冷たい方程式   作:明日死ぬ

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仮面の告白

『ジリリリリリリ……』

 

 朝だ。眠くはないが、気分は最悪。

 

「皐月賞」

 

 今日は皐月賞の日。前日から中山のホテルに泊まってるから、いつもと違うのか。いや、理由は分かってる。

 

「テイオー、起きてる?」

 

「起きてる。調子もばっちり」

 

 じゃあ勝てるね、とは言えなかった。

 

「タキオンの方、見てくるから」

 

 どちらかは負ける。

 

「タキオン……タキオン?」

 

「入ってくれ」

 

 …………状態が悪い。徹底した体調管理を行ってきたつもりなのに、明らかな寝不足に軽度の憔悴。緊張に弱いウマ娘だったのだろうか、だとしたらそれを見抜けなかった私は

 

「どうしたんだい、トレーナー君。体調が悪そうだ」

 

「タキオン、今日の皐月賞は」

 

「出るよ」

 

 レースというのは常に有利な状態で挑めるとは限らない。天候や相手、自分の体調、思い通りにならないものばかりだ。だからこそ過酷な条件でも勝てるウマ娘は強い。

 熱が出てるわけでもないから、出走を取り消すにはあまりにも弱い根拠。

 

「因みにどっちが勝つと思う?」

 

「6タキオン4テイオー」

 

「パドックで調子悪そうな私を見て3タキオン7テイオーに変更するパターンか」

 

 まぁ、そんな所。

 

「夢を見たんだ。私じゃない私が皐月賞を走っている夢だ」

 

「負けたの?」

 

「いや、勝った。その後病気が見つかって、二度と全力で走れないことを知る」

 

 そこで目が覚めるんだ、とアグネスタキオンは言う。

 

「だからまぁ、このレースに関しては心配しなくていいんだ」

 

「そのレースにトウカイテイオーは居た?」

 

「あー、どうだろうな。気にしていなかった」

 

「なら負けるかもしれないよ」

 

 病気も、見つからないかも。

 

「そんな泣きそうな顔をするな。実験がやり辛い」

 

 ごめん。そろそろ時間だから、頑張ってきてね。

 

 

 

 

 レース場に入る。天気も晴れ、馬場は良し、客も入ってる。

 歓声が上がる。

 

「エアシャカールだ!」

 

 二番人気。デビュー時期によっては皐月賞を取っていた逸材だ。ダービー、菊花賞も――

 ああ。

 

「トウカイテイオーが来たぞ!」

 

 私の手に余る才能二人。どちらも三冠を取れる素質なのに、その夢が消える。二着になって…………?

 ん?

 

「あ」

 

 ライブの練習させてなかった。センターだけしかやらせてない。テイオーは大丈夫だろうけど、タキオンがヤバイ。

 

「ど、どうする? 会長に怒られる」

 

 デビュー戦ならまだしも、G1で棒立ちになったら大変なことになる。こうなったら、やるしかない。今の内に簡略化した振り付けを教える準備をしよう、幸いタキオンの勝負服は袖が長いからうまいこと誤魔化せないこともないはず。

 

「(タキオン、頑張ってくれ!)」

 

 

 

 ⏱      ⏱      ⏱

 

 

 

「ボクのトレーナー、どうだった?」

 

「私が負けるかもしれないと言われたよ」

 

 アグネスタキオン。トレーナーはたまたまだって言ったけど、たまたまで勝てるほどカイチョ―は弱くない。負けるかもしれない、分かってる。三冠が欲しいのは絶対に憧れてるから、あの時あのウマ娘と戦わなかったから勝てた、そんなもしもを許したくない。ボクが、最強なんだ。

 

「お前ら元気そうだな」

 

「そういう君は、データ収集か? 構わないが後で実験に」

 

「違げーよ、お前の様子がおかしいから……ほら、妨害されるかも」

 

「心配する必要はない」

 

 エアシャカール。データ派の追い込みウマ娘らしい。トレーナーと気が合いそうだと思う。トレーナーはデータが好きだ。アグネスタキオンの実験の記録も最近ではトレーナーがやっているから、どっちが実験しているのか分からないくらい。

 

『私にはデータくらいしか、説得する手段が思い浮かばなくて』

 

「始まるぞ」

 

 レースが始まる。

 

『目標タイムは2分 だから序盤はこのくらいで』

 

 同じペースで走れるよう何回も繰り返した。練習の時みたいに、走る。

 

『順位に拘る必要はない 』

 

 この時期のウマ娘は、2000mを走り切るだけのスタミナが足りてないことが多いとか。ペースを守っていれば、勝手に沈んでくる。

 

「「もうむりー」」

 

 間隔が開く足音と狭まる足音、ここからが勝負。

 

「よしっ、」

 

 加速する。ボクは先行だけどアグネスタキオンは差しで、エアシャカールは追い込み。

 一番になる。

 

「ふー」

 

 頭の中から雑念が消える、ただ走る。追いつかれるか否か。殺気を感じるけど、後ろは見ない。これ以上のプレッシャーを三冠を取るために浴びることになるから。この程度で、負けない。

 100――50――25――10――0

 

「1着はトウカイテイオー! 2着はエアシャカール、三着はナイスネイチャ……」

 

 悲鳴にも似た歓声がボクたちを刺す。テイオーコール、やろうかな。でもまずはトレーナーに

 

「トレーナー、ボク」

 

「アグネスタキオン!!」

 

 え?

 

「足見せて、早く!」

 

 ボクはただ見てるだけだった。医務室に運ばれていくアグネスタキオンと付き添うトレーナー。

 ボクは一人になった。

 

「テイオー!」「テイオー!」「テイオー!」「テイオー!」

 

 天に掲げた人差し指は、冠というよりボクの孤独だ。

 

 

 

 

 

 レースが終わったら、ライブの打ち合わせが始まる。上位三人組で練習していたら、ナイスネイチャがアグネスタキオンのことを聞いてきた。

 

「トレーナーはなんて言ってた?」

 

 さっき、VINEにメッセージが来て、ボクへの称賛、謝罪、アグネスタキオンの容態が述べられていた。

 

「肉離れだって。また、すぐに走れるようになるらしいよ」

 

「よくはないけど、骨折よりかはマシってことか。復帰するのも大変だし」

 

 ナイスネイチャも、気にしてる。そんなにアグネスタキオンが気になる?

 

「トレーナーがさ、後ろ見るなって言うから見なかったんだけど、アグネスタキオンってどんな感じだった?」

 

「凄い早かったよ。流石同じトレーナーの所で訓練してるだけあるなって走りだった。加速してテイオーに並ぶって思った瞬間、急に速度が落ちて、倒れこんだの」

 

「そっか」

 

 歯ぎしりをする。

 

「それよりトレーナーさんは? ライブ、見に来るよね。間に合うかな」

 

「トレーナーは多分来ないよ」

 

 ライブは後でDVDが発売されるけど、アグネスタキオンの対処は今やらないといけないから。

 

「そういう人なんだ」

 

 だから、歌おう。見せつけるように。このウイニングライブは、三冠達成への序曲だ。




第一章終わりです。
骨折⇒肉離れに変更しました
第二章のダービーを書き終えたら投稿します。
追記の追記
VINE⇒BINEに変更しました 元々この表記の予定でしたが、
何故か戻ってしまっていたようです。アンケートは締め切りました


ジャパンカップで勝って欲しいウマ娘は?

  • トウカイテイオー
  • アグネスタキオン
  • スペシャルウィーク
  • ライスシャワー
  • その他・外国ウマ娘
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