ハートジャスティス   作:ココリンク

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9話 刀と爆弾の戦い

「そろそろいいだろう。

お前は先にさっきの部屋に戻ってろ」

 

あれからしばらくして、三晴は机の上の時計を見ると、直樹にそう言った。

 

「うん」

 

直樹は急に緊張しはじめた。

 

いままでただなんとなく恐いと思っていたバケモノ達が、闇の世界から来た侵略者で何人もの自分と同じ能力者を斃してきたと知り、自分もそうなるのではないかと思い始めていた。

 

直樹は立ち上がり、部屋から出る。

 

三晴もすぐに出るかと思い、振り返って待ったが、三晴は椅子から立ち上がらずドアを閉めろと手振りで指示をした。

 

直樹は頷き、ドアを閉め、丸椅子に座ると奥の部屋からまた優しい口調の落ち着いた声が聞こえた。

 

 

 

「待たせたな」

 

2分くらいして三晴は奥の部屋から出てきた。

 

ルミナスポイントで体の損傷はだいぶ治り、即席の包帯は取ってあり、肘や指などを曲げて回復度合いを確認しながら歩き、テーブルに手を置き寄りかかる。

 

「お前。どうしたい?」

 

「どうって…?」

 

主語のない質問に直樹は聞き返すと、三晴は一瞬だけ奥の部屋を見て、直樹に向き直る。

 

「あの爆弾の男と戦うか?

それともここで待ってるか?」

 

「え………」

 

突然委ねられた選択に、直樹はすぐに答えられない。

 

あれだけ説明をされ、一緒に戦いに行くものと考えていたが、まだ覚悟ができていない直樹は戦わない選択肢があるならそっちを取りたかった。

 

しかし、家族がずっと閉じ込められているのを思うと早く助けるために何かしたい気持ちもあり、すぐに“待ってる”とは答えられなかった。

 

「私はどちらでも構わない。

悩むくらいなら命を危険に晒してまで行くことはない」

 

すぐに答えを出さない直樹に三晴はそう言い捨てると、入口まで歩いて行った。

 

直樹は答えがでるまで待ってもらおうと手を伸ばしたが、呼び掛ける言葉も見付からなかった。

 

三晴が入口の扉に手を掛けると

 

「だが……」

 

と呟き直樹に視線を送る。

 

「少しでも戦う気があるのなら来い。

気が変わったと言って作戦もなしに乱入され、足を引っ張られるのはごめんだ」

 

「戦う気……」

 

そう言われると、直樹はそんな気はあるのかないのか分からなかった。

 

三晴の話を聞いても、恐い、戦いたくないという感想しか出ない。

 

でも、ここで何もしないとなるとなにか大事なものを失いそうな気がしていた。

 

「俺は……分からない。

戦いたくない。でも、何かしていないと気持ちがぞわぞわしてじっとしていられなくなるような気がする…!」

 

「そうか」

 

直樹の訴えを聞き、三晴はドアから手を離し、向かい合わせになるように椅子へ座った。

 

「なら来い。

だがその前に、お前の能力について確認したい。

光の球を出せ」

 

「うん」

 

直樹は言われる通り、光の球を傍らに出す。

 

その輝きはいつもより控えめだった。

 

「お前の能力はその球をいろんな形にでき、その機能までも再現できる。

考え方次第でなんでもできる能力だ」

 

「うん。

……でも、さっき家の前で双眼鏡にしたけど大きく見えなかったよ」

 

「そうか。

再現するにはなにかが必要なんだろうな。

……もう一度、その双眼鏡にできるか?」

 

「うん。やってみる」

 

そう言うと直樹は光の球を双眼鏡の形に変え、覗き見た。

 

しかしやはりガラス越しに景色が見えているようなだけで、拡大はされなかった。

 

「やっぱりだめか……」

 

「貸せ」

 

直樹が落胆している間に、三晴は無理矢理掠め取る。

 

そして覗くがやはり拡大はされていなかった。

 

「ちょっ……刀根さん。

痛い」

 

「ん? ああ。

そういえば、お前の能力と体……殆ど一心同体なんだな。

浮かせて飛ばせるから便利かと思ったが、結局接近してるのと変わらないのか。

………でだ。

お前、双眼鏡の仕組みって分かってんのか?」

 

三晴は双眼鏡を軽く握りながら、平らなレンズを突きながら訊く。

 

「仕組み?

あー……なんだっけ……?

学校で習ったような……習ってないような……」

 

「多分それだろ」

 

「それ?」

 

「ああ。

恐らく、再現するには見た目だけじゃなく、その仕組みもまた再現しなくちゃいけないんだろ。

さっきのカーペットとか刃物みたいにヒラヒラしてるとか刃がついてて尖ってるとかなんとなくのイメージでできるのもあれば、こういうややこしい感じのものはよく知っておかないと駄目なんだろ」

 

「えー……。

そっか………

あっ…! でも、なんだっけ……最初のとき銃を撃つことができたよ。

俺、銃の仕組みとか分かってないのに」

 

「完全再現しなくても似たようなもので代用したんだろ。

お前、自己紹介カードとかでものづくりが好きって書いてただろ?

なんか発射する装置とかそういうの作ったのか?」

 

「なにかを発射………

……あー。

言われてみれば…」

 

直樹は最近作った鉛筆型水鉄砲が空気鉄砲の原理を利用していたことを思い出し、変に納得していた。

 

「まあいい。

話が逸れた。

とにかく今のお前の知識じゃ、できることはそう多くはないだろ。

というかお前、なぜ刀で挑んだ?

どこで情報仕入れてるのかは分からねえが、アイツらは私達のことを熟知してから来るんだぞ。

それなのに私と似たようなことしてどうする」

 

「う……ごめん。

でも、どう戦っていいかよく分からなくて……気付いたら………」

 

「はあ…。

ま、素人だもんな。仕方ないか。

今回の敵はいつも以上に私達のことを調べてる。

馬鹿正直に真っ向から行ってもやられるだけだ。

だから少し、工夫をしたい」

 

「工夫?」

 

「ああ」

 

三晴はいつもの形に戻っていた光の球を直樹に投げ渡した。

 

「コイツを使う」

 

 

 

 

 

二人は秘密基地を出ると、左手に刀を持った三晴の誘導の元、歩き始めた。

 

草を掻き分け、坂を降りる。

 

「小林直樹」

 

その中、直樹の不安を感じ取った三晴は真っ直ぐ進む方向を見たまま話し掛ける。

 

「もし、事態が最悪になり死を悟ったなら、能力を解除して逃げろ」

 

直樹は三晴を見たままなにも言えない。

 

いきなりそんなことを言われ、不安になったが、その不安が言葉にはできなかったのだ。

 

「………そんなことにはならないだろうが、念のためだ。

……私は勝つためにお前を連れてきた。

その方が勝てると思った。

だが、アイツを倒しても死者を出せば、私達の負けだ」

 

(………刀根さん…。)

 

直樹も三晴の手が震えているのを感じた。

 

しかしそれが、どの感情から出ているのかは分からなかった。

 

「私はお前に矛盾だらけの事を言っている。

だから私のことを信用しなくても構わない。

だが、これだけは守れ」

 

三晴は立ち止まり、ようやく直樹の方へ振り返り、目を合わせた。

 

直樹もつられて立ち止まり、真剣な表情になっていた。

 

「絶対に死ぬな」

 

三晴は刀を強く握りながらそう言うと、また前を向き歩き始めた。

 

「……うん」

 

直樹は力強く頷くと三晴を追い掛けた。

 

 

 

そして、坂を下りきったとき三晴は異変に気付いた。

 

「小林直樹」

 

左手に持っていた刀を右手に持ち替え、あたりを警戒する。

 

「注意しろ。

もうここは灰色の世界だ」

 

「……え。

あ、わかった…!」

 

元々薄暗く鬱蒼とした森なため、三晴もすぐには気付けなかったが、すでに二人は灰色の世界に入っていた。

 

三晴は刀を構え、直樹は地面に着いた足跡を辿るように5歩くらい後ろに下がり身構える。

 

数秒し、攻撃が来ないと分かると、三晴は別の構えを取り体を捻る。

 

「ニードル……サイクロン!」

 

三晴は刀の光パワーを軽く引き出し、回転することでできた鎌鼬を四方八方へ無尽蔵へ飛ばした。

 

様子見で威力は控えめなため、森の木々へは切り込みが入るのとなく、当たっただけで消失する。

 

結果としては動きも音もない。

 

三晴は直樹を見詰め、直樹は残念そうに首を横に振った。

 

「だめか。

ダミーだったのか…?

小林直樹。お前は動くなよ」

 

「うん」

 

三晴は灰色の世界が薄いことから、疑心暗鬼にさせ、体力と集中力を削るために作ったものかと思った。

 

しかし、直樹の家の前でニードルサイクロンの威嚇が効かなかったことを思い出し、本当はここにいるのではないかと思い、動くことができなかった。

 

それに、不用意に歩くと、敵の能力の地雷を踏むリスクもある。

 

三晴は足元、そして周りの地面を確認する。

 

(いくら能力でも、アイツが作る爆弾は“実体”だ……。

実体なら、なにか不自然な点が出るはず………。

なにかないのか………。)

 

三晴は細かく地面を観察するがおかしなところは出てこない。

 

(どうしたら……)

 

「刀根さん!」

 

そんな中、直樹が何かに気づき、坂を降りきったあとの左側──ロープの方向へと指を差した。

 

「あそこらへんから、何か変じゃない?」

 

(あそこ……?)

 

三晴は直樹が指差す方向を注視するが、なにもおかしなところはない。

 

(……らへん。

………!?)

 

しかし、直樹の言い方が気になり、細かくではなく大雑把に見たとき、三晴もそれに気付いた。

 

ロープの近くから、キレイに区切られているようにほんの少しだけ地面が全体的に盛り上がっていた。

 

言われなくては分からないほどの変化で、俯瞰し比較しなくては、差異のないようなものだった。

 

三晴はまた左手に刀を持ち替え、左手の親指で刀に丸をなぞると、地面に落ちていた枝を右手で拾い上げた。

 

「小林直樹。そこの木は大丈夫だ。

捕まってろ」

 

三晴は直樹の真隣にある木を、枝で指しながら言うと、枝を盛り上がっているエリアへ投げた。

 

投げつけられた枝は地面へと落ち、その衝撃で少し跳ねたと同時に、そこの地面から爆発が起こった。

 

すると、その隣の地面も誘爆し、爆発が連鎖していく。

 

「くっ……!!」

 

直樹は木へしがみつくも、今にも吹き飛ばされそうだ。

 

三晴は刀ごと左手を後ろに回すと、右手に刀を新しく生成し、その刀の光パワーを引き出す。

 

「光の……」

 

そして刀を目の前で扇状に振り、残像を残すように光の粒子を撒くとその中央に刀を戻す。

 

「残像」

 

すると、光の粒子は再び固形化し、刀は扇のようになり、爆風の勢いを軽減させる。

 

爆風が収まりかけたとき、爆発により撒き散らされた闇の粒子の上から、何かが飛んでくるのが見えた。

 

(あれは…!!)

 

それは光の世界を灰色の世界に変えるのに用いる、太極図が浮かび上がる黒い珠--カオスベースだった。

 

三晴はその方向と勢いでどこからか飛ばされたか予測し、崩れかかった扇状の光を振り払い、ニードルバスターの構えをした。

 

「刀根さん!」

 

そのとき、直樹が呼ぶ声がしたと思うと、背中を突つかれた感じがした。

 

(なんだ…こんな時に…!?)

 

三晴は刀身の光パワーを引き出しながらも、直樹を横目で見ると、直樹が必死な顔で三晴の後ろ方向を指差していた。

 

(ん…?

なっ…!?)

 

すると、背後からざっと十人くらいのアバタが襲ってきたのが見えた。

 

(こっちが先か……!)

 

三晴は体を半回転させ、両手の刀を構え、左手の刀の光パワーも引き出す。

 

「ニードル……バスター!!!」

 

そして、両方の刀で大きく宙を斬り裂き、斬撃をアバタの大群に飛ばす。

 

それと同時に、右手に持っていた刀は光パワーを出し切り、形を保てなくなり霧散してしまった。

 

『……ーーーーー…!!』

 

固まっていたことによりこの一撃で、アバタは全員倒れ、粒子となって霧散する。

 

しかし、カオスベースは三晴の真上で破裂し、灰色の世界の粒子濃度を高め、更にはそれがどこから放たれたか分からなくなってしまった。

 

三晴はまた左手の刀を持ち替えて構え、あたりを警戒しはじめた。

 

だが、またしても敵は動きを見せない。

 

気配も感じさせず、その場でじっと待機し機会を伺っている。

 

(このまま持久戦にするのか…?

私は構わないが…彼は……。)

 

三晴は直樹の緊張を感じていた。

 

光パワーは光の戦士の状態に左右される。

 

特に、常に光パワーを光の球に送る直樹の能力の特徴は、その影響を諸に受ける。

 

不安や緊張は光パワーの安定を妨げる。

 

そうすれば、せっかく立てた作戦の成功率が下がってしまうだろう。

 

(彼は……いつ襲ってくるのか分からない緊張と不安で心が乱れてる……。

本来なら、急ぐことはないだろうが……勝つためだ。

勝負に出よう)

 

三晴はまた刀を持ち替え、一瞬強く握ると、右手にいつもより半分短い刀を生成した。

 

直樹も気を引き締める。

 

「あの黒い珠を使ったってことは、ここで勝負を着けるつもりか!!」

 

三晴は森中に響き渡るような声で、挑発するように叫んだ。

 

「どこまで灰色の世界を広げるつもりだ!!

あんな広範囲にして、流儀でも変えたのか!!」

 

『……いいえ』

 

「……ッ!

ニードルバスター!」

 

右側からカサッと音がし、ボムズの声がしたと思った瞬間、三晴は咄嗟に右手の刀でニードルバスターを放った。

 

『違いますよ。』

 

「なっ…!?」 「え…!?」

 

しかし、そこに立っていたのはアバタだった。

 

斬撃はアバタに当たると、爆発した。

 

「くっ……!!」

「うぅ……!」

 

二人は爆発に吹き飛ばされないよう、踏ん張りながら信じられないような目で、爆発地点を見詰めた。

 

(危ねえ……こっちのでやってたら………)

 

三晴は肝が冷えそうになりながら、左手に持つ刀を見ながらそう思うと、右手の刀を構えた。

 

(……なんだったんだ……。

今の……?)

 

三晴は爆発地点の近くにいると思い、爆弾を投擲するために顔を覗かせるのを待つ。

 

しかし

 

『街を囲ったのは』

 

「………ッ!?」 「え………」

 

今度はさっき大量のアバタが現れた方から声が聞こえた。

 

三晴は粒子体の爆発の最中に移動したのかと思い、ニードルバスターの構えを取ると

 

「貴女達をおびき寄せるためですよ」

 

「なッ………!?」

 

今度はロープの方向から声が聞こえた。

 

「どうなってるの?」

 

直樹も困惑し、声がした方を交互に見続ける。

 

『あれは核がいらない』

 

「私の能力によるものです」

 

声は、二人を挟むように交互に聞こえる。

 

まるで、一文ごとに瞬間移動しているかのように。

 

(なんだ……アイツの能力…!?

爆弾を生み出すことじゃないのか…?

昨日のデカブツみたいに、能力の応用で爆風の勢いで瞬間移動するにしても、まったくその気配がない…!

それに、惑わすためだけで、こんな体力消耗が激しいような事を普通するか…!?)

 

『だいぶ粒子を使いますが』

 

「コツコツ溜めてて正解でした」

 

ボムズは二人の光の戦士の様子など関係なく話していく。

 

まるで困っている様子を楽しみ、弄んでいるように。

 

『あそこは今頃』

 

「もう戻ってる頃でしょう」

 

『あれは私の能力のもので』

 

「闇の世界にするだけのパワーはありませんからね」

 

『今放ったカオスベースこそ』

 

「私の核を用いて使った」

 

「『……初めての灰色の世界ですからね!!」』

 

「なっ…!」「え!?」

 

二人は驚く。

 

言葉の内容は関係ない。

 

最後の言葉は声がする2箇所から同時に発せられていた。

 

(やっぱり瞬間移動じゃない……!!

だとしたらいったい……!?)

 

三晴は訳が分からなくなる。

 

その動揺は直樹にも伝わり、頼りにしている人の困惑する姿を見て、直樹は更に不安になる。

 

二人は完全に精神を乱されてしまっていた。

 

『………それでは』

 

「そろそろやりましょうか」

 

「………ッ!?」

 

三晴はロープ側の方に誰かがこっち側に向かってくる気配を感じた。

 

咄嗟にニードルバスターの構えを取るが、迷いが生じて撃つことができない。

 

感じる気配がボムズ本人かもしれないし、さっきのようにアバタの身代わりかもしれない。

 

もし身代わりだとすると、また爆発が起こり、爆風に怯んだ隙に、ビッグボムで仕留められると考えたからだ。

 

しかし、このまま何もしないのも相手に打つ手なしと伝えるようなもので、勝利を確信した敵に、確実に仕留められる間合いへと入られてしまう。

 

「はぁ………はぁ………」

 

緊張で吐息が漏れる。

 

(どうする……何かしたら隙ができて負ける。

何もしなくても相手のペースに乗せられて負ける。

………ん…?)

 

三晴が打開策を考えているとき、左手の刀が震えているのを感じた。

 

そして、直樹の方を見ると彼は不安そうにあたりを見てキョロキョロしている。

 

(小林直樹……お前、もっとしゃんとしろよ。隙を見せ過ぎだ。

ったく……もう離れることはねえか………)

 

三晴は直樹の様子を見て、少し呆れた表情をすると

 

「小林直樹。

私のそばへ来い」

 

と小さく手招きした。

 

「え……? でも……」

 

「いいから! 来いっつったら来い!!」

 

「あっ…はい!」

 

直樹は言われる通り、三晴のそばへ来る。

 

三晴は“落ち着け”と直樹の体を軽く叩くと、今度は落ち着いた様子で打開策を考え始めた。

 

(そうだ。私が焦ってどうする。

そういえば、最初に声がした方……あれから声がしないな……。

だとすると……。)

 

三晴は何かに気付くと小さな声で直樹に囁く。

 

「小林直樹。

作戦を決行する」

 

「え…!?

でも、どこにいるのか分かるの? 声が2つ聞こえるし」

 

「そんなの関係ない。

どっちかはマイクみたいなの使ってんだろ」

 

「マイク?」

 

「ああ。どっちかが本物で、どっちかはアイツの声をマイクでひろってそれを流してんだろ。

そうすれば辻褄が合う」

 

「え……でもどうやって?」

 

「それは知らん。

だがもうこれ以上考えても仕方ない。

死にたくなきゃ、私の勘を信じろ」

 

「えー……」

 

根拠のない自信に直樹は呆れた様子を見せるが、不安や緊張は収まっていた。

 

「固まってくれてありがたいですね」

 

『観念しましたか?』

 

「そんなことあるかよ!」

 

三晴は森の奥の方へ向き挑発するように叫ぶと、右手の刀を構えた。

 

「いいか。お前は作戦通りやればいい。

後は私に任せろ」

 

「……うん。

信じてる」

 

「ふっ……

はぁーーふぅーーー。

(あっちの方の声は移動してない)」

 

三晴は静かに笑うと、深呼吸をし、狙いを定めた。

 

「そこだ!

ニードルバスター!!」

 

掛け声と共に斬撃を放ち、声の主が隠れているであろう木を切断し、その先にいる---アバタを切り裂いた。

 

「…ーー…!」

 

同時に、アバタの体内に入れられた爆弾が爆発する。

 

そしてその爆風に耐えるため、二人に隙ができてしまった。

 

「ふはは! 残念!!

私はこっちですよ!!

どこを狙っているのです!!

それでは……さようなら」

 

ボムズは勝ち誇ったように笑い、最後に急に冷徹な声を出すと、二人の周りにいたアバタたちが爆弾を持って顔を出し、一斉に投擲した。

 

「刀根さ

 

「しゃがんでろ!!」

 

「うん!」

 

三晴は右手の刀を構えながら体を捻る。

 

直樹は邪魔にならないよう、身を屈めた。

 

「ニードルサイクロン!!!」

 

三晴は回転し、全方位へ空気の刃を発射。

 

自分たちのもとへ届く前に、全ての爆弾を破壊した。

 

『ーー……』

 

しかし、凄まじい爆風と爆音が鳴り響き、外からの情報をシャットアウトさせてしまう。

 

かろうじて、アバタ複数人の断末魔が聞こえるが、高笑いしたボムズの居場所は分からなくなっていた。

 

「光の…刃!!!!」

 

三晴は一回転しながら光の刃を放ち、その衝撃で刀身から溢れた光の粒子は闇の粒子を打ち消した。

 

この一撃で、2本目の刀も霧散してしまう。

 

「………おや」

 

粒子が晴れると、今まで隠れていたボムズが、堂々と近付いていたのが見えた。

 

しかし、ボムズは慌てて隠れるようなことはせず、ビッグボムを作り出し、二人の様子を見ていた。

 

「あの猛攻を乗り切るとは。

ですか、あなたの刀は後この1本。

情報によると、あなたは一度の戦いで生み出せるのは3本で限界だった筈ですね。

その刀もかなり力を使って、もうだめなのでは?」

 

ボムズは余裕そうに言う。

 

不利な状況を説明し、絶望させようとしてるのだ。

 

「そうか?

丸裸になった敵にはこれくらいがお誂向きだ」

 

三晴も余裕そうに挑発で答える。

 

相手が情報を持って戦うタイプなため、怒らせて判断力を鈍くさせようとしている。

 

「無駄です。

貴女方は私に勝てません」

 

「ああ。その言葉、昨日のデカブツも言ってたな。

あっさり負けたけどな」

 

この言葉にボムズの顔色が変わる。

 

一瞬、掌から粒子が漏れ、それを抑えようと掌を強く握ろうとした瞬間

 

「ッ…!?」

 

持っていたビッグボムが握力により起爆し、爆発した。

 

それを見て、三晴は刀を右手に持ち、強く握って光パワーを引き出す。

 

「行くぞ! 小林直樹!!」

 

「え…!? 今!?」

 

「ああ! そのまままっすぐだ!!」

 

三晴はそう言いながら、刀をボムズへと投げた。

 

そして、それを追い掛けるように三晴も走り、右手に力を入れ、胸が輝き出す。

 

「くっ!! 小賢しい!!」

 

ボムズは怒号を上げながら粒子を振り払う。

 

そして、目の前に飛んでくる刀を見て、爆弾を生成すると嘲笑した。

 

「ふはは! 血迷いましたか!!

このくらいガードは簡単」

 

「ガン!!

ショット!!!」

 

直樹はが叫ぶと、刀は簡単な空気鉄砲の形に変化し、すぐさま先端が発射される。

 

「……ッ!? なっ!!?」

 

ボムズは思わぬ変化と加速に対応できず、弾を胸にくらう。

 

弾は貫通せず、体の表面で衝突したため、核周りの爆弾は起爆しない。

 

しかし、その勢いは十分にあり、ボムズは後ろに押し倒されてしまう。

 

その間にボムズは思う。

 

今までなぜ、少年の光の球が観えなかったのか、なぜ少女はあんな頻繁に刀を持ち替えたのか。

 

それは最初に持っていた刀が、少年の光の球によって作り出されたものだったから。

 

そして、侵略前に見たデータでは少女は刀の光パワーを引き出すのはどちらの手でもできるが、生成は右手でしか出来ない。

 

少年の能力の刀で遠距離攻撃をしても、体の一部を感覚を持ったまま飛ばしたと同じなため、安全な少女自身の刀を使ったり、生成したりできるよう、持ち替えていた。

 

そして、刀の1本が少年の能力によるものだとしたら、さっきの戦いで使用した刀は合計で2本。

 

そこから考えられるのは

 

「…………ッ!? ばかな…!?」

 

あと1本余裕があるのだ。

 

倒れていく景色の中、ボムズが見たのは、木の枝の上に光り輝く刀をニードルバスターの構えで立つ少女の姿だった。

 

接近されるものだと思い、周囲の足元に地雷を、核の近くに爆弾を仕込んでいたが、遠距離技では意味がない。

 

「やめろ……」

 

「燦:」

 

三晴は刀すべての光パワーを引き出し、刀身へ乗せる。

 

「ニードル」

 

「やめろおおおおおお!!!」

 

狙いを定め 

 

「バスター!!!!!」

 

振払おうとした瞬間、強力な光パワーを留めておくことができず、刀身から抜け落ちるように光の斬撃が飛ぶ。

 

だが、それも三晴は想定内。

 

威力も十分あり、方向もボムズの核へ向かっている。

 

「行けえええ!!!」

 

直樹はこれから起こるであろう大爆発に巻き込まれないよう、能力を解除して木の裏に隠れて声援を送った。

 

「ぬあああああああ!!!!!」

 

ボムズはビッグボムを生成し、翳すことで抵抗するが、すぐに真っ二つに斬り付けられ、斬撃は体に到達。

 

周囲を守る爆弾ごと核を斬り裂き、貫通した先の地面にも深い溝を作った。

 

二人は爆弾を斬り裂いたことにより、大爆発が起こると思い身構えたが、核が破壊されたことにより、ボムズの体ごと霧散し、何も起こらなかった。

 

「………あれ?」

 

「拍子抜け……だな。

ふんっ!!」

 

三晴はそう言いながら、核の残骸である双角錐の結晶---“ロストソウル”を破壊した。

 

すると忽ち、闇の粒子が霧散していき、灰色の世界は光の世界へと戻っていった。

 

「刀根さん……それって」

 

直樹は三晴の意趣返し的な言い方に呆れながら言った。

 

「私達を甘く見るのが悪いんだ」

 

三晴はロストソウルの近くに落ちていた小型の機械をつまみながら言う。

 

すると、三晴の声が遠くの方から小さく聞こえた。

 

「まあ。そうだけど。

(………あれ、今、私“達”って言った?)」

 

直樹は三晴のさり気ない一言になんだか嬉しくなっていた。

 

が、

 

「あ!!」

 

突然ふと大切なことを思い出し、思わず声を上げてしまった。

 

「……どうした。急に大声出して」

 

「幼稚園の近くの灰色の世界ってさ、もうとっくのとうに元に戻ってんだよね?」

 

「ああ。

だからどう………あ」

 

三晴は質問の意図を聞こうとした瞬間、直樹の家族のことを思い出した。

 

「また乃々実に怒られる!!

ねえ、刀根さん!

早く帰るためにこの光の球使っていい?

自転車とか、ローラースケートとか」

 

「だめだ」

 

「どうして!?」

 

「目立つだろうし、それに、お前の能力はお前の体にも感覚来るんだろ?

車輪とか絶対痛いぞ」

 

「……あ、確かに……」

 

「………光の戦士は光パワーで身体能力が上がってる。

それで頑張れ」

 

「うん…。

分かった。

………もう、帰って」

 

「構わないぞ。

ほら、さっさと行け」

 

「ありがとう!!」

 

直樹は三晴に礼を言うと、走り出し、ロープを超えると、また三晴の方を見た。

 

「刀根さん。

今日は本当にありがとね」

 

「礼はいらないさっさと帰れ」

 

「……うん!」

 

直樹はなぜだか嬉しくなって自然と笑顔で走っていた。

 

 

 

 

 

その日の夜。

 

「こら、ののみ。

まだちゃんと拭いてないでしょ」

 

「ふいてなくないもーん」

 

お風呂上がり、直樹が乃々実の体を拭いてあげてるとき、早く遊びたいがタオルから抜け出して、まだびしゃびしゃな体でリビングへ出ていってしまったのだ。

 

直樹は腰に自分のタオルを巻いて、乃々実のタオルを広げながら追い掛ける。

 

「ほら。捕まえた」

 

すぐに捕まえ、直樹は乃々実にタオルを巻かせる。

 

「あー。つかまっちゃったー」

 

乃々実は悔しそうに言うが、少し嬉しそうだった。

 

「よし。ふきふきしてパジャマ着よっか」

 

「アイスはー?」

 

「うん。アイスも食べよ」

 

「やったー!」

 

二人は笑い合いながら、脱衣場へと戻って行く。

 

そんな中、家のインターホンがなった。

 

 

 

しばらくして、しっかり体を拭きパジャマを着た直樹と乃々実がリビングに戻った。

 

「アイスー!!」

 

「今日は何食べよっか?」

 

乃々実はすぐに冷蔵庫へ直行し、直樹も追って冷凍庫の蓋を開ける。

 

「えっとねー……」

 

乃々実がなんの種類のアイスを食べるか悩んでいると

 

「直樹! お客さん!!」

 

と来客の対応に当たっていた母親が呼び掛けた。

 

「お客さん? 誰?」

 

「女の子! 確か、刀根って言ってたー!」

 

「刀根さん? 分かった。

ののみ。すぐ戻るからアイス選んでてね」

 

「うん!」

 

直樹は思わぬ訪問者に不思議に思いつつ玄関に向かった。

 

ドアの外にはランドセルを背負った三晴が立っていた。

 

服装は夕方別れたときのままで、裾や袖が切れており所々にうっすら血の染みも見えていた。

 

母親は同い年の異性の訪問に気を遣わせてなのか、お辞儀をしてリビングへと戻る。

 

「どうしたの?」

 

直樹はまた乃々実が愚図り出さない内に手短に終わらせたく、すぐ用件を訊く。

 

「少しな。

今日ちょっと、光パワーを使い過ぎた。

明日学校行けるか分からないから伝えようと思って」

 

「……そう。

あー……えっと、その話長くなる?」

 

「いや。少しで終わる」

 

「そう」

 

「おにいちゃーん!

アイスきまっ………だれ?」

 

アイスを決め終えた乃々実が無邪気に直樹へと駆け寄るが、三晴を見た瞬間、直樹の脚へ隠れ、睨むように見る。

 

「刀根さんだよ。俺のクラスメイト」

 

直樹は乃々実の頭を撫でながら優しく言う。

 

しかし、乃々実はまだ睨むようにして次の瞬間、直樹と三晴の間に立ち、通せんぼするように体を広げた。

 

「だめ! おにいちゃんはののみのなの!

こわいおねえちゃんにはあげないよ!」

 

「ちょっと…! ののみ!」

 

直樹は慌てて乃々実を自分の方へ向けさせ、しゃがんで視線を合わせて両手を握った。

 

「だめでしょ。そんなこと言ったら」

 

「でも。こわいよ」

 

「こわくない。優しいよ。

ののみも初めてあった人にこわいって言われたらいやでしょ?」

 

「……うん」

 

「ね。お兄ちゃん、ちょっとだけお話あるからさ。

お母さんにアイス取ってもらって、食べて待ってて。

幼稚園のおねえさんなんだから、できるでしょ?」

 

「……うん」

 

「よし。偉い。

お母さん! 乃々実のアイス出してあげて!」

 

直樹は説得を終え、乃々実の頭を優しく撫でると、母親に呼び掛けた。

 

「はーい。

あ、はいこれ刀根ちゃん。りんごジュース」

 

母親は返事をしながら玄関へ向かい、紙コップに注いだりんごジュースを三晴に渡した。

 

「あ…ありがとうございます」

 

三晴は少し困惑しながら受け取り、じっとりんごジュースを見詰めていた。

 

母親は乃々実を冷蔵庫まで連れて行き、直樹は手でごめんとジェスチャーを送る。

 

「本当はおねえさんだからって言葉使いたくなかったんだけどな……。

……あ、ごめんね。刀根さん。

ののみが失礼なこと言っちゃって」

 

「ん……あ、いや。

あのくらい大したことはない」

 

「本当にごめんね。

今日帰ったら泣き付かれちゃってさ。

乃々実もずっと帰れなくて二度と合えないんじゃないかって不安になってたらしいんだ。

その反動が来たのかな。

普段はいい子だから許してほしいな」

 

「許すも何も怒ってねえよ。

それに、そんな中訪ねて妹には悪いことしたな」

 

「いやいや………

………あ、それで何話しに来たの?」

 

直樹は流れ的に“そんなことはない”と言おうとしたが、実際“少し訪ねるタイミング悪いな”と思っていたため、無理矢理本題に持ち込んだ。

 

「ああ。そうだったな。

………小林直樹、ちょっと来い」

 

「え、なに?」

 

三晴が手招きしたため、直樹はスリッパを履いて三和土へ降りる。

 

すると、三晴はポケットから小さく畳んだ紙を直樹に押し付けると、顔を近付け耳打ちした。

 

「仮だがだいたいの内容を書いた紙だ。

しっかり目を通しておけ。

家族には見せるんじゃねえぞ」

 

「う…うん。分かった」

 

「それと、あのときシャインハートを持つもの同士引かれ合うと言ったな」

 

「うん。

それで俺達、6年間同じクラスだったのかもって」

 

「ああ。

そこで。約2名、シャインハートを持ってるであろう人物が候補にいる」

 

「え……!?

でも、俺と6年間同じクラスだったのって刀根さんだけだよね?」

 

「ああ。

だが、5年生まで同じクラスだったもう2人……覚えているか?」

 

「もう2人……?」

 

「ああ。確率はお前より低いだろうが、これから覚醒、もしくはもう覚醒している可能性もある。

別に探りを入れろとかそういうわけではないが、少しでもその兆候が見えたら教えてほしい」

 

「うん。分かった。

………で、その2人って誰なの?」

 

「早苗咲希と竹内明人だ」

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