「駈歩からやろう」
「あくまでこれはテストで……いや、わかった」
何度も、繰り返してきた。今ここで超えるんだ。レースが始まる、タイミングは熟知、スタートダッシュは完璧。奪う僅かなリード。あとはこのリードを死ぬ気で守り抜くだけ。
「あああああああああああ!!!」
「おいおいおい……!」
⏱ ⏱ ⏱
地面に伏している。ちょっと気絶していたっぽい。
「はっ。私よりモルモットが早いだなんて、何のために走ってきたのやら」
「タキオン」
「プランBの候補に君がなるか?」
「話を聞いて欲しいの。とても大事な話」
ちょっと迷ったけど、この島について今まで経験してきたことを全部話した。
「ちょっと待ってくれ、私と君がシたのか……その、あれ、実験を」
「 (´・ω・`)」
「どういう感情!?」
⏱ ⏱ ⏱
「私達ウマ娘とは何なのかというのは、未だに謎が多い」
人によっては宇宙人の子孫という意見もあるし、それを否定する物証があるわけではない。
「異世界のウマソウルを宿した存在であることは確かだ」
何故ウマソウルを宿したら身体能力が向上するのか。身体能力が肉体と魂の二倍になっているというよりは、ウマの身体能力に近づいているという方が正確だと考えられている。だからウマは宇宙人だとか言われてるし、生物学者によれば四足歩行の生き物だったのではと言うくらいだ。
「ずっと考えてきた。光を超えるタキオンはどんな物質なのか」
「・・・・」
「私達に宿る、魂こそがタキオンなんだ」
前から、一つの考えとしてあったんだろう。異世界の魂が流れ込んでいるということは即ち魂が世界を超えているということで、どうやっているかは不明だけど、世界を超える過程で光を超える速度も出している可能性はある。
「魂がキーワードだよ、モルモット君」
「んー……」
タキオンとのレースは身体能力を互角にしてもらったから勝てた。あのウマ娘に何度挑んでも勝てないのも、それが原因だ。勝つためには、ウマ娘の身体能力が必要になる。それを叶える手段があるとしたら、タキオンの薬か、或いは
「降霊術を使うしかない」
ちょっと厳しいアプローチ。
「元々神様と交信するためのものらしいけど、繋がれる神様のアテもないし、ウマ娘の魂を引っ張り出す方法が無い」
当たり前だが、ウマ娘の魂を操れるなら今頃ウマ娘はもっと増えている。降霊術が廃れたのはそれが原因なはずだ。
「ウマソウルがウマ娘に宿っている以上、それをどうこうすることは出来ない。どうしても降霊術を行いたいなら……最低限、野良のウマソウル、肉体を持たないウマソウルが必要になる」
そんなもの存在するのだろうか?
⏱ ⏱ ⏱
もう一つの疑問として、私の魂はどうなっているのだろうかというのがある。
「好ましい影響があるとは思えないね」
「…………」
本来できないことをやっているわけだから、何かしらの代償を払っていてもおかしくはないか。とはいえ突破口も無く、またマチカネフクキタルと会ってその背後に、見えるはずのないものが見えた。
「フクちゃん。その後ろのウマ娘は?」
「後ろ? 誰も居ませんよ?」
「えっ」
フクキタルがおかしい……のではなく、私がおかしくなったのか。
「ひょっとして、シラオキ様が見えるようになったのかも! おめでとうございます!」
「う、うん」
「やっぱりトレーナーさんは運命の相手ですね」
「それはどうだろう」
でも偶然とは違う。それに、この状況を打開する鍵になるかも。不敬だとしても言うしかない。
「その、シラオキ様を私に憑かせることって出来るかな」
⏱ ⏱ ⏱
結論から言えば、フクキタルとタキオンの協力を得ることで半分成功した。
「人間をウマ娘化する薬、他のループで伝えたのか?」
「いや、タキオンに実験された夜、こういうのも悪くないって上機嫌で」
「忘れろ」
実際、感度は上がった。ウマ娘並みの身体能力を持つデミウマ娘として、活動できそうだ。
「苦しくないか?」
「むしろ気分がいいよ。ウマ娘ってこんな感じなんだね」
「……異なる存在が交わった姿だ、注意した方がいい」
「きっとトレーナーさんとシラオキ様は相性がいいんですよ。だから大丈夫です」
「死神には勝てるだろうか」
「それは多分……」
先ほどから全神経をとがらせてあるウマ娘を探している。今、ようやく見つけた。
「ちょっと行ってくる」
「トレーナー君!?」
⏱ ⏱ ⏱
ゴールドシップは海中に居た。海に出たら死神がやってくるとうよりかは、ラインをはみ出たらが正確。探索をしていなかった島の内側にそれはある。
「レース場!?」
この島にレース場は無かったというのが定説だったのに。昔はあったのか、それが沈んで……
「行くぞ」
「はい!」
というか、神殿か。中入って――空気がある! レース場の状態を真っ先にチェックしてしまう職業病。ちょっと整備すれば問題なく使えそうだ。1600mダート、それも海外の奴に近い。
「一回戻ろう」
⏱ ⏱ ⏱
「何となくわかった。死神への勝ち方が」
もう少し調査したい気分もあったが、ゴルシの判断は的確で、帰りの途中で憑依が切れた。身体が動かなくなり、ゴルシに抱えられながら浮上。海の中じゃなかったらゴルシファンに殺されてたかも。
「弱点を見つけたのかい?」
「いや、逆。倒せないことが分かった」
ウマ娘に近づいて、あの死神の凄さがより分かった。たとえ身体能力を近づけても、あの領域には近づけない。100:0で負ける。
「多分、別の方法で決着を付ける必要がある」
「というと」
「レース」
私がウマ娘で、相手もウマ娘なら、必然的にそうなる。そしてお誂え向きに舞台もある。
タキオンは考え込んだが、ゴルシは即答した。
「権威が無いと、奉納出来ない」
あの場所が神殿なら、奉納試合ということになる。となると、レースの格が必要になる。具体的にはG1クラスの。過去には行われていただろうが、現在行われていない以上、あの場所で走ってもただのかけっこでしかない。
⏱ ⏱ ⏱
「即興劇。伝統のレースが行われることにすればいい」
オペラオーがこの問題を解決してくれた。
「それから、お姉さんの勝負服はある?」
「無いし、アテも特には」
勿論、トレーナーとして多少の知識はあるが、勝負服に関しては秘匿されている事項も多く、繰り返してたところでちゃんとしたものが作れるかどうかは怪しい。
「なら私が作ろう」
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