冷たい方程式   作:明日死ぬ

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月夜に二人で翔け出す程度の能力

チームを組む目的の一つとして、対決回避がある。

 

たとえば、中距離の代表的レースである日本ダービーとオークスは同じ月に開催されるが、チーム内でどちらに出るかをあらかじめ決めておけば不毛な対決をせずに済む。談合なんて批判を受ける時もあるけど、少しでも勝ちやすくするという点では当然だろう。

 

 

4月に行われる皐月賞の場合、桜花賞などが代表的なレースとしてあるから、4月に出たい場合はこの二つに分かれるという選択肢も

 

「皐月賞に出る」「皐月賞に出よう」

 

「はぁ……」

 

 三冠。皐月賞、日本ダービー、菊花賞を制したウマ娘に贈られる称号。シンボリルドルフはこれを制したからテイオーが三冠を目指すのはいいとして。

 

「タキオンも三冠か」

 

「テイオー君が居なければ間違いなくそうしただろう?」

 

 まぁ、それはそう。三冠を手にしたウマ娘は少ない、一度は取らせてみたいとトレーナーなら皆思う。

 

「大丈夫だよ。敵は強い方がいいし、誰が来ても負けないから」

 

 どっちかは必ず負ける。そう考えた時点で、吐きそうだ。自分が担当したウマ娘なんてそりゃ可能な限り見たくない。だからといって、どちらかに「諦めて他のレースにしてくれ」なんて言えない。

 

「本当に早いのが誰か、決める機会になるだろう」

 

「そのくらいにして。対決は皐月賞ということで」

 

 話題を移す。

 

「チーム名を決めようと思います。」

 

「うーん、コメットとかどう?」

 

「プレアデスがいい」

 

 チームケフェウスで登録するつもりだったことは、私の胸の内に隠しておこう。全然違うじゃん。

 

「なるだけ早いのを連想させる感じで」

 

「明るい方が好ましい」

 

 ビックバンかな? 一応星の名前にするのが慣例。

 

「じゃあアポロで」

 

 チームアポロ、始動します。

 

 

 タキオンから。

 

「夜早く寝て、朝早く起きましょう」

 

 実験のために徹夜するのがそんな珍しくない。結局時間の前借りしてるだけ、その代償が授業で補われているわけだが。

 

「まさか授業に出ろと」

 

「それは9割サボりでいいけど、代わりにトレーニングしてね」

 

 テイオーはサボれないだろうし。

 

「それから、テイオーへの実験は控え目に。出来れば、テイオーにも利がある形にして」

 

 単純にテイオーのトレーニングに付き合う、くらいでいい。両者の素質は似ているから、いい刺激になるはずだ。

 

「これから長く付き合うわけだし」

 

「君は?」

 

「お金貰ってる」

 

 それ以外に望むことなんてあるだろうか。

 

「世の中にはお金で解決できないこともあるんだよ、トレーナー君」

 

 例えば勝利とか?

 

「現にモルモットはトレーナー君以外集まらなかったじゃないか」

 

 後遺症がしばらく残ったりするのは、人集めに不利だったかもね。

 

「生憎、トレーナー君の行動原理はお金で説明できない。気になって仕方ない」

 

 流石にボランティアだったら、参加しづらかったとは思う。

 

「実験は足のためでしょ。私は昔骨折したことがあるから、」

 

「共感を覚えたと」

 

 アグネスタキオンは実験の目的を語ってはくれない。でも、実験の内容とその走りを見て察することが出来た。

 

「浮薄な嘘は止めた方がいい。骨まで透けて見える」

 

 タキオンの蹴りを、衝撃を殺して受け止める。

 

「君が来た時はちょうど悪評が広まった頃でね、誰も来ないと嘆いていた果てにやっと来たモルモットだ。逃げられる前に沢山実験しようと、色々なことをやった。足のための実験、なんて絞り切れる類のものではない。それでも君は、何の躊躇いもなく再び実験に参加したんだ」

 

幾ら貰えるかも気にせずに? その通りだよ、足のためと確信したのは走りを見てから。自分が折れた話は動機の0,5割にも満たない。

 

「必死だったじゃん、その時ニートの私と違って。理由なんて」

 

 社会のゴミとウマ娘の上澄み。君のくしゃみを包んで、そのまま捨ててほしい。

 

「ああ、何だ。   君は、自分が嫌いで仕方がないのか」

 

「嫌いになった? それとも失望した?」

 

「別に」

 

 タキオンが怖い。何を考えているか分からない。いつものことだった。

 

「何を言ったらいいのか分からない時ってどうしたらいいか知ってる?」

 

 トレーニングです。掃除したい時は勉強すると捗るのと同じ。

 

 

 

 

 

 続いて、テイオー。

 

「それじゃ、遊ぼうか」

 

「トレーニングするんじゃないの?」

 

「面倒くさいじゃん」

 

 せっかくの青春をレースに費やすのは人生をドブに捨てるようなもの、楽しもうよ。走ることばっかりに囚われていたら、「なぜオレはあんなムダな時間を……」って後悔することになるかもね。

 

「ほら、シューティングゲームとかどう?」

 

「わかった、やる」

 

 テイオーは何をやらせても天才だった。その途中でプリクラと証明写真機を間違えてたのは、元ニートの私にとって笑えなかったが。トレーナーだから言わないけど、そうじゃなかったならゲームのプロになることを勧めてるだろう。

 

「はぁー、遊んだ遊んだ。明日は何するの?」

 

「遊ぶ」

 

「何で!?」

 

「走りたい……?」

 

 素直にかわいそうな生き物だと思う。これだけの才能を持ちながら、走ることに取り憑かれているだなんて。

 

「約束しよう」

 

 練習が嫌になったら、また練習したいと思うまで精いっぱい遊んでいい、逃げていい。何を言われても、私があなたを許すから。

 

「分かった、約束する」

 

 それじゃ、明日から練習しよう。ところで、カラオケ行かない? 私がまだ遊び足りない。

 

ESKRRRP 作詞 トップハムハット狂 作曲:トップハムハット狂・Johngarabushi

 

いっそのこと月面へ ハイケイデンスエスケープ

それぞれがそれぞれの速度でペースメーク

 

今日も止まない否定 声にならない悲鳴

御伽噺の世界に逃げ込めば きっと...

お姫様と幸せに暮らし めでたしでしょ

 

「そんな簡単じゃないよね」

 

「ケチ付けないで」

ジャパンカップで勝って欲しいウマ娘は?

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