「(強き者?)」
「(多分だが俺達の事だろ)
「(とりあえず、まずは挨拶だな!)」
「(だな……ヴェルドラの時みたいにしくじるなよ?)」
そう言うと、リムルは声を発する準備をする。
「はじめましてー!俺はスライムのリムルと…」
「
一応翼を出して自己紹介した。俺達がそう挨拶すると、ゴブリン達は慌てふためき、ついには平伏してしまった…。
「あなた方の力は十分にわかりました!どうか声を静めてください!」
「(あれ?思念が強すぎたかな?)」
「(そうみたいだな、弱められるか?)」
「(多分……んん)それで、俺達に何か用?」
今度は思念を弱めて話す。
「強力な魔物の気配がしたので警戒に来た次第です」
「強力な?そんな魔物の気配なんて感じないけど、ルインは?」
「いや、俺も同じく(大賢者、彼らが言っていた強力な魔物は近くにいるのか?)
《解、周囲100メートル以内に個体名リムル・テンペスト、ルイン・テンペストを上回る魔素を持つ魔物は存在しません》
「(そうだよな、そんな魔物がいるなら魔力感知ですぐ気づくはずだし……ん?)」
「((まさか……))」
「ご冗談を!そのようなお姿をされていても我々は騙されませんぞ!」
「(やっぱ、俺達のこと言ってるっぽいぞ…)」
「(なんか悪いことしたな……)」
やはり俺達のことだったらしい。
「強き者達よ、貴方方を見込んでお願いがあるのです」
そう言われ、リムルと俺はゴブリン達の案内により、彼らの村へと向かった。
村と言っても周りに囲いは無く、ボロ藁とボロい板を使って即興で作ったような隙間だらけの家が数件あるだけだった。これなら軽い衝撃を与えるとすぐにでも崩れそうな感じだ。
その中でも比較的マシな家へと案内された。
「ようこそおいで下さいました。私はこの村の村長をさせていただいております」
リムルを膝の上に乗せ、座って待っていると、俺達を出迎えたのは、年老いたゴブリン、そして先程の頭にバンダナを身に付けているリーダー格だった。
「それで、自分たちに用事とは?」
「……最近魔物の動きが活発になっているのはご存知でしょうか?」
尋ねると、村長は俺達への頼みごとを語り始めた。
「我らの神がひと月前にお姿をお隠しになられたのです。そのため近隣の魔物がこの地にちょっかいをかけ始めまして」
「(“神”ってヴェルドラかな?)」
「(可能性は高いな。時期的には一致してる)」
「(ヴェルドラの存在が魔物除けになっていたのか)」
「(『暴風竜』って肩書きは伊達じゃないってことだな…)」
「我々も応戦したのですが、戦力的に厳しく……」
「それで貴方方にと!」
要するに魔物退治をして欲しいってことか。
「しかし、自分、ただのスライムですので、期待されているような働きはできないと思うのですが…」
「自分も、そこまで自信はありません」
「ご謙遜を!ただのスライムが、音に聞こえた
「(リムル、どうやら俺達オーラが出てるらしいぞ、見えるか?)」
「(んー、そんなの出した覚えないけど……『大賢者』、『魔力感知』の視点を切り替え。俺達を客観的に見せてくれ)」
《視点を切り替えます》
その声と共に、視点が切り替わり自分達の姿を見る。
すると、リムルと俺の体からはオーラの様なものが大量にあふれており、この部屋全体に広がっていた。
「「((うわっ!ただ漏れ!))」」
これだけただ漏れていたらゴブリン達も落ち着けるはずがない。常に殺気を放ってるのと同じだ。
「(リムル、とりあえずこのオーラ?みたいな奴を引っ込めよう…)」
「(あ、ああ、俺もここまでとは思ってもみなかったよ。よ、よし!こうなったら…)ふむ、俺達の妖気を見ても怯えずに話しかけて来るとは、見所があるぞ!」
「(誤魔化せるのかそれで?)」
「おお…我々を試されていたのですね!?助かります。そのオーラに怯える者も多かったもので、本当のお姿をお隠しになられる理由はお尋ねしませぬ。ただ…お願いがあるのです。何とかお聞き届けて貰えませぬでしょうか?」
「(誤魔化せたよ……)」
「(結果オーライって事でいいじゃないの!)内容によるな。言ってみろ。」
取り合えず、なんとか俺達はオーラとやらを引っ込める事に成功し、ようやくゴブリン達が一安心した所で本題に戻る。
「それで、貴方達の頼み事って言うのは、この村を襲う魔物を退治してほしいと言うものでしょうか?」
「お分かりになりましたか。はい、実を言いますと、その魔物が厄介なんです」
ゴブリン達の村を襲いに来た魔物は“牙狼族”というらしい。
ゴブリンの話によると、東の地から押し寄せた狼の魔物“牙狼族”と争いになり、ゴブリンの戦士が多数討ち死にしたという。
「なるほど……この村には何人住んでいる?その内、戦える者は?」
「はい、この村は100匹くらい住んでます。戦えるのは、雌も合わせて60匹くらいです。」
そこそこか。それにしても、数を大体でも把握出来るというのは、俺の知っているゴブリンと違って賢いと感じた。
「相手の…その新参の魔物の数はわかるか?」
「はい。それが100匹ほど…1匹に対し我々10匹で対応しても勝てるかどうか……」
「(え?何その無理ゲー…)」
「(無理ゲー言うな。でも確かに、戦力に差がありすぎる)」
話を聞いていくと、戦力差は絶望的だった。確かに心細かったことだろう。
「その
「いいえ。牙狼族の情報はその戦士が命懸けで入手したものなのです」
そこまで言い、村長とリーダー格は涙を流し出した。
「その戦士の名はリグル………私の息子で、これの兄でした……!」
「くっ………!」
二人の涙は、何も敷かれてない地面の土に染み込み消える。
「(…………リムル、彼らの頼みを受けないか?と言うか、助けたい。魔物がゴブリンを襲ったのは、ヴェルドラが消えたことが原因。その原因を作ったのは俺達だ。俺達には責任がある………)」
「(ああ、彼らを助けたいのは俺も同じだ。でも、一応体裁を整える必要がある)」
「(だな、準備とゴブリン達の村の現状も把握しておこう)」
そう言うと、俺達は二人を見る。
「村長、一つ聞きたい。俺達がこの村を助けるならその見返りはなんだ?お前達は俺達に何を差し出せる?」
「わ、我々の忠誠を捧げます!我らに守護をお与えください!さすれば我らは貴方方に忠誠を誓いましょう!」
二人は平伏しそう言う。
ウォォーーーンン!
その時、遠くで狼の遠吠えに似た声が聞こえた。
「が、牙狼族だー!」
ゴブリンが大声で叫んだ。それを皮切りに、他のゴブリン達も騒ぎ出す。
「ヤバいよヤバいよ!」
「おしまいだー!」
「早く逃げないと!」
「逃げるって何処にだよ!」
ゴブリン達は騒ぎ出し、右往左往する。村長やリーダーゴブリンが騒ぎを治めようとするもうまく行かない。
「落ち着け!!」
ルインはそんなゴブリン達を見渡し、スキル『超音波』を使う。ルインの声が響き渡ると、ゴブリン達は一瞬で騒ぐのを止め、彼らを見る。
「皆、落ち着け!騒げば相手の思う壺です!」
「その通りだ!」
リムルが俺の頭に飛び乗り、ゴブリン達を見渡す。
「騒ぐ必要もビビる必要はない。これから倒す相手だ」
「で、では……!」
「お前たちのその願い……」
「暴風竜ヴェルドラに代わり……」
「このリムル・テンペストと!」
「ルイン・テンペストが!」
「「聞き届けよう!」」
「「我らに守護をお与えください。さすれば今日より我らはあなた様方の忠実なるシモベでございます!」」
こうして、俺達はゴブリンの主、守護者となった。なったからには、絶対に守らないとな。
「よし、全員いるな?」
「はい!ルイン様、俺達は何をすればいいでしょうか!?」
現在俺はリムルとは別行動中だ。リムルは負傷者を治すべく、村長と一緒に別の建物に行っている。
負傷者はリムルに任せ、俺はこれから動けるゴブリン達と一緒柵作りに取り掛かる。防衛設備は必須だ
「…牙狼族の攻撃に備え、まずは柵を作る…この村に木材はありますか?」
「この村には無いですね……よろしければ家を壊して材料を調達しましょうか?」
「それはダメだ。ないとわかったら近くの木を切って柵を作る。何人かは俺に着いてきてください。俺たちが木材を確保してくる間、他の皆はこの村に現在ある武器を集めておいてほしい」
「わかりました!」
俺は数人のゴブリンを連れて、村から出る。そして、近くの森から『水刃』を使い木を切り落として、村に戻る。
「(竹があればよかったが、そう簡単には見つからないか)」
竹の茎は広い分野に使われている。柵になったり武器になったりと、強度も申し分ない植物だ。
生存者と一緒に運んできた木材でゴブリン達にアドバイスをしながら柵を作り始めた。
「ルイン様ー!糸が上手く結べません!」
「ああ、これはこうすれば簡単に結べますよ」
「ありがとうございます!」
真面目に話を聞いてくれる。ゴブリン達も手先が器用だった為、すぐに村を囲う柵が出来た。ロープの代わりに『粘糸』を使った。ゴブリン達にも俺がスキルで出した『粘糸』を使わせ、柵を固定させた。
「流石はルイン様です!このような柵を作る知識があるとは…!」
「いや、ここまで出来たのはみんなのおかげだ」
柵の補強の為に『鋼糸』と『粘糸』を組み合わせ、しっかりと地面に固定し、防衛設備は完成した。
「よし、柵はこれで大丈夫だな。武器はどうでした?」
「まともな物は無いです…ボロボロなものならありますが…」
「……この状況だと弓矢が最適だな。人数もいるし、無理に接近して戦う必要もない」
そうして、弓矢の製作に取り掛かる。上弦は『鋼糸』を使っている。
「よう!ルイン!そっちはどうだ?」
「リムル、お疲れ様。こっちは順調かな。その様子だとそっちも上手くいったみたいだな」
「ああ!あの洞窟で集めた薬草が役に立ったよ!」
ゴブリンと弓矢作りに没頭していると、村長と共にリムルが姿を現した。様子を見る限り負傷者達は無事に治せたようだ。
「そっちも上手くやってんじゃん」
「ああ、真面目に話を聞いてくれるし、何より呑み込みが早い。この様子だと陽が沈む前には終わりそうだ」
「そっか」
そして人数分の弓と矢が出来上がり、後は牙狼族を迎え撃つのみとなった。
日が沈み、辺りが暗くなり、月明かりのみが夜の森を照らす中、俺達の前に牙狼族が現れた。
「そこで止まれ!このまま引き返すなら何もしない!引き返さないなら容赦はしないぞ!」
「こっちは万全の備えをしてる!死にたくないなら退け!」
『ふん!スライム風情や人間如きが、調子に乗るな!ゴブリン共々血祭りに上げろ!』
「(俺も一応魔物なんだがな……)」
「(こればかりは仕方ないだろ、ルインちゃんよ)」
牙狼族の長らしき狼が声を上げると、他の牙狼族が一斉に攻撃を仕掛けてくる。
が、柵に近づく前に牙狼族は見えない何かで傷を負う。
「(掛かった!)放て!」
合図と共に、追い打ちをかける様にゴブリン達からの無数の弓攻撃が襲う。
正面の柵の前には『鋼糸』が張り巡らせてある。暗闇で気づかない牙狼族は、自身のスピードで体を傷つけたのだ。
『糸⁉︎小賢しい真似を!』
「スキル『鋼糸』」
『貴様の仕業か…人間』
「ああ、正確には『俺達』だけどな!」
牙狼の長はリムルと俺を忌々しそうに見てくる。
『舐めるな!矮小なる魔物と下等な人間の分際で、捻り潰してやる!!
『親父殿!』
流石は長と言った所だ。仲間の血で濡れた『鋼糸』を見切り、全てを食いちぎって前進してくる。
そして、俺たち目掛けて飛び掛かってくる。
「リムル様!ルイン様!」
ゴブリン達が叫ぶが、長の攻撃は俺達には届かず、空中で止まっていた。
『なっ!?これは……!』
「スキル『粘糸』。これで身動きは取れないだろ?あと一つ言っておく。俺は人間じゃない。有翼族(ハーピィ)の上位種族、人間に近い鳥人……らしい」
『くっ……!貴様ぁ!これしきの糸、引きちぎってくれるわ!』
「リムル……」
「ああ、スキル…『水刃』!」
リムルが『水刃』を使い、長の首を撥ねる。ルインが『粘糸』を解除すると、長の死体が落ちる。
「牙狼族よ!お前たちのボスは死んだ!」
「残ったお前達に選択を与える!服従か、死か!」
リムルと俺はそう言うと、牙狼族は何も言わずこちらを見てくる。
「(リムル、これ最悪のケースもあるんじゃ……)」
「(確かにな……もし、『服従するぐらいなら死を!』とかって言われたらマズイ)」
「(もしそうなったら、どうする?俺としてはもう犠牲は出したくはないが……)」
「(戦う以外ないだろうな。まぁ、俺達なら大丈夫だと思う。思う、が、できれば逃げて欲しいんだけどなぁ……)」
「(難しいところだな……)」
一向に逃げる気配の無い牙狼族にどうしたものかと思案していると、
「(あっ!そうだ!)」
「(何か思いついたのか?)」
リムルは何かをひらめいたのか、スライムボディで電球を作る。
「捕食!」
長の死体を捕食した。
《解析完了、スキル・『超嗅覚』,『威圧』.『思念伝達』を獲得、擬態、牙狼への擬態が可能となりました』
《ユニークスキル『繋がりし者』により、個体名リムル・テンペストが獲得した『超嗅覚』,『思念伝達』の獲得開始……成功しました》
新たなスキルを得て、リムルは牙狼族の長の姿へと擬態する。
「クックック、聞け。今回だけは見逃してやろう。我に従えぬというならばこの場より立ち去ることを許そう」
リムルは早速手に入れた『威圧』を使い、雄叫びを上げる。
残った牙狼族は少しずつ近づいてくる
「(まだ戦うつもりか?)」
ルインは闇黒剣月闇の柄を握る。リムルは『威圧』を続けた。
「我ら一同、貴方様方に従います!!」
すると、牙狼族は全員が服従の態勢になり、そう宣言した。
「えっと……とりあえず、一件落着、ってとこかな?」
「ああ、そうみたい、だな」
リムルはスライムの姿に戻る。戻る際、スライムの状態で犬の耳と尻尾が残っている姿を見て少し可愛いと思ったルインであった。
こうして、ゴブリン族と牙狼族との戦いは終わりを迎えた
デザストがリムルとルイン達の世界に行くのはあり?
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あり
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無し
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作者に任せる