冷たい方程式   作:明日死ぬ

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一人称に関してはあまり気にしないでください


Boss Bitch

結局タキオンとテイオー、どっちも私は裏切ってしまったのか。ある種の諦めが私を支配していたから、割と適切な距離感で接することには成功した。実験にもトレーニングに付き合う気にはなれなかった。

行く先が決まらないまま、私は歩く。思えば、大体タキオンかテイオーの傍に居たから、こんな風に一人で歩くことは無かった。

 

「オペラか」

 

少し休みたいと思って、喫茶店に入るのも違うと思ったから探して、オペラを見ることにした。オペラの内容に関しては、特に語ることが無い。有名な話だし、クオリティも高い。でもMCバトルとかの方が見てて楽しいかな。そんなことよりも私を惹きつけるのは、席の隣に居たウマ娘だった。

 

「お姉さんトレーナー?」

 

「うん」

 

「身体がしっかりしてる」

 

 私が常に考えていることが二つある。一つは、誰かに対して失礼なことを考えないこと。何時心を覗かれるか分かったものではない。アルミ箔を被ったら少しはましにならないだろうか? で、もう一つ考えるのは、そのウマ娘がどのように成長するだろうか、ということ。前者が私の臆病さだとするなら、後者は職業病に近い。ネットのエアトレーナーでさえ、ウマ娘の未来予想図を好き勝手に語るのだから、現場のトレーナーはその何倍も考えている。

 初めてだ。底が見えないのは。

 

「君も、鍛えれば私なんかより遥かに強くなるよ」

 

 ウマ娘を見る時、重なる一週間後、三か月後、一年後のイメージ。それがぼやけている。何だろう、単純に早いとかじゃなくて、説明が出来ないタイプの強さ。幼くて良かった、と思う。ライバルにならないから。

 

「ねぇ」

 

「うん」

 

「担当ウマ娘が走れなくなっちゃって、嫌にならないの?」

 

「……多分、また走るよ」

 

「走れなくなったら?」

 

「桜は散るから美しいって言うじゃん。オペラ風に言うならば、シェイクスピアの四大悲劇を全部喜劇にするようなもの」

 

 それはそれで面白そうではある。

 

「お話聞かせて」

 

「うーん」

 

 ⏱ ⏱ ⏱

 

さっきスルーした喫茶店に結局入る。

 

「名前は?」

 

「テイエムオペラオー」

 

 ふむ。

 

「お話は?」

 

 タキオンとテイオーの話は情報漏洩になるかもしれないからしません。私の過去のことを語るのもどうかと思ったので、ループしていることについて真面目に相談した。

 

「まず、お姉さんはどこでそんなに恨みを買ったの」

 

 ちょうどさっき見たオペラでもウマ王の怨霊が復讐を勧めていたが、そういう動機が無ければ人というのは普通殺されないし、一回や二回ならまだしも何度もとなると相当な恨みがあるように思える。

 

「恨みを買うようなことは……幾つか心当たりがあるけど、こう何度も殺されるほどではないと思う」

 

「じゃあ、思い当たる相手はいないんだね」

 

「実は一人だけ居る」

 

「それは?」

 

「……私自身」

 

 相手が降霊術を使っているのは、顔を隠したり身体能力を上げるためじゃなくて、パラドックスを避けるというのが理由なのかもしれない。というか、ウマ王の怨霊で完璧に思い出したけど、ウマスト教のアプローチの中には、降霊術も存在していて、私も昔それを習っていたっぽい。うまぴょい。

 

「ただ単に私を苦しめたいだけなら、タキオンやテイオーを痛めつけるというのも一つの手。でもそういうループは記憶にないから、死はループするための手段としてやっているだけなのかも」

 

「ループの目的は?」

 

「謎」

 

 分かりやすいのだと、タキオンかテイオーが怪我をして引退するからそれを阻止するとか。これなら私以外がループさせてたとしても成り立つし。だから、健康状態は何回も診たけど、問題があるようには見えなかった。

 

「この島でやらなきゃいけないことがあるのかな、と思う。そしてそれは」

 

「ループすることでしか成しえない」

 

「そういうこと、なのかなぁと」

 

 じゃあ何をやればいいのか、不明。ライバルになりそうなウマ娘を潰すとかじゃないだろうし。

 

「お姉さんはもっと他を頼るべき。これ、私のウマッターのアカウント」

 

 調べてみたらなんか裏垢っぽい感じだった。

 

 ⏱ ⏱ ⏱

 

 頼る、といってもその相手を探すのは難しい。

 

「魔術師の正位置です!」

 

「むーん」

 

 いきなり、自分死に戻りしてます、と相談するのは難しいからだ。テイエムオペラオーが例外なだけ。とか言いつつ、フクキタルに詳細をぼやかしつつ話すのは、何故だろう。雑に扱っていい感じというか、バ鹿にしてるわけではなく褒めているのだが。

 

「運命を見ているんじゃないですか?」

 

「運命?」

 

「ほら、成長した姿が見えるっていう」

 

「ああ」

 

 そっちか。確かに私達が見るウマ娘の未来の姿は宿ったウマソウルの輪郭を見ているという説がある。ウマ娘の全ては宿ったウマソウルによって決まるという学者もいるくらいだ。

 

「運命を変えるために繰り返しているのではないでしょうか!」

 

「運命を、変える」

 

 

 

ジャパンカップで勝って欲しいウマ娘は?

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