冷たい方程式   作:明日死ぬ

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DreamDrive

 何度やって来ても越せなかった夜が、また来る。

 

「(意外と温かい)」

 

 オペラオーが用意してくれた勝負服に袖を通す。白を基調としたスク水だ。今回の劇、音楽がクラシックでも大した金も掛けてないのに色々と用意してくれたオペラオーには頭が下がる。記憶の宮殿にしまい込んだ演出ノートを再びイメージして、集中する。

 

 海底、謎の遺跡。私、タキオン、テイオー、フクキタル、オペラオー、加えてナレーションにマチカネタンホイザ、演奏等の追加メンバーとしてグラスワンダーを招集した。

 筋書はこうだ。古代では四年に一度ウマリンピックという大会が行われていて、平和の祭典として知られていたが、争いによって自然消滅した。その祭りを今日復活させる。大会は途中まで順調に進むが乱入者がやってきて……みたいな。本当はワルキューレの騎行がやりたかったみたいだけど、そんな長いのやるのは流石に無理。

 実際途中まではうまくいった。ダメ出しする奴が居ないから失敗しても分からないし、神様に届くようにという名目で物凄く大袈裟にやった。問題はここから。

 

「力を授けます!」

 

 占い師役のフクキタルが私に力を得る方法を教えて、それによってシラオキ様を憑依させる。

 12時が来る。

 死神が追ってくる。

 

「スタート!」

 

 あちらは律儀にスタート手前で開始を待ってはくれない。つまり、私の大好きな逃げになる。

 

「うぁらあ!!」

 

 今回走るのは使っているレース場一周分1600m。レースとしては短い方だが、私にとってはあまりに長い距離。不意に息の吸い方を忘れて陸に打ち上げられた魚みたいになっては意識がクリアになった一瞬に大きく息を吸い込んで走り続ける。視界に移るハロン棒は12の数字。

 遠い。

 

「あっ」

 

 速度が、落ちていく。走らなきゃ駄目なのに、少しだけあった差が埋まって、捕まって、0になって。私の先頭はここで終わり?

 

「こら、モルモット君。まだ半分だぞ? 走れ」

 

 思わず沈んだ頭を上げれば、タキオンが居て。見渡せばテイオーとグラスワンダーが死神を”ウマブロック”していた。

 

「彼女が乱入がありなら私達が入っても大丈夫だろうと言い出してね」

 

 オペラオーが?

 

「まぁ、参加するウマ娘は多い方がレースの格は上がるけど」

 

 そんなことを言いつつ、走る。死神はテイオーとグラスワンダーを蹴散らして再び私に迫る。

 残り400!

 

「りょう―いき―てんかい!」

 

 異空間に一瞬だけ包まれて、加速! 走れ!

 

「届けっ!!」

 

 目の前にはフクキタルが居て、なんか。呼ばれた気がした。

 

 

⏱ ⏱ ⏱

 

 

 濁流に流されて、どこかで見たような空間にたどり着く。

 

「夢?」

 

 確か走って、フクキタルに激突した所まで覚えてる。それから? 一応筋書では神様が降りてくるとか。

 

「お疲れ様」

 

 タキオンだ。タキオンだけど、背が低い……いや逆、高くなって髪も伸びてる。低く見えたのは車椅子だからだ。

 

「次目覚めた時には学園のはずさ」

 

 成長薬じゃなく、おそらく未来の。終わったのか。

 

「使える時間は短いから、簡単に説明しよう」

「何故この時なのかのは、ここしか介入できるタイミングが無かったからだ」

「もし君が死ななければ、まt……シラオキ様を身に宿すことは出来なかった。魂を入れるには空の器が必要になる。だから死を繰り返すことで魂を削った」

「介入したのは、運命を覆すため。私達ウマ娘はウマソウルを宿すことで人を超える身体能力等を手に入れるが、それだけじゃなく、ウマソウルが元々持っていた運命を継承する」

「私、アグネスタキオンは皐月賞の後に終わるはずのウマ娘だった。この運命は回避してもまたやってくる。どれだけリンゴを高くに投げようと最後は落ちてきて地面に墜落するように」

 

 サイレンススズカが当初の期待に反して結果を出せないのも、本当はあの天皇賞で終わっていたウマ娘だからというのが頭によぎった。

 

「これを打開するには、運命的なもので対抗するしかない」

 

「運命的なもの?」

 

「ウマ娘の共感現象というのを聞いたことがあるだろうか」

 

 確かにそういう報告を聞いたことはある。与太話の類だとしか思っていなかったけれど。

 

「あれは魂の繋がりによっておこる現象だ。この繋がりは君とシラオキ様の間にも結ばれた。そして君な時を繰り返すうちに物事がどのように推移し、どうやれば好ましい結果を出せるかというのを学んだね? 状況を変えるために力を尽くした。トレーナーとしての閃きが鍛えられた」

「この繋がりと経験によって、君はわずかながらではあるが、予知を手に入れることになる。悲劇の前には必ず、予感を手に入れる。あとはそれを防ぐため全力を尽くすだけさ」

 

 簡単なことではないだろう。たとえばこのレースに出たら怪我するという予感があったから回避というのをしても、運命が追ってくるならまた別のレースで怪我することを予感するだけ。何時までも逃げ続けることになる。

 

「運命をなぞれば、私は死んでいるはずだった。しかし、生きている。何故異世界の魂が私に宿ったのか、疑問は尽きないが、一つ思うのは…………私は誰かが見た夢なんだ。だから生きている」

 

 ある種の楽園――死ぬはずのウマ娘がみんな生きていて、幸せになれるかもしれない、そんな世界。

 

「夢を駆けているんだよ」

 

「・・・・・・」

 

「もう時間だ。最後の一つだけ言うことがあるから、よく聴いてくれ」

 

「……うん」

 

「愛している、トレーナー君のことを。誰よりもね」

 

 何か言おうとしたけど、何にも言葉が出なかった。

 

 

 

⏱ ⏱ ⏱

 

 その後のことを少し話す。

 まず、死神は居なかったことになっていた。

 

「マチカネフクキタル? テイエムオペラオー? 誰それ。トレーナーの知り合い?」

 

「まだ違う」

 

「変なの」

 

 私たちは普通に合宿して帰ってきたことになってた。そっちの方がトレーナー的にはありがたいが、少し複雑な感情が残る。

 

「はい、濃いめ硬め多めのはちみーと砂糖マシマシの紅茶。疲れたでしょ?」

 

「ん?? トレーナー、どうしたの? ボク達飲んちゃ駄目なんじゃ??」

 

「いや、食事管理する必要があると思ってやってきて、別にそれが間違っていると思ったわけではないんだけれども。ただ、ヒトっていつ死ぬか分からないとも思ってさ。だのに好物の一杯も飲めないなんて理不尽じゃん」

 

「ボク達合宿しただけだよねぇ!? 確かに辛い部分もあったけど、死を意識する場面とかあった!?」

 

「100回くらい死んだ記憶がある」

 

「逆に何で生きてるの?」

 

 あともう一つ触れたいことがあった。ゴールドシップのことだ。降霊術を行っていたとしたら居るはずの従者は結局ループ中見つからなかったが、ゴールドシップもほとんど見つからず、同一個所に存在することは無かった。だから半ば確信している。また会ったら少しくらい話そうと思ったのに、何故か世界からゴールドシップという存在そのものが消えていて、いつの間にか私もゴールドシップのことを思い出せなくなった。




次章 影光り 光り影 に続く 今度こそ菊花賞の話です
第五章はジャパンカップの話をやることにしたので、また一章増えました。
エピローグまで含めると計七章ですね(笑)。
ジャパンカップに出場する外国ウマ娘のアイデアがあれば活動報告に書き込んでおいてください
あとアンケートがあります。

ジャパンカップで勝って欲しいウマ娘は?

  • トウカイテイオー
  • アグネスタキオン
  • スペシャルウィーク
  • ライスシャワー
  • その他・外国ウマ娘
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