冷たい方程式   作:明日死ぬ

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星海クリティカル
Till I Collapse


「菊花賞の出走登録を取り消そうと思う」

 

 骨折が治るのは最低で三ヶ月ほど掛かる……あくまで最低だ、場合によっては一年以上。そしてトウカイテイオーの場合、ダービーより600m長い菊花賞を走るスタミナを付ける必要がある。

 

「ボク、出たいのに」

 

「急に隕石が降ってきて、前を走っていたウマ娘が皆倒れて、一番後ろを走っていたトウカイテイオーが勝つ、みたいな」

 

 お涙頂戴のやらせ、何ならタキオンに毒を盛ってもらうとか。

 

「そんな風に、勝って得た三冠なんて意味ないでしょ。何のために三冠が欲しかったの」

 

「それは、カイチョ―と並ぶために」

 

「目標ではあるけど、手段でもある」

 

 つまり、菊花賞までにトウカイテイオーをまともな勝算があるレベルに持っていくことが難しい。

 

「無敗の帝王、悪くないかもよ」

 

「けどっ」

 

「ジャパンカップを復帰戦に出来るよう、頑張ろう」

 

 菊花賞か。

 

 

 タキオンの怪我の方は順調に治った。

 

「テイオー君には期待していたんだが……また練り直しだな。他のウマ娘を探すか、或いは」

 

「プランAはどうなの?」

 

「私? いや私は」

 

 タキオンは少し考えたようなふりをして、言った。

 

「私は無理だ」

 

 私の中の何かが弾けて、頬を打った。自分で、自分の。

 

「自分で頑張りもしない奴が他人に期待だなんて笑わせる」

 

 菊花賞、出走枠一つ空いたけど。

 

「私はトウカイテイオーの代わりじゃない!」

 

「じゃあ何なんだよ! 負けウマ娘か!?」

 

 違うでしょ。

 

「トレーナーはウマ娘を勝たせるために居るんだよ」

 

「何だよそれ、言ってること逆……」

 

 

 

 

 ⏱ ⏱ ⏱

 

『じゃあ何なんだよ! 負けウマ娘か!?』

 

「違う」

 

 イラつきが収まらず、柄にもなくスマホを弄り始める。私が気づいていないだけで他の人々もこうしてストレスと向き合っているのか? それで、他人の悪口でも? でも本当の意味で解決するには、自分と向き合う以外選択肢はない。それを分かっていながら、手を動かし続ける。記事のまともさにブレがある検索エンジンの記事に目が吸い寄せられる。

 

【”二冠ウマ娘の故障の真実”

 

 三冠を最も期待されてたウマ娘は何故故障してしまったのか? 

 

「馬場もよく、接触も無かったレースでした。骨折が起こるとはとても考えられない」

 

 調査を続ける中で、あるトレーナーの存在が浮かび上がった。

 

「・・・」

 

 彼女のチームに所属するウマ娘は決まって、レース直後に怪我が発覚しています。

 

「レース直後に怪我というのは、よくあるんですか? 

「勿論あります。ただ、これほどの頻度で起こるのは珍しい」

 

 本来であれば、練習中に発生するはずの怪我が、レース中に起こっている。

 

「ウマ娘が練習中に抱えた怪我を隠しながら走っていた可能性すらあります」

 

 レース中にトレーナーが出来ることはないため、そこで怪我したことにすれば、責任から逃れられるという寸法です。

 

「中々面白い発想だな」

 

 しかし、たまたまという可能性も。

 

「彼女はトレーナー学校に在籍している時も、ウマ娘を故障させています」

 

 過度なトレーニングによって……          】

 

「過度なトレーニングか」

 

 ひょっとして、トレーナー君があんなに足を気遣うのは、私達のことだけでなく、過去に壊してしまったウマ娘への懺悔なのだろうか。それなのに、私の足はちょっと走っただけで、悲鳴を上げてしまう。

 

 依然頭はまとまらないまま、正門へと足を運ぶ。トレーナー君と小さなウマ娘が揉めている。

 

「テイオーさんはどうなってますか!?」

 

「部外者に見せられるわけないでしょ。子供でも分からない?」

 

「………テイオーさんに何かあったら許さないですからね!」

 

「その時は君が走ったら? トレセンに来るんでしょ?」

 

「はぁ!?」

 

 話を切り上げて、トレーナー君が嬉しそうにこちらに来る。

 

「あんな逸材が居たとは。プランBの有力候補になれそう」

 

「そのころ私はとっくにレースを引退している」

 

「成長を早める薬でも作ったら?」

 

 そんなものが作れたらプランBはそもそも必要ない。

 

「君のことが記事になっていたが」

 

「一応見たけど」

 

 トレーナー君の世間の評判が悪くなる。

 

「泥を被るのもトレーナーの仕事だよ。テイオーやタキオンの足が弱いと知られていいことなんて一つもないし、言いたくないでしょ?」

 

 テイオーやタキオンが立派な成績を残せば、悪評を跳ね返すキャリアになるだろうし。そう言って君は笑う。

 

「何か誤解しているようだが、私のモルモットに対する悪評は私の悪評と同じだ。今すぐトレセンを通じて苦情を入れたまえ」

 

「そっか…………」

 

「君がやらないなら私がやるぞ」

 

「…………」

 

 君は頭を掻く。

 

「分かってるつもりなんだけどね。……、”一流のウマ娘には一流のトレーナーが付くべき”どこかで聞いた、手垢が付いたような話だけど、本当にその通りだと思う。私」

ジャパンカップで勝って欲しいウマ娘は?

  • トウカイテイオー
  • アグネスタキオン
  • スペシャルウィーク
  • ライスシャワー
  • その他・外国ウマ娘
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