その日の夜。
「よかった…!
本当によかった……!!」
「百合ちゃん……痛いよ」
咲希が怪我をしたと聞き、親友の百合が塾のカバンを背負ったまま泣きながら飛んできた。
そして、玄関から元気そうに出てきた咲希を見るや否や滝のような涙を溢れさせ、抱き着いた。
「う……ごめん…………お怪我痛いよね」
百合は急いで体を離すと、咲希の頭を撫でながら申し訳無さそうに言った。
「ううん、百合ちゃんのギューッが痛い」
だが、当の咲希自身はどこか呑気にしている。
百合は目を丸くした。
咲希の姉の早苗花奈から聴いた話によると、デート中に不審者に襲われ、明人は全治一ヶ月ほどの負傷。
咲希も焦げ跡や損傷のある衣服や花畑の血痕から見て、明人と同じかそれ以上のの外傷がある筈と言われていたらしいが、まるで元気にしている。
心配させないように隠しているのではと思ったが、咲希は誤魔化すのが下手で、その様子もなかった。
「さっち……本当に大丈夫なの?
お怪我は?」
「大丈夫だよ!
わたしは……」
心配する百合に、咲希は元気に返そうとしたが、次第に表情が曇る。
「明人……わたしをまもろうとして…………」
涙が流れそうになる咲希を見て、百合は優しく頭を撫でた。
「竹内さんなら大丈夫だよ。
あの人はそう簡単にやられるほどやわじゃないから。
死んででもおかしくないのに、全治一ヶ月で治るくらいしぶとい人だよ。
入院生活も1,2週間で終わっちゃうかもね!」
「ほんと?」
「うん! 自分の彼氏を信じなさいな」
「うん!!」
咲希は安心したのかいつもの満面の笑みに戻る。
百合も安心し頭を撫でる手を、頬へと持っていきそのまま撫でた。
咲希は戸惑うこともなく、むしろ猫のように自分からも頬を擦り寄せた。
「さっち」
百合は優しく咲希を呼ぶと、身を乗り出し、咲希の頬へとキスをした。
「百合ちゃん!」
咲希もダイブするように百合へと抱き着くと、頬へお返しのキスをした。
百合の頬が赤く染まり、ふわふわととろけた気分になる。
幸せに溢れ、百合は思わず咲希を強く抱きしめ合った。
「さっち……好きだよ。
大好き」
「わたしも! 百合ちゃんだーーいすき!!」
「ありがと。
大大大好き」
「うん!
それに、百合ちゃんのちゅー久しぶり!」
「うん」
「ねぇ、百合ちゃん。
なんで百合ちゃんはこいびとになってくれないの?」
「まだ早いから。
……あと、私たちがちゅーしてるのは竹内さんにはナイショだよ」
「えーー、だめなのー?」
「そ。
だって、まだ竹内さんとはしてないんでしょ?」
「うん。
明人、しようとしてもまだ早いって言うんだもん」
「でしょ?
だから言っちゃうと、竹内さんがまた私のこと悪く言っちゃって喧嘩になっちゃうよ」
「……いつものことじゃない?
百合ちゃんと明人は、ケンカばかりの仲良しさんでしょ?」
「仲良くない」
百合はそう言うと、咲希から体を離し、また頭を撫でた。
「とにかく無事でよかった。
じゃあさっち、また明日。
学校で」
「うん!
…………あ! 待って百合ちゃん!!」
咲希は百合を引き止めると、誇らしげな顔をして、右手にグッと力を入れた。
「……なに?」
百合は首を傾げる。
「えへへ!
実はね、わたしお花作れるようになったの!」
「……へー、すごいね!
見せて見せて」
百合は手品か手芸品かだと思い、咲希の調子に合わせる。
「じゃん!!」
咲希の右手が淡く光り、薄く光る種が現れる。
「……わあ、どっから出したの?」
「作ったの!」
「そっか、すごいね」
百合は咲希の頭を撫でようとしたが
「待って! これだけじゃないよー!」
と、百合の手を止めた。
「えい!」
そして、道路にその種を撒いた。
その種は道路に埋まり、花が咲いた
と思いきやすぐに枯れてしまった。
「……あれ?
おかしいな」
咲希は昼間みたいにきれいな花が裂かないことに不思議に思い、また右手に力を込めた。
百合はそれを見て、唖然としていた。
咲希はまた道路に撒くが、花はすぐに枯れてしまう。
「待ってて、百合ちゃん。
今度は上手くいくから」
咲希がまた右手に力を込め、種を作り出したとき
「さっち! 今の!!
今のって、あのお花畑の花じゃ!!」
百合は咲希の肩を掴み、必死の形相で尋ねた。
「う……うん。
でも、うまくいかない……」
「そうじゃなくて! なんで!?
なんでさっちが種持ってる?
どこで見付けたの!?」
「見付けたんじゃなくて、作ってるの!」
「え……?
え、さっきから作ってるって……
え、本当に? 本当にさっちが、手から?」
「そーだよー!
さっきからそう言ってるよ!!」
百合の頭の中が混乱する。
無事に帰ってきた親友が、不思議な力を得ているありえない状況に理解が追い付かない。
「そ……そそそ……そっかー
すごいねー!」
百合は苦笑いしながらそう言うと、咲希の頭を撫で
「もう遅くなっちゃったし、帰らないと!
じゃあ、さっちまた明日!」
と、早口で言うと逃げるように帰っていった。
「ばいばーい!
また明日!!」
咲希は大きく手を振り、百合の背中を見送った。
〜〜〜〜〜〜
04/30(日)
(ののみ、喜んでくれるかな)
買い物袋を片手に直樹は、微笑みを浮かべながら帰っていた。
スーパーへ買い物を任され、そのついでにと食玩のコーナーへ立ち寄った。
そのとき、かわいいアクセサリーを見つけ、自分のお小遣いで乃々実へのプレゼント用にと買ったのだ。
(早く帰ろ)
直樹は乃々実の喜ぶ顔が見たく、歩くスピードを早めた。
そのとき
「うわ!」 「おっと」
曲がり角を曲がろうとしたとき、その角から人が現れ、ぶつかりそうになってしまった。
「すみませ……
って、刀根さん……!」
「なんだ……お前か」
ぶつかりそうになったのは三晴だった。
三晴はいつものようにぶっきらぼうの様子で、直樹を睨むように見ていたが、しばらくすると何かをおもいだしたかのように目付きを変えた。
「小林直樹。
1つ聞きたいことがあった。
時間あるか?」
「……え?
ここじゃだめ?
俺、お遣い頼まれてて」
「……まあいいだろ。
手短に済ませる。
お前、あれから覚醒者に会ったか?」
「覚醒者……?」
直樹は一瞬ポカンとなってしまうが、すぐに思い出した。
「……あー、あれね。
いや、会ってないよ」
実のところ、爆弾の男に襲われて以来、戦いに巻き込まれることがなかった直樹は、自身の能力含め戦いに関することを忘れかけていた。
「……そっか。
……変な詮索されたら面倒だから理由も話そう。
一週間前、森の奥の荒廃した土地で抜け殻のデビルソウルが見つかった。
“闇の人間を倒したときに出る核”が……。
もしかしたら、光の戦士が倒したのかもしれないが、核を破壊してないところを見ると、知識がないかもしれない。
危険が及ばないよう、教えとかなきゃだが、足取りがなくてな……。
すまない。時間とらせたな。
お前はいつも通り平和に暮らせ、だが、なにか情報があったときは花畑の岩陰にランドセルが置いてあるから、そこに紙でもなんでも書いていれとけ」
三晴は周りに聞こえないよう小声で、事務的に淡々とそう言うと、静かに去っていった。
返事をする間もなく、一方的に言われたので直樹はしばらく唖然としていた。
(手短と言う割には……ちょっと長かったな)
直樹は心の中でそう呟くと、家へと帰って行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜
「それでね、百合ちゃんと明人がまたケンカしちゃってね」
「うんうん」
月詠山の麓の花畑。
咲希が、年の離れた大学生の姉、早苗花奈(さなえ はな)と一緒に花の冠を作りながら、話をしていた。
今日は百合と遊ぶ約束をしていたのだが、いつもより早く来過ぎてしまい、いつも送り迎えしてくれる姉と一緒に時間を潰している。
「えい!」
咲希は花冠を一つ完成させ、右手を握り、光の種をその冠に装飾した。
「咲希! なに今の!?」
ふとそれを見た花奈は驚いた顔をして、咲希に訊いた。
咲希は不満そうな顔をする。
「えー、わたし、一週間前から言ってるよー!
“えい”ってしたら、お花の種が作れるようになったって!
また忘れちゃったの?」
「……そ、そうだっけ?」
ふくれっ面で言う咲希に、花奈はまったくピンと来ておらず、気まずそうに答えた。
「うん!
ねえ、花奈ちゃん。
こいびとに早いってあるの?」
咲希は頷くと、ふとなにか思い出した表情をし、花奈に訊いた。
「? どうして?」
「あのね、わたし、明人も大好きだけど、百合ちゃんのことも大好きだから、“明人だけじゃなくて百合ちゃんもこいびとにならない?”
って言ったけど、百合ちゃんは“まだ早い”って。
なんでだろうね?」
花奈は咲希の質問に、いたずらに笑うと咲希の頭を撫でた。
「百合ちゃんには百合ちゃんのタイミングがあるんだよ。
咲希もきっといつか分かるよ」
「そーかなー」
「うん!
咲希も恋したら分かるよ……
私も咲希くらいのときは
花奈が話している途中で、ケータイのバイブレーションが鳴った。
「……あ、咲希ちょっとごめんね。
りさぽんから」
花奈は友達からの電話を受け、道の脇の岩のところへ向かった。
「うん」
咲希は冠造りに夢中で、頷くだけだった。
それから5分くらい経ち、花奈は友達との通話に花が咲いていた。
最初の頃はチラチラと咲希の様子を確認していたが、盛り上がっている影響か、咲希を見る回数が減っている。
(恋するってなんなのかなー?
大好きって思うのと違うのかなー?)
咲希は花奈のアドバイスを不思議に思い、考えていたが答えは出なかった。
「……あれ、わたしの種……黒くなっちゃった……。
……?
あれ?」
そんな中、能力で作った種が、すぐにくすんで黒くなってしまうのを見ると、休憩がてら、ふと顔を上げると、遠くになにか見つけた。
「なんだろう?」
なにかがふわふわと浮いている。
その場に留まり続け、這って近付いてみたが、動かない。
「お花?」
目を凝らして見たら、それは花だった。
しかも、正体不明のあの花だ。
咲希はもっと良く見ようと立ち上がる。
すると、花はふわふわ浮かんだまま、咲希から逃げるようにゆっくりと飛んでいく。
「あ! 待って!」
咲希は走って追い掛ける。
花は飛んでは止まり、飛んでは止まり、まるで導いているかのようだった。
「お花さん! 待って!」
咲希は待ち合わせしていることを忘れ、花を追い掛け、花畑からどんどんと離れ行ってしまった。
〜〜〜〜〜〜〜
(とにかく、誰かが新しく能力に覚醒したのか……
それで刀根さんは多分その人にも戦うなって言うんだろうな……
確かにあんな痛い思い、他の誰かにしてほしくないし、刀根さんも負担減らしたいだろうから……ちょっと協力するかな)
一旦家に帰った直樹は、お遣いの品を出し、乃々実にプレゼントを渡そうとしたが、当の乃々実がお昼寝の最中だったので、いつでも情報提供できるよう、三晴のランドセルの下見に花畑に立ち寄っていた。
「さっちー!!
さっちーー!!」
(ん? あの人は?)
花畑の真ん中では、女の子が誰かを探しているのかあたりを見渡し、大声で名前を呼んでいた。
(確か…………
……誰だっけ?
なんか、漢字が難しい人)
直樹は見覚えがあり、学年も同じでクラスも何回か一緒になったことは覚えているが、あまり他人への興味がないため、名前を忘れていた。
(誰か探してるのかな?)
直樹は女の子を横目に、ランドセルがあるという岩を探し始めた。
「(どこ行ったの?
もしかして、また不審者に?)
さっちー!!」
待ち合わせ場所に着いた百合は、花奈に目を離した隙にいなくなったと伝えられ、咲希を心配して探している。
また不審者に襲われたのではないかと不安になり、花奈は周りを探し、百合はいつ、咲希が戻ってきてもいいようにと、花畑で待機しながらも呼び掛け続けた。
「(いない……どうしよう…………
……? あれ、あの人……えっと、確か?
出席番号が近かった……えっと……
もう! 誰でもいい!!)
あの!」
百合は直樹の姿を見ると、呼び掛け駆け寄った。
「……おれ?」
直樹はあたりを見て、自分以外誰もいないことを確認すると、自分を指さした。
「そう!
ねえ、あなた。
さっち……えっと、早苗咲希ちゃん見なかった?」
「早苗さん?
……って、あの小さくてお花の髪留めしてる元気な子?」
「うん。
ここで待ち合わせしてるんだけどいなくて……
あの子すぐどっか行くから。
あ、ごめんなさい。
知らないなら大丈夫。ありがとう」
百合は心配で堪らなく、口走ってしまったが、途中で人見知りが発動してしまい、途中でやめて、逃げるように走り出した。
「(行方不明か……
心配だな)
ルーペ」
直樹は咲希の捜索を手伝おうと、光の玉を出して、望遠鏡の形に変えた。
(とりあえず、それらしい人がいたら伝えてあげるか)
そして、望遠鏡を覗き咲希を探し始める。
その瞬間
(……ん?
なんだ?)
直樹の目に、遠くなにかが浮かんでいるのが見えた。
近付き、目を凝らす。
(……!
あれは!!?)
よく見るとそれは、食玩アクセサリーだった。
(乃々実が好きなシリーズ!
そして、乃々実が一番欲しがってたけど、いつも売り場になく、手に入れる前に次の段に変わったやつ!)
乃々実が欲しがっていたが、買ってやれず、ずっと後悔していたものだった。
直樹は乃々実のことになると、判断能力を失うため、なぜここにあるのか、なぜ浮いているのかということは一切気に留めなかった。
(天のめぐりあわせか……!)
直樹はランドセルのことも、咲希のことも全て忘れ、一心不乱に、アクセサリーを追い掛けた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月詠山の麓。
「ツェヤ!」
「ーーー……!」
三晴はアバタを見付け、能力の刀で斬り付け、消滅させた。
(たまに、灰色の世界の外で、一体だけのアバタを見付ける……。
襲うわけでもないし、逃げるだけ……。
何がしたいんだ?)
三晴は敵のことは姉が残したノートで情報を獲ているが、すべてを網羅しているわけではない。
アバタは基本的に好戦的で集団で現れ、すぐに襲うものが多い一方、今倒したものは、一人だけで逃げ腰だった。
(にしても、見付からないな。
小林直樹……アイツがなにか情報得てると思ったが、見当違いか……)
三晴はその場にしゃがみ込み、ため息をついた。
一週間前に、戦いの痕跡を見てから月詠町中を駆け巡り、新たなる覚醒者(光の戦士)を探しているが中々見付からない。
学校もサボってこの1週間、1日中走り回っていても成果がないので、少し嫌気がさしていた。
(やはり児童の中の誰かか?
とすると、明日、久しぶりに学校行って調査するしかないか?
やはり今度、“あの2人”に探りを入れてみよう)
三晴は立ち上がると、灰色の世界になってないかパトロールするため、走り出そうとした。
そのとき
(……!!)
人影が見え、思わず刀を構えた。
(……え)
だが、その後ろ姿を見た途端、三晴は涙を流した。
「虹姉ちゃん!!」
その後ろ姿は死んだはずの最愛の姉にそっくりだった。
三晴はいつものキリッとした険しい表情を崩し、いつもの暗く落ち着いた声よりも高く感情的に叫んだ。
「虹姉ちゃん!!
虹姉ちゃん!!!」
あたりが急に暗くなる。
しかし、三晴は気が付かない。
自分の心を許した自分の全てだった、姉の後ろ姿に夢中だった。
三晴は手付かずの森に誘われ、深く深くへ入っていく。
「虹姉ちゃん!!」
そして、後ろ姿の動きが止まり、ついにその手を伸ばそうとしたそのとき
「いて!」 「痛っ!」 「うっ!」
直樹、三晴、そして咲希はぶつかり合い、後ろに倒れた。
「うぅ……
いたた……あれ!?
ここどこ!!?
ふわふわしたお花は!?」
咲希は体を起こすと我に返り、急に知らない森にいたため、あたふたする。
「いてて……
……あ! 早苗さん!!」
続いて、直樹が体を起こす。
目の前には、同級生が探していた咲希がいたので、思わず声を張り上げてしまった。
「うわ!
びっくりした!」
「……あ、ごめん」
「ううん! 平気だよー!
ちょっと、びっくりしちゃった!」
咲希は直樹に向かってにこやかに返す。
その天真爛漫な笑顔に、(もともと5年間同じクラスなのもあってか、)直樹の心はすっかり許されてしまった。
「あ、そうだ。
早苗さん。花畑で友達が探してたよ」
「友達?
……あ! 百合ちゃん!!
そうだ!! 百合ちゃんと約束してるんだ!!」
咲希は急いで花畑に戻ろうと、起き上がろうとした。
そのとき
「ニードルサイクロン!!!!!!」
三晴が荒々しい声を上げ、剣気を四方八方へ飛ばした。
あたりの木々に切れ込みが入る。
「うわ!!
三晴ちゃん…!? どうしたの!?」
咲希は腰を抜かし、怯えた様子で三晴を見上げる。
三晴は刀を構えたまま、しばらく吐息を漏らすと、キッと咲希を睨んだ。
「軽々しく下の名を口にすな!!」
三晴は怯える咲希の胸ぐらを掴むと、激しい剣幕で叫んだ。
「う……うぅ…………
えーーーーーーーん!!」
咲希はあまりの恐怖に泣いてしまう。
「うるさい!!
黙って!!」
三晴は刀を構え、咲希に振りかざそうとした。
「刀根さん!
待って!!」
そこへ直樹が咄嗟に三晴の腕を掴み、止めた。
「邪魔しないでよ!!!
コイツはただの光の人間!!
斬ったところで傷一つつかない!!!!」
「いや! だからといって
「うるさい!!
口答えしないで!! バカ!!」
三晴はそう言いながら、腕を払い、直樹の手を振り払った。
そして、咲希に対して再び刀を振りかざしたところで、急に動きを止めた。
数秒、咲希の泣き声だけが響き、三晴の目付きが変わった。
「小林直樹。
数が多い。協力しろ」
いつもの落ち着いた冷静な声だ。
「え……?
あ、うん」
直樹は一瞬なんのことか分からなかったが、背後から思い出したくもないぞわぞわした気配を感じ、察した。
「はーー……ふう…………」
深呼吸をし、何にでも姿を変えられる光の玉を出現させる。
「いいか。
これは戦いじゃない、逃走だ。
今は逃げることに集中しろ。
多分、私もお前も彼女も、ここがどこだか分からない」
「……わかった」
「早苗咲希。
お前……なんか人とは違う能力はないか?
胸のところが光って、敵を倒した経験はないか?」
「……わからない」
「そうか。
じゃあせいぜい生きることだけ考えるんだな!!」