。改めてルインさんも、とても似合っていますよ」
「(もしかしてシュナってルインの事……)」
シュナは少し頬を赤くし、照れていた。リムルは二人の話している姿を何度も見てきたが、シュナは楽しそうにルインと会話している姿を目撃し、流石に察してしまう。ルインはその事にまだ気づいていない様子だ。
数分後、鬼人達も衣装替えを終えて出てきた。ベニマルは真紅の着物で、ハクロウは白い山伏衣装、ソウエイは濃藍のローブ、シオンは生前でもあったスーツのような姿だ。
ルインは何故かシオンから恥ずかしそうに視線を逸らす、胸元が開いていたからだ。ルインは露出のある女性に対して未だ耐性がない。
まだまだ時間はかかりそうである。
そしてクロベエの鍛冶小屋では、皆に専用の刀が行き渡る。
俺達は聖剣があるから必要ないかもしれないが、もしも聖剣が使えなくなった時の保険として頼んでいたのだ。
クロベエの作った刀はリムルが捕食した純度の高い加工済みの魔鉱塊が使用されており、これから自身の魔素を馴染ませ成長させていくため、リムルは胃袋に収納し、俺は万能収納の空間にしまった。
これで準備は整った。俺達は湿地帯へ向け、出発する。ちなみにメンバーはベニマル,ハクロウ先生,シオン,ソウエイ,ランガ,ゴブタやその部下である
俺はリムルと一緒にランガに乗って、森を進む。
「ほい、ストップ。今日はこの辺で野営する」
「ランガ、今日もお疲れ様」
『いえ、これくらいならば容易い事です。ルイン様』
ルインはここまで進んでくれたランガにお礼を言い、頭を撫でると、嬉しそうに尻尾を振る。ランガも大分加減ができるようになってきた。
そして、薪を集めたゴブタ達は、火をつけようとしたが、湿地帯に近づいているのか、薪は湿っており、火をなかなかつけられない様子だった。それを見かねたソウエイはいつのまにか乾いている薪を集めてきて、ゴブタ達に感謝されていた。
「ソウエイ、周辺の状況を確認してきてくれ」
「はっ」
「俺も行くよ」
「ルイン様も?しかし…」
「遠慮するな、リムルも構わないだろ?」
「問題ない、気をつけろよな」
「ああ、それじゃあ行くか、ソウエイ」
「御意」
ルインとソウエイは野営地から『影移動』で離れていった。
「リムル様、約束の褒美っすけどちゃんとクロベエさんに頼んでくれたっすか?」
「あ!!…うん、勿論、忘れていないぞ!」
「『あ!!』って……」
『(リムル、ゴブタにはちゃんと頼んでるって伝えておいてくれ。この戦いが終わる頃には完成するってこともな)』
「(おぉ、神様仏様ルイン様!助かった〜!)ゴブタ、クロベエにはしっかり頼んであるから、この戦いが終わったら完成する予定だ……タブンネ」
「本当っすか⁉︎」
影移動でこの場から離れて数分後、ルインから脳内会話が飛んできた。
『(リムル、お前はちゃんと自分からした約束は覚えておけ。言われて気づくのは流石に頂けないからな。シズさんとの約束も……忘れたわけじゃないだろうな?)』
ルインの声は少し低く感じた。リムルはルインが怒っているようにも聞こえた
「(……忘れるわけないだろ)」
『(ならいい……っ!すまないリムル、ソウエイから連絡が来たから一旦思念伝達に切り替えるぞ)』
するとルインは脳内での会話を切り。数秒後、思念伝達に切り替えたルインから連絡が来る。
『リムル、交戦中の一団を発見した。今はソウエイと一緒だ』
『なに?』
『片方はリザードマンの首領の側近、自分が交渉の折、見かけた一人です。もう片方はオーク達で、上位個体と思しき2体とその取りまき60体程です』
『上位個体がリザードマンをいたぶってる。ソウエイ、いけるか?』
『いつでもいけます』
『そっちはお前達に任せる。野営を中止させてすぐに向かう』
『了解だ。それじゃあまた後でな』
ルインの言葉を最後に思念伝達は切れると、リムルは野営を中止させ、ランガに乗りすぐにルインとソウエイの元へ向かい始める。
「グッ!」
一人の女性リザードマンが上位個体のオークの猛攻により、槍は折れ、力のある一撃に地面を転がる。
「なんだ、もうお終いか?」
「つまらんな」
「もうやってもいいんじゃないすか?」
「は、早く喰いてぇよ」
上位個体のオークは剣で女性リザードマンをつつき、取まきのオークは早く喰らいたいと我慢している様子だった。
「飽きてきたってよ」
「そろそろ〆時かな…お前も我らの糧となるがいい」
多勢に無勢。単純な力量も劣っている上に万が一も逃げられない様にしてる。
「(父上…兄上…ごめんなさい、私はもうここで…)」
「な、なんだ貴様らは⁉︎突然現れやがって、獲物を横取りでもしようってのか⁉︎」
「勝手に死なれては困るな…」
「まだあなたから事情も聞いていないです」
【風双剣翠風!】
そんな不快な光景を一蹴したのは万能収納から翠色の剣を取り出したルインと、ソウエイの二人、言葉を添えて目にもとまらぬ斬撃で一瞬で斬り伏せた。
「グァァァァァァ!!」
「ガァァァァァ!!」
女性リザードマンは死を覚悟していたが、突然の光景に目を奪われ、固まっていた。
「無事ですか?貴女がソウエイの言っていたリザードマンの首領の側近ですね?話の前にまずはこれを……回復薬です」
女性リザードマンである親衛隊長は、沢山の血を流しており重症、下手をすると致命傷レベルの傷を負っていた。ルインは万能収納から取り出したリムル作の回復薬を差し出し、早く飲むように促した。女性リザードマンは素直に飲む。
すると、女性リザードマンは水色に光り、目をパッと見開いた。
「………!?傷が……!?ウソ、致命傷だと思ったのに……」
傷は跡形も無く塞がっている。リムルの作る回復薬は折り紙付きの効果だ。
「助けるのが遅くなってすまない。身体に異常はないか?」
「は、はい。特に問題はありません。あの、あなたは……?」
「俺はルイン・テンペスト。リザードマンとの同盟のため会談に参加するべくここに来ました。ソウエイから聞いているとは思いますが、二人の主の内の片割れです」
「あ、あなた様が、ソウエイ殿の名付け親……」
「そう言う事になるかな。後、こんな見た目をしてるけど、一応あなた達と同じ魔物です」
親衛隊長はソウエイから名付け親の名を聞いていたので、ルインが名乗った時点で、直ぐにソウエイの主の一人と気づいた。そして、ルインは翼を出すと、親衛隊長は更に驚いた。最初は人間だと思っていたからであろう。
「ソウエイ、もう一体の、大きい上位個体は殺していないな?」
「はい、使えるかと思い急所は外しました」
「よし、だったら情報を聞き出して……」
「あえて急所を外しただと?負け惜しみよ。貴様ら程度の非力な腕ではこの俺には通じぬだけよ。主の手前格好つけたかったのか?残念だったな!オークロード様より授かったこの偉大な力を前に貴様らは無様に敗北するのだ!!」
「大人しく我らの餌となるがいい!!」
『ソウエイ…今の状況、どう判断する?』
ルインはソウエイに思念伝達で声をかける。
『有力な情報は持っていないと判断します。恐らくこの部隊も別働隊でしょう』
『そうか。ソウエイ、厳しい事を言うかもしれないが、お前は目の前にいるオーク達に勝てるか?』
『容易い事です』
『あはは、そうか。それならお手並み拝見といこうか。危ないと思ったら俺も手を出すからな?』
『御意』
ルインの言葉にソウエイは前に出る。ルインはソウエイの実力をまだ知らない為、知るにはちょうど良い機会だったのだ。
「ふん!我ら相手にたった一人でなにができ……」
上位個体のオークは最後まで言葉を発する事が出来なかった。体がバラバラに斬り裂かれてしまったからだ。バラバラになったオークの周りには細い糸のような物があった。
「(『粘糸』と『鋼糸』を使ったソウエイが編み出した戦法…俺とリムルも強さに自信はあるが、経験は天と地の差。恐らく他の鬼人達も独自で編み出した技もあると見ていいな)」
ソウエイは目に見えない早技でオーク達を倒していく。敵多数に対して一人で圧倒している姿に、親衛隊長は開いた口が塞がらずポカンとしていた。
「(前から思っていたが、ソウエイって忍そのものだな……)」
ルインは無双しているソウエイの姿を観察していると、右手に持っている風の聖剣…
風双剣翠風と一冊の翠色のワンダーライドブックが光り始めた
「(っ!なんだ、ライドブックと翠風が光ってる?いや、これは感応している?まさか……)」
「隙ありだ鳥もどきめ!大人しく餌となれぇ!」
「ルイン様!危ない!!」
ソウエイの隙を突いたもう一体の上位個体オークがルインに二振りの剣を振るう。リザードマンは声を上げるが、ルインはその場から動かず風双剣翠風を両手で握り、
【二刀流!】
2本の剣に分離させ、オークの攻撃を受け止める
「何⁉︎二刀流だと⁉︎」
「残念、この剣は普通の剣じゃないんで……それと相手は俺じゃない」
そしてルインに攻撃を仕掛けたオークはソウエイの糸に巻きつかれてしまう。
「貴様の相手は俺だ。ルイン様に手出しは許さん」
ソウエイはそのまま二振りの刀でオークを斬り裂いた。これを最後にオーク達の全てはソウエイの手であっという間に倒された。
「アレ?もう終わってるみたいっすけど……」
「ったく、少しは残して欲しかったんだがな……」
オーク達を倒して数分後、リムル達がこの場にたどりついたのだ。
「よっ、どうやら終わってるみたいだな」
「ああ、ほぼソウエイが一人で倒したんだけどな…」
「マジで?(あらー…ソウエイの奴マジで有能だったよ…)」
女性リザードマンは、リザードマンの親衛隊長にして、首領の娘である。実力もそれなりに備えているが、目の前の光景に、連続して起こるあり得ない光景に目を奪われ、思考が停止してしまっていた。
「(……この方達ならば)」
目の前の光景に彼女は希望を見た。リザードマン一族は最早滅亡は避けられないと覚悟を決めていた。
謀反を起こした兄ガビルら、オークロードを見誤り、過小評価し、暴走した。
この者達と同盟を組めば、一族は助かる。間違いなく助かる。絶望と言う二文字が一瞬にして覆る程の衝撃だった。
首領である父からは「最早滅亡は免れない」と、リザードマンの種族、最後の意地と誇りを託された。
「(言いつけに背くことをお許しください…父上)」
彼女はリザードマンとしての意地や誇りより……仲間の、家族の命を選んだ。
「お願いがございます! どうか我が父たる首領と、兄たるガビルをお救いくださいませ!!」
「どう言う事だ?何かあったのか?」
「……兄ガビルが謀反を起こし、首領を幽閉したのです。兄はオーク軍を自らの力で退けるつもりのようです。ですが兄はオークロードを甘く見ており……このままでは敗北しリザードマンは滅亡するでしょう」
「(謀反、最悪な事態だ…)」
「(ああ、あのバカ、やりやがった)」
リムルとルイン、その一行は内心ガビルに「何しているんだ」と言いたい衝動をなんとか抑える。
「父は見張りの隙を見て私を逃がしてくれました。先走らぬようにとの約定も守れず、虫のいい話であるのは重々承知しております。しかし力ある魔人の皆様を従えるあなた様達の慈悲に縋りたく、何卒……何卒!!」
するとシオンが彼女に近づき、肩に手を置く
「よくぞ申しました!お二人の偉大さに気づくとは……!あなたは見どころがあります!リザードマンは必ず救われるでしょう!」
「ほ、本当ですか⁉︎」
シオンの行動はまさに仕事をとってくる秘書の姿だった。ルインはシオンの姿に感心するが、リムルは内心で溜息を吐いていた。
「(シオンやつ、すっかり秘書としての役割が染み付いたな…)」
「(仕方ないな…)えーと、君は首領の娘さんで大丈夫かな?」
「は、はい!えっと、もしかして、この方達のもう一人の主様であるリムル・テンペスト様ですか?」
「その通りだ。話を続けるが、君を首領の代理として認める」
「ここで同盟を締結する事に異論はありませんか?」
「え?いえ…いえ、異論など!では…」
「ソウエイ、影移動で首領の所まで移動は可能か?」
「可能です」
「よし、この後、首領の娘さんと一緒に向かってくれ」
「仰せのままに」
「同盟相手なら助けに行く。当然だろ?」
「仲間は助け合い、ですよ」
今回のルインの服装は賢人のロングコートを羽織、上下は倫太郎と同じ服とズボンを着込んでいます
デザストがリムルとルイン達の世界に行くのはあり?
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あり
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無し
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作者に任せる