ハートジャスティス   作:ココリンク

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34話 陽が昇る

「明人」

 

衝撃によって、完全に氷が溶けた咲希は嬉しそうな表情をして、地面に倒れ込んだ。

 

「くっ……

生意気なガキ…!!

邪魔するんじゃないよ!!」

 

激昂した女性は手から透明な──氷で作られたクナイを生成し、明人に飛び掛かった。

 

明人は睨むように女性を見ると

 

「ブレイズ」

 

と呟き右手に炎をまとわせた。

 

「死ねッ!」

 

女性は明人の首をはねようとクナイを振り下ろした

 

「パンチ!!」

 

明人は炎の拳をクナイに突き付けガード。

 

氷でできたクナイは瞬く間に消滅した。

 

「ブレイズ」

 

明人は再び右手に炎を纏った。

 

「くっ……!」

 

女性は追撃が来る前に飛び退き、距離を取ろうとする。

 

「ボール!!」

 

「なっ!?」

 

だが次に明人が放ったのは、拳ではなく、火球だった。

 

空中にいる女性は回避ができず、火球に直撃。

 

地面に転がり落ちた。

 

「くっ…!!

……ふはは!

強いわね!

でも、これならどう?」

 

女性は好戦的な笑みを浮かべると、今度は水で形成されたクナイを作った。

 

「水と氷は一緒よ!

消火してあげる!」

 

水のクナイを持ち、明人に飛び掛かる。

 

「ブレイズパンチ!!」

 

明人は右手に炎を纏わせ突き付けた。

 

だが、炎は水によって消火され掻き消されてしまう。

 

「今度こそ死ね!」

 

女性は明人の体を切り刻もうとしたが

 

「ブレイズパンチ!!」

 

「ぐっ…!!」

 

明人は“左の拳”に炎を纏わせ、女性を殴り付けた。

 

「両手……?」

 

思わぬ追撃に対応できなかった女性は吹き飛ばされながら戦法を改める。

 

「なら、ワタシも二刀流よ」

 

両手に水のクナイを作り上げ、明人に飛び掛かろうとした。

 

そのとき

 

「ブレイズ」

 

明人は呟くと走り、一瞬で女性の前に躍り出た。

 

(速い……!?

でも、これでガード

……え?)

 

女性はパンチをクナイで合わせ、迎撃しようとしたが、明人の拳には炎が付いていなかった。

 

「キック!!!」

 

明人は炎を纏った足で女性を蹴り上げた。

 

「うぐっ…!!」

 

予想外からの攻撃に、女性は受け身も取れず、ただ空中に投げ出される。

 

「ブレイズボール!!」

 

そこへ、火の球の追撃。

 

「ぐわっ!!」

 

女性は地面へと落下した。

 

「ブレイズボール」

 

明人は更に追撃しようと、火の球を1つ手に出すが

 

「待ちなさい!!」

 

女性は大声を出した。

 

「……しまった」

 

明人は女性の足元を見て、脂汗をかく。

 

女性の落下地点の近くに咲希が倒れていた。

 

女性は咲希の体を鷲掴みにしている。

 

「察しが良いわね。

ほら、その球を捨てなさい。

さもなければ、この娘を殺すよ!!」

 

「ち……」

 

女性の脅しに、明人は従うしかなく、火の球を上空へと投げ捨てた。

 

「いいこね。

じゃあ、死になさい!!」

 

女性は氷のクナイを生成し、明人に投げ付けた。

 

明人は動くことができない。

 

そのままクナイが胸を貫こうとしたそのとき

 

「サニー!!」

 

明人が叫ぶと、上空に打ち上げた火の球が、空中で固定され、太陽のように強く輝き出した。

 

すると、その熱により氷のクナイは溶けて消滅した。

 

「くっ…!

なによ!! 最後っ屁にカッコ悪い!!

捨ててないなら、もったいないけど、この娘を殺す!!」

 

女性は咲希の体を凍りつかせようとした。

 

だが、その氷も一瞬にして溶けてしまい、咲希の体は霜1つつかない。

 

「な……なによ?」

 

「ブレイズ」

 

女性が焦っていると、明人はまた足に火を付け、その火力で高速移動。

 

一瞬にして女性の前に立ち

 

「キック!!」

 

思い切り蹴りつけた。

 

「ぐはっ!!!」

 

女性は地面を転がり、ふらつきながら立ち上がる。

 

「大丈夫か?

咲希?」

 

明人は咲希頭を優しく撫でた。

 

咲希は嬉しそうな顔ですやすや寝息を立てている。

 

「咲希。

咲希は俺の太陽だ。

俺はそれを見詰め、憧れるヒマワリ。

けど、それだけじゃだめだと分かった。

俺は咲希の曇った顔を大きく照らし、笑顔の花を咲かせ、輝かせる。

今度は俺が咲希の太陽になる番だ」

 

明人は咲希に優しく、それでいて力強く告げると、立ち上がり、女性を見詰めた。

 

「よくも……!!

よくもこのワタシを!!」

 

女性は激昂し、水のクナイを振り回しながら突撃する。

 

「咲希……誕生日おめでとう」

 

明人は優しく微笑みながら言うと、ロンダートで大きく飛び上がり、空中の火の球の炎を右足に纏った。

 

「プロミネンス……ビッグバン!!!」

 

そして、暴れ回る女性を見下ろし、クナイの軌道をよみ、隙間を縫うように胸部へと強烈な蹴りを入れた。

 

「ぐ……がああ!!」

 

女性はもがき苦しみだす。

 

闇の人間は胸にある結晶をコアに、闇の粒子によって体が構成されている。

 

基本的に粒子をまとった状態では、コアを攻撃、破壊することは難しく、三晴も一度瀕死にして、コアを剥き出しにしてから、破壊している。

 

だが、強い光パワーを纏った明人の一撃は、粒子の内側にも衝撃を伝え、コアにヒビを入れ始めた。

 

「はあああああああ!!!!」

 

「があああ………あっ!!」

 

女性は喉の奥を詰まらせるような声を出すと、明人に吹き飛ばされた。

 

コアが破壊されたのだろう。

 

吹き飛ぶ中、黒い粒子が当たりに舞い、灰色の世界は消え去り、少しだけ周りが明るくなった。

 

 

明人はふらつきもせず落ち着いた足取りで、咲希の下に歩み寄ると、咲希を起こさないよう、静かにお姫様抱っこをした。

 

「キラキラしたところは、また3人で来ような。

花畑に帰ろう。

咲希」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花畑

 

夕方。

 

明人は咲希を道の中央辺りにある大きな平べったい岩に、膝枕で寝させて頭を撫で続けていた。

 

「はあ……はあ……

さっち!!」

 

そこへ、百合が疲れた様子で駆けて来た。

 

明人は大きく手を振ると、咲希を指差し寝ていることを知らせた。

 

百合は不安そうな顔をしながら、近づいてきた。

 

明人は咲希を優しく膝から下ろし、岩から降りた。

 

「咲希なら寝てるよ。

遊び疲れたみたい」

 

明人は優しく微笑みながら伝えた。

 

実際は、あれからまだ起きていないのだが、それを言うとまた文句を言われたり、色々面倒くさくなるので隠しておくことにした。

 

幸い、咲希には怪我はなかった。

 

「そう……」

 

百合はそう言うと、手に持っていたものを見詰めた。

 

明人が覗き込むようにして見ると、それは、ヒマワリの髪留めだった。

 

少し汚れてしまっている。

 

「なに…?

勝手に見ないで。

…………そうですよー、頑張って探しましたよー」

 

百合は髪留めを隠すと、おちょくるように言った。

 

「ん?

なんのことだ?」

 

だが、明人は百合の言うことにピンと来ていない。

 

「……え?

……さっちから聴いてないの?」

 

百合も明人の反応を不思議に思い、思わず訊いた。

 

「聴くって……なにを……………」

 

明人はそこまで言うと、ニヤリと笑い、納得したようにコクリコクリと頷いた。

 

「馬鹿にしてる?」

 

「いや。

だとしたら辻褄が合うなって」

 

明人はそう言うと、咲希の前髪を見詰めた。

 

そして、優しく微笑むと

 

「安心しろ。

咲希はお前のこと、まだ好きだぞ」

 

と告げた。

 

「え……?

……誰もそんなこと訊いてない!」

 

百合は視線を逸らし顔を赤らめながら言った。

 

「そうか?

お前のさっきまでの不安そうな顔、写真撮って見せてやりたいな」

 

「……ばか!」

 

ニヤけながら言う明人に、百合は背中を引っ叩いた。

 

「うっ!

おま……背中だけはやめろ……背中だけは…!」

 

「……うるさい。

おちょくるあなたが悪いの」

 

明人はさっきの刺された傷がまだ完全に治りきっておらず、苦しそうにしゃがみ込むが、百合は拗ねて背中を向けてその様子に気付かなかった。

 

「う……あれ?

百合ちゃん?」

 

そんな中、咲希が目を覚ました。

 

「…………さっち」

 

百合は咲希の声に嬉しそうに顔を向けたが、すぐ気まずくなり顔を背けてしまう。

 

「あ……あのね……百合ちゃん。

あのね……」

 

咲希は体を起こし、謝るために、色々言おうとしたが言葉が纏まらない。

 

「さっち、ごめん!」

 

その前に、百合が前に出て頭を下げて謝罪した。

 

「色々……いっぱい…………酷いことした。

私、さっちのこと、心配になって。

…………この人にさっちを取られないか心配になって……

怒って、髪留め投げて……さっち泣かせて…………

ごめんなさい!!」

 

「ううん……」

 

咲希は岩から降りて、百合の前に立った。

 

「わたしもごめんなさい!

百合ちゃんを仲間外れにするようなこと言っちゃって…………

いっぱいいっぱい心配してくれたのに、平気じゃないのに平気って言っちゃって……」

 

「ううん!!

さっちは悪くない!!

忘れてた私が悪いの!」

 

「違うの!

あのね! 明人が言ってた!

覚えたくても絶対に忘れちゃうんだって!

だから百合ちゃん悪くないもん!」

 

「ううん。

これ。ごめん」

 

百合は手を開き、咲希にヒマワリの髪留めを見せた。

 

咲希は、驚いた顔で髪留めを見詰め、手に取った。

 

「……ママの」

 

「……………髪留め投げちゃったし、さっちに痛いことした。

それなのに、悪くないなんて言わないで」

 

百合の真剣な言葉に、咲希はどう反応したらいいか分からず、口をもごつかせた。

 

「さっち。

こんな私だけど。また仲良くしてくれる?」

 

今度の言葉には、咲希の反応は迷わず1つだけだった。

 

「うん!!」

 

嬉しそうに笑顔で頷くと、百合に抱き着いた。

 

「大好きだよ!!

百合ちゃん!!」

 

百合は緊張がどっと解け、力が抜けそうになったが、それだと咲希を巻き込んでしまうので、なんとか耐えた。

 

その代わりなのか、百合はいつの間にか泣いていた。

 

「大好き…!!

大好きだよ…!! さっち!!」

 

咲希と百合はしばらく抱き合い続けた。

 

明人は、背中の痛みと格闘しながら微笑みながら見続けた。

 

(やっぱり。

この笑顔が一番かわいい。

……俺が守り続けてやらないとな)

 

 

 

「咲希ー!!

遅れてごめーん!!」

 

夕陽が沈みかける頃、花奈が迎えに来た。

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