ハートジャスティス   作:ココリンク

28 / 34
28話 週明

長いようで短いゴールデンウィークが終わった月曜日。

 

 

琴乃は、泉と命を共有した先週の月曜日から、翌日の学校を休んでまで、自分自身の分析を進めた。

 

結果、泉からはどこにいてもかなり微量だが光パワーがリアルタイムで送られていることが分かった。

 

それにより、琴乃の肉体と意識が保たれている。

 

だが、それだけでは自分自身の感覚は保てなかった。

 

なので自身の能力による分析で、脳へ無理矢理刷り込ませることで、なんとか回復することができた。

 

だが能力は体力の消耗が激しく、ときおり泉からの光パワーの供給が遮断されるときがあり、ゴールデンウィーク最終日まで時間がかかってしまった。

 

なにもなくても休みの日は引きこもっていることが多いので、良くも悪くも親にはそんなに心配されずには済んでいた。

 

「行ってきまーす」

 

琴乃は扉を明け、階段を降りマンションを出た。

 

(よし、大丈夫)

 

駐車場に止まっている車の窓を、鏡代わりに身だしなみのチェックをし、拳を握って気合を入れた。

 

(加藤さんと頑張るって決めたんだ。

これくらいしないと)

 

能力による脳の負荷処理により、髪の毛が白くなってからずっと帽子で隠していたが、今日から外して行くことにしたのだ。

 

(それに……

嬉しかったな)

 

それは、泉のイジメを止める意思表明のものでもあったが、初めて泉に見られてしまったとき、こっそり心情を分析したときに出たのが“神秘的なものを見た好感”だったのが嬉しかったからでもあった。

 

琴乃は思わず笑みを浮かべ、緊張感と高揚感を味わいながら通学路を歩いて行く

 

そのとき

 

(……まただ)

 

また、泉からの感覚の共有がなくなった。

 

(なんだろう)

 

分析しようにも今はまだ目に見えたものしか対象にはならないので、分からずじまいなのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

若葉小学校

6-1

 

「キム、軒谷

おはよ」

 

「おはよー」 「おはよ!」

 

登校してきた直樹は、翔と亘に挨拶を交わした。

 

「体調は大丈夫か?」

 

亘は心配そうな顔をして訊く。

 

直樹はゴールデンウィークの間の平日の月曜日を早退し、火曜日は休んでいた。

 

その身を案じているのだ。

 

だが、直樹は優しく微笑み

 

「大丈夫」

 

とだけ返した。

 

「そうか。

ならよかった」

 

亘も元気な姿とその答えをきき、安心して微笑んだ。

 

「ののみちゃんと沢山いれてよかったねー」

 

翔も横目に見ながらいたずらに笑った。

 

「おかげで今日、家出るとき抱きつかれちゃってさ。

学校だめ、学校だめって言って離れなくて苦労したよ。

でもさ、やっぱりそのときも乃々実可愛くて……

キム……何? その目」

 

翔の皮肉に、直樹は困ったような口ぶりで話すが、顔はニヤけ嬉しそうな口調でいる。

 

「いやー」

 

「小林、本当に妹のこと好きだな」

 

そんな直樹に翔は呆れるような顔をし、亘はニヤニヤしていた。

 

「そ……それより!」

 

直樹は恥ずかしく思い、さっさと話題を変えるため、ランドセルを漁りだした。

 

「軒谷これ、遅れてごめん」

 

直樹が取り出したのは、鉛筆型水鉄砲だった。

 

4月の頃に作ると約束していたものがゴールデンウィークで時間が空き、ようやく完成できたのだ。

 

「おー!

サンキュー! 覚えててくれてたんだ!!」

 

亘は嬉しそうに受け取り、目を輝かせてお礼を言う。

 

「だいぶ時間経ってごめん。

ちょっと忙しいときが増えて中々作れなかったんだ」

 

「いいよいいよ」

 

直樹の謝罪に亘は快く手を振って応える。

 

「忙しいってなにー?

乃々実ちゃんといちゃらぶしてるのー?」

 

その横で翔はニヤけながらからかうように訊いた。

 

「いや……

まあ…………うん」

 

直樹は否定しようとしたが、闇の人間のことは言っても色々と面倒くさくなると思い、そのまま頷いた。

 

それに、思い返せば戦っていないときは、戦いのことを忘れるために、乃々実と遊んで気を紛らわしていたのであながち間違いではなかった。

 

「ふーん」

 

翔は薄い反応に面白くなさそうに鼻を鳴らした。

 

 

 

 

 

6-2

 

「明人ー!!」

 

水遣りを終えた咲希は教室に入り、学校に復帰した明人を見るなり、明人に飛び掛かりハグをした。

 

「わっ…!

ちょっ……」

 

「おかえり! 明人!!

やっとお外出れたね! 明人!!

またデートできるね!!

メダカさんのお世話がんばったんだよ!!

ねえねえ、またわたしと花奈ちゃんと空良くんと百合ちゃんと明人でどっかいこうよー!!」

 

明人は驚き、急に飛び掛かったことや教室で走ったことを注意しようとしたが、久しぶりの咲希の嬉しそうな姿や声、怪我してるときには味わえなかった密接な感触や匂いに心を奪われてしまった。

 

が、その後ろでは百合が邪魔者を見るかのような目で睨んでいる。

 

明人はそれで我に返り、

 

「咲希……咲希ー」

 

と優しく肩を叩いて声を掛ける。

 

「なにー?」

 

咲希は顔を向かせ、上目遣いで訊く。

 

「かッ……!(わいい……)」

 

明人は咲希の仕草が可愛く、メロメロになってしまい、それ以上の思考が止まってしまった。

 

咲希は不思議そうに首をかしげる。

 

「………ッ!!」

 

その仕草もまた可愛く、明人は声にならない声を出し、場所が場所ならハグを返したかった。

 

「さっちー

1回ランドセル下ろそう」

 

後ろで見ていた百合は、青筋立てた微笑みをしながら咲希に声を掛けた。

 

「はーい!!」

 

咲希は顔だけ百合に向けて返事をすると、明人から手を離し

 

「またねー!」

 

と言って無邪気に明人に手を振って、嬉しそうに百合の下へ駆けた。

 

「さっち、走らない。

怪我したらどうするの?」

 

「怪我してもすぐ治るからいいもん!」

 

「だとしても怪我し過ぎだよ」

 

百合は咲希と手を繋いで、注意しながら席へと向かって行った。

 

(ああ……咲希可愛かったなー)

 

咲希が離れた後も明人は顔を赤らませながらしばらく突っ立っていたが、

 

(……いや、てかアイツ!!

またこれかよ!

病み上がりにも容赦ねえな!!

お見舞いにも来てねえしよ!!

来ても嬉しくねえけど!)

 

久しぶりの学校での咲希との時間を邪魔した百合に、遅れて怒りが湧き、睨もうとしたが、

 

百合の後ろに座る咲希が、明人の視線に気付いたのか、元気に手を振って来ていたのが見え

 

(かわいいー!!)

 

鋭く睨んだ目は、優しく垂れ下がり、明人はとろけた顔で手を振り返した。

 

百合はそんな明人を蔑むような目で見ていたが、久しぶりに嬉しそうな咲希を見れて、まんざらでもないようだった。

 

 

 

 

 

自然公園

 

「ツェヤア!!」

 

「ーーー…!!」

 

大きくそびえる月詠山の麓にある大きな公園が、灰色の世界に覆われていた。

 

三晴は能力の刀を振り、アバタを一体、また一体と倒していく。

 

数が多く、アバタ相手に技を発動しては、闇の人間を相手取るときに体力が保たないので、地道に攻撃していくしかない。

 

だが、そのアバタの数、そして現れる方向から闇の人間のなんとなくの方向が分かるものだ。

 

三晴は次々現れるアバタを斬り伏せながら、目星を付けた茂みを注視する。

 

(……いた)

 

その地点まで20mくらいまで近付くと、アバタとは違う影が見えた。

 

三晴は刀を大きく構えると

 

「ニードルバスター!!」

 

と、刀のエネルギーを飛ばした。

 

「ちっ」

 

1人の男が茂みから姿を現し、手に闇の粒子を纏って、刀のエネルギーを弾く。

 

「輝きの白刃!!」

 

その一瞬の動作の間に、三晴は男へと急接近。

 

「ツェヤア!!」

 

断末魔も出させる間もなく男の胸を抉った。

 

男は粒子を保てなくなり、消滅。

 

ひび割れた結晶だけが残った。

 

三晴はその結晶を足で踏んで割る。

 

すると、灰色の世界は明るくなり、元の状態へと戻った。

 

「ニードル……」

 

三晴は小さくそう言いながら体を捻る。

 

「ーーー!!」

 

まだ残りのアバタが残っており、主を失ってもなお襲い掛かってきたのだ。

 

「サイクロン!!」

 

三晴は体を一回転しながら斬撃を四方八方へと飛ばし、残りのアバタを殲滅させた。

 

三晴の身体には傷一つついていない。

 

戦いの経験により、相手の能力がよほど強くなければ、無傷で勝てることの方が多い。

 

まだ体力に余裕があるので、三晴は灰色の世界になっている場所がないか、探しに行こうとした。

 

そのとき

 

「君、なかなか強いんだね」

 

木の上から、青年の声が聞こえた。

 

三晴はすぐに振り向き無言で刀を構え、青年を睨み付ける。

 

「こわいこわい。

そんな顔しないでよ」

 

青年は飄々とした態度で、三晴を見下ろしている。

 

(なんだ……アイツ?

闇の人間か…?

だとしたらまだここは灰色の世界?

あいつはブラフか?)

 

三晴は構えを崩さず、青年を警戒しその正体を観察する。

 

青年はニヤニヤと三晴を見るだけで何もしない。

 

しばらく睨み合いが続き、3分くらい経った頃

 

青年の木の根本の落ち葉がガサッと音を立てた。

 

三晴は目だけ動かし一瞬、だけ見た。

 

(ハトか……

……だとしたら、灰色の世界ではないか……)

 

ハトが一羽、呑気に飛んできたのだ。

 

灰色の世界へは、闇の人間と能力を持つ素質のある光の人間しか入ることができない。

 

ただのハト一羽がいるだけだが、判断材料としては優秀だった。

 

「さっきの刺客、弱かったよね。

いや、君が強かっただけか。

だってさ」

 

青年がようやく口を開いたと思うと、木の上から飛び降りた。

 

足元に降り立たれたハトは、驚いて飛んでいく。

 

「この世界の生物ってさ」

 

青年はそのハトを鷲掴みにし

 

「脆いよね」

 

と怪しい笑みを浮かべながら、ハトを放した。

 

三晴は青年の動向をただ見ていることしかできない。

 

何をしているのか、何が目的なのか、全く持って予想ができないのだ。

 

そういう相手ほど、ピンチに陥りやすい。

 

「君も知ってるんだろ?」

 

青年は目をガン開き、口を大きく開け狂気的な笑みを浮かべながら、三晴に言った。

 

三晴は何に対して言っているのか分からず、何も答えないで、警戒を続けている。

 

青年は何か反応を待っているかの様子だったが、しばらくして、何か気付き、表情を戻すと

 

「あ、そっかー。

忘れちゃってるんだもんね。

つまらないの」

 

と、頭の後ろに手を組んで、つまらなさそうに言った。

 

「何が言いたい…?」

 

相手の雰囲気に乗せられそうになっていることに気付いた三晴は、行動の目的を尋ねた。

 

青年は横目で見ると、指を三晴の胸のあたりに向けて指した。

 

三晴は光線か何かが飛んできてもいいよう、手に力を込めて、いつでも応戦できるよう準備する。

 

「今日は挨拶だけしに来たよ

ようやく脆くない能力者を見つけたと思ったけど、やっぱりあの子のほうが面白そうだからね」

 

青年はそう言うと、体の周りに炎を出し、一瞬で姿を消してしまった。

 

(なんだったんだ……)

 

三晴は緊張がほぐれ一息つき、能力の刀を消した。

 

意図も目的もわからない、掴みどころのない青年。

 

三晴は嫌な予感がしながらも、再びパトロールを始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。