直樹は衝撃的なことばかり起きて困惑し、頭が受け入れてくれない。
その内に花畑を灰色の世界に囲われてしまう。
脱出しようと直樹は三晴に連れられたが、大男の策略により、拐われてしまい手酷い攻撃を受けてしまう。
三晴に救出され、花畑に戻り、そこで能力のことや覚醒したての人がどういう末路を辿るかを聞かされる。
そんな中、突然大男が灰色の世界から飛び出し二人の首を抑えて、どこかへ連れ去ろうとしてきた。
三晴と直樹はジェットのように水平に飛ぶ大男に連れ込まれ、灰色の世界に入れられる。
「うッ…!」
背中に衝撃が走り、一瞬止まったかと思うと再度衝撃が加わり、更に奥へと進む。
その先は森だった。
先程の山の麓の森と違い、人の手が加えられていない。
ここら一帯は森を伐採してできたところで、麓の森は広場として管理されているが、ここは自然体のまま残されている。
フェンスで囲われ、立ち入り禁止になっているが、先程の衝撃はそのフェンスを突き破ったものだろう。
「グッ…!」
しばらくして大男は二人をそれぞれ木の幹に打ち付けた。
大男は腕を離すと、三晴は着地をするが間もなくバランスを崩して膝を付き、直樹は力なく地面に落ちる。
「がはっ……がほっ…!!」
三晴は諸に首にかかった衝撃に咳き込み、打ち付けられたときの勢いで頭が揺れ、目眩がした。
フェンスを破ったときに速度が落ちたとはいえ、自動車にも負けない速さで首を打ち付けられたのだ。
能力が覚醒したとき、体を包んだ光がクッションとなりなんとか一命を取り留めたが、当たり所が悪ければ死んでいただろう。
三晴は項を指先で触り、出血がないことを確認すると、衝撃で落とした刀を拾って構え、横目で直樹を見た。
(動いてない……。
大丈夫か……?)
直樹は地面に倒れたままピクリとも動かない。
しっかり見たわけではないが、出血をしてる様子はない。
だが、三晴とは違い前頚部にぶつかったため、衝撃は大きいだろう。
(生きててくれよ……。)
三晴はそう思いながら、大男を見ると絶句した。
(腕が………再生してる……!)
何事もなかったように太く逞しい腕がそこに付いていた。
切断したはずの腕が回復しているのだ。
三晴は長い間多くの敵と戦い、数々の型破りな能力を打ち破ってきた。
しかし、いくら型破りだったり応用が効いたりしても、能力は一人に付き一つが鉄則であり例外はない。
そのはずなのに、ワープの能力者が異常なほどの再生を果たしていた。
その不可解に三晴は一瞬---ほんの一瞬だけだが、恐怖してしまった。
その恐怖を大男は見逃さなかった。
「ウオラアアア!!!」
一瞬だけできた隙をつき、大男はドデカい拳を三晴に突き付けた。
「……! 光の…………ぐわあっ!!」
反応が遅れた三晴は技が間に合わず、拳を全身にくらってしまう。
打ち付けられた木を背に殴られ、突き破り、吹き飛ばされると5m離れた奥の木も貫通し、そこで地面に転がった。
「うっ……!!」
三晴は左手で刀身を掴んで、刀の頭を杖のようにしながら立ち上がろうとする。
それと同時に、拳を受ける前の自分の目を疑っていた。
迫る拳が、自分の背丈とほぼ同じ大きさに見えたからだ。
相手は筋肉質の大男とはいえ、拳の大きさが1mを超えることなんてありもしない。
三晴は相手の迫力に飲み込まれ、恐怖がそう見せたかと思ったが、事実、パンチの痛みは全身を響かせていた。
それに、思い返すと、体を握り締められたときも、掌の大きさが規格外に大きかった気がした。
今、自分が対峙しているバケモノは普通の人間と構造が違うことを三晴は把握している。
それでも、今まで戦った敵の、外見や体の見てくれのバランスは普通の人間と変わらなかった。
(なんだ………アイツの能力は………?
ワープだけじゃない………二つ目の能力があるっていうのか…………!)
「あのクソガキはまだネてるな!!!」
「………ッ!!」
大男の能力の正体を考えようとするが、その暇は与えてくれない。
大男は直樹が気絶していると見て、先に三晴を嬲ることを選んだ。
立ち上がれない三晴に、余裕そうにのそのそと近付いていく。
「……ニードルバスター!!」
三晴は右手に新しい刀を作り出し、飛ぶ斬撃を繰り出した。
しかし、大男は防御する姿勢を見せない。
「光の………」
三晴はギリギリでワープをして来るのだと思い、刀身のエネルギーを引き出し、急襲に備えた。
「やい………
斬撃が大男に届いたと思った瞬間、三晴は腕を振るった。
どこにいても、多少無理な姿勢でも、気配を感じ斬るだけ。
「え?」
だが、三晴は腕を止めた。
気配がどこにも感じない。
自身の体に大きな影を差すものもなく、近付いてくるときにでる強風もない。
(まさか……!)
三晴は真っ直ぐ前を向き直った。
(………!!)
三晴はその姿を見て驚いた。
大男は斬撃を避けていなかった。
露出した腹に深い切り傷をつくり、そこから黒い粒子が漏れている。
それでも大男は余裕そうな笑みを浮かべ、ゆっくり三晴の元へ歩いていた。
(避けない………だと…………!?)
三晴は大男の行動に混乱する。
今まで培ってきた戦闘による常識が、ことごとく崩されていた。
三晴の前に強風が吹いた。
「がはっ……!!」
腹全体に鈍い痛みを感じる。
(………!! しまっ)
大男が三晴の目の前まで急接近し、蹴りをいれたのだ。
衝撃で体が折り曲げられる。
あまりの一瞬の出来事で、混乱していた三晴は蹴り上げられるまで気が付かなかった。
「ぐわあッ!!」
サッカーボールのように転がされ、二本の木を貫通し、その奥の木の幹にぶつかり、止まった。
痛みに耐えながら目を開けると、大男がまたゆっくり迫ってくるのが見えた。
三晴は両手の刀を二刀流の形で構えようとしたが、左手の方は先程の攻撃で落としていたらしく手元になかった。
そのため、右手に持っていた刀を構え、左手は背中の木に支えた。
(変なことは考えるな………。
接近したら斬る………!!
それだけ……それだけだ!!)
三晴はそう自分に言い聞かせ、大男の接近を待った。
大男は口から粒子を漏らしながら、歪んだ笑みを向け三晴に迫る。
三晴が吹き飛ばされたときに折れた木を一つ、二つと跨いだとき。
強風と共に、三晴の目の前まで急接近した。
「光の!!」
三晴は今度は覚悟ができていた。
風を感じると同時に、左手で弾みを付け、体を起こし、刀を振ろうとした。
(………ッ!!)
しかし、急激な痛みが生じ、思わず身を屈めてしまう。
木を貫通したときに足に刺さった木片が筋肉の収縮でより深く刺さったのだ。
その瞬間、三晴の頭上を物凄いスピードでなにかが掠めた。
「ムッ…!?」
それは大男の拳だった。
予期せぬ動きだったが、躱すことに成功した。
「刃!!!」
三晴はこの機会を無駄にしないよう、刀を両手で持ち、声を荒げて大男の腕に振った。
大男は腕を引こうにも間に合わないだろう。
三晴の刀は大男の腕を切断した---筈だった。
「え………?」
腕に刀が届いたと思った瞬間、目の前から腕が消え、三晴は空を切っていた。
斬り付けることしか考えていなかった三晴は、バランスを崩し、地面に倒れそうになる。
ワープしたのかと思い、向き直すが大男はその場から動いていない。
それと同時にとんでもない光景が目に映った。
(なんだ………アレ………?
………腕…?)
大男の右腕がまるで空気を抜いた風船のように、小さく萎んでいた。
それと反比例するように、左腕が大きく膨張している。
(萎んで、膨らんで………
そういえば、コイツ………最初見たときより縮んでるような……………。)
三晴はなにか確信めいたものを感じたが、遅かった。
「ウオラアアアアアア!!!!」
大男は雄叫びをあげると、萎んでいた右腕を膨らまし、構えることができない無防備な三晴を1m大の拳で殴り付けた。
三晴は木々を破壊しながら、まるで弾丸のように飛ばされた。
200mくらいでようやく地面に落下して転がり、腹を木に強打するとそこで止まった。
意識が朦朧とし、目の前が真っ白に見える。
体も動かす事ができず、息も吸えない。
筋肉が痙攣し、その都度痛みを感じ、失われかけていた意識が戻る。
「はあ……………はあ……………はあ……………」
とても浅いが呼吸ができるようになり、視界もかろうじてだが見えるようになった。
体の至るところに木片が刺さり、ところどころから出血している。
木々を破壊し続けた背中は痛みで感覚がおかしくなっていた。
「うっ…! あ……がはっ!!」
衝撃により内臓が傷付けられ、口から血を吐き出す。
「はあ……………はあ……………いか………なきゃ…………」
いつ途切れてもおかしくない意識の中、それでも、三晴はずっと右手に握っていた刀を杖代わりにして立ち上がろうとした。
体を動かすごとにそこの筋肉が収縮して、木片が刺さり込む。
それでも三晴は、痛みを我慢し、立ち上がる。
(私が倒れれば……………もう………アイツの対象から外れれば…………
次は彼が狙われる…………!!)
フラフラと奥の方へ進んで行く。
その先は緩やかな斜面になっていた。
三晴は何度も転びそうになりながらも、地面に血を垂らし、進んで行く。
(行かなきゃ…………
アイツの能力は桁違いだ………。
彼に合わせれば……確実に………殺される…………。
教えるんだ………彼に……………アイツの……能力を………。)
三晴は手頃な木の枝を刀で斬ると、その断面を刀で削ぎ、鋭利にする。
(なんとなくだけど分かってきた……………アイツの能力。)
後ろから大きな物音が聞こえる。
大男が木を破壊しながら、自分を追っていると三晴は考えた。
そして、先が刃物のように尖りきった枝を見詰めると、刀を脇に挟み、右手で枝を持ち尖端を左腕へ水平に当てる。
これからやろうとすることを想像すると血の気が引き、心臓の鼓動が速くなる。
(今はとにかく………逃げるんだ…………
アイツを撒いて………時間を稼ぐ……………)
三晴は深呼吸すると、覚悟を決めた。
「……………うぅ……」
直樹が目を覚ました。
「いて……」
あたりを見渡そうとすると、首が鈍く痛む。
視線だけを動かし、おおかた森の中だと確認すると、疲れのためか視線を落としてしまう。
そのとき、ほんわかと光る球が足元で転がっているのが見えた。
(なんだろう………これ……)
直樹は少し気にする程度で留め、睡魔に抗えず寝そうになったが
「(…………!)
刀根さん…!!」
眠りに入る直前にその正体を思い出し、体を起こした。
それと同時に光の球の輝きが少しだけ増した。
(そうだ……。
乃々実のことを思い出してたら、首の後ろに何かが当たって、ここまで連れてこられたんだ………。)
直樹は立ち上がり、今度は体全体を動かして改めてあたりを見渡した。
(………! これは……!?)
右へ行ったところに、破壊された木が倒れていた。
更に右を見ると、大砲でも放してたように砕かれた木が何本も連なっている。
(……刀根さん……。)
これがどういうことを指すのか、直樹には分からなかった。
それでも、何か悪いことが起きたのではないかと直感していた。
「いた……………。
おきて…………たか………………」
背後から声が聞こえた。
「…………わっ……!
って、刀根さん!!」
驚きながら振り向くとそこに、三晴が木によりかかり刀を支えに立っていた。
衣服は土と血に塗れ、元の薄紫色が分からないくらいになっており、左の裾あたりが斜めに切れている。
呼吸も荒く、顔は蒼白、汗も大量に出ている。
「どうしたの!? 刀根さん…!! その姿…!?
顔も白いし」
「うるさい…………だまって
三晴は注意しようと身を乗り出した瞬間、バランスを崩し、転倒した。
「刀根さん……! 本当に大丈夫……!?
あいつは……!? 倒したの……!?」
「つれてけ…………」
心配する直樹の質問を無視し、三晴は刀を握ったままの右手で直樹の袖口を引っ張った。
「え………?」
「つれてけ……………!
あっちに…………フェンスが……ある……………
そこまで………つれてけ……………」
三晴の言葉は息が漏れ、声に覇気がなかった。
それでも、言葉に迷いがなく、決意めいたものを感じさせた。
「フェンスって………。
確かに、見たような気がするけど。
でも、」
「つれてけ…………
じかんが…………ない……………
アイツが………こないうちに……………はなれるぞ…………」
「刀根さん………」
直樹は三晴の言い方、そして破壊された木々から、三晴が大男にやられ、辛くも逃げてきたと察した。
直樹は訊きたいことを後にして、三晴を背負ってここから離れることにした。
背負う途中で、三晴の左腕に布切れが巻き付けられ、それが真っ赤に染まっていたことに気付き、動揺したが、そのことの言及も後にした。
直樹も大男にやられた傷が回復しきれておらず、体中が痛む。
それでも体に無理を言わせひたすらに走った。
「こばやしなおき………」
その途中、吐息に混ざった弱った三晴の声がした。
「なに?」
「はなばたけには………いくなよ…………
おまえの………ことだ………あそこで…………かいふく…………しようと…………かんがえてるだろ…………
でも…………だめだ…………………
デカブツは……………いま……………わたしたちを……………みうしなってる…………………
そのとき……………はじめに…………さがすのは……………はなばたけだ…………………
おまえに……………つたえることが…………ある………………
その……………じかんが……………ほしい………………
だから……………フェンスで……………とまれ……………」
「……………分かった」
三晴が言い終わった頃には、フェンスのところまで来ていた。
直樹はフェンスを超えると先へ進みたいのを我慢し、フェンスに三晴をよっかかる形で座らせた。
三晴はしばらく荒い呼吸を続けていたが、息を整えると視線を直樹に向けた。
「小林直樹……。
私は…デカブツのことを……見誤っていた……」
急に話し始める三晴を、直樹は止めようとしたが、いつ止まってもおかしくなさそうな呼吸の中、必死に何かを伝えようとする姿に、その気持ちは失せていた。
「デカブツの…能力……。
あれは…ワープでは…なかった……。
ヤツの…能力は…体を…作り変える…能力だ……」
「作り……変える……?」
「ああ…。
………まず…一つ言うと……アイツらは…人間じゃない……。
体が……闇の粒子で……できた…バケモノだ……。
デカブツは……その…粒子を…自在に…体から……体へ……一瞬で……移動……できる……。
だから……腕を…斬っても…再生するし……バカデカい手を……作り出せるんだ……。
ワープに……見えたのも……足に…粒子を…集めて…その脚力で…高速移動……したからだ……」
三晴はそこまで言うと、2回ほど深い呼吸をして息を整えると、体を直樹の方へ向き直り、光の球を指差すと話を続けた。
「アイツを…倒すには…中から…やるしかない…。
中に…闇の…粒子と…反発する…光の…力を…入れて…粒子の…移動を…阻止する……。
そのために………頼む…。
小林直樹……。力を……貸してくれ………!」
「え……?」
直樹は困惑した。
移動用としてこき使われたはずなのに何を今更と細かい事を思ったが、すぐに能力を持つものとして戦いに加わってほしいという意味に気付いた。
それと同時に、勝手に体が震えてきた。
そして、怒りも湧いてきていた。
花畑で自ら戦いに参加しないよう忠告し、大口を叩いていたにも関わらず、いざ自分がピンチになると意見を変えて助けを求める。
そんな、可愛げのない、変わり者な、ただ小学校6年間ずっと同じクラスなだけの少女に。
「刀根さんは………俺に、死ねって言うの?」
生きるため、散々理不尽なことがあっても、戦いに慣れている三晴に従い続けた。
しかし、その三晴がボロボロの姿で、逆に助けを求めている。
「刀根さんでも勝てない相手に、俺が勝てるはずない!
その姿じゃ、刀根さん動けないでしょ!?
力貸したところで、刀根さん動けないんじゃ、俺が戦うしかないじゃん!!」
言葉を発するたび、徐々に光の球の輝きが失われていく。
信頼が崩れ、不安に変わる。
その不安が怒りとして現れ、気付けば三晴に当たっていた。
三晴は表情を変えない。
さも当然かのように、直樹を見続けている。
「俺はただ、乃々実のために早く帰りたいだけなんだ!
それなのに、巻き込まないでよ!
強いならしっかり勝っててよ!!」
「……………わかった」
三晴はそう言うと、ゆっくり立ち上がり、直樹に背を向けた。
「すまなかった。
身勝手なことを言ったな」
三晴の声は落ち着いていて冷静だった。
後ろ姿も、肩で息をしているが、萎縮している様子はない。
まるで、非難をすでに覚悟していたかのようだった。
「…………刀根さん……」
そんな姿を見て、直樹の怒りは収まっていた。
そして、三晴のボロボロな体を見て、怒るべき相手を間違っていたことに気付く。
「あの………ごめ」
直樹が謝ろうとした瞬間、顔の両面を赤くブニブニした柔らかいものが、赤い液体を垂らしながら通過した。
「お前が運んでくれたおかげで、少し回復できた。
帰るんだろ?早く逃げろ」
三晴は赤く濡れた刀を顔の前に構え、背中を向けたまま、直樹に告げる。
直樹は三晴の奥を見ると、背筋が凍った。
「チャンバラムスメ……こんなんでオレサマをアザムいて……。カワイいことしてくれるじゃねえの?」
大男がそこに立っていた。
50mくらい先、フェンスを破壊し、口と、左右非対称な強靭な腕の先から粒子を漏らし、殺気立つ様子で立っていた。
「お前ら、鼻が利くからな。
血のニオイで辿るって思ってたよ」
三晴は刀の血を指で拭うと、弱った様子を一切見せず、毅然とした態度で大男に言った。
「フハハハハハハ!!!
そこまでしてイきたいのか!!
いいよ!! ゾクゾクする!!
おマエはカオやシグサにダしてくれないもんなーあ!!」
「勘違いするな。
私は生死に拘らない。勝つためにやっただけだ」
「サスガ……かのヒカリのセンシのイモウトってわけだ。
オオモノだね」
大男は皮肉のように言うと、一瞬で足に粒子を集め肥大化させ、一瞬で三晴の真横に移動した。
「ウオラアアア!!」
「光の刃!!」
大男は右の拳を50cmくらいに肥大化させ、直樹へ突き出していた。
三晴は刀をバットで球を捉えるように左から振るい、拳を防ぐが、体の真横なため力が入りづらい。
それに無数に刺さる木片が、踏ん張るごとに刺激され、痛みが邪魔をする。
「うわ!」
直樹は奇襲に怯え、腰が抜けて尻餅をついてしまう。
「やっぱりそうキたか!!
そこがおマエらヒカリのニンゲンのヨワミなんだよ!!
コイツへのコウゲキをカバわなければ、そのカタナはオレサマをキりコロしてただろうな!!!」
「そう言えるって事は……予測できてたんだろ…?
なら、なにか対策はしてるんだろ…?
術中にはまるほど、焦ってねえよ…。
それに、私は……確実に勝てる選択を取っただけだ」
三晴はそう言うと、直樹に一瞬、目配せをした。
「私は負けねえよ……!
一度戦いが始まれば、どっちかが死ぬまで終わらない…!!
最後に勝つのは、生を望んだ者でも、死に恐怖しなかった者でもない…!
生死を意識することなく、希望に溢れ、生きていることが当たり前だと思うやつだ…!!!」
(希望に溢れ、生きていることが当たり前……。)
直樹は三晴の言葉に思わず、光の球を見ていた。
光の球は薄く輝いていた。
そしてその輝きは徐々に徐々に増してきている。
(俺の……能力……。
………そうか、刀根さんは死ぬのが怖くないって言っていた。刀根さんは自分が死ぬなんて思ってない。
どんなことをしても、どう思われても、必ず生きるって思ってる……。
だから強いんだ……!)
光の球はより強くよりきらびやかに輝く。
その光は生命の輝き。
希望に溢れ、生きていることの象徴。
(……理解しちゃったか。)
三晴は後ろに感じる強い輝きにうっすら笑みを浮かべた。
(すまないな。)
「ナニカタってんだ!!!
シぬのはおマエだ!!! チャンバラムスメ!!!
ハッタリなワラいをヤめてゼツボウしろ!!!
シをサトり、オレサマへのサイコウのショクザイをミセやがれえええええ!!!!!」
大男は直樹の様子に構うことなく、拳を肥大化し続け、勢いを増していく。
興奮し、漏れ出る粒子の量が多くなり、体はどんどん小さくなる。
「くっ…………うぅ………!!」
踏ん張り続けたことで血圧が上がり、三晴の様々なところから血が再度流れはじめる。
中でも左腕の出血が酷く、刀から手を放して垂らしてしまう。
拳の勢いを抑えるのもそろそろ限界だ。
「さあ!! そろそろだ!!!
どれ!! ゼツボウしろ!! ナけ!! ワメけ!! サケべ!!!
イノチゴいしろおおおおおおお!!!!!」
大男は勝利を確信し、高らかに笑った。
そして、この生意気な少女はどんな顔をして死んでいくか想像し、愉悦に浸る。
だからなのだろう
「スラッシュ!」
背後から飛んでくる光り輝く刀に気が付かなかったのは。
輝く刀は直樹の叫びと共に、その輝きを増し、大男の右腕を肩のところで切断した。
切断部からは闇の粒子が大量に漏れ出し、切り落とされた右腕は、粒子が集まり、80cmだいのラグビーボールのようになっていた。
光る刀は空中を浮遊し、切断部が閉じる前に中に潜り込む。
「……………!!?
ぐおわあああああああああああああ!!!!!
なんだあああ!!! お………おお………オレサマのォォ……!!
オレサマのウデがああああああ!!!!!!」
大男はまた耳を劈く大声を上げて叫び始めた。
その間に直樹は、バランスを崩して倒れていた三晴の元へ駆け寄り、手を差し伸べた。
三晴は少し躊躇したが、直樹の手を握り、立ち上がる。
そして、右手の刀を大男へ構えると、左手で直樹に待つように指示した。
直樹は頷き、じっくりと大男の様子を伺う。
「フハハ…………フハハハハハハ!!!
クソガキ……ヨクヤッテクレタジャネエカ!!!」
大男の叫びが笑い声に変わり、それが怒鳴り声になった瞬間、三晴は直樹に指でOKマークを作り、大男へ走り出した。
「(中から攻撃、闇の粒子と……反発する光の力!!)
オーバーシャイニング!!」
直樹は無意識に叫ぶと、大男の体の中心から光が溢れる。
「ナンダ……!!?」
光はどんどん膨張を続け、体幹部を覆ってしまった。
「クソガキ!!! テメエノシワザカ!!!!!
コンナコトシテナニニナル!!!!」
「分かんねえなら教えてやるよ」
声を荒げる大男に、三晴が答えた。
「お前は体の闇を自在に移動できるんだろ?
でもそれは物凄いスピードだとしても、繋がってなきゃいけない。
だから遮断したんだ」
「ナニイッテンダ!!
……………!? ナンダ!! カラダガ!!!?」
「ようやく気付いたのか。
お前の体を、彼の光で分断させた。
頭と両手両足とに。
それでだ、闇の人間には“核”があるよな。
核の存在で、闇の粒子は自在に動ける。
じゃあ核を叩けばどうなると思う?」
三晴の質問に大男ははっとした。
そしてその答えを悟ったとき、自分が見たかったものそのものになっていた。
「そう、お前は消える。
感じるか? それがお前が大好きな死への絶望だ」
「グッ………!!
ダガアマイ!!! オレサマハソノ“カク”サエモウゴカセル!!!
ドコニアルトオモウ……!! ウデニアッテトツゼンナグルカモシレナイゼ!!!」
「お前、今喋ってるよな?」
「………?
……………!!」
大男は再びはっとし、更に絶望に“顔”を歪ませた。
「そう喋ってる。
核があるところだけ動かせるんだからな。
お前の核は」
三晴は足を踏み切り、思い切りジャンプした。
「ヤメロ………ヤメロオオオオオ!!!!」
「刀根さん!! いけええええ!!!」
「そこだッ!
輝きの……白刃!!」
直樹の声援を受けた三晴は大きく叫び、刀身がより強く輝く。
そのまま刀は大男の顔面を穿いた。
そして、腕を振り、斬り裂くと大男の体は黒い粒子となって、崩れ去る。
少し薄暗くなった光の球が直樹の元へ戻って行き、大男がいた場所には、一部が欠けた黒い双角錐の結晶だけが残った。
「やった…………やったあ!!」
直樹は大男を倒した喜びに浸り、ガッツポーズを決めた。
それに呼応するように、光の球も明るさを取り戻していた。
「ふんっ!!」
三晴は双角錐の結晶を刀の柄で破壊した。
すると、あたり一帯が明るくなっていった。
(なんとか……この場所も戻せたな………。
………結局、彼を巻き込んでしまった……。
このまま、積極的にならなければいいが………。
でもまあ、今回は彼の協力で勝てた…………。
ありがとう……と心の中で……言っておく……か………。)
三晴は、光の球を嬉しそうに見詰める直樹を横目で見ながらそう思うと、右手から刀が離れ、気を失って倒れてしまった。
「……刀根さん?
刀根さん!! 大丈夫!?
刀根さん!!!」
直樹は急いで三晴に駆け寄り、体を揺さぶる。
「刀根さん!
死なないでね!! 今、花畑に連れていくからね!!」
反応はなかったが、まだ息があるため、急いで三晴をおんぶし、直樹は花畑へと走った。