転生したら鳥人だった件   作:狼ルプス

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ドワーフ王国

俺達は今、ランガに跨り、数人のホブゴブリン達を連れてドワーフの王国へとむかっている。

 

ゴブリンの足で歩いて二ヶ月の距離にあるそうだ。

 

森の中を流れるアメルド大河──これを辿っていくと、山脈に出るらしく、その山脈に、目指すべきドワーフの王国がある。

 

東の方にあるという帝国と、ジュラの大森林周辺にあるらしい複数の国家…この間を隔てるのが、カナート大山脈である。そして、貿易するルートは三つに分けられる。

 

一つはジュラの大森林の中を通り抜けるルート、もう一つが大山脈を越えていく険しい登山道、そして最後に海路だ。本来、第一のルートが最短で安全なのだが、何故か余り利用されていないらしい。主に、第二のルートが主流となっているそうだ。

 

東に森を抜ければ帝国だが、北上し、カナート大山脈を目指す。山頂まで登る必要はない。ドワーフの王国は、アメルド大河の上流部であるカナート大山脈の麓に、その領土を構えている。山脈にある自然の大洞窟を改造した美しい都─それが、ドワーフの王国ドワルゴンなのだ。

 

 俺達は予定通り、アメルド大河に沿って北上していた。川に沿っての移動なので、迷う事もない。念のため、脳内に地図も表示している。案内は、一度ドワーフ王国へ伝令に行った事のある者がいたので、彼に頼んだ。今も俺達の前を、先導して走っている。

 

「(しかし、順調に進んではいるが…)」

 

「(想像以上に走るのが速い⁉︎)」

 

そう、進化した嵐牙狼族(テンペストウルフ)が予想以上に早い!しかもかれこれ数時間走っているはずなのに疲れを見せないのだ。

 

「(体感速度はおそらく絶叫マシーン並みだぞこれは!?)」

 

「(お、お前はキツそうだよなぁ、俺はスライムだからそんな苦労はしないけどね…)」

 

「(少し風に当ててやろうか……?)」

 

「(んな殺生な!?)」

 

道中凸凹した岩場などもあったのだがお構いなしだ。乗っている者を振動で疲れさせない走り方をした上でである。

 何というか、非常に楽だ。

 このペースだと、一週間も必要ないかもしれない。

 本音を言えば、無理せず行けばいいのにと思う。衣服や住処は早く用意しておきたいところだが、慌てても仕方ないからだ。

 

『おーい!あんまり無理はしなくていいぞ〜!』

 

『無理だと思ったらちゃんと言ってくれ!』

 

 

と、声をかけておいた。すると、何故か、若干速度が上がった。

この数時間、最初はスピードに振り回されていたが、次第に慣れていき、流れゆく風景を楽しんでいた訳だが、そろそろ暇になってきた。

 この速度で、会話するのは本来至難の業なのだが、『思念伝達』がある為問題ない。

 

そしてあたりは日が暮れてきたので、キャンプの準備を始める。今は、みんなと仲良く談笑しながら、夜の準備をしている。

 

 

 

「リグル君。そういえば、君のお兄さんは、誰に名前付けてもらったの?」

 

「は!リムル様、私など、ルイン様同様呼び捨てで構いません!で、兄の名前ですが、通りすがりの魔族の男に付けて貰ったそうです。」

 

「魔族がゴブリンの村に来たのか?」

 

「はい、十年程前になります。私がまだ子供の頃に……村に数日滞在し、兄に見所があるから、と。」

 

「いいお兄さんだったんだな」

 

 

「はい!自慢の兄でした。その魔族ゲルミュッド様も、いずれは自分の部下に欲しい!と、仰って下さっていたほどです。」

 

「げ、ゲロ?ゲル?」

 

「“ゲルミュッド”な。その時、連れて行かれたりしなかったんだな?」

 

「はい。兄もまだ若かったですし、何年かしてより強くなった頃にもう一度来ると仰って、旅立たれました。」

 

 

「そうかそうか。今度来たら、様子が変わりまくっててビックリするだろうな!」

 

「吃驚どころか、腰を抜かすんじゃないか?」

 

「そうですね!しかし、今はお二人に仕える身!栄えある魔王軍とはいえ、ゲルミュッド様について行く事は出来ませんが!」

 

「魔王軍……」

 

「あったんだな、そんなの。ってか、誘ってくれるか判らんのに、自信ありげだな???」

 

「ええ、自信というか、確信です。兄もネームドとして進化しておりましたが、ここまでは変化しておりませんでした。明らかに、進化の格が違います。"世界の言葉"など、一生聞く事は無いと思っておりました!」

 

「(名前を付けたら進化する……名付け親によって進化の程度も変化するのか?)」

 

「(俺達は手分けしてリグル達に名前をつけたが、進化の過程は一緒だったよな?)」

 

「(ああ、確かに同じだったはずだ。しかし、魔王軍、か。ファンタジーの世界だからもしかしてとは思ったが、存在しているみたいだな、この世界には)」

 

「(まぁ、勇者もいるって言うくらいだしな、今後の為にも警戒はしておくか……大変そうだから関わり合いになりたくないし)」

 

二人は魔王の事を片隅にしまっておくことに決めた

 

 

 

「ランガ、俺達はお前の親父さんの仇って事になるよな?その辺気にしなくていいの?」

 

俺達に懐いてくれているランガに問いかけた。

 

「正直、思うところはあります。しかし、戦いにおいての勝敗は、魔物にとっての必定。例え、どのような戦いであれ、勝てば正義と心得ております。負ければ、何も残らない…。されど…、我が主達は、我々を許したのみならず、真名まで授けて下されました!感謝こそすれども、恨むような事はありません!」

 

「そっか、もし、リベンジしたいのなら、何時でも受け付けてやるよ。」

 

『フフフ。進化して、よりハッキリと認識出来ております。前の戦いの時、もし本気を出しておられたならば、我々は皆殺しとなっておりました!そうなっていれば、種族の悲願であった進化を行う事もなく散っていたのです。我らの忠義は、我が主、お二人のものでございます!!!』

 

「わかるか……お前も成長したようだな!」

 

「これからもよろしく頼むな、ランガ。頼りにしてるぞ」

 

『はは!有難き幸せ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな感じで、旅を続けた。途中、魔物に襲われたりといったアクシデントは発生せず、順調に行程を進んでいけた。

 

三時間毎に30分休憩を挟み、14時間経過したら7時間の睡眠時間を含めた休憩を取った。

 

 

「みんな!キツくなったらちゃんと言えよー!」

 

「大丈夫です!我々、進化のお陰か、それ程疲れなくなっております!」

 

 と、リグルが答え、

 

「我が主人達よ、我等の事は心配なさらないで下さい!我が主のように睡眠が不要な訳ではありませぬが、長時間は必要ありませぬ!食事も、頻繁に必要という訳ではなく、無くても支障はありませぬゆえ!」

 

などと、ランガも追随して答えた。

 他の皆の様子を見ても、やる気に満ち溢れている。

 これでは、一番何もしていない俺が、一番やる気がないみたいに思えてしまう。

 まあ、皆のやる気があるのなら、とそのペースで進む事にした。

 一日に12時間は走り続けている事になるのだが……、本当にタフになったものだ。

 

 二日目の終わり、就寝前の食事を摂っている時に、

 

「ところで、ゴブタ。あと、どのくらいか判るか?」

 

 案内のゴブタに聞いてみた。

 

「は、はいぃぃ!!!恐らくですが、明日には到着出来るかと思いますぅぅ!大分山が大きく見えておりますのでッ!」

 

 俺に声をかけられ、緊張半分喜び半分で焦ったのだろう。「舌を噛んだのではないか?」と心配する程、慌てて返事してきた。

 

 

「気になったんだが、何をしにドワーフの王国まで行ったんだ?たまに行商に来るんだろ?」

 

村長に聞いた際、行商のコボルト族がいるという話を聞いていた。わざわざ、2ヶ月もかけてドワーフ王国まで出向くのも変な話である。

 

「はい!魔法の武器や防具はですね、ドワーフ族が高値で引き取ってくれるのです!とはいっても、道具類で支払ってくれるのですが…、行商の者に持たせて運んでくれるので、助かっていたのです!それに、村周辺の魔物には武具を使える者は居りませんし…」

 

 

「(ドワーフは案外親切な種族なのかもしれないな。上手くいけばだが、友好的な関係を築けるかもしれない)」

 

「(ぜひ上手くいって、良好な関係になりたいもんだねぇ!)」

 

「(そう簡単にいくとは思えないけどな)」

 

「(生真面目だね、チミは)」

 

そして、旅に出てから、丸三日経過した。カナート大山脈の麓に広がる牧草地、山脈の自然の大洞窟を改造した美しい都、大自然が創造した天然の要塞「武装国家ドワルゴン」が見えてきた。

 

 

 

ついに彼らはドワーフの王国に到着したのだ。

 

 

 

 

 

 

そして大行列が出来ている左側の通路で列に並んでいる。今いるのはリムルと俺、ゴブタの三人だ。リグル達と嵐牙狼達は森で待機させている。折角ついてきてもらったのに申し訳ないと思いながら、リムルと会話して大人しくしていたら……、

 

「おいおい、こんなとこに魔物がいるぜ!しかもなんで人の頭の上にスライムが乗ってんだ?まだ中じゃねぇし、ここなら殺して良いんじゃね?」

 

「なぁ、何並んでんだよ、生意気だな。殺されたくないならお前らそこの場所譲れ、あとお前らが持ってる荷物も置いてけ、それで今回は見逃してやる!!!」

 

「なんだ?」

 

「おいおい、ルイン君、ゴブタ君、何か聞こえないかね?」

 

「はい、聞こえるっすね……」

 

「前来た時も、絡まれたりしたのかね?」

 

「当然っす!ここでボコボコにされて、コボルトの商人さん達に拾われたっす!あそこで、拾われなかったら、俺、死んでたかもしれないっすね〜」

 

「よく生きてたな……」

 

「……絡まれたんだ、じゃあ、しょうがないか?」

 

「弱い魔物の宿命みたいなもんなんすよ……」

 

「取り敢えず無視するか……」

 

「賛成〜」

 

 

「おい! 雑魚い魔物のくせに、こっち無視してんなよ!」

 

「ってゆ〜か、喋るスライムって、レアじゃね?見世物として売れるんじゃね?おい兄ちゃん、“それ”、俺らに売ってくれねぇか?」

 

「ッ!」

 

ウザイ会話を続ける二人組に、流石のルインも我慢ならなかった。親友を見世物として売るなど、そんな発言は流石に聞き捨てならなかった。

 

「ゴブタ……前に、俺達が言ったルールを覚えているか?」

 

「はい!勿論っす!ルールその1”人間を襲わない”!」

 

「よろしい。……リムル」

 

「少し目を瞑り、耳をふさいでおくんだ!決してこっちを見てはいけない!」

 

「?なんか良くわかんないっすが、了解です!」

 

ゴブタは指示通り、目を瞑り、耳を塞ぐ。

 

「あの、順番はしっかり守ってください。みんなルールを守って待っているんですよ?」

 

「お前ら、赤ちゃんでちゅかぁ?ルール守って、ギャーギャー叫ばない雑魚の方がまともじゃないでちゅか〜〜?」

 

 二人組は、一瞬きょとん!となってから、一気に顔を真っ赤にさせた。他人のことを言えないが、本当に沸点の低い奴等だ。

 

「クソガキがッ……雑魚の魔物も舐めてんじゃねーぞ!」

 

「おいおい、お前、死んだぞ!?その剣と身包み置いていくなら殺さずにいてやろうと思ってたんだがな!」

 

「(なぁ、ルイン……)」

 

「(三下が言うセリフだな……マジで聞くとは思わなかったよ。ってかやっぱ俺は人間に見えてるんだな)」

 

「(前にも言ったけど、それは仕方ないんじゃない?)」

 

二人組はチンピラっぽいセリフを言い出したが、この程度の若造の脅しなど、ヴェルドラに比べたら屁でもない。

 

「クソガキ?雑魚の魔物?それは俺達の事ですか?」

 

「どっからどー見ても、お前らのことだろうがよ!」

 

「しかも、スライムなんざ、雑魚中の雑魚だろうが!」

 

「こいつらふざけやがって…どうやら痛い目見ないと自分達の置かれた状況がわからねぇみたいだな…ええ?格下さん達よぉ!?」

 

 

「クックックッ、いつから俺がスライムだと勘違いしていた?」

 

「後、こんな見た目だけど、俺は人間じゃありませんよ?」

 

「違うってんならさっさと正体見せな!!」

 

そして、二人組は武器を構えた。

 

「(あ!こいつら抜きやった!)」

 

「(この世界に来て、初めて会話する人間がこれとはな、魔物の方が友好的に見える……取り敢えずリムル、こいつらは俺に任せてもいいか?)」

 

「(え?お?やっ、殺んの?)」

 

「(ちょっと新しい剣の効果を確かめる。安心しろ、ちょっと黙らせるだけだ…)」

 

ルインは腰から布で包んでいるものを取り出す。布を解くと…水勢剣流水と似た稲妻のエンブレムの剣だった。ルインは腰にある鞘に剣を納刀し、闇黒剣月闇と同様にトリガーを押す。

 

 

【黄雷居合! 】

 

 

「ちょっと痺れるぞ」

 

【読後一閃!】

 

 

「「アババババババ!!」」

 

俺は剣を地面に突き立て、電流を流し、相手に電撃を喰らわせる。電撃を食らった連中は倒れ込んだ。

 

「「「ッ!?」」」

 

他にも仲間がいたようだが、怖気付いた様子だった。

 

「(お前、また新しい剣を……てかなんだ今の声は?)」

 

「(リムルが寝てる間に、手に入った剣だよ。月闇が雷に打たれたと思ったら、突然現れた。名前は不明だが……エクストラスキル『黄雷』だ)」

 

「(雷に打たれて出来た⁉︎じゃあさっきの声は?)」

 

「(エクストラスキル『闇』・『無』・『水勢』・『黄雷』のスキルを持ってる者しか聞こえないらしい、勿論、リムルも使えるぞ?)」

 

「(マジで⁉︎つかいつ?)」

 

「(お前が目を覚ました時点で自動的に獲得してたよ。それと、この剣も、後で捕食して解析してもらってもいいか?)」

 

「ちょ、調子乗んなよ、魔物のくせによ!」

 

「そんなに死にたいなら殺してやらぁ!」

  

「おい!お前らも来い!」

 

「(どうするリムル、もう一発いっとくか?)」

 

「(いや、こっからは俺のターンだ……!)」

 

「(?何をするつもりだ、リムル?)」

 

「(フフン、まぁ見ときなさいよ…)」

 

リムルは俺の頭から離れ、嵐牙狼族(テンペストウルフ)に擬態する。

 

「(ま、まさか………!)」

 

「ウォォーーーーーン!!!!!」

 

 

その後リムルの雄叫びで、チンピラ達は気絶した。《逃走16名、錯乱68名、失神92名、失禁34名…》と大賢者が被害報告をしてきたけど、それどころじゃない!

 

その騒ぎを聞きつけた兵士に俺達は連行されてしまった、何故かゴブタまで……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で連行されて、舞台は取調室に移る。

  

「そっちのにいちゃんのことはわかったが、そっちのスライム……さっきの魔物はなんなんだ?なんであんなのが出現した?というかまずアレはどこから来たんだ?知ってることは全部答えろ!」

 

 

「(さっき全部話したでしょうに…)」

 

取り調べの兵士は、俺達が言っていることを、嘘だ嘘だの一点張りで信じてくれない。

 

「いやだから、あれは俺が変身した姿だって言ってるじゃないですか!?」

 

俺も頷いて兵士を見ると、やはり絶対信じていないという顔をしてリムルにこう聞いた。

 

「なら、お前なんで変身出来るんだよ?スライムには変身能力とかねぇ筈だろ?」

 

「そ、それはですね……えっと、その……(ヘルプ!ルイン!)」

 

「(残念だが粘り強く真実を伝えるしかないぞ今は……)」

 

「(おい!)」

 

 

そこから延々2時間程、兵士さんとリムルの攻防が繰り広げられた。二人の熱い議論の末に、一つの物語が出来上がろうとしていた。「一人の美少女が、悪い魔法使いにスライムになる呪いをかけられる」物語……途中で兵士さんが合いの手を入れるから話はどんどん壮大になっていった。熱い二人の掛け合いをよそに、ゴブタと俺は唖然とするしかなかった……。

 

 

「協力感謝する!(内容は出鱈目だらけだが)調書が完成した!」

 

「(何処か納得していない顔だな……)」

 

「しかし、君達の身柄は……」

  

「た、大変だーーー!!鉱山でアーマーサウルスが出やがった!鉱山夫も何人か怪我したみたいだ!」

 

「なんだと!?で、アーマーサウルスは討伐したのか?」

 

「そっちは大丈夫!今、討伐隊が向かいました!だけど、怪我の具合の酷いのなんの!戦争の準備かなんか知りませんが、薬が売り切ればかりで、城の備蓄も出せないみたいで…」

 

「回復術士は?」

 

「それが…、"魔鉱石"の採取に、奥まで行ってるでしょう?付き添いで行ってしまってて、ヒヨッコしか残っていやしねえ!!!」

 

「なんだと…!?」

 

「俺達ら空気じゃないすっか?」

 

「空気だな、って、あれ?(リムル、お前回復薬はまだあるか?)」

 

 

「(回復薬?あるけど、あっ、そうか!)おい、旦那!旦那!!!」

 

リムルはルインの意図をすぐに理解する。ルインの考えはこうだ。

 

 "情けは人の為ならず"……巡り巡って、自分に良い事があるかもしれないと言う考えだ。

 

「何だ?今取り込み中だ!取調べは終わりだが、まだ開放は出来ん。暫くこの部屋で待機してろ!」

 

「いえいえ、そうじゃなく。これ、なんですけどね?」

 

 

リムルが閉じ込められていた樽の中に回復薬を溜め込む。

 

「…?あ、何だこれは?」

 

「回復薬ですよ。飲んで良し!掛けて良し!の優れものですよ!」

 

「は?何でスライムのお前が、回復薬なんて……?」

 

「今はそんな事言っている場合じゃないですよね?効果は保証します。使ってみて下さい。何個必要ですか?」

 

「怪我人は6人だが…、大丈夫なのか?」

 

「先程言ったように、効果は保証します。この命に誓って」

 

 

リムルの作った回復薬は折り紙付きだ、重症だったゴブリンの傷を一瞬で直せるアイテムだから。

知らせに来た若い兵隊が、疑わしげに見てきた。魔物が薬を差し出す。普通なら受け取らないが……

 

「チッ!ここから出るなよ!行くぞ!」

 

「え? でも、隊長…、こいつ魔物ですよ?」

 

「うるせえ!行くぞ!!!さっさと案内しろ!!!」

 

 そう言って、6個の回復薬を引っ掴み、隊長と呼ばれた髭面の兵隊さんは駆け出した。話は適当に合わせてただけだが、リムル達を信用してくれたらしい。

 

 

「(見かけどおり、人のいいヤツみたいだな)」

 

「(隊長だったのは驚いたけどな……)」

 

「終わったっすか?」

 

終始無言で、俺の話に頷くだけだったゴブタが聞いてきた。

 

「まぁ、終わってはないが、暫くは様子見だな」

 

「了解っす!」

 

 

 

 

ぼ〜〜〜っと、俺達が待つ事、一時間は経過した。

 

俺達は暇つぶしに糸を操る練習をしている。今や東京タワーやスカイツリーなどの繊細な形のものを作ることまで可能となった。

 

 

隊長達が帰って来る足音を感知した。糸を仕舞い、部屋に入って来るのを待つ。

 

ちなみにゴブタは寝ていた。

 

「(よく寝れるな……疲れてたのか?)」

 

「(コイツ…案外、大物なのかもしれない!)」

 

 

「助かった!ありがとう。」

 

 部屋に入ってくるなり、隊長はそう言って、頭を下げてきた。隊長に続いて、鉱山夫達まで入ってきた。

 

「あんた達が薬をくれたんだってな!ありがとよ!!!」

 

「正直、腕が千切れかけてて、生き残れても仕事なくなるとこだった…ありがとう!!!」

 

「………」

 

「(最後のやつなんか言えよ!)」「(まあまあ…)」

 

 

鉱山夫達は感謝の言葉を述べてきた。最後の人は言葉に出さなかったが、感謝の気持ちは伝わってきた。

 

それから一頻り、礼を述べて、鉱山夫達は帰って行った。なんだかんだで、太陽はとっくに沈み、外は真っ暗になっている。

 

 

その後、隊長と暫く話をした。今度は、真面目な話である。

俺達の事情…ゴブリン村の復興に、衣類や武具の調達、出来れば、指導出来る者の派遣依頼等々を話した。隊長は熱心に聞き入ってくれた。事情を知った他の隊員達も、色々話しかけてくれた。

 

目が覚めたゴブタも、色々話しかけられ、目を白黒させながら答えていた。そうして、夜は更けていく…。

 

 翌日。未だ、詰め所に滞在中である。ゴブタは、仮眠室を借りており、今はいない。ただいびきがうるさい為、リムルが『粘糸』で口を塞いだ。

 

リムルは睡眠は必要ないので、朝から裏庭で行われている鍛錬の風景を眺めていた。

 

 

待っている間、リムルに稲妻エンブレムの剣を解析してもらった。

 

剣の名前は雷鳴剣黄雷──

聖なる雷を生み出して刀身に宿すことができ、稲妻を帯びるほどに切れ味を増す性質を持つ。生命に活力を与え、闇に潜む悪を射抜くと謳われる剣だそうだ。

 

 

「釈放だ。拘束して悪かったな。面目もあって、一日は入って貰った。スマン!」

 

「いやいや、宿代が浮いて助かりました!」

 

「牢屋とは言え、まともな寝床で寝たのは久しぶりでしたので、静かで快適でした」

 

「そう言って貰えると、助かる。詫びだ、腕のいい鍛治師を紹介しよう!」

 

「本当ですか⁉︎」

 

「それは助かります!ありがとうございます!」

 

「その代わり……回復薬の在庫がまだあるなら、譲って欲しい!」

 

「(リムル、ここは任せる。回復薬の管理は今はお前がしてるからな)」

 

「(ほいよ!)構いませんけど、こちらも必要ですので、個数によりますけど?」

 

「余ってる分だけでも良いのだ。一個しかないなら、一個でいい!」

 

 予備に回復薬を置いておきたいのだろう。この様子だとよっぽど切羽詰っている様子が窺える。

 

「じゃあ、5個くらいでいいですかね?」

 

「5個!助かるよ!!!」

 

「その回復薬は水で薄めても効果あると思います。普通の切り傷程度なら1/10くらいで大丈夫なはずです」

 

俺が説明すると、納得したようなので、リムルは5個渡したら、小袋をくれた。中を見てみたら、金色の貨幣が入っている。

 

「少ないかもしれないが、出せるのはこれで全てだ。1個に対して金貨5枚で買い取らせてくれ!」

 

 回復薬5個で、金貨25枚になったみたいだ。この際だ、損してるかどうかもわからないし、貨幣の価値を調べよう。

 

「あの、すみません…」

 

「少なかったか?だが、これが精一杯なのだが…」

 

「いえ、金額はそれでいいんですけど、教えて欲しい事が……」

 

「え?この額でいいのか?で、では聞きたい事とは?」

 

「金額もそうなのですけど、お金の価値や、物価なんかも、俺達、まったく判らない状態で」

 

「出来れば、その辺りを教えてください!なんせ、自分、スライムなもので!」

 

こうして、出発前の会話は長く続き、出発となったのは、昼食の後だった。

 

リムルは食べなかったが、俺は美味しく戴きました。

 

 

 

 

「(なぁリムル、なんか忘れているような気がするんだが……)」

 

「(んん?そうか?気のせいじゃない?)」

 

二人は何か忘れているが、今は鍛治職人を紹介してくれると言う話で頭がいっぱいですぐに忘れてしまう薄情な二人であった。

デザストがリムルとルイン達の世界に行くのはあり?

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